« インタビュー/社会人受験生に聞く | メイン | 多和圭三氏(多摩美術大学教授)に聞く »

2009年09月27日

●『これから彫刻を学んでみたい!と言う方に読んで欲しい、どばた先輩方との対談』

「インタビュー企画第9弾」
%EF%BC%98%EF%BC%90.jpg

87.jpg

●私が、彫刻を学びたい”と思った時、まずは、大学を目指そうと決めました。ですが、芸大や美大受験は倍率も高く難しそうなイメージがあり、彫刻の基礎を学ぶには、まず予備校に行こうと考えました。その時に頭に浮かんだ事は、彫刻の予備校”ってどんな所なのか?予備校って怖そう、というイメージでした。
現在では、彫刻科を希望してやってくる女性の割合も増えて来ています。もし、私と同じくそういった疑問や不安を抱いている人たちがいるとすれば?先輩たちは、どの様な思いでどばたにやってきたのか?これから彫刻を目指す方たちの背中が少しでも押せたらと思い、すいどーばた美術学院彫刻科で講師をやっている氷室幸子(熊本県出身29歳)が現役浪人生や、すいどーばた出身の先輩方、特に今回は私同様地方出身の3人に、現在に至るまでの流れをサクッと伺ってみました!

-----------------------------------------------------------------------------------------
●まず1人目はすいどーばた彫刻科に在学中の山田 果林さんに協力をお願いしました。 (写真右)    

63.jpg

------------------------------------             
◎山田 果林さん(21歳)◎     
福岡県出身。
------------------------------------
氷)果林ちゃんは福岡から上京して来て今年で2年目だよね。良かったら、これまでのどのような経緯があって、現在に至るのか、色々な話を交えながら、教えてもらえたらと思います。どうぞ宜しくお願いします!
早速なんだけど、私は、高校が美術科で2年生のときに彫刻をやってみたいと思ったんだけど、果林ちゃんは、いつ頃から彫刻をやって見ようと思つたの?手足も長くてスラッとしていて。何となく日本画とかが似合いそうな雰囲気なんだけど。何で、彫刻”って言うごついイメージのある科を選んだのかなぁと思って。

果)小さい頃から粘土で何かを作ったり、絵を描いたりする事が凄く好きでした。油絵とか日本画も興味はあったんですが、粘土を触っているのが好きだったので彫刻の方に進みたいと思いました。あと、ルーブル美術館に行ったときニケ”の彫刻を見て、これを人が作れるんだ!!と感動したのも、理由の一つにあります。

nike.jpg
ルーブル美術館所蔵 ニケ

氷)そうだったんだ!あの完成度には、感動するよね。そういえば果林ちゃんは、フランスにしばらく住んでたんだよね!実際に現地の美術館に足を運んで、実物の古代彫刻を見て影響されたなんて中々経験出来ないし、貴重な原点だね。それからいきなり、石を彫ってみようとは、思わなかったかもしれないけど、彫刻を学べる道に行こうと思ったんだよね?そのために高校では何か具体的に実践したりしてた?

果)美術部には所属していました。でも、あまり本格的に美術に関われはしなかったです。自分でも、彫刻というジャンルにどういった勉強方法があるのか、良く分かってはいませんでした。ただ、やはり美術の一つなので、デッサンも必要かなぁとは思っていて。予備校などに通いデッサンを描きに行きたかったんですが、高校が寮だったために、なかなかチャンスがありませんでした。それで、高校3年生の時から地元の画塾みたいな所に日曜日を利用して通う事にしたんです。

201.jpg
どばた夏期講習での塑像風景

氷)そっかぁ。予備校に通おうと決めた頃には、彫刻を詳しく学ぶため、芸大や美大を受験しようって考えてたの?

果)そうですね。大学は目指そうと思っていました。

氷)その通っていた画塾には、果林ちゃんと同じく芸大や美大を目指している人たちは居たの?

果)いえ、私一人でした。絵画教室の様な所で、受験生は一人だったので、比べる基準みたいなものがなく、ひたすら先が見えない中、頑張っていました。そしてそのまま、1浪したんですが、地元の予備校でも、東京で習っている人たちとのレベルの差は埋められるかなと、その時は思っていました。

氷)一人で受験を目指しながらテンションを保って行くのは、結構きつかったと思うんだけど、やめたいとか思わなかったの?

果)いえ、やめたいと思う事はありませんでした。ただ、これでいいのかな?という、周りが見えない不安はありました。

21.jpg
デッサン風景

氷)確かに、それはそうだよね。でも、そんな環境でも続けられたのは、きっと何か熱いものを秘めてたんだろうね。華奢だけど根性があるよね。

                 ☆☆☆

氷)どばた行こうと決めた理由とかきっかけってある?

