●眼球がこぼれ落ちるまで
今、夜の空いた時間と場所をこそっと使ってデッサンをしています。
モチーフはベルヴェデーレ。
前からずっとベルヴェデーレの背中を描きたいと思っていました。自分にはあの背中がとてもエロチックで魅力的に見えるのです。
僕は、このデッサンを目がおかしくなるまで描き込みたいと思っています。エロチックな形のすべてを追い、そして知り、それらの形1つ1つが繋がって量となっていく実感を味わいたいと思っています。
そして、かのミケランジェロがベルヴェデーレから古典彫刻を学びとろうとしたことを追体験してみたいとさえ思っています。
僕はデッサンをする上で他人より自負出来ていると思えることが2つあります。
1つは姿勢が良いこと。やや海老反りな感じを常にキープします。もう1つはカッ!!!と目を見開いて画面とモチーフを見ること。眼球がこぼれ落ちそうなくらい目を見開いて全てを掌握したいと願います。
そうすると、そこにあるリズムが、なんだか画面の中に見えてくるようになります。光がそれを手助けしてくれます。
実技において大切なことはモチーフと自分の実技をどれだけ見比べられるかです。
だから、デッサンで細部を見て描写をしていく時も、モチーフとデッサンの全体像を見比べるときも、常に目をカッ!!!と見開き見比べます。
眼球がこぼれ落ちそうなくらい目を見開いて、描き込む仕事と全体像を見る仕事を何度も何度も繰り返しながら仕事をしていきます。そこには、観念的な言葉による実技の理解などほとんどありません。
もちろん構図やバランスは気にしますが。観察と比較を何度も繰り返し、それを目と手と光を使って1つ1つ拾い上げ、僕なりに丁寧に繋げていくだけです。
目を見開いてモチーフを見れば、必ずそこには答えがあり、リズムがあります。
それを見つけることは難しいことじゃありません。
もし、その答えを見つけることが難しいと考えるなら、いくつもの絡み合った糸を元通りにする最善の方法は何か、と言うことを考えて下さい。
その最善の方法は一番ほどけそうなものから1つ1つほどいていくことです。見えるものから描いていけばいいんです。
芸大の試験まで約2週間。短いと思いますか?
いやいや、まだ2週間もあるんです。結果はいくらでも覆ります。
コンクールの結果が悪かろうがいくらでも覆ります。
僕の考えや見方には多少なり偏りがあり、故に変態的と人から言われたりもしますが、全ての実技において集中力と観察と比較が常に大切だと言うことは誰にとっても変わりはありません。
それを鋭敏に研ぎ澄ませていった者が最終的に勝ち残ります。そこには、浪人生も現役生も関係ありません。へこたれるのはまだ早いですよ。楽しくなるのはここからです。
虫本 文


