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2012年03月21日

●お世話になりました。

阿部の最後の講師ブログは何故か?インタビュー形式で締めくくりたいと思います。

インタビュアー(以下イ):まずは4年間お疲れ様でした!!これからいくつかの質問をさせていただきますので、よろしくお願いします。

阿部(以下阿):こちらこそよろしくです。

イ:では早速ですが、講師阿部のどばたへの経緯をお話ください。

阿:僕は高校3年の夏期講習に初めてどばたに来ました。1994年でしたね。靴下がイヤで裸足でスニーカー時代でした。

イ:その時に講師吉田朗さんと出会ったのですよね。

阿:そうそう、本ーB前で粘土をねっているときに隣でねっていたのが朗でした。たしか、イッセイミヤケの赤っぽいスモッグを着ていましたね。彼は当時ラガーマンでしたので、大柄な躯体に赤いスモッグは異様というか、ブキミに感じたのを覚えています。今まで出会ったことのない妙な人種との接触にこれから始まる美術の摩訶不思議さ感じましたね。ワクワクでした!そしてその後はみんなと同じようにまあ色んなことがあり、3浪をしてどばたを卒業しました。大学1年の夏に夏期講習の教務のバイトをさせてもらったのを最後に、講師としてどばたに戻ってきたのはそれから10年後の2008年でした。

イ:その2008年の2月頃に前主任の中瀬さんに講師の誘いがあったのですよね。

阿:そうです。僕はそれまでどばたはもとより他の予備校でも一切講師をしたことがなかったので、中瀬さんから話を頂いたときは随分びっくり!?しましたね。だって他の講師の方はみなさん学生時代に経験済みですからね。中瀬さんは当時「受験はバクチではない」とおっしゃっていながら、(ぼくのチョイスはバクチですけど……)当人はハラハラしてしまいます。けれどこういった思い切ったところに得体の知れない何かを感じたのも事実です。ドキドキします。摩訶不思議ですね!

イ:それでは、指導で気を付けていた事を教えて下さい。

阿:僕は彫刻は時間がかかるというか時間をかける事が前提だと思っています。思考と作業の両方です。自分のテーマや生活と製作環境によってですが、それらを踏まえて短時間で出来る作品やサイズの事、素材感、重量感に対しての無機質だったりフワフワした無重力な作品が生まれると考えています。そこで学生にはまずじっくりとした観察を通して成り立ちを理解し実技を進められたらと思ってました。怖いのはインスタントな考えからの即物的なやりとりですね。またこれは理想ですがどばたを出た後でも通じる思考や技術が得られればと考えていました。

イ:それでは印象に残っているエピソードなどありましたらお願いします。

阿:具体的にこれだ!というのはパッとは浮かんでこないのです。多くの魅力的な学生や毎年行った登山など様々な事がありましたからね。しいていえば学生の涙ですかね。指導をしていて初めての時はビックリしましたね。驚きというかタジタジでした。そしてある時期はそれが重なり目の前で人が泣いているのに黙殺でしょうか、当たり前になってしまった事もあります。人は順応性があるので若者の涙にもドライに対応出来てしまうみたいです。でもその状況を当たり前にしてしまっていたことに気が付いた時はちょっと自分が怖かったです。慣習はダメですね。そのまま放置すると悪習になりかねません。純粋な涙で気がつかせてもらいました。またこんな事もありました。具体的な指導の前に実技に向かう姿勢そのものに対して辛辣な事を言ったりしていました。その直後、学生にそう言った自分はどうなんだ?って反対に跳ね返ってきました。僕自身は作品に対してどういう姿勢なの?そのように考えてしまいました。結構ズシンと重たかったですね。けれどそれは良かったと思っています。学生の生な反応に自分も考えさせられるというか。刺激ですかね。学生に感じさせてもらった環境、自分の身にズシンと降りかかった事がエピソードですね。

イ:最後にメッセージをお願いします。

阿:はい!そうですね。どばたを去る人残る人に向けて、みんなにです。
彫刻の根幹を自分なりに探してくれればと思います。僕も含めてですが自分が生まれた時代から彫刻はスタートしているわけではなく、はるか昔から脈々と続いています。自分の考えや美意識は実は自分のオリジナルではなく違う地域の違う時代の人々の蓄積からのような気がします。影響ですかね。遺伝子ですかね。感覚的には立っている地表が生まれた時代とすると根幹は下に向かって地層を掘り下げた所にあるのでしょうか。
いま自分が抱いている様々な事柄の発生源はどこからなのか?具体的に目には見えないのですが、探してください。挑戦しても良いかと思います。
なんだかやっぱり最後は漠然としてしまいました。


みなさん良い仕事をしてくださいね。
僕の話しはこれでおしまいです。

これからは新しい講師の方々にバトンタッチです。新体制の彫刻科はとても魅力的なメンバーですよ。ワクワクします!

それでは四年間ありがとうございました。
さようなら。

探求者クラス
ココナッツクラス
ミノカサゴクラス
ひみつクラス 担当
                         阿部光成

●ありがとう。

「あなたに美術は向いていない」誰がそんな事を言えるのでしょうか?
美術に向いているという事はあるかもしれないけど、美術に向いていないと言ってしまえば、もはやそこは美術ではなくなる気がします。
予備校は、受験への意識が大半を占める場所でありながら、美術を志す人たちの入り口ともなる所です。
たった1日の試験で、合格者は美術をやって良し!そうでなかった者は美術に不向きであると言う事は決してないのです。
みんなそれぞれの時間軸があり、まして何かを志して真剣に学ぶには時間がかかって当然だと思います。

自分が選んだ事を信じながら、ただひたぶるに自分に向き合って欲しい。目の前のデッサンや塑像を通して、それをやるしかない。

デッサンも塑像も自分が描き造る以上、全て自分自身なのです。
だから、逃げたくもなるし追究したくもなる。
自分を見つめる事はとっても大変で、変えて行くには時間がかかります。
大変な作業なのです。

ですが、読んで字のごとく「大変」は、大きく変わると書きます。
大変な時こそ、チャンス!
自分が少しでも変われたら、そこから何かが繋がっていくのでしょう。

そう信じて私も生きていきたいです。

ここすいどーばたで、たくさんの出会いがありました。
中瀬さん、西嶋さん、竹花さん、朗さん、阿部さん、むっしー、ここを通過していった学生。
生きるって凄い!人ってすごい!と言うことをひしひしと感じられる場所でした。
また、美術に対しての自分の在り方を学ばせてもらえた事に感謝の思いでいっぱいです!
彫刻っていいなーーーーっと心底思える、そんな場所でした!
本当に、ありがとうございました!

                   氷室 幸子