2007年芸大合格者に聞く!

「インタビュー企画第2弾」

2007年芸大合格者に聞く!
                  インタビューアー 西嶋
今年すいどーばたは12名の芸大合格者を輩出しました。
すいどーばたの彫刻科は昼間部2クラス夜間部1クラスで構成されているのですが、今年は各クラスの実力者がしっかりと合格しました。

今回はその各クラスのリーダー的存在だった三名に受験や予備校生活を振り返っていただいて、大切にしていたことや意識的に取り組んでいたことなどを伺っていきたいと思います。さらには芸大通っている現在のこともお聞きしたいと思います。
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まずは各自の紹介をしたいと思います。

昼間部・顔酢クラス出身:中里勇太くん
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二浪したものの圧倒的な描写力で他の追随を許さず、常にクラスを引っ張る存在でした。受験前は修行僧のごとくモチーフと対話していました。
合格大学:東京芸術大学、多摩美術大学、東京造形大学

昼間部・峰クラス出身:市川めぐみさん
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現役から三浪までずっと芸大一次試験を通過してきたが、四度目の正直で二次試験突破。その鍛えられた精神と肉体?!どばたの顔でした。
合格大学:東京芸術大学、多摩美術大学、武蔵野美術大学

そして夜間部出身:大石雪野さん
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これまで教えてきた学生の中でここまで上手い現役生を見たことがありません。入試前の最後のコンクールも昼間部生を押さえトップ。造形大も特待生合格。本格的実力を持つスーパー現役生。
合格大学:東京芸術大学、東京造形大学(特待生合格)


西嶋:
本日はよろしくお願いします。

まずは合格おめでとうございます。入学して三ヶ月が過ぎ大学にも慣れてきた頃と思います。そしてだいぶ客観的に受験期のことを振り返ることができる時期になったのではないかと思います。

そこでまず各自にお伺いします。

喜怒哀楽が凝縮された受験生活。それぞれにとってすいどーばたは成長の場になったのではないかと思いますが、その中で自分が芸大に合格できた一番のきっかけや原動力は何だったのでしょうか?

まずは中里くんどうですか?

中里:
自分自身に負けたくないっていうか、ココでやめたらぜったい後悔するとか、
意地みたいなものだと思います。あとは、金も無かったし、彫刻を続けていくために、国立大学に入りたいっていうのもありました。

西嶋:
なるほど。意地ですか。では市川さんはどうでしょう。

市川:
三度目の正直、二度あることは三度ある いずれのジンクスも私には当てはまらなかったので、全ての責任は自分自身にある。ただそれだけでした。しかし、そのような意思をもたせてくれたきっかけは、三浪が決まった春一発目の面接です。面接用に使われていたアトリエのドアを開けると、かつて三浪を経験された先生方がずらりといらっしゃって、励ましの言葉を頂きました。中でも色濃く記憶に残っている、「孤独って、楽しいぞー。」、「深刻になる必要はない、真剣に考えるだけでいいんだ。」これですね。

西嶋:
大石さんは如何ですか?

大石:
月並みですが、やはり、自分をよく分析できた、ということでしょうか。常に自分の問題点や、その改善の仕方を意識していたことが、芸大合格につながった要素だと思います。けれど、それは教師や友人に指摘してもらって初めて気付けたことも多いですし、彼らのおかげだと思っています。先生、ありがとうございます。(笑)
現役生は、経験が少ない分、ただ闇雲に頑張ってしまって、空回りすることも珍しくないのではないでしょうか。
私の場合は、人から頂いたアドバイスが幸いして、本番までの過程をきちんとシュミレーションすることができ、経験の少なさをカバーすることができました。そのことが、大きな力となりましたね。

西嶋:
なるほど・・・。三者三様、それぞれ強い思い入れがあったのですね。
なんか現役の大石さんが一番冷静な感じなのが面白いですね。(笑)
入直では大石さんと中里くんは同じクラスとなりましたが、
お互いに意識したりしていたのですか?

大石:
それほど意識はしていなかったかも・・・?すごく上手い!とは思っていましたし、粘土などはやはり、見ていてものすごく勉強になって、同じ教室で作ってきたことで力になった部分は多かったですが、私のライバルはあくまで現役生...といった意識でした。
当時は。現役生の魅力にどうしたら立ち向かえるか!と。なんででしょうね(笑)

西嶋:
意識しないまでも参考にしていたということですね。
意識は現役生ですか・・。そうですね。あなたのデッサンは現役生らしくなかったですもんね。(笑)
中里くんはどう?

