●生け花
浪人中に生け花をやっていました。
こう書くと、女性の氷室先生かなと思うでしょうが、私、生け花似合わない感じの吉田です。
どばたが終わると地下鉄に乗ってお茶の水へ。駅近くの花屋で草花をパパッと買い、マンション最上階で先生と待ち合わせてそこで生け花をやるのです。二浪目の春から10月くらいまで、月に1回から2回、水曜日だったかな、三浪の先輩と二浪の友達と3人でやっていました。
この生け花が、ちょっと変わっていて、何々流とかではなく、空間感覚の訓練に近かったんだよね。まずは部屋を見渡し、ねらいを決める。ねらいってのはどの空間をどんな感じに変えようか?ということ。たとえば、リビングから和室にいく入り口をふっと軽い感じに明るくしてみようとか。ねらいが決まったら、花と花器を選ぶ。軽い空間にするには花は茎の長めなこれとか、花器はコンパクトなヤツにして茎の長さを引き立ててみようとか。あと同時に花を置く場所もシュミレーションする。真ん中すぎると奥の和室への空間のつながりが切れすぎるからどっちかに寄せようかな?とか花はリビング側に40度くらい向けよう とか。
ねらい、花、花器、場所、が決まったら、花を切り花器に差すんだけど、これまた少しひねりがある。通常は狙った角度に差すのには剣山を使うと思うんだけど、ここでは剣山は全く使わない。花器の内側の形を考えて、茎を切った面を花器の内側の面にあわせて、その面と花器の口のエッジとで、差したい角度に差すんだよね。結構難しいだけど、頭がクリアなときはスッと出来ちゃう。
それで一通り完成したら、自分のねらいと、出来などをお互いに話し、感想なんかを言い合う。これを1セットとして、1回で5〜6セットぐらいやったかな。
調子の良いときは部屋の空間も、花器の中の形も手に取るようにつかめて、バシッと決まるのが自分でもわかる。完全に狙い通りってのはなかなか難しいんだけど、空間が自分の狙った方向に変わるのは結構な快感があった。
空間に対するミクロとマクロの観察、自らの意図を他人にプレゼンテーションする、それをお互いに検証する、そこからの反省を次回に活かす、そんないろいろな訓練を楽しみながら、決まった!ミスった!をリアルタイムで感じながら学べたような気がします。花器の厚みを考えながら内部の形を想像して、花の切り口を読んですぱっと切る。置いた花を眺めて空間がどう変容したか、自分の意図の通りの空間が出来たかを感じる。簡単なインスタレーションのクロッキー みたいな感じだったかも知れません。
明日から短い夏休み。自分の目を鍛える機会はアトリエの中だけではないですよ。
吉田 朗