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2023年03月19日

●2023合格者体験記特集

「インタビュー企画第44弾」
 2023合格者体験記特集


2023年度の合格体験記をまとめました。
それぞれが受験生としてのリアリティーを持っています。
来年、受験する方は是非参考にしてください。
また、今年も2名の保護者の方に<見守り体験記>を書いていただきました。




大畑真子さん
合格大学:東京藝術大学 彫刻科

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「学びと発見と成長と」

私は現役一浪は油画、二浪、三浪は彫刻で宅浪して、四浪の年からどばたに通い始めました。結果を言えばどばたに来て良質な環境で実技できること、そして周りの人の作品と並べて講評してもらえることのありがたさと、圧倒的な成長スピードの速さ。また講師たちの指導の的確さ。これだけで実技が大いに伸びたと思います。

どばたに通い始めてから自分自身の内面の変化もあり、人間的成長もしたと思います。メンタルも強くなりました。どばたに通い始めたの頃の私の最初の課題は、毎日通うことでした。「初めてのことが多くてできないのは当たり前、だから挫けないでやり続ける」というメンタルがとても大事でした。
でも途中から、「上手くなろうと決意しないと上手くならない」ということにも気づけました。これは大きな発見でした。

もちろん楽しいことだけではありませんでした。何回も泣いたこともありました。けどそれ乗り越えた時もっと強い自分になった気がします。

どばたでの毎課題毎課題が一期一会でその時、その瞬間でしか制作できない大事なものでした。「制作に愚直に真摯に向き合うこと」この大事さを知れてよかったです。
失敗もあり、その時は後退したと思っても何も無駄になってないと今なら思えます。全部の失敗が私の中で生きている。

努力することは大事ですが「努力をし続ける忍耐力と継続力の大切さ」を学べたのも大きかったです。

来年の受験に向けて頑張る人に向けて伝えたいことは「この時間を大切にしてほしい」ということです。一つ一つの実技を全力でしてほしいです。どんなに最初の描き出しが悪かろうと、構成の芯棒が失敗しようと、最後まで足掻いて、諦めないで後悔ない実技をしてほしいと思います。
色んな人いますが、私はデッサンで紙を変えてのやり直しはしないようにしていました。なぜなら本番ではできないから。本番を意識して、実技することをいつも心がけていました。
メンタルの立て直しも、実技のひとつだと思っています。全力で空振りした方がスッキリする時もあると思います。せっかく転けるなら、せめて前のめりに転けた方が、後悔が残らないこともあるんじゃないかと思います。とにかく後悔を残さないでほしいです。
きっと、技量をあげるために全力を使える時間はこの時しかないと思うので。体力的にも、環境的にもそうだと思います。
あとは「自分を信じること」。私がこれを本当の意味で理解出来たのは、一次試験中でした。精度をあげようと思い、形を疑う中で、実は、自分を疑っていたことに気がつきました。なぜ、色んな人が自分を信じろというのか、客観的になることと自信を持つことは矛盾しないのか、を考えてほしいです。そして「形は疑え、でも自分は信じろ」、実はこれが矛盾しないと気づいてほしいです。自分がこれまでしてきた結果を信じるというより、それまでの過程や、自分が見えてるもの、自分が表現したいことを信じてほしいです。


合格してから改めて、色んな人に応援し支えていただいていたんだなと思いました。講師の方々は、私のメンタルコントロールも含め、上手く調節してくださったと思います。両親も、ずっと忍耐し続けてくれました。私を信じて、ずっと励まして待ってくれていました。
本当にありがとうございました。周りの人への感謝と、報恩の気持ちを忘れず、謙虚な態度で精進し続けたいと思います。







<見守り体験記>
大畑稔浩さん

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「未来へ」

娘は幼稚園の頃から砂場に行ったきり、休み時間が終わっても帰ってこないような子でした。
また、3歳の頃から子供に似合わず、目的を持つと一つの事を永く続ける集中力もありました。家族は「天才じゃないか!?」と期待を寄せましたが、人見知りの性格は学校生活の中で彼女自身を徐々に追い詰めたように見えました。目的意識を見失っていた彼女に、絵を勧めたのはその頃です。
絵描きの私から「未来に何も見いだせないのなら、まず絵を描くことから始めてみようよ!」(本当は「絵」ではなくても良かったのですが私が教えてあげられるので)やる気の入り口になればと言う思いの一言でした。もともと素直で、もの作りは好きでしたので真剣に取り組んでいました。
現役の時、藝大1次まで合格し、翌年講習に行かせましたが、人見知りが再燃しうまく溶け込むことなく翌年も宅浪することになりました。その年、石膏デッサンを描いているときに「彫刻をやってみたい!」と言うようになりました。近くにいらした藝大彫刻科出身の作家さんが、彼女の幼馴染の父親でしたので、その方にお願いしました。1年半過ぎたくらいから、やはり一人での制作に限界を感じ、どばたの講習会に参加させました。講習会が楽しかったのか「4月から、どばたに行きたい」と言うようになり、いつまで続くのかと心配しておりましたが、水が合ったのか、すぐに友達ができ楽しく制作していたようです。
絵もみるみるうまくなっていきました。今年は、自分より若い子たちが多いので、責任感も培われてきたようにも思います。いつしか「人見知り」もなくなり自己実現の自助努力と自己責任を学び、人として大きく成長したように見えます。
どばたの先生をはじめ、彼女を御支援してくださいました方々に心より感謝申し上げます。
三つ子の魂は百までとは申します。藝大合格は人生の中での通過点として、更なる精進を重ねて未来へ向けて力強く歩んで行ってほしいと願っています。

                                






黒澤勇紀さん
東京・明法高等学校
合格大学:東京藝術大学 彫刻科
武蔵野美術大学 彫刻学科

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「今だけ全力で!」

誰かに言われて分かった気になっても、そんなのはただの分かったふりにすぎません。
誰かに相談に乗ってもらってもデッサンが上手くなるわけじゃないです。
自分で身に染みるまで失敗し続けるしかないんです。
毎日毎日失敗して反省して悩み続けて、それでやっと少しだけ答えが見えてくるんです。
あぐらを描いて座っていても何も分からないですよ
自分を変えていくんです。少しでも良くなりそうな方向に。








宮内礼さん
茨城・鹿島学園高等学校 卒
合格大学:東京芸術大学 彫刻科
多摩美術大学 彫刻学科

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「フラットな精神」

藝大を3回受験して感じたのは殆ど「運とメンタル」です。
合格者と不合格者の実力差は正直あまり無いと思います。

教授は人間ですし、気分で作品を選ぶこともあるでしょう。
そういったことに振り回されずに淡々と制作する事を今年は気を付けていました。

あとは手を動かすのも勿論大切ですが、同じくらい思考する時間、自分の美意識を掘り下げていく時間を取る事も大切にしていました。

結果論になってしまいますが、藝大に期待し過ぎず、試験でもマイペースに作品を作れたのが良かったと自分では感じています。

お世話になった先生方、一年半面倒見て下さって本当にありがとうございました。 扱い難い生徒でしたね、、、、スミマセン!!!!






