2026年10月アーカイブ

2026年度全国公開実技コンクール

〜すいどーばた美術学院講師10名の採点講師コメント掲載〜
各講師から、今回の公開コンクールについての総評を書いてもらいました。
それぞれの言葉をしっかりと受け止め、今後の制作の参考にしてもらえればと思います。


すいどーばた美術学院 彫刻科主任 小川寛之
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はじめに、今年は過去20年の中で最多となる170名という参加者を迎えたのコンクールとなり大変嬉しく思います。
この世代がのちの彫刻界を盛り上げてくれると思うと、とても楽しみです。

全体をみた印象として、初見は合格圏に入る作品が多いような好感触だったのですが、
一点ずつ見ると上位層には大きな差がなく、トップを決めるのがなかなか難しい採点でした。
またB'から下の層が多いのは、日頃から人体を通じて造形の基礎を学んでいく必要があると感じます。

皆さんは大学で彫刻を軸にアートを学んでいくわけですから、自分が取り組む何か一つのものを掘り下げ、極めることがとても大切になります。
それが作品の価値を高めることにも繋がります。
だからこそ今は、良い感覚と研究を重ねて、自分ならではの表現を極める経験を積んでください。


すいどーばた美術学院 彫刻科昼間部講師 阿部光成
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幼いバッカスが見えるか?

今年の公開コンクール〜凄いね!エントリー数なんと170人以上〜いやはや参加してくれた皆さんありがとうございます!
さてモチーフのヘルメスですがゆったりとした優雅な印象の全身像が元になってます。左腕には幼いバッカス(後のお酒の神様)を抱え、右手で持った葡萄(ワインの原料)であやすギリシャ神話のシーン、慈しむ設定がこの彫刻のポージングの素となっています。
さてここで皆さんに問いたい!素描で出題される彫刻にはそれぞれ主題となる背景(コンセプト)があります。それをただの雑学として端によけてはいませんか?モチーフから読み取るとは、目の前の立体物を即物的に理解するだけではないのです。古代の人々がヘルメス像に驚嘆したように、その彫刻の背景を紐解きながら、その場で感じたリアリティを素描するのではないでしょうか?特に中盤以降の学生は制作が上手く行くか?行かないか?の戦いに盲目になり、ほとばしる情熱よりも自分の制御不能な感情で手が動いているように見えます。結果モチーフ、画面、自分の循環する三角形がいびつになり、結果自然さとバランスを欠いた実技になってしまう.........デッサン力、その技術は何の上に成り立つのか?もう一度再考して欲しいです。


すいどーばた美術学院 彫刻科昼間部講師 田中綾子
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みなさん、コンクールおつかれさまでした。

全体的には顔が似ていると思えるデッサンが少ないような印象でした。
また、体のパーツの位置関係がバラバラして見えたり、形態や色味が単純に見えたり......捉えきれないまま、急いで手が動いたのかなぁという見え方でした。

私は3浪しましたが、恥ずかしながらヘルメスを納得いくように描けた記憶がありません。もしかしたら、みなさんの中には同じように、この像って難しいなぁと思っている特定の像があるかもしれません。

これを、単なる苦手意識として、精神的な問題にすり替えて片付けてしまうのは勿体無いです。
石膏デッサンのモチーフはほとんどが人体彫刻で、本当は全部ただの形とその周りにある空間を描くだけなので、モチーフごとに得意不得意など無いはずなのです。

おそらくですが、「自分の描き方」に頼っていると、モチーフが上手く捉えられなくなるのではないか、と思っています。
「木炭の調子はこう使うべき」とか「色をこうすると立体感が出る」とか。どこかに自分の思い込みがあったり、いつの間にか技術を使うことが目的になって、目の前のモチーフとデッサンが乖離していたりすることがあります。

技術はもちろん必要ですが、あくまでもそれは観察の結果を絵にするための道具に過ぎません。
モチーフを理解すること、理解できるように努めることが、習ったことを披露するよりも優先すべき目的なのではないかと思います。
答えが目の前に置かれている試験なんて、他にはあまりないですよね。上手くいかない時は答えに頼ってみましょう。


すいどーばた美術学院 彫刻科昼間部夜間部兼任講師 小野海
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順位に関係なく170枚全てに対して、観察する力が足りていないと感じてしまいました。
その観察して欲しい観点は順位層ごとに違っています。上位層に求めることは、もっと彫刻的に見て安心できるデッサンにするために、見えてる景色とその景色から抽出した組み立てのイメージを照らし合わせて観察することです。ヘルメスをただ写すのではなく、モチーフとなっている彫刻の量・動き・構造を自分の脳内で組み立てて、その設計図を基にちゃんと建っている彫刻を描けているか。
Bランク後半以降の作品に関しては、彫刻的な観点以前に、まずどれくらいの大きさのモチーフを見ているのか、感覚的な体内秤で観察して欲しいです。身の回りの物と比較しても良いと思います。ヘルメス胸像は冷蔵庫よりは小さいですね、けど我々人間の等身と比べると大きいので、1人で持つとなると少しフンッて気合いが必要なくらいは重みがあります。
それはヘルメスを実際に持ち上げなくても、見ただけで何となくイメージ出来ることですね。それが感覚的な秤で見るってことです。
そうして捉えたモチーフの存在感が再現出来るように、沢山の時間をデッサンに費やして下さい。