果)1番には、やっぱり受験当日に感じた周りの人たちとの実力の差です。それで、東京の予備校を意識し始めました。地元で習っていた先生もどばた出身だった事もあり、美術手帖にも載っていて名前は知っていたので、それで1浪目の夏期講習で初めてどばたに行きました。地方とは、とにかく行きたい大学の情報量が違うと実感し2浪目からどばたに通う事を決めました。それと、彫刻を専門的に教えてくれる先生が地元には居なかった事もありますね。

nakasesann154.jpg
指導風景

氷)うんうん。やっぱり、地方では彫刻の基礎を教えてくれる先生と出会える確率が低いよね。ちなみに私はね、彫刻を学べる大学に行きたい!っていう気持ちだけは強かったんだけど、今考えると、どんな力が必要なのか?なんて事は、ほんの少ししか知らなかったかも。ただ、受験の倍率が高いとは知ってたし、受験には何が必要かを知るには、予備校に通わなきゃって思って。現役生の冬休みから受験の間まで、高校の先輩が教えている東京の予備校に、お世話になったんだ。でもなにせ初めての上京だし、友達と一緒に知り合いの人の家に泊めてもらってたんだけど、めちゃめちゃ不安でよく泣いて友達をあきれさせてたのを思い出すよ笑。そんなこんなで、私もその予備校で1浪してね。私も果林ちゃんと同じく、生徒数が少なくても、その分頑張れば大丈夫だろうって思ってたんだ。でもやっぱり大手の予備校ってどんな所だろうって気になってさ。それで知っている大手の予備校を回ってみて、一番雰囲気が落ち着いていて、ここならやって行けるかもと思ったのがどばたで、一大決心して、2浪目からどばたに通う事を決めたんだ。だけど、友達が出来るかも不安で、まして人見知りだから、一番人数が多い予備校に通うのはめっちゃ怖かったんだけど、果林ちゃんはどばたに行こうと決める時に、不安はなかった?

果)怖かったです!どばたは美術手帖にも大きく広告が載っていて有名だし、漠然と敷居が高い所だと感じていました。でも習っていた先生が、背中を押してくれたので踏み出せました。冬期講習で来た時には、環境がガラッと変わって、慣れるまでは時間がかっかたんですが、来てみたらみんな優しかったので良かったです(笑)

氷)そっか、それは良かった!私も最初は、友達できないかも“っていう覚悟で、どばたに来たんだけど笑、すぐに友達できた記憶があるなぁ。生徒数が多いだけあって、色々なパターンのデッサンや塑像が見れるのもいいよね。自分のレベルが今、どこら辺にあるのかも分かりやすいし。

果)そうですね。それは大きいです。

120.jpg
山田さんの人体デッサン

                 ☆☆☆

氷)上京する事に親御さんは反対したりしなかったの?

果)はい。どうしても東京で勉強がしたかったので相談したら、親は好きな事をして欲しいと応援してくれました。

氷)やっぱり気持ち的にも金銭面的にも応援してもらえると、安心して頑張れるし、すごく有り難いし一番の励みになるよね。素敵なご両親だね。

氷)ちなみに、一人暮らしにはもう慣れた?最初は東京に来る事自体が不安だよね。色々な期待とかもあるのはあるけどね。

果)そうですね、それまで東京は観光で1,、2回しか来た事が無かったし、高校は関西だったので、東京の人は冷たいと聞いていて。全然そんな事はなかったですけどね笑。どばたに来た年は、どばたで紹介してもらった学生会館の寮に入っていたので、一人部屋だしご飯も付いていて安心でした。また、何より周りに同じ所を目指している人が近くに居る事は、とても良い環境だと思います。

氷)東京に慣れるのに寮は、安心だよね。ご飯付きなんて、夢の様(笑)どばたでの生活の方は、どう?2浪目と3浪目での取り組みで、何か意識の違いとかはある?

果)そうですね、毎日がギュッと詰まっている充実感はあります。3浪目では、色んな人と会話をする機会を作り自分のペースを保つ様に努力しています。予備校以外では、雑貨屋さんが大好きなので、雑貨屋さんを巡ったり美術館や動物園に行ったりもしてます。

氷)うんうん。自分のペースを探す事は、私も大学に受かった年に良く考えていたよ。自分のペースっていっても色々面での努力や自信が必要だからね。美術館やギャラリーを巡るのも勉強になるし、気分転換にもなるよね。

                 ☆☆☆

氷)予備校では、芸大の1次試験に向けて、石膏をデッサンしたり、2次試験に向けて、水粘土で動物や首像を作ったり、模刻、構成などを主に勉強するけど、

28.jpg
塑像風景

氷)その中で好きな課題はある?私は、石膏だとブルータスや円盤が好きだったかな。粘土だと、首像とか、動物系が好きだったよ。

果)えっ?見るのだったら、ラオコーンやニケ、ジョルジョの全身像が好きです。

氷)おおっ。見るのが好き”って答えが返ってくるとは思わなかった(笑)

果)描くのであれば。奴隷の顔とか(笑)塑像では、私も首像が好きです。

51.jpg
石膏像奴隷

氷)奴隷の顔かぁ。珍しいね。他にも奴隷の顔隠れファンって居るのかなぁ?(笑)

                 ☆☆☆

氷)果林ちゃんは、ここに至るまで誰か影響を受けた人や出来事ってある?