小原壮太さん
奈良・奈良女子大学附属中等教育学校 卒
合格大学:東京芸術大学 彫刻科

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「努力」

現役から一浪の序盤まで地元の予備校に通い、夏季講習からすいどーばたで浪人生活を過ごしました。

どはたの講習会に初めて来た現役の時、とんでもなくうまい人達を見て、デッサンでも負けて粘土でも負けて何も勝てなくて悔しかったです。その時から何か一つでもこの人達に勝たなければいけないと思い、朝誰よりも早く来ることにしました。他人と比べて頑張ろうと思うのもとても大切ですが、一番大切なのは昨日の自分よりも努力できたかどうかだと思います。

受験を支えてくださった多くの人に感謝の気持ちでいっぱいです。これからも頑張るので応援よろしくお願いします。







梅沢大樹さん
千葉・松戸高等学校 現役
合格大学:東京芸術大学 彫刻科

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「大きな決断」

自分は小さい頃から音楽をやっていて芸術は昔から日常の近くにありました。中学校はその音楽に専念するために土日活動がない美術部に入りました。だから自分が本気で藝大の美術学部を目指すなんて今思えば不思議です。高校は普通科に行って楽しんでいる自分が全く想像できなかったので、中学校を通して好きになっていた美術方面の道に進む決意をし、覚悟を決めて美術系の高校に入りました。
高校で初めて木炭紙に木炭を滑らせた衝撃は今でもハッキリ覚えています。思ってたより何百倍も難しかったです。見たまま描いてるのに全然思ったような絵にならないし形も全然合わない、最初は高校の一学期をかけて1枚を完成させました。それから熱が入ったのか3年間は通っていたオーケストラもやめてずっと美術三昧、彫刻という学科も一通りの学科を体験し、1番楽しかったので進むことにしました。大変だったけどほんとに幸せでした。悔しくて泣いたこともあったし、褒められてニヤけたこともありました。多分美術に足を踏み入れ無かったらもっとつまんない人生だったと思うし、人間的にもこんなには成長できなかったと思ってます。なにかに打ち込む事ってこんなにも辛くて幸せな事なんだって美術を通して教えてもらい、美術への好奇心は膨れ上がる一方でした。
どばた生活は悔いの無い現役生活をしようと心がけてやってました。結果が出たから良かったけど、もし落ちて浪人することになっても多分浪人の自分は現役の自分を誇ってくれてたんじゃないかなって思います。
最後に今まで一緒に競ってきた仲間たち、熱く指導してくれた先生方、素晴らしい設備を用意してくださったどばたの関係者の方、栄養や色味が極限まで考られたお弁当を毎日早起きして作ってくれたお母さん、家族、応援して頂いた方々、神様です。本当にかけがえのない存在でした。本当にありがとうございました。ここからがスタート!この結果をバネにもっと飛躍するぞ~!







大里祥実さん
熊本・第二高等学校 卒
合格大学:東京芸術大学 彫刻科

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「身を任せる」

とにかく頑張る。
私が現役の頃毎日考えていたことでした。しかし、そこには大きな穴があることに気づけませんでした。
もちろん頑張ることは成長する近道だと思います。
ただ、そのせいで見えなくなっている部分があることを決して忘れないでください。


現役の頃はやる気に満ち溢れ、一つ一つの課題を全力でやっていました。そこで成長した部分もたくさんありました。
試験本番、いつも通り全力で挑み、いける、そう思っていました。結果は不合格。

何が足りなかったのか、そこに気づくのに長く時間がかかりました。
私はこの1年、

「頑張らないこと」

を心がけて制作していました。

なぜ頑張らないのか、それは冷静な心(目)を養うためです。
よく先生達は「もう1人の自分で見つめなさい」と言います。
客観的に見ることで、間違いを見つけ、修正することが出来るからです。
そんなの簡単だ。当たり前のことだ。そう思いますよね。
しかし、ほとんどの人ができてないこと、そしてそれが毎回できるとも限らないこと、
この1年痛いほど感じました。
頑張って目の前のことだけになっていないか。頑張ることは身に染み込んでいます。大丈夫です。

モチーフと空間と自分の作品と自然と対話してください。自然に身を任せて。


ー生活についてー
私は、ほぼ毎日朝6時から9時までバイトで働いてそこからどばたに通っていました。
元々朝起きるのは得意ですが、制作する前に体と脳を起こす事ですぐに集中モードに入れました。本番も早く始まるので体を慣らしておくといいと思います。

最後に、共に悩み支えてくれた友人、ずっと見守ってくださった先生方、家族、すべての方々に感謝しています。
本当にありがとうございます。







志賀未禄さん
東京・松原学高等学校 卒
合格大学:東京芸術大学 彫刻科

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「自分次第でどうにでもなる」

受験期間の2年ちょい本当に色々あったなぁーと思い返す。
本当に色んな人に迷惑かけて助けてもらった期間だった。

その人達に少しでも恩を返せるように過ごした2年だった。

辛かったー、自分がへなちょこすぎて笑
でも、僕には芸大に受かるしかできることなんてないと思った。

だから絶対負けたくなかった。

それがあったから自分を最後にちゃんと追い込めたと思う。

語るわけじゃないけど受験は本当に気持ち次第だと思う。人に頼らずに上手くなろうとする気持ちと自分だけでも受かってやるって思う気持ち。

それを思っていれば絶対上手くなるし意味のある一年になると思います。







佐藤春野さん
東京・女子美術大学附属高等学校 卒
合格大学:東京芸術大学 彫刻科
武蔵野美術大学 彫刻学科
多摩美術大学 彫刻学科
東京造形大学 美術学科彫刻専攻
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「充実」

