●作家の朝
年が明け、賀状代わりの展覧会の案内状が沢山届く。中には年をまたいでの発表もある。
ここ数年はバブリーな世界経済にあって日本の画廊の世界進出も多く、活況を呈している。経済大国として台頭してきた中国の影響も大きい。私の過去の海外生活でも、こうした経済とアートの密接な関係を物語る現場を多く体験した。「アート市場」と言われるように経済原理はアートとてもちろん無縁ではない。ただ、アートそのものは既成価値観への挑戦であり、純粋に自己探求への手法であり、また、本来的には現実社会への革命的力を持った人間の表現である。ならば、作家は経済論理に翻弄され飲み込まれ消えて行く危機感に敏感でなければならない。
「成功が人を幸せにするのではなく、幸せが人を成功に導く。」
これはある脳科学者の言葉であるが、目の前の時流に乗ろうとするあまり、自己の本質さえ見失う。どの時代にもあることとて、その中に浸かっている当人が気づくことは至難の技である。
作家は常に新しい朝をむかえる。それが自分をも社会をも見極める一日の始まりの儀式なのだ。
彫刻科スタッフ、吉田朗の個展が年をまたぎ開催されている。絶好調とも言えるニッポン現代アート市場の広がり、一方で陰りを見せた世界経済。そうした潮流の中「仏間でクリスマス」と題し、痛烈な社会批判をユーモアで包みながら、自身とアートと市場とを冷静に見つめ熱き闘いを継続している。彼はどんな年の朝を迎えたのであろうか。次にはインタビューを交えて紹介したい。
話は違うがその彼が結婚をした。
この幸せが彼を成功へと導くのか?自問自答も込めて。
いずれにしろ、めでたい朝である。
おめでとう!