●信頼
今年は、今日の段階でもまだ緊張が押し寄せて来ない。
例年だとドキドキしてきて気持ちも昂ってきているんだけど。
不謹慎かもしれないが、なんだかラクチンである。
私の仕事は、モチーフ・空間など学生がしっかりと学べる環境を整えることがまず一つ。
もう一つは講師陣と価値観・合格基準などの指導面においての意思疎通をしっかりやること。
さらに経営として成り立つように需要と供給のバランスをとること。
そしてもう一つが学生管理である。
どれも重要な要素でどれか欠ける訳にはいかず、そのバランスをとることが大変である。
その中の、学生管理は特に大変だ。だけど一番おもしろい。
皆個性的だし、本気だし、頑固だし、素直だし、捻くれてたりもする。
そんな人たちを管理しようなどと思うこと自体無理があるくらいである。
実際、学生管理と言葉ではいうものの、管理などしていない。
ではどうしているかというと、わたしは「信頼」をしている。
何百万人といる同世代のなかから彫刻を志した時点ですごい確立である。その志しをまず信頼している。
信頼から始めると、明るい未来が見える。こちらがそういう気持ちでいると学生も大抵それに応えておもしろさを発揮してくれる。そういう学生が多くなると学生同士の関係もおもしろくなり、良い関係がどんどん出来上がる。私はそれを勝手に学生管理とうことにしている。
毎年学生は大体半数以上入れ替わるけど、毎年毎年違ったおもしろさがあり、それぞれの年の特徴がある。今年の学生は若い。浪人生のうち半数くらい1浪である。
春先は未知数だった可能性を信じた私は間違ってはいなかった。
そして若さを支えながら成長した少数精鋭の2浪以上の学生たちの存在に尊敬。
最後に絡んで来た若く勢いのある現役生の新鮮さも後押ししてくれた。
予想を上回るおもしろさにニヤニヤしてしまうほどだ。
皆よいリズムで制作している。やるだけやったらまた先が見える。万が一合格出来なくてもちゃんと先が見える仕事を皆はやっている。まぁ今はそんなことは考えず合格した先のことを考えれば良い。どちらにしても私が心配するに及ばないということである。
なるほどこのように考えてみると、私が緊張する必要はないのである。
「信頼」している学生たちに私は「自信」があるのである。
明日は芸大一次の発表だが、胸を張って臨んで欲しい。
西嶋雄志