私は高二の11月から一浪の1学期まで別の予備校に居ました。ドバタには途中から入ったので友達が1人も居らず、自分がしたい時間に制作を始めたり、参考作品がある部屋に閉じこもったり色んな画集を読んだりしていました。こういう事をしてると実技のモチベーションが下がったり友人関係で揉めて病む事もなかったです。充実した浪人ライフが送れました。
実際画塾には上手い人が沢山いて一次試験の1ヶ月前は自分が受かるわけないと思っていました。
他の人と比べて藝大に対する熱い情熱もなかったし夜間残ったりする体力もなかったからです。
藝大受験するときはもう武蔵美に合格していたので藝大受かりたいというより、もう早く大学生になって作品沢山作りたいなと思っていました!
試験は少し緊張しだけれど、画塾での制作と変わらないスタンスで楽しくやることができました。
私が藝大なんてびっくりです。先生方本当にありがとうございました。







作田道隆さん
埼玉・浦和学院高等学校 卒
合格大学:東京芸術大学 彫刻科

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「4連続1次落ち」

今回東京藝術大学彫刻科に4浪目で合格しました、作田道隆と言います。
文才はないですが、よろしくお願いします。
今回合格体験記を書くにあたって思うことが、いざ書こうと思うとなかなか浮かばないもんだなと思いました。なので、今回自分はどんな浪人をしてきたかを書いてみようと思います。かなり長く書きましたが、受験で心が壊れそうな時、こんな人でも何とかなるんだなって思ってくれたら嬉しいです。
まず美術の道で行くと決めたのは結構早くて、小学生くらいの時からでした。
何をやるかは決めてなかったですね。とんで、高校は浦和学院の美術クラスに行きましたねー。高二まではデザイン科か、工芸科を目指していたのですが、高二の頃に観た芸大の卒業制作に感動してこの道を選びました。高一からデザインを目指していたので、某 千代田区にある美術予備校に行きました。その流れもあってその学校の彫刻科に所属しました。
現役はですね、もー楽しかったです。やる事なす事全部が新しくて、作る喜び描く喜びに浸っていました。
描けない事も苦ではなかったですね。あの時の夜間部は3人、昼間部3人でしたね。当時はものすごい浪人生を尊敬していて、今の実力では受からないこともわかっていたので、浪人生に憧れがありました。
今後の悲惨な浪人人生が長く続くとも知らないのに…
案の定現役は1次落ちでした。
一浪目昼間部に上がったはいいもののクラスの人数1人!先生3人! プレッシャーやばかったですね。その時はワンツーマンやん!って思いながら能天気にやっていたのですが、だんだん1人は辛く、他クラスの子と遊ぶようになり、おちゃらけた一浪生活を送ってました。その時は某ハワイアンテイストのハンバーガー屋でバイトしていましたね。実技面では辛いこともありました。俺より遅くから始めた後輩が自分よりデッサンや、粘土が上手くなちゃったんですよ。ラーメンとか奢ってたのに面子丸つぶれ。最悪の気分でしたね。その時は初期ベジータくらいプライドが高かったのでだんだん心が崩れている音がしました。それでも頑張ってはいたのですがまた一次落ち。
二浪目はここまで育てて貰った予備校の先生に感謝していたので受かって恩返しがしたいと思い、意地で居続けていました。この年は模刻のレベルが一気に上がりましたね。当時あった彫刻1だけが心の救いでした。まるで規模は小さくても自分にとっては展覧会に出す作品のつもりで作っていたので楽しかったですね。でもこの頃から本格的に心が壊れてきました。奇跡的にこの年は人も少し多く8人くらいいました。一人よか全然マシですね。でも、その中で1番長く続けているのに1番にはなれない自分が悔しくて悔しくてみるみるみる性格が暗くなり、挙句の果てに家で枕に顔を当てて夜叫んでる時もありました。それでも何とかモチベーションを上げて、この年で決める気で受けたもののまたしても1次落ち。本当に心が無でした。あの時初めて責任とか恩を忘れて学校から無言で去りました。それでも彫刻の夢だけは諦められなかったので心機一転どばたで三浪めを迎えることになりました。
三浪目、入りたては気持ち的には全員潰す!って感じでしたね。超尖ってました。
模刻と、作品だけは負けねーって思ってました。そんな心も一瞬で崩れるとも知れず…どばたのレベルの高さを受け入れるのには時間がかかりました。
自分が3年間やってきた実技を一浪の子に軽々と抜かされてく事は耐えられませんでした。でも、その頃は何故か悔しくなかったですね。やられ慣れちゃったのかもしれません。平和ボケしたベジータとそっくり。この頃は作品が作りたい欲がすごく、文章課題とかでは暴走傾向にありました。まるでMの字がついたベジータのようでした。1月頃から実技と浪人数が噛み合ってきて模試では4位は取れるくらいにはなりました。ダメダメだった俺からしたら4位でも嬉しかったんですよ。
ここから話すことは、こんなダラダラ書いてる言葉の中で1番大事なことで、
2,3月の心のメンタル調整が大事ってことですね。1月調子の良かった作田くんも、、試験が近づいて来るプレッシャーに1個1個の課題の結果が大きなダメージを及ぼしていきました。
まじギャリック砲。
極めつけは1次試験前日前々日のメンタル。
超壊れてしまいましたね。受かるわけがないと思ってしまっていましたね。1次の結果もいつも通りの1次落ち。ちなみにこの年のウェブアップは
デッサン6粘土6 本撮0
三浪目にしちゃダメダメですよね。二浪の時は落ちた時絶望的な思いをしましたが、どばたではそんなことはあしませんでした。いつも仲良かった友達が受かったことは悔しかったけどかっこよくも見えましたね。一緒に行きたかったです。ここでなんと!4回連続1次落ち!笑
まじで俺にはデッサンの才能が無いことに気付きました。それでもバカが取り柄なんで出来ない事なんてどーでも良くて、やっぱり芸大に行きたいから4浪することになりました。
4浪目
いよいよラストです。もしここまで読んでくれたのならここからは大事な話なんで力になれると思います。この年は今まで芸大に行くまではしないと決めていたことを全部破ってやることにしました。この考え方がが結構きいたのかな?と思っています。
1つ目は、将来のための準備兼お仕事ですね。
植木職人になりました。お庭の木を手入れしたり大木を切ってトラックに積んだりする仕事ですね。
1日仕事となので2日課題でクロッキー3時間、制作9時間の日は頭の方の授業を休んで夜仕事帰りにどばたで3時間やって次の日6時間やる日を結構作りました。
夏期講習はお金が無く全日程仕事に費やしました。
コレがいい気分転換、自然と触れ合えるのはいい気分でした。それと前日の実技を見つめ直すいい時間が設けられたかなと思っていました。
2つ目彼女が出来ました。絶対浪人中は彼女を作ってはいけないという親の謎の言いつけをちゃんと三浪までは守ってたんですよ。でもこの年は内緒で付き合ってました。彼女のおかげでどれほど救われたことか。本当に感謝してます。言いたいことは、ここまで浪人しちゃうと実技レベルってのもありますがある程度出来ればあとはメンタルなのかなと思います。
試験中何考えてたとかどうしたとかは
ここまで読んだよ!って声かけてくれてくれたら話します。もー何書いたか覚えてないくらい書いたと思うのですが、これから芸大を目指す人に少しでも役に立てば嬉しいです。