果)よく、両親に美術館に連れて行ってもらってました。だいぶ前の記憶なんですが、幼稚園の頃に見た、ピカソの可愛い素描やデザインのパターンが記憶に残っています。色彩豊かなシャガールの絵画も好きです。

氷)うんうん。私もクリムトやクレーなど、色に印象がある絵画が好きだよ。彫刻科って色があまり使えないイメージがあるけど全然そんな事ないし、結構色が好きな人たちも多いよ。

                 ☆☆☆

氷)何か、悩みや質問などあるかな?
前に、デッサンが描けない時はどうしてましたか?っていう質問もあったよね。それには、人それぞれ意見や解決方法あるのだけど、結局はくじけずに、やるしかない!精神的にもタフになれ!と言う結論に至ったんだよね。そんな壁が生まれて来るのは、前進している証拠だもん。凄く力がついてきてるって事だよ。預かり作品も何点か出してるもんね。

53.jpg
山田さんの友人デッサン

果)今は、そういった壁にぶつかる事はあっても、受験以外で悩みたいとは思わないのですが、しいて聞くなら、地方に居る時は無謀な夢がいっぱいあったんですが、今は、大学に入ったら?とか、大学を出たら?とか自分が具体的にどうしたいのかがイメージ出来ずに、少し不安に思っています。だから、色んな事を見たいと心がけています。

氷)それは重要な悩みだよね。人によっては、この世界にいると常に付いて回る悩みだったりするかもしれない。私も予備校生だった時には、そういうイメージが出来ずに、同じ事を思ってたかなぁ。比較的、それをイメージできている人の方が少ないかもね。予備校では、受験用にデッサンや塑像課題しか主にやらないから、中々、今、具体的な事が想像できなくても、大学に入ったら、ガラッと環境も変わって、やった事の無い素材や課題に触れる事が出来るし、色々な人とも出会えるから、十分夢を持っていてもいいと思うよ!表現する事って、これからたくさん勉強できるから!現段階で勉強している事は、もちろん後々すごく感覚敵な所や基礎として生きてくるけど、まだまだ全部であるかの様だけど、ほんの一部だったりするからね。海外にだって行ける選択肢もあるし。私は何より、大学で、他では出会えない様な、とても向上心の高い仲間に出会えた事が、一番良かったなぁと感じているよ。

果)そうですね!漠然とですが海外にも住みたいと思っています!

氷)うんうん、夢はどんどん広げていっていいと思うよ!

SBCA0573.jpg
山田さんの外国人モデル首像

氷)他にはないかな?

果)プライベートな質問でも良いですか?(笑)

氷)う、うん。あまり参考にはならないと思うけど。恋愛についてとかだったり?(笑)

果)そうです(笑)彼氏さんとかは居ますか?結婚したいとかって思いますか?

氷)彼氏は、今は居ないけど(笑)女友達とも、その話題にはなったりするよ。結婚したら彫刻を続けていくのは厳しいかもしれないという意見もあるし。確かにとも思う。私の場合は、いつか結婚は出来たらいいなとは思うよ。甘いかもしれないけど、もちろん彫刻や表現する事は続けて行きたいと思う。両方とも諦めない道を探しています笑。実際結婚してみないと分からない部分もたくさんあるのだろうけど、女の人だったら子供を生む生まないもあるしね。金銭面での現実もあり、とてつもなく厳しい事かもしれないし。でもどんな環境にあれ、その時の自分を感じながら、負けずに表現を続けていくことが何かにつながっていくんじゃないかと今は思うから、夢を持って道を切り開いていけたらと。いつかみんなに、やれば出来るよ”と言える事を目指して頑張ります!

果)なるほど!ありがとうございました(笑)

氷)こちらこそ、多忙な中、質問に協力してもらって本当にありがとう。これからも頑張って下さいね!
 

☆☆☆後記☆☆☆ 
果林ちゃんは制作熱心で、とても丁寧に毎日を過ごしている学生さんです。華奢な体からは想像出来ないほど根性があるのだなぁといつも感じさせてくれる、強さを秘めた人だと思います。これからもっとたくさんの人たちと出会い、世界を広げて行ってもらえる事を願っています。また、いつの日か作品の話や、アートについての話が一緒に出来る事を楽しみにしています!