中里:
俺も特に意識するようなことは無かったですよ。誰かを相手にするとか、ある特定の人を意識して、その人を負かそうとか、そういうことじゃなくて、自分自身と向き合って、もっと上手くなるにはどうしたらいいかとか、そういうことを常に考えるようにしていました。

西嶋:
中里くんも意識してなかったんですね。
確かに、思い起こせばいつも自分と立ち向かっていましたね。
受験って相手は他人じゃなくて自分自身なんですよね。

その辺りは市川さんも何か考えがあるんじゃない?

市川:
来ましたね〜(笑)ついにつっこみが。 
私という人間は、実にもろく、周りからの期待やプレッシャーに弱いんですよね、口と手と足はよくでるけど。ははは(笑)。
そういった精神の軟弱さを覆い隠すように、周りを無下にしてみたり、自分を必要以上に大きく見せようとしたり。自分の力を、信じてあげられなかったんでしょうね。上手くなろうって時に、けっこうな頻度で他者の存在が大きく目に映ってました。でも結局、他者を超えられたとしても、敵はまだ居て。それは天狗になった自分です。そして、鼻頭を折られてうつぶいた、他者に依存した自分なんです。何かを求めれば求める程、敵というのは己で創った土俵に存在して、それをぶち壊した時にやっと己に一瞬勝てたような気がして、また新たな土俵が生まれる。まあ、そんなとこです。すいません。

西嶋:
まさに自分との戦いでしたね。
三浪してしまいましたが、自己と向き合うべきときはいつかは来るので
良い経験でしたね。大学生活や今後の活動にも生きてくると思いますよ。

では次の質問です。これまで合格してきた人は大抵自分独自のプロセスをつくりあげていると思うのですが、皆さんは如何ですか?自分を支えた何かがありましたら教えてください。

今度は大石さんからどうですか?

大石:
私の場合は、常に不安を抱えていたので・・・。性格的なものだと思いますが。
ですから、自分の中に、自分を支える何かがあったのか、と考えると、ものすごく難しいです。
逆に、自分を支える何か、をなんとか本番までに見つけるために、奮闘していた記憶があります。
自分の身には過ぎた評価を頂いていましたので、(すごく有り難いことではありますが)絶対に落ちてはいけないと思っていましたので、その不安につき動かされる様にがむしゃらにやってきた感じです。
けど、そう考えると、その「不安」こそが、わたしを支えていた力だったのかもしれませんね。
おかげで、本当に最後の最後、一次試験の前日には、これでいける!と思えるものを得ることができ、自信を持って本番にのぞむことができたと思います。

西嶋:
「不安」ですか。ちょっと守りに入っている時期もありましたね。
しかし最後に自信を持てたのが良い結果につながった最大の要因でしょうね。
では市川さんは?

市川:
それはもう、自身を取り巻く全てです。
野犬みたいな私を根気強く指導して下さった先生方、本当にありがとうございました。
並びに、時を共にした同士達。今でもかけがえのない存在です。嘘じゃないよ。
そして、根っから明るい家族の存在です。何回落ちても、背中を押してくれました。ほんとは浪人させたくなかったろうに。

西嶋:
はははっ(笑)、確かにちょっと怖かったよ。正直受かってくれてホッとしています。(笑)
良い仲間がたくさんいましたね。それが一番の宝物になっていくでしょう。

中里くんどうですか?

中里:
そうですね〜、俺は、どちらかというと肉体派っていうか、頭脳派ではないんで(笑)、粘土やデッサンを、短時間で、より密度の高いものにするための体力作りや、自分自身にプレッシャーを与えて(例えば、コンクールで確実に一位を取る!とか)ソレに打ち勝てる精神力をつけられたことが、本番に、「自分にできることをやるだけだ!」と思えて、ある程度の自信を持って、芸大試験に臨めたことだと思いますよ☆

西嶋:
そうですね。実際、考えているだけではダメなんですよね。それを行動に移す精神力と体力ってすごく大事ですよね。
黙々と制作に取り組む姿は、紹介文にも書きましたが、ほんとに修行僧のようでした。

では、今度は芸大に合格した後のことを伺っていきたいと思います。
芸大に通ってみて感じる予備校と大学の時間の流れの違いや、予備校と大学の先生との距離、仲間との過ごし方など受験時代とはだいぶ変化があると思いますが、その辺りをお話し頂けますか?