すいどーばた美術学院 彫刻科昼間部講師 稲垣慎
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みなさまお疲れ様でした。

私は総合6位の作品が、最もヘルメスの印象に近づきつつ、しかし無理に形にしてしまう事もなく慎重にモチーフに迫っていると判断し1位に、そして総合7位の作品を、モチーフとその周りの空間が美しく表現されていて、柔らかい体の動きや形態に良く反応しているとして2位に選びました。

本番まであと4ヶ月程です。今回の結果、そして描いた作品は是非しっかり受け止めて各自課題を分析していただき、これからの制作に繋げてください。自分の作品を良くみて、多くを学ぶ事が大切だと思います。


すいどーばた美術学院 彫刻科昼間部講師 今里亮介
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みなさんお疲れ様です。

全体の印象としては、ヘルメスの印象というよりも人体としての動きや立体感、彫刻が置かれている自然な状況が成立していないデッサンが多いと感じました。ヘルメスに似せるという意識はもちろん大事ですが、自分の描いている絵から人体彫刻としてのカタチが見えているか、モチーフの動きを感じ取れるか、違和感なく光を感じられるか等、自分のデッサンを作品として見せるような意識があると良いと思います。


すいどーばた美術学院 彫刻科昼間部講師 小原壮太
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公開コンクールお疲れ様です。
ヘルメスでしたね。本当に個人的な話ですが、ヘルメスは石膏像の中で1番顔がかっこいいのではないかと思います。顔がかっこいい像はやはり顔をかっこよく描きたいんです。とてもシンプルな話をすると、その像を1番最初に見た時感じた事と、6時間で書き上げたデッサンを冷静に見て1番まっすぐ伝わる事が、同じだとそのデッサンはその像に似ているという事になります。シンプルに考えていきましょう!!!


すいどーばた美術学院 彫刻科昼間部講師 上野雄大
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公開コンクールお疲れ様でした。
部屋に入ってみて、多いな...というのが最初の印象でした。170人ですからね。ここ十数年の中で最多です。応募者数を聞いて覚悟はしていましたが、実際に対峙すると息が詰まるような空気感で、途中で息を整えながら採点をしていました。

内容についてですが、170人いる中でB°が21点に留まったのが気になりました。例年25点以内に収まっている印象なので、参加人数が多いので必然とB°数も増えてくるかと思ったのですが、あまり変わらない所を見ると中間層にまだ燻っている人がいるように感じます。
ほんの些細なことが良い方にも悪い方にも変わってしまうので、そこを見極める力が今後付くと良いですね。

B〜B'前半の人達は最初に自分の座席に座ってヘルメスを見て感じた印象より、6時間の中で描かなければいけないという考えに走って自分の描きやすい画面に持って行ってしまった人が多いように感じました。

B'後半〜の人達はモチーフ観察が乏しい人や経験不足な人が多い印象です。観察力を養うこともそうですが、人体への知識を蓄える事も有効かと思います。見て分からなくても頭で再構成して捉えることも1つの突破口だと思うので試してみて下さい。


すいどーばた美術学院 彫刻科夜間部講師 赤尾智
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コンクールお疲れ様でした。

採点をして全体のレベルはまだまだ実力不足だと思いました。

今年は参加人数の多い年でしたが、ヘルメスの印象に迫れているものがほとんど無く、皆さんのモチーフとの向き合い方に対して疑問を感じました。

私が尊敬しているバレリーナは「舞台本番前の緊張やプレッシャーとどう向き合っていますか?」というインタビューに対してこう答えています。

「自分の感情にフォーカスするといつも通りの踊りやベストなパフォーマンスが出来なくなる。とにかく役に集中してそこに入り込んでいけば自然と良い踊りが出来る。」

これは実技においてもとても大事な考え方だと思います。

試験本番やコンクールの場で、

"結果を出したい" "上手く描きたい" "失敗したらどうしよう"など色々な感情が沸き出てくると思います。ですがそこに支配されたままでは正確にモチーフを捉えることは出来ません。

"自分の感情は捨てて目の前のモチーフに集中する"とてもシンプルな事ですがこれが出来ていない人が多い気がします。

普段の実技からこのことを意識していけば、少しずつ自分の感情をコントロール出来るようになるはずです。
どんな状況でも動じず、やるべき事に集中する力を養って下さい。


すいどーばた美術学院 彫刻科夜間部講師 吉田空
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みなさまお疲れさまでした。

私はコンクールの採点で、講師の立場として多くの作品を見ていて、デッサンを通してその向こう側にいる人間を見ようとしているなと感じます。
この人に立体を作らせたらどうか、またヘルメスの何を知った上でどこを見ているのか、どう見ているのか

その場の環境で、その視点からみた石膏像のヘルメスがいかに正しくうつしとれているかは、その人の能力を見る指標にはなるけど、それだけだと考え方としては不安になります。

見えないところや、空気丸ごとかけているデッサンは立体を作ったときも安心できそうです。