----------------------------------------------------------------------------------------

●2人目は私の同級生の根上 恭美子さんに協力をお願いしました。(写真右)

60.jpg

----------------------------------------------------------------------------------------
◎根上 恭美子さん(26歳)◎     
群馬県出身。
すいどーばたで1浪。
東京芸術大学大学院美術研究科彫刻専攻を修了した後、昨年からフリーで制作活動をスタート。
----------------------------------------------------------------------------------------
氷)根上さんとは、もう結構長い付き合いになるよね。まだまだ分からない所がいっぱいあって面白くて、料理が上手で、思いやりがあって頑張りやで、笑いのツ ボが変で。そんな根上さんの生きてきた流れの一部かいつまんで聞けたらと!
早速、私は、全然具体的なイメージはなかったんだけど、高校2年生のときに初めて、彫刻をやってみたいし、彫刻の道に進もう!と思ったんだけど、根上さんはいつ頃から彫刻をやって見ようと思つたの?

300.jpg

根)普通科で、美術の時間は少なかったんだけど、美術が好きで、中学の頃から美大に行きたいと思っていて。彫刻刀で、木を彫るのとか楽しそうとかそれくらいの理由で彫刻科に。で、高2の時から地元の予備校に通い始めて高3年の夏期講習で初めてどばたに行ったんだよね。一浪が決まって、始めは地元の予備校に通う予定だったんだけど、どばたの先生に特待生あげるからおいでよ!って言われて。後半からどばたに通い始めたんだよ。

氷)なるほどね!特待生”っていうのは、魅力的だよね。で、通い始めた半年間は受験までずっと、どばたに新幹線で通ったんだよね?凄いよね!!前代未聞じゃない?とっても寛大な両親だよね。大変じゃなかった?睡眠時間とか削られそうだし。やめたいとか思わなかったの?

根)親に、学費を払ってもらって、新幹線代も出してもらって、送り迎えまでしてもらってたから、その分、しっかりみっちりやるしかないと!思ったら、遅 刻もできなかったし、大変だと感じる暇はなかったよ。本当に両親には感謝で、今制作を続けられているのもやっぱり理解ある親のおかげで。

氷)それはそうだね!私の両親も反対とかせずに、応援していてくれたから。本当に親の協力なくして今は無いなって思うと感謝だよね。でも、遠くから通いながらカリキュラムをこなしていくには、やっぱりガッツがあったんだろうね。もちろんそのパワーは、今でもひし ひしと感じるけどね。

101.jpg

                 ☆☆☆

氷)どばた行こうと決めた理由とかきっかけってある?

根)地元の予備校は、講師が1人だったからその人の好みのデッサンじゃないと否定されてしまって、もうどういう方向に行ったら良いのかって悩んでいるときに、夏期講習でどばたに来て、初めてまっとうに評価してもらっている気がして。先生が多いから色んな見方をしてくれて、それが良くてどばたに行こ
う!って決意したよ。

氷)そっか!先生の人数が多いと、指導に幅があって偏らないから、安心して自分なりの絵が描ける気がするよね。私も1浪目は、人数の少ない違う予備校にいたんだ。中々うまく描けない自分が悔しくて泣いてばっかりいたかも。もちろん前に居た予備校では、みっちり基礎を教えてもらえたし、今でもとても感謝はしているんだけど。どばたに公開コンクールの時に来てみて、やっぱり生徒数が多い方がいいのかもって思って。 色んな人のデッサンや塑像が見れるから。あと、単純に合格率の高い予備校に行けば、大学に受かる”って考えて2浪目にどばたに通う事を決めたんだ。でも、小心者だから友達が出来るか不安でさ。どばたには、怖い浪人生がいるイメージが強かったから。根上さんはどばたに行こうって決める時怖くなかった?

09soft011.jpg
彫刻科ソフトボール大会での集合写真

根)超怖かった!最初は誰ともしゃべれなくて“友達が欲しいけど、内気で誰ともしゃべれないんですけど“って先生に相談したら、先生が配慮してくれて、 皆が話しかけてくれるようになって。1が月後には完全に溶け込めてた気がする。

氷)そうだったんだ!どばたの先生、優しいね(笑)厳しい指導も時にはあったけど、今思うとその意味が分かると言うかね。予備校生も若干、見た目が怖そうな人とかいるけど、みんな意外と中身は優しいし、繊細だったりするよね。

根)そうそう、意外とそうなんだよね!はじめは誰だって怖い。自分から、みんなの輪に入って行くのはキツくて恥ずかしかったけど、先生たちのフォローがあったから今があると思ってるよ。半年間だったけど、予備校で友達が出来たから、その友達に会いに、大学の学祭やイベントに遊びに行ったり、展示を見に行ったり、他の大学とつながりが持てたのは本当によかったと。

氷)今でもその友達とはつながってるしね。予備校での仲間は、他の大学との交流のきっかけにもなるよね。それは、ひとつのメリットかな。

                 ☆☆☆

氷)何か予備校時代には、心がけてた事とか、これだけはやっとこうみたいなポリシーはあった?