<見守り体験記>
作田幸子さん

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「それぞれで叶える夢」

息子は夢を叶えるために、どんな時もどんな場所でも全力で頑張っていました。

主人も私も藝大出身で多浪生。三人で美術の話で盛り上がったり楽しく過ごしていました。
しかし私達の様々な経験から、息子を心配しすぎてしまい、よけいな言葉やお節介で苦しめてしまっていた時もあったように今は思います。

合格した最後の一年、息子は自由にのびのびと過ごしていました。アルバイトに励み、同じ夢を持った大切な友人達と長く時間を共有しました。

それでも私は常に息子がどうしているのか心配でした。
ただこのころから、息子の楽しい話には、いままで感じたことがないような安心感がありました。
本当に自分でこの道を歩みはじめたのだと、このとき思いました。

そんな安心感から私自身も省みて、自分の作品制作に戻っていきました。
先生方にすべてをお願いし、息子のことは干渉しない。結果的に一番効をなし、私共が制作に熱中しているうちに、息子はいつのまにか合格していたという形になりました。
藝大受験は親になっても、たくさんのことを学ばされます。

学院の先生方には実技意外にもたくさんお世話になりました。息子の成長がとても嬉しく、心より感謝しております。
仲良くして支えてくれた友達のみなさん、本当にありがとうございます。これからもよろしくお願いします。







上野ポリーナさん
岩手・不来方高等学校 卒 
合格大学:東京芸術大学 彫刻科

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「自分らしく」

自分が1番調子が良かったのは二浪が始まった一学期で、その頃は講評が終わった後ダッシュで片付けて、手を洗って池袋西口のバイト先に走って行き、そこから夜0時まで6時間バイト、終電で帰る生活をしていました。
今考えると6時間実技やった後に同じ時間働くのって頭おかしいなと思いますがその頃は苦しい思い出があんまりなくて、実技が気持ちよかった日は作業しながらあれ気持ちよかったなーって余韻浸ったり、バイトの内容より美術のことを考えている時間のほうが長かったかもしれません。帰りの電車の中で明日の課題と過去のブログをチェック、たまに疲れすぎて駅を寝過ごして、歩いて帰ってました。
でもどんなに疲れてても、どばたに遅刻することだけは絶対に許せなくて毎日早起きだけは徹底してました。
この1年特に入直、早起きと同じぐらい大事にしてたのは人との距離を保つということです。一浪の頃はみんなとベッタリしすぎて自分の場合それで甘くなっていたんじゃないかと思って、入直は3人以上で帰らないとか変なルールを自分の中で作ってました。ルーティンじゃないけど、デッサンの準備も芯抜きのタイミングとか順番が自分で決まっててそれを崩さないことで落ち着ける感じがあるので、自分の中で理由はなくてもいいからルールを作ってそれを絶対守るっていうのが結構きくんじゃないかなと考えています。周りに理解してもらえなくても自分なりのルールを貫くのが大切だと思います。
公開コンを終えたあたりからスランプと言っていいのか分かりませんがデッサンがなんか本調子じゃなくなってきて、結局やっと描き方を思い出してきたのが1次試験2日前でした。二浪になってからメンタルが弱ることはほとんどなかったのに、1ヶ月続くひどい風邪をひいたのも重なって試験直前になってメンタルが崩れました。1次試験3日前、ジョルジョを描きながらひどい気持ちになってきて、途中でやめて夜の公園でひとりで泣いてました。それですっきりしたのか翌日から何も考えずに描けました。試験前日は奴隷全身を描いて、以前の気持ちいい時のデッサンまではいきませんでしたが、午前中奴隷がほんとにかっこよくて、アドレナリンが出すぎて心臓がバクバクして胸が痛かったです。あんなに苦しかったのに久しぶりにデッサンが楽しいと思えました。
皮肉にも1次試験はジョルジョ。しかし余計なことは何も考えずに冷静に描きました。
2次試験、試験監督がすぐ隣ということもあり、粘土をつけてからはずっと焦ってました。構成は攻めたつもりも変なことをやろうとしたつもりもなかったのですが、作り始めて1時間ぐらいで部屋の他の人と自分の作品を見比べて、自分だけ「アバタをモチーフに」の解釈が間違っているんじゃないかと思い始めました。アバタそのものを作ってない人が自分だけでした。そこからは作る大変さよりかは精神戦で、ちょっと下がって作品を見る度課題違反という言葉が頭をかすめて、何度も課題文を読み直しました。でも説得力まで無くなっちゃダメだと思って最後まで作りきりました。
試験後どばたの他の部屋の人の構成を聞いてもアバタを作っていない人はおらず、恥ずかしくてどばたに行くことができませんでした。そのあとも呆然となりすぎて、試験中に指にささったでかいトゲに翌朝痛くなるまで気づきませんでした。結果は良かったものの客観性はやっぱり大切だと思います。もしこれで落ちていたら焦った自分じゃなく構成自体を責めて自由な作品を作るのにブレーキをかけてしまうようになったかもしれません。周りがどうであれ、自分に自信を持つこと、ちゃんと作りきるという気持ちを持つことが作品の完成度、説得力に大きく影響するなと思います。今は最後に自分っぽい作品が作れたのは良かったかなと思っています。
最後になりましたが、この2年で人としてもすごく成長できた気がします。教えてくれた先生たち、支えてくれた家族、友人たちには感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。







