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2007年09月11日

●洪水と夢

関東を直撃した台風は多くの被害をもたらした。強烈な横殴りの風と雨。テレビも災害への注意を頻繁に促し、速報は河川の氾濫や交通の遮断などの情報に次々と切り替わっていく。
 しかしこうした雨台風の恐怖や不安とは別に、不謹慎ではあるが、台風の脅威は、なぜか自分の奥底に潜む好奇心を沸き起こさせる。今でもこうした機会をチャンスとばかり危険を冒して暴雨風の中へ飛び出し、川が濁流へと変容していく様や荒れ狂う木々の限界までの反りに胸躍らせ、そして自らを風の強さに曝して喜んでみたりもする。
 また平野育ちの私の記憶の中には、豪雨によって川が氾濫し、畑も水田も根こそぎ流された後に残った水溜まりに、沢山の魚が取り残されている光景、そして普段は無いところに新しい線を引くようにできた流れに長靴を入れてはしゃぐ自分の姿さえ浮かんでくる。
大人とは無縁の世界がそこにある。
 
台風一過。
夏の空を伴って風景は荒れ狂った痕跡だけを残して静まりかえる。五感をかき乱すようなエネルギーがいったい何処へ消えてしまったのかとさえ思う。
全くと言っていい程に変容してしまった風景に夕闇が迫り、まるで赤道直下のサバンナとも、あるいは恐竜の世紀にも戻ったような異質な光景に夢を見る。
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