根)大学には特にこだわりはなくて、受かったらどこかには必ず行こうって決めてたのはあるかな。後は、どばたに来たら、どこかには絶対受かると思ってた。デッサンは、感覚的に描くと失敗したりする時が多々あったから、自分なりの失敗しない方法論をあみだしてみたり。めっちゃ測りまくるとか。描く前にとにかく測る。まあ、それは人それぞれなので自分で研究して見つけてみてください。

dess.jpg
根上さんの予備校時代のデッサン

氷)私も結構出だしでは測ってたかな。その後には、自分の目で見ることが大事だけどね。最終的には、精神的にも実技的にも受験現場でも、色々な意味で安定感は大事だよね。私も、受験現場で、いかに冷静で居られるか考えてたよ。
デッサンが 描けない時とかは、どうしてた?

根)描けない時は、あまり悩まずに、結構ポジティブに考えていたかな。ちょうど描けない時、インフルエンザにかかってたので描けないのは私のせいじゃな い、とか。

氷)そのポジティブさが、精神的強さに繋がるのかもね。

                 ☆☆☆

氷)石膏とか塑像では、好きな課題はあった?

根)アムール。トルソは顔が小さくて、多少似なくてもバレないから。と思ってたけど普通にバレバレ。やっぱりいい加減はしてはいけないのです。粘土は模刻が好きだったかな。逆にウサギとか動いているモチーフの方が苦手だったかも

20.jpg
石膏像アムール

氷)アムールとかマイナーかもね(笑)私とは逆だなぁ。模刻とか、苦手だったもん。でも塑像は、回数を重ねれば目に見えて上達して行くのが分かるし、体を使うから、思いをストレートにぶつけられると言うか、健康的で楽しいよね。

                 ☆☆☆

氷)バイトとかはしたりしてた?ちなみに、私は予備校時代には、クリーニング屋さんで、大学時代は、ずっとあんみつ屋さんでバイトしてたんだけど。

一)予備校の時は群馬から通ってたし、バイトはできなかったかも。大学時代は仕送りもあったけど、アニメーションの特殊効果をパソコンでやる仕事とか や子供のシッターのバイトをやってたよ。あまり人と触れ合う様な仕事はしてなかったけど。なぜか行くと感謝される様なバイトで、いつも何か貰って帰る。
本当に人に恵まれてて、行くのが楽しくて全然バイトって感じではなかったかも。あと、あまり生活費がかからなかった、倹約が趣味で。

氷)いいバイトにめぐまれてたんだね!倹約と言えば!良く、大学構内に植えてあった、木になってたさくらんぼを取りに行ったりしたよね。

根)そうそう!あとは、カリンの実取ってきて蜂蜜漬けしてたし、琵琶、フキ、銀杏、筍とかはえてるものはなんでも食べます。

氷)網羅してるねー、さすが!琵琶の木とか、ゴミ捨て場の上に生えてたけどね(笑)あとは、パソコンが使えるのは、かなり役に立つよね!作品ファイルを 作ったり。

根)そうそう!!パソコンは絶対に勉強できるならやっておいた方がいいよ!

氷)根上さんの作品ファイルは、かなり面白いもんね。しっかりした作品ファイルが、自分で1冊作れれば、自分の作品を人に見てもらいたい時に役立つよね。

                 ☆☆☆

氷)大学では、木や石を彫ったり、塑像でテラコッタやポリが扱えたり、金属や鋳造などが基本的に学べるけど、その中で根上んは、主に木や粘土、ポリを使って制作してたよね!何か彫刻する素材に、こだわりはある?

14.jpg
『モーニング息子』

根)こだわりは特になくて、作りたい作品に合ったもので。何でも使えれば使うかな?

氷)私も結構、素材は色々気になるタイプかも。これが使えればなーなんて良く考えてるよ。

                 ☆☆☆

氷)今は幾つかのギャラリーで展示を開催したりしてるけど、そこに至るまでは、どんな流れがあったの?