北村碧唯さん
千葉・松戸高等学校 卒
合格大学:東京芸術大学 彫刻科

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「親友と入学式に行く夢を見た」

道端の石が、やけに目に入る時がある。
普段聞き流す音が、しつこく残る時がある。
空気を吸った時、開放感を感じる時がある。
料理を食べた時、幸せを感じる時がある。
そんな日常を見つけた時を、一番大切に生きて行く。
日常のイメージを大切に、自分の美術と向き合ってください。







森麗さん
福岡・九州産業大学附属九州高等学校 卒
合格大学:東京芸術大学 彫刻科

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「才能とはなんぞや!!」

そんな事をとても考えさせられた1年間でした。
どばたに集まる人や芸術を志す人はそれぞれに点数の付けようのない素晴らしい視点や考え方を持っています。その中で、
「天才。才能がある。」と言われる人は
何が別に特別なことがある訳でもなく、
その考えや視点が彼らの適した方法で
第三者に伝えることが出来るだけではないでしょうか。
1度でもバチッとハマる瞬間があれば
誰だって変わります。しかしその瞬間は
己が挑戦し、苦戦しなければ訪れません。

入試最中でも、
一手ずつその瞬間のために強気でいなければ
絶対に来ません。逆を言えば
「いけ、いけ。伝われ。受かれ受かれ受かれ」と
自分を押し続けることが出来れば
合格なんてすぐそこなのではないでしょうか。

沢山楽しんで挑戦して、強気で自分にとって輝きを放つ方法を探して欲しいです。









みなさん体験記ありがとうございました。
これからの受験生の参考になれば幸いです。

2022年10月23日

●2022年全国公開実技コンクール

「インタビュー企画第43弾」
 2022全国公開実技コンクール特集

                  担当 田中綾子 赤尾智

ーすいどーばた美術学院講師10名の採点総評コメント掲載ー

各講師から、今回の公開コンクールについての総評を書いてもらいました。
それぞれの言葉をしっかりと受け止め、今後の制作の参考にしてもらえればと思います。


文章が送られてきた順に掲載します。

すいどーばた美術学院 彫刻科講師 小野海
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デッサンは絵なので僕はやっぱり、美しさやカッコよさを感じる絵を評価したいです。


もちろん守らなければならない項目は多いですから、やりたい放題はダメですね。
でも結局は自分の絵ですから、全てを利用して魅力的な作品を描いて欲しいです。
本気で、魅力的な絵を描いて欲しいです。
僕は提出されたデッサンを、それがその人の本気であるという前提で、一つの結論として受け取ります。この人はこおいう景色を見たんだな、こんな景色を僕に魅力的に伝えてくれてるんだな。って思えると、良いデッサンだな〜ってなります。
ガッタメラータは難しいよね、緊張もある中よく頑張ったよ。とはなりません。
魅力のない絵には惹かれません。


上から順位は付いてますが、正直全体を通してそんなに差はないです。
大渋滞してる集団の中から、何か光るモノを見つけようとしましたが、どんなに探しても描かされてる絵ばかりでした。

残りの4ヶ月弱、描かされ続けるのはとてもしんどいですよ。
もっと攻めた方が良いと思います。攻めることを日常にしないと、本番ショボい作品を置いてくることになります。

「攻める」ってのは変なことをやれと言ってる訳ではないです。
モチーフをちゃんと見て判断する、というのは最大の攻めです。
攻めた分だけ比例して責任が必要になりますから。


もっと攻めてください。


すいどーばた美術学院 彫刻科主任 小川寛之
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採点を振り返って

正確に描かれているデッサンは少ないものの、熱意を感じる作品が多くみられました。
恐らく高校生が大半かと思いますが、今年は下位のレベルの底上げを感じます。
上位の作品はもう少し構造面の正確性と明るい調子で仕上げられた作品が多いとよかったです。

入試まであと4ヶ月と考えると楽しみな内容ではありました。
沢山描いて多様な見方を増やしてください。


すいどーばた美術学院 彫刻科講師 田中綾子
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みなさん、お疲れさまでした。

1年に一度の公開コンクール、やっぱり力が入りますよね。
アウトラインやプロポーションからしても、もっと正確に捉えたいというのは大前提として、全体的には少し無理をしているデッサンが多いように見えました。

形を変に引っ張ろうとして炭がギラついていたり、手数は入っているのに全体のバランスが見えておらず作業的で、ベッタリと空間が潰れてしまっていたり……
とにかく自然さからは離れてしまっているような状態です。

石膏デッサンは、器用に描けるかどうかを見せるものではなく、どう見ているかを見せるものだと思っています。
もちろん、見たものを画面に再現するには技術や知識が必要なのですが、モチーフに近づけるために使わなければ意味がありません。

モチーフとして使われる石膏像たちは、彫刻としてかっこいいものばかりです。
そのかっこよさを正確に画面に表せるよう、ゆったりと捉え、じっくり読み取ってみてください。


すいどーばた美術学院 臨時講師  遠山蘭
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皆さん、公開コンクールお疲れ様でした!

この時期に、本番と同じ6時間で仲間と戦える機会があるということはすごくラッキーなことです!
それを自分にとって意味のあるものにするかどうかは、本人次第だと思います。
今回失敗してしまった人も、それぞれ原因があると思います。
例えば、描き慣れない二列目だったから!とか、光の悪い位置だったから!とか、自分は本番に弱いから!とか…。
当日の状況によって、自分の力を出しきれなかった言い訳が沢山出てくると思います。
でもそれだけで終わってしまったら本っっっ当に勿体無い!
失敗してしまったからこそ、得るものが多いんです。
その日の自分を冷静に振り返ってみれば、もっと自分にとって重要な見落としが見えてくるかもしれない。
そういう作業を含めての公開コンクールなんだと思います。
私自身、3回公開コンクールを経験していますが、B゜は一度もとれたことがありません。めちゃくちゃ本番に弱いタイプです!でも、最後の公開コンは自分にとって、とても大きなターニングポイントになりました。やらかした後、自分なりに分析・反省することによって、その後の実技の取り組み方に変化が出てきました。今思えば、合格のきっかけになっていたんだなと思います。
本番まではまだまだこれからです。
本番で失敗しないための今!凹んでる暇なんてない!自分なりのやり方で、沢山失敗してその分自分の蓄えにしてください!応援してます!