中里:
予備校に比べたら、自由な時間が増えたような気がする。そのぶん、自分でやらなきゃいけないことがたくさん増えたと思う。本読んだりとか、作品作ったり。
今は、まだ始まったばかりだから、何とも言えないけれど、ぼ〜とすごしていたら、本当にあっという間に、四年間が過ぎてしまう気がする。だから、自由になった時間を、いかに有効に使えるかが今の課題だと思う。

西嶋:
その通り。四年間はあっという間です。時間が有り余っているかに感じる大学生活ですが、結構休みが多いんですよね。その休みを利用して積極的に海外旅行など行くといいと思いますよ。
他の二人はどうですか?

大石:
そうですね、自分個人で美術をやっていくという意識は、受験時代よりも強くなってきました。
受験生の頃の友人は、いくらお互いを蹴落としていかなければならないライバル関係とはいっても、やはり、同じ目標を持って闘っている仲間、といった意識が強かったですから。必然、助け合える、本当にいい友人を得ることができました。
しかし、大学生ともなると、私も含め、皆それぞれの別の目的意識を持った人たちばかりなので、個人主義的になるのは自然なことですよね。教授との距離も、予備校時代よりは離れて感じますが、それはまだ、ご教授いただいて日が浅いからかも知りません。
ちょっとさみしい気もしますが、このぐらいが丁度気持のいい距離だと思っています。これからは、個人で考えていく時間が大切だと考えていますから。

市川:
ま、そうですね、大石の言う通り。特にいう事はないのですが、なんにせよ彫刻を一生やろうと思ったら一人の力じゃどうにもならないので、今まで出会った人、これから出会う人、彫刻関係のみならず大切にしていきたいですよね。ま、自分の環境作りってとこですかね。

大石:
いいこと言いますね!本当にそう思います。

市川:
あらそう、てれるわね。うふふ。
ま、後は、日々精進です。

西嶋:
はいはい。(笑)
でもその通りですね。
人との関わりは重要だと思います。
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では最後に受験生に向けてメッセージがありましたらお願いします。

中里:
マッチョと、根性と・・・センター試験だー!!!

市川:
どんだけ、頑張ってやってもうまくいかない時って、誰しもやってきます。それはスランプなんて高いレベルの話じゃなくて、次の成長段階への準備なんだと思います。何か新しいモノが必要な時期なのだと。
苦しみなんて、人間は生まれながらに持ち合わせていると私は考えています。だから、命が尽きるまでまだ先はあるんだし、辛いことがあっても、こんなのあたり前だと思ったほうがいいです。
一生懸命になると、自分だけの世界に入り込んで、どうしても視野が狭くなってしまうので、そんな時はふっと肩の力を抜いて、目を閉じて深呼吸。そして周りをぐるっと見渡してみてください。そうすれば、おのずと自分の欠落した意識の欠片を感じることができるはずです。 自分の正確な位置を確認することは、受験においても、作家になるに至っても、とても重要な事だと思うからです。
予備校という場所は、頑張ろうと思えばいくらでも頑張れる場所でもあり、怠けようと思えばいくらでも怠ける事のできる場所です。とにかく自分に厳しく、シビアに受かる事を考えてください。秋になると、中だるみが起こります。その時、仲間内で慣れ合う人もでてくると思います。その宜しくない空気に巻き込まれるのではなく、互いに注意し合うことが大切だと思います。例えば、休憩中でも、誰かが制作していれば、それはもう立派なアトリエの空間ですよね。誰がおしゃべりで邪魔できますか?そんな時は遠慮せず注意しましょう。優しくビシッと。たとえ1年であったとしても、場を共有しているわけですからね。
長くなりましたが、最後に。多くのことを教えて下さる先生方や、切磋琢磨できる仲間、そしてすべてを沈黙で語るモチーフ、周囲のすべてに救いがあると思います。周りに常に感謝し、お互い日々を充実させましょう。体調管理だけはぬかりなく。来年待ってます。

大石:
私は現役生に向けての言葉しか言えませんが。
きっと現役生の方は、私に言われるまでもなく、がむしゃらに、楽しみながら頑張っているのだと思います。
それは本当に、現役生の強みですから、是非自覚して、大切にしていただきたいと思います。
けれど、そのことが一番難しい。上手くなってくると、どうしても、迷いがでてくるようになります。そんなときは、思いっきり、悩めばいいじゃなぁい...。
ただ、皆それぞれ、必ず一つはいいものを持っていますから、それを大切にしていってほしいです。
自分では気付きにくいことですが、もし気づくことができれば、本当に大きな支えとなること思います。
肩の力を抜いて、適当に奮闘してください。


西嶋:
さすがに厳しい受験を乗り切った強者達ですね。受験生にとって刺激になってくれればと思います。
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本日は、貴重な時間を惜しむことなくご協力頂き感謝致します。
これからの皆さんのご活躍を期待しております。
ありがとうございました。

次回もお楽しみに!