根)大学3年生までは全く、作家としてやって行くという具体的なイメージがなかったんだけど、3年生の夏に開いたクラス展示の時に作品が人目に触れて、初めて他人からの反応を目の当たりにして楽しくなってしまって、作家としてやって行きたいという思いが湧いてきたよ。あとは、卒業や修了制作展で、作品を見てくれたたギャラリーの方から連絡があったり、大学1年生の時のグループ展の際に、コレクターの人に声をかけてもらったり。それが、ギャラリーでの展示につながってるよ。学内展示でも何でも人に見てもらえるチャンスがあれば、積極的に動いていった方がいいかも。

氷)そっかぁ。最近では、グループ展や卒業・修了制作展などで、作品を気にいってくれたギャラリーから声をかけてもらうというケースも増えてきてるよね。

根)うんうん。あとは、個展やグループ展などの展示目標を決めてモチベーションあげていく事が一番大事かもね。自分の作品ファイルをしっかり作ったり、HPもあれば色んな人に作品を観てもらえて相当広がる。ギャラリーに作品ファイルを持ちこんだり、コンペに出すならファイルはいつも数冊持っていたほうがいいかな。

氷)確かに、モチベーションは大事だ!何にせよくじけず、地道でも続けて行く事だね。そこが一番難しくもあるけどね。

                 ☆☆☆

氷)今、どのような生活スタイルなの?

根)3人の共同アトリエで〈1人だと怠ける、人目があるのも刺激になって大切だなぁと。〉、制作しながら、それだけでは、金銭的に辛いから、バイトもしてて。

55.jpg
アトリエ風景

根)あとは、なるべく制作に時間を割けるように必要以上は寝ないとか、ご飯は何があってもしっかり食べる、体壊したら本末転倒だし…

氷)確かに!健康管理は制作をして行く上では大事だよね。根上んは、大学を卒業してからも規則正しく制作できる様に常に考えているし、自分で自分の時間を使う事って難しいなと思うんだけど、本当に尊敬してるよ。そんな規則正しいイメージとは、一風変わって、作品はめっちゃ面白いというか、きわどい作品だったりするんだけど、どういう発想からなの?発想元と言うか。一番気になるかも!
根上さんにとって彫刻って?影響を受けた人や出来事とかある?

filename-%3DISO-2022-JP%27%27%251B%25.jpg
『スーパーカー』

根)色々考えてみたんだけどね。やっぱり、今まで出会ってきた人や友達に、いい意味で影響されてきたのかなぁって。元々スケバン刑事と仮面ノリダーをこ よなく愛するウ○コ好きな小学生だったんだけど、それが中学の時に凄く絵が上手くて剛毛でいつもゲリぎみの友人と出会って。毎日、日が暮れるまでお題を 決めて絵を描きまくったり、3年間腹がよじれるほど笑って過ごして。予備校でも強烈キャラがいてロッカーの中に勝手に祭壇作ってウ○コはベルクでしてて、毎日和田アキ子を聞かされて。小、中、高と出会って来た人たちが、本当におかしくて、地元は変態の宝庫だった。そういう出会いや環境が、作品のうま れる素になってるのかもしれない。だから、人との出会いって大切だなーって心底感じるよ。

氷)なるほどー!きっと根上さんの人柄が、出会うべく、その人たちを呼び寄せたんだろうね!それはもう染み付いてる揺るぎないものが、作品となっている感じだよね!そういう出会ってきた環境から作られた今”なんだね。

根〉そうだね!あとは、表現するジャンルが彫刻だっただけという事で。

氷)何気に初めて聞けた内容だったかな。この企画をきっかけに、質問出来て良かった!まだまだ、未知な部分は沢山あるのだけど、それはそれで想像するの も楽しいもので、また機会があれば、ぜひ紐解いて行けたらと。

                 ☆☆☆

氷)最後に、予備校生やこれからアートに関わって行きたい方に、何かメッセージがあれば是非。

根)作品って自分から生まれてくるものだから、常に自分との向き合うことかな。でもネタはその辺に落ちてたりするものだから自分の殻に閉じこもらずフットワーク軽く色々やってみること、あれ、矛盾かな?自分の中に常に相反する思いが同時に存在しているものだけど、それを認めること、生きることは常に葛藤、でしょうか?

氷)深いなぁ。なるほど!自分と向き合う機会を与え続けてくれる制作活動って素晴らしいね。それには、常にアンテナは張っておかないとだね。
忙しい中、協力してもらってどうもありがとう!これからも作品、楽しみにしているね!

70.jpg
根上さんのHPはこちら

☆☆☆後記☆☆☆ 
根上さんは.、制作熱心で物事を色々な角度から観察し、吸収されている作家だと思います。日常がアートになり、その根上スタイルは、多くの人を魅了しています。次から次へと繰り出される根上ワールドに、日々感嘆しています。もっともっとたくさんの人たちに根上さんの面白さを知って欲しいと思います!また、機会があればもっと深く、作品の生まれる謎に迫れたらと思います!