すいどーばた美術学院 臨時講師  嶋田一輝
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今回は代打での参加となりましたが、どばたを出て2年目にして初の採点者側としての機会を頂くことになりました。
アトリエに入ってからの第一印象は、面白い個性のデッサンもあるけど、胸中のソワソワした感じが炭に出ていて、像よりも先に作者の方を手前に感じてしまう作品が多かった感じがしました。
突出したデッサンは一枚もありませんでしたが、試験当日も恐らく100%満足できるような作品を置いてくることは難しいと思います。
各々の努力や成長のストーリーも、本番では何のアイデンティティーもない3桁の受験番号に収められてしまうのが残酷です。
でも、そんな平等な条件の上で足踏みをしていては凄く勿体無いと思うので、今回の結果を全体の1つとしてしっかり受け止め、これからの時間で自分の出来ることを無理せず着実に広げていってもらいたいと思ってます。
一旦深呼吸してください。
皆さんお疲れ様でした。

すいどーばた美術学院 彫刻科講師 野畑常義
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上位の票がかなり割れて、印象も深度もバチッとガッタメラータになっているものが少なかったのかなと思います。

メソッドが出尽くしているから、ある意味手の技術はみんな身につく時代だし、順位が後ろの方の人も随分と達者だなぁとも思いました。そんな優劣はあまり感じなかったです。

参加した多くの人にとって、ガッタメラータは見慣れた像です。何度描いたかわからない人もいるでしょう。

でもどこかの美術と関係ない人が会場に連れて来られて、特定の席に座らされて、コレを目の前にした時、何か普段の生活とはかけ離れたとんでもない物体がそこにある訳ですよね。

もう一回、出来れば毎朝、その何かとんでもない物体を観て欲しいなと思うんです。

先入観の無い新鮮な発見に比べたら、知ってることなんて大した価値がないんじゃないかな?最近じゃあ知ってるせいで何かを失ってたりもするんじゃないかな?そもそも何を知ってるのかな?聞いたり読んだりしたこと以外。。

本気で捕まえに行かなきゃ、近くで遠くで、穴の開くように、サラっと一瞬見かけるように、触るように、抱きかかえるように、毎回そうやって観なきゃ少なくとも僕は描けないです。相手はとんでもないんだから。


すいどーばた美術学院 臨時講師 谷内めぐみ
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みなさんお疲れ様でした。

部屋に入り1番に受けたのは全体的に絵としてまとまっているデッサンが多いなという印象でした。
それは完成に向かおうとしている責任感を感じる部分でもあるのですが、わたしにはそれが木炭の粒子の定着具合への気の使い方とモチーフらしさ引き出そうとするバランスが少し前者に偏っているようにも感じてしまいました。
今やっている仕事はちゃんとモチーフに近づこうと出来てるか?
完成って何なのか?
目の前にある彫刻のかっこよさを自分の画面から感じとれるか?
緊張している時こそ描き急がずに新鮮な発見が出来るまでモチーフをじっくりみてみるといいのかもしれません。


すいどーばた美術学院 彫刻科講師 阿部光成
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公開コンクールお疲れ様でした。
皆さん結果はいかがだったでしょうか?
満足できた!思ったよりも振るわなかった?等々悲喜こもごもだと思います。

自分の受験時代の話ですが、公開コンクールで上位のデッサンがどうして評価されるのか分からなかった時がありました。「自分の方がカッコいいのにどうして?」
当時は学生数が多かったのでイーゼルに並びきらないデッサンは重ねて場末に置かれていました。
通称(お蔵入り)、、、、、
結果を期待してトップの方から自分のデッサンを探すのですが、一向に見当たりません。
「まさか(お蔵入り)の中じゃないよな?」
現実から目を背けるようにもう一度トップから見直します。ですがイーゼルに掛けられているデッサンの中に自分のはありませんでした。仕方なく(お蔵入りの)中から探しました。
束と重ねられた中に輝きを失ったような妙に貧乏くさい自分のデッサンがありました。
その時は現実から目を背けたいのか「まあ自分はこんなもんだろ」と半ば卑屈になって精神を維持していた記憶があります。
自分の位置からトップまでどれだけの距離があるのだろう、、、、

さあここからです!
駄目だと決めつけてしまうのか?いやもうこんな思いはしたくないと顔をあげるのか!

受験まで4か月。ひたむきにコツコツと覚悟を決めるしかないのだと思います。

最後に翌檜(あすなろ)という木を紹介します。檜(ひのき)に憧れて明日は檜のようになろうとしている木です。とても勇気をもらえる存在です。自分は檜よりも翌檜のほうに憧れます。


すいどーばた美術学院 彫刻科講師 足立仁史
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荒げずりながら熱量を感じるもの
しっかり形を合わせようとしているもの
6時間の制作時間の中でそれぞれに格闘しているように感じますが、ガッタメラータらしい頭部の量感や起伏の激しい形、姿勢、顔の印象などに迫り切れている物はまだ少ないように思いました。

自分のリズムで描写しすぎてモチーフから離れてしまっていないか
合わせようとしすぎて自分の見た視点からの臨場感が薄れてしまっていないか

モチーフを見た感覚が画面の中にしっかり再現できているか、もっとこだわっていける事が沢山あると思います。


すいどーばた美術学院 彫刻科講師 赤尾智
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全体の印象として、それぞれの絵から熱意は感じましたが、冷静さは少し欠けていたように思います。
具体的に言うと、ガッタメの細部の印象に気を取られて体と頭部の関係性や軸などの、押さえておくべき基本的なところがおざなりになっているものがほとんどでした。

コンクールはどうしても順位が付いてしまいますが、上位だから良いとか下位だからダメだという事ではありません。
受験生はよく講師から、結果に一喜一憂しないようにという話をされると思います。これはただメンタルを強くしなさいと言っているのではなく、どの順位にいたとしても今自分の持っている力をどれくらい出すことができたのかを正しく認識しましょう、と言うことです。向き合うべきことは順位ではないのです。

モチーフに対しても、結果や自分自身に対しても、表面的なところではなく根幹を見極める力を残りの期間でしっかり鍛えてください。


2022年03月19日

●2022合格者体験記特集

「インタビュー企画第41弾」
 2022合格者体験記特集


2022年度の合格体験記をまとめました。
それぞれが受験生としてのリアリティーを持っています。
来年、受験する方は是非参考にしてください。
また、今年は2名の保護者の方に<見守り体験記>も書いていただきました。




小柳湧志さん
福岡・私立九州産業大学附属九州高等学校 卒
合格大学:東京芸術大学 彫刻科

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「受かると決めたなら」

試験当日

どれだけ実力があろうが
どれだけお前なら受かると言われていようが

最終的に自分から受かりに行かない限り合格は手に入りません。

一次通ったらなんとなく二次も受かるかも!
なんてそんな甘い世界じゃないんです。

試験当日に自分を信じられるよう過ごして下さい。
自分を信じることが出来ればきっと良い結果が待ってるはずです!