----------------------------------------------------------------------------------------
●3人目は、すいどーばた彫刻科出身で作家の、一井 弘和さんにお話を伺うべく協力をお願いしました!(写真左)

67.jpg
                 
----------------------------------------------------------------------------------------
◎一井 弘和さん(29歳)◎     
兵庫県県出身。
すいどーばたで2浪。
東京芸術大学大学院美術研究科彫刻専攻を修了した後、芸大の助手経て、去年からフリーで制作活動をスタート。
------------------------------------------------------------------------------------------
氷)一井さんは、美術科がある明石高校のご出身ですよね。いつ頃から彫刻をやって見ようと思われたんですか?

一)そうだね。中学の時から工作の時かな。選択課題っていうのがあって、油絵と彫刻の2種類を選択してさ。その時くらいに、彫刻の方に行ってみよう!と決めたんだ。でもその当時は漠然とだけど彫刻家”を目指すという訳ではなく、美術作家になりたいと思ってたんだよね。

50.jpg
Tokyo Contemporary Art Fair 2008 展示風景

氷)私も美術科がある高校出身なのですが、彫刻家’’と言う明確なビジョンは、中々想像し辛かったですね。ただ粘土に触るのが楽しかったので、私も彫刻をやってみたいと思いました。360度から物が存在させられる感覚に感動した覚えや、凄く不器用なんですが、体を動かしながら作品が作れるのが気持ちが良かったのを覚えています!才能とかではなく、そう言った感覚が彫刻を続けて行く軸になっている気がします!
  
氷)私は、高校2年生の時に彫刻をやりたいなぁ、それなら芸大を受験してみよう!と決めたのですが、それにはやはり予備校に通った方が良いと思ったんです。彫刻なら、すいどーばたが有名でしたが、地方出身で、東京に行くにも勇気が居るし、一番人数が多い予備校に通うのも、一人で未知なる世界に飛び込んで行く気がしてとても怖かったんですが、一井さんは、すいどーばたに行こうと決める時に、不安などはありましたか?

一)俺の場合は、全然そういった不安は無かった。むしろ、彫刻を専門的に教えてくれる所が地元にはなかったから、地元に残る事の方が不安だったかも。どばたでは、色々な人に出会え、色々な事に触れられとても楽しかったよ!〈当時、中瀬主任に、現役で芸大の1次に受かれば、どばたの奨学生にしてやるから!と言われてさ、それを信じて、何の不安も無く上京し、どばたに行く事を決意したよ笑。2浪目の時に、60%もらったよ。今思えば、恵まれている事が理解できるし、やっぱり遅刻はまずかったなと反省してる(笑)〉

氷)そうだったんですね。色んな意味でさすがだと思います!
どばたは先生方も優しく、生徒も人数が多いだけあって、同じ目標を持って頑張る仲間にも出会えますもんね。私も勇気を出して踏み込んでみると、拍子抜けなくらい怖い所じゃなかったのを覚えてます笑。
奨学生制度もあるので助かりますよね。〈ちなみに私も2浪目の時、奨学生試験を受けて30%学費が安くなりました。〉
 予備校と言う場所は、自分と向き合える機会が多く、精神的にも、とても成長できる場所だと思います。中々、現代において、仲間を見つけたり自分を鍛える場所を見つけるのは、難しいんじゃないかなと私は思います!
 
                 ☆☆☆

氷)予備校では、何か心がけていた事などはありましたか?

315.jpg
一井さんの予備校時代のガッタメラータ模刻

一)1浪目は、一人暮らしの生活に慣れるのとカリキュラムを、しっかりやり込んでいくのに必死だったけど、2浪目は、予備校生活にも慣れてきて、やればそれなりに実力も付いて来た様に感じてたから、それだけじゃなく、+「とにかく落ち着いた奴が受かる!」と思って、例え遅刻しても、走ったりせず(笑)焦らない事”をモットーに、何を言われようがマイペースを保ち続けたかな。

氷)確かに!遅刻が良いか悪いかは置いといて、何が起こっても動じないタフな精神力は受験に於いて、とてもポイントになると思うので、そういった心がけも重要ですよね。

                 ☆☆☆

氷)現在の予備校生でもバイトをしながら通っている生徒もたくさん居ますが、一井さんは
何か、バイトされていましたか?ちなみに、私は予備校時代には、クリーニング屋さんで、大学時代は、ずっとあんみつ屋さんでバイトしていました。

一)予備校の時は、カリキュラムに集中したかったから、春休みや夏休みを利用して短期でバイトやってたよ。大学時代は、仕送りもあったけど、制作費も必要になってくるし、色々なバイトやったよ。ディズニーのペンキ塗りでしょ、写真の現像、コンビニ、引っ越し、ウェイター、内職とか。その他色々。

氷)そのバイト数は、凄いですね!それぐらいやっても大丈夫なんだ“っていうのは、何だか励みになる気がします!

                 ☆☆☆

氷)大学では、木彫、石彫、塑像、金属、ポリ、ブロンズなど様々に、学ぶ素材がありますが大学院からは主に、木彫で作品を作られていますが、なぜ木を主に使い制作されているのですか?

12.jpg
『虹色坐像』

13jpg.jpg
『月見坐像』

一)総合的な理由から言えば簡単なんだけど、やっぱり祖母の影響が大きいかな。小さい時から家にたくさん木彫りの小物があって。実際、彫ってみると自分の感覚とあってるなと思ったし、形にしろ彩色にしろダイレクトな作業工程に魅力を感じるからかな。

                 ☆☆☆
  
氷)大学を出られてからは、幾つかのギャラリーで展示を開催されたり作品をアートフェアに出品されたりしていますが、今はどの様な生活をしていらっしゃいますか?
  
一)埼玉の蓮田にあるアトリエを借りて、毎日制作してる。アトリエ代は月2万円で、色々な大学の学生や大学出身者8人がアトリエを使ってるよ。
  制作だけではやっぱり金銭面で厳しい部分もあるから、今は仕事やバイトと掛け持ちしながら作品を作ってるよ。

37.jpg
『森』共同アトリエHP

氷)ちなみに私も、この『森』共同アトリエを借りている一人です。芸大に在学しているメンバーと1スペースを半分ずつ借りているので、私のアトリエ代金は1万円です!

                 ☆☆☆

氷)最後に、一井さんにとって彫刻とはどの様なものですか?また影響を受けた人などはいらっしゃいますか?

一)作品を作るという事は、彫刻“という言葉に縛られず、人のためになる様な色々な職業の中の一つだとかんがえてるよ。影響を受けた人は数えきれない程居るけど、美術家にはこだわらず、様々な人から影響を受けてると思ってるかな。

氷)その考えには、私も賛成です!作品を作ることで、社会と関わって行く。とても魅力的で誇れる生き方だと思います。ついつい狭くなりがちなので、私も視野を広げてアンテナを張っておかなければなぁと、常日頃意識するように心がけています。 
  お忙しい中、サクッとですが、お話を聞かせて頂きどうもありがとうございました! 
これからも作品、楽しみにしています!制作、頑張って下さい!
  
☆☆☆後記☆☆☆ 
一井さんは、イメージとは違い気さくな方でした。とても芯があり勉強家で、様々な角度からアートや現状について思索されていて、出てくる言葉には共感があり、まだまだ話たりない位でした。今回は、私の質問に答えて頂く形をとらせてもっらたので、また機会があれば、現代のアートシーンや作品などについても幅広くお話が聞ける事を楽しみにしています!

----------------------------------------------------------------------------------------
以上、今回は3人のメンバーにお話を伺わせていただきました。
普段中々聞けない、彫刻を始めたきっかけや、知っている様で知らなかった経緯を新たに知る事ができ、彫刻に携わる人として、皆さんをさらに身近に感じる事ができました。若い人には敬遠されがちな、彫刻という世界は、とても魅力的で意外にも近くにあるのだと、これからも色々な人たちに浸透していって欲しいと思います。
----------------------------------------------------------------------------------------

●一井 弘和さん
--------------------------
〈GROUP EXHIBITION〉
2009.08.28-09.01  ART TAIPEI2009 (台湾)
2009.04.03-04.05  アートフェア東京 (有楽町国際フォーラム)
2007 「物語の彫刻」展(東京藝術大学大学美術館陳列館)
2006 「第1回アトリエの末裔あるいは未来」展(上野桜木 旧平櫛田中邸 東京)

〈SOLO EXHIBITION〉
2009.7.18-8.1  「空想旅行」(BUNKYO ART)
2008 東京コンテンポラリーアートフェア2008

〈AWARD〉
2008 国際瀧富士美術賞受賞
2004 サロン・ド・プランタン賞 受賞


●根上 恭美子さん
---------------------------
〈GROUP EXHIBITION〉
2005 「’82」 東京芸術大学・大学会館
2006 「No.9Jack」 東京芸術大学・第9講義室
    「体験展in東京」 東京芸術大学・大学会館
    「第2回アトリエの末裔あるいは未来」展 旧平櫛田中邸
2007  tsuranari-ART EXHIBITION- MARUIKE HOUSE
     藝大アーツイン丸の内  東京・丸ビル
    「第3回アトリエの末裔あるいは未来」展  旧平櫛田中邸
2008 「New-laid eggs」展  Gallery MoMo
    「100 degrees Fahrenheit vol.0」 CASHI
    「Gallery MoMo Ryogoku Opening Exhibition」 Gallery MoMo

〈SOLO EXHIBITION〉
2009 「スターだらけの」 Gallery MoMo