その時まで頑張って下さい!!!

→→やるしかないんだぜ〜〜イ








<見守り体験記>
小柳真夢さん

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「お年玉でラオコーン!で参った!!」

息子は高校生の時に、お年玉全部で
自宅デッサン用にラオコーンの石膏像を買いました。
まだ描くの?と思うほど毎日毎日遅い時間まで、
デッサンの練習をしていました。
高校は彫刻科、学校でもデッサン、家でもデッサン&彫塑。
俺は藝大にしか行かん!高校一年生から一途に宣言する息子を
応援しない理由はありませんでした。
福岡を離れ、東京の学校に通わせる…最初はとても
親として不安でしたが、自炊したり、すいどーばたで友達も増え、
切磋琢磨している様子を息子のインスタやツイッターで見ていると、
画塾に行かせてよかったな〜と思える日々に。
一生懸命努力しているのは息子なのに、なぜか?私も一緒に
学校に通って頑張っているような気になっていました。
そしてついに!2022年、2浪を経て東京藝大合格!!
母さん感動しました 合格おめでとう!!







谷口敦暉さん
東京・都立武蔵丘高等学校
合格大学:東京芸術大学 彫刻科

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「生活面について」

主に来年以降の受験生に向けて。
実技面は他の上手な人や、講師の先生がいろいろ言ってくれると思うので他のことを書こうと思います。

僕は以前どばた以外の予備校にいて、そこでお世話になった先生はよく
「空間使えないなら彫刻やめたら?」と言っていました。
どういうことかというと、彫刻科は同じ空間、つまり同じ場所、同じアトリエ、同じ粘土、同じ道具を使って制作するため、各々が自分、あるいは周りの人を気遣って物を管理しなければいけないということです。
人の通行を妨げるような私物を床に置かない、使った道具は元の場所に片付ける、切った木、木屑は捨てる、番線は真っ直ぐ伸ばして他の人が再利用できるようにする、作った作品を作って終わりにせずちゃんと自分で解体する、など
沢山ありますが当たり前の事ばかりです。

僕自身は最後まで塑像があまり上手では無かったのですが、下手は下手なりにこういった当たり前の事だけは気にして制作していました。

生活面の緩みは確実に実技にも影響します。
逆に、そこを引き締めるとちゃんと実技の結果に結びついてくるのではないでしょうか。

以上で僕の体験記は終わりです
今までお世話になった講師の方々
支えてくれた家族、友人たち
本当にありがとうございました。







高木洸佑さん
熊本・県立第二高等学校 卒
合格大学:東京芸術大学 彫刻科

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「自分だけじゃない」

 ずっと自信が持てませんでした。

始めは自分のデッサンはあまり好きになれず、粘土も苦手意識から来る不安で目の前が真っ暗な状態。それでも、講師や周りの浪人生たちの意見を一つの頼りとして見て努力してきました。努力が報われない期間もありましたが、最後の最後に努力は自信へと変わり、作品も自分の色が綺麗に出るようになりました。
 
 足りない部分や改善点を常に考えていました。

他人からの冷たく鋭い客観的視点がそれらを素早く見つけるアイテムだと思っていました。相手からの意見をしっかり噛み砕いて、自分の作品に照らし合わせることを繰り返すうちに、自分の作品のレベルであったり状態が正確に、冷静に認知できるようになりました。

 自分を支えて頂いている人、競い合える人。
そんな存在が居てくれることに感謝しています。







伊藤陸宮さん
東京・都立総合芸術高等学校 卒
合格大学:東京芸術大学 彫刻科

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「わからん!」

僕はどばたでは不真面目、、、マイペースな生徒だったと思います。
先生には呆れられていたでしょう。

本撮は最後まで出なかったし、コンクールでも粘土のB゜は出せなかった。
デッサンも上位には殆どなれず、忸怩たる思いがありました。
一浪の春を過ぎた頃、先生に「リクはなんか4浪とかしそうだよね〜」と言われた言葉は定期的に僕の耳によみがえってきたりしました。

入試直前
「周りよりも出来ていないこと」を探せば無限に見つかってしまう。
自分を追い込んでも力が出せない。
気持ちが負けないように、実技が嫌いにならないように、気分転換や休憩を挟む事は僕にとっては必要なことでした。

1番最後に
僕が大事にしていたのは自分が描きたい!作りたい!と思ってる状態で試験を受けることでした。

合格嬉しいです。

恩師である諸先生方、お父さんお母さん
ありがとうございました!!!!







今里亮介さん
熊本・県立第二高等学校 卒
合格大学:東京芸術大学 彫刻科

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「イメージ」

金属バットが 真夜中にうなりをあげる
治療法もない 新しい痛みがはしる
クダらねえインチキばかりあふれてやがる
ボタンを押してやるから吹っ飛んじまえ

イメージ イメージ イメージが大切だ
中身が無くてもイメージがあればいい

イメージ イメージ イメージが大切だ
中身が無くてもイメージがあればいいよ







斉藤夢羽さん
岩手・県立不来方高等学校 卒
合格大学:東京芸術大学 彫刻科

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「難しい世界」

東京芸大合格。
こんなに嬉しくて、こんなにも悲しい。
こんな複雑な心境になるのは、人生でもこの1回きりにして欲しいものです。

一浪目の春、初めて予備校というものに通い始めました。仲間がいて、敵がいて。
たくさんの人と学び合える環境だったからこそ、たくさん成長出来ました。
1年間、互いに色んなことを学んだから、皆一緒に合格したかった。けれど定員は20名。

発表の時、自分の番号があったにもかかわらず、悲しい気持ちや悔しい気持ちでぐちゃぐちゃでした。

でも皆、どんな進路に進もうと、なんだかんだで美術の世界に生き続ける。ずっと良きライバルだと思っています。

皆と、これからも戦い続けます。







竹林満里奈さん
長崎・私立長崎日本大学高等学校 卒
合格大学:東京芸術大学 彫刻科
東京造形大学 彫刻専攻領域

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「自分よりたしかなものなんてない」


「失敗は本番に持っていけばいい」
これは自分を合格に導くおまじない
毎日の様に描いたり作ったりする作品は、毎回良くも悪くも沢山の反省があった。
それに3浪になって、やっと気づいた。

失敗して落ち込むより効率で考えたら自分の弱点の反省と対策を練る方が近道だろう。
自分を助けてあげれるのは自分しか、、いない。

失敗が嬉しかったわけじゃないけれど、失敗のおかげで気づきが生まれ、どんどん自分が変わっていくのが少し嬉しかった。

失敗や自信が無いのは悪いことじゃない
!!!むしろラッキー思考!!!


3浪目の最後は私が私のヒーローになった







杉山吟さん
東京・私立足立学園高等学校 卒
合格大学:東京芸術大学 彫刻科

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「自覚」

「自覚する」ということは自分にとって最も優先される重要なことだ。
なぜなら自覚することで全ては始まるから。
今自分が置かれている状況、なぜ実技がうまくいかないのか。理不尽に思うこと。そんな自分に降りかかるもの全て、だいたい自分のせいで、自分の弱さ、浅さ、未熟、厨二病、かわいそぶり、腐り、借り物の気持ち、それに気づいた時それをちゃんと認めること。
そうしたらやらなきゃいけないこと、直さなきゃいけないこと、考えなきゃいけないことが見えてくる。
自覚さえすれば、次の選択肢が出てくる。
もし自覚したことを忘れたり、選択したことが間違っていて、また振り出しに戻っても構わない。
何度でも痛い目を見て気づくべきだ。
できた人間じゃなくていい。

何周も何周もして太く重く深く、見た目は変わらなくても信用できる自分になっていく。







<見守り体験記>
杉山孝順さん

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「小学生から剣道漬けだった息子が、高一の進路指導で突然美大に行きたいと言い出しました。
それからは剣道と美術の二刀流。
毎日が大車輪。
最初は上手くなりたいだった気持ちが、こんな物が造りたい、こんな事もやってみたいに変わってから、彼の中で美大に行く事はゴールでは無く、スタート地点に代わって行きました。
伸び悩みや、コロナ、色んな問題で息子の眉間に皺が寄る事が多くなった高三の夏。
初めてのどばた夏期講習。
息子の表情がガラッと変わりました。なんてイキイキとして楽しそうにしているんだろう。予備校によってそんなに違うもの?
確かめるべく向かった一般公開の講習会で私が感じた事は『楽しい!』そして講師人が『熱い!』これはキラキラしてしまう!!
何かを造る事は、基本ワクワク楽しい事だったはず。でも美大受験と言う中で忘れがちになってしまう感情。それを思い出してがんばれたのは、講師の皆さんの物を造る姿勢、掛けてくれる言葉の数々だったと思います。
この春、息子はいよいよスタート地点に立つ事が出来ます。
今まで彼に携わってくれた全ての人に心から感謝します。本当にありがとう御座いました。
そして、スタート地点に立つ息子へ
そんな簡単な道では無いのは分かっています。でも、あの夏のワクワクを忘れずに自分の足で突き進め!母はいつだって応援してます!








清水凜さん
東京・都立総合芸術高等学校 現役
合格大学:東京芸術大学 彫刻科

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「たくさんの人に支えられて」

PDCAサイクルをまわす
 P: Plan(計画)
 D: Do(実行)
 C: Check(評価)
 A: Action(改善)

これを母から教わりました。
これはとても大事だと思います。
しかもそれを「やり続ける」こと。

ポジティブな方向に気持ちを持っていってやりきる。
やりきったら冷静な目で見直してできていないところを修正する。
また次の計画を立て準備をしっかりしてやりきる。
この繰り返しです。


描けない造れない、そんな時期を楽しむことも大事だと思います。
スランプというのは、いつもより少し高いハードルが目の前に立ちはだかってうまく前に進めない。そんな状況。
でもプラスに考えて、この時期を乗り越えたら成長できる!と思い込む。
だからつまずいてると思ったらこれを乗り越えたらまた今よりもさらに上に上がれるチャンスだ!と考えて気分を高め、どうにか戦う。
私は考えすぎてしまう癖があった為、常にどうにか思考をプラスに持っていくようにしていました。

あとは自分をよく知る事も大事にしていました。
素描ではどんな心境の時うまくいっていて、どう感じながら制作すると納得する作品が生まれるのかを知る。
自分なりの描き出し方や、自分の作品の魅力とは何かをじっくり考えたり。
塑像では作り出しや作りこむ上でのルーティンを決めて、また自分が何が好きでどんな形を作りたいかなどを知る。
たくさん周りから影響は受けつつ、でも決して流されることはないように、せっかくどばたで最高の環境で制作ができるのなら、その環境を最大限に活用させてもらうことが良いと感じていました。

お世話になった講師の皆様、失敗した課題でも多くの学びとたくさんの気づきを与えてくださり、ありがとうございました。
的確なアドバイスをくださった先輩たち、コンクールや授業課題でやる気を奮い立たせくれたどばた生、色んな相談に乗ってくれた同期の皆、ありがとうございました。
そして、毎日お弁当を作ってくれたお母さん、毎晩深夜の帰宅を待ち、コンクールで順位が良くても自分の未熟さに何度も気づかせてくれ、家でも講評してくれたお父さん、1番そばで支えてくれた家族には感謝しきれません。飴と鞭の割合最強でした。

今回の結果は、今後の自分の活動の励みとしてこれからも精進し続けます。

気づいたらたくさんの人に支えられてました!
ありがとうございます!!







新井馨さん
群馬・市立高崎経済大学附属高等学校 卒 
合格大学:東京芸術大学 彫刻科

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「どうしてこうなった」

自分は現役生の時、油画科の金沢美大志望でした。何がどうなって油画科金美志願者が彫刻科藝大志願者になったのか…みんな不思議がって聞いてきてたのでここで話そうと思います。転科を考えてる方の助けになったら嬉しいです。あと長くなると思うので読む方にはご迷惑をかけます…。すみません。

〜経緯〜
浪人が確定してからどばたの油画科の面接に行き、先生にここは金美には向いていない、そして君は何がしたいのかよく分からない。遠回しにそう言われた気がしました。そもそも現役時も油画科と彫刻科で迷ってましたし、抽象的なものより写実的なものが好きだとか石膏デッサンが好きだとか金銭的に公立が良いだとか言う大雑把な理由で金美を志願していました…のかもしれません。自分が何をしたいのか、何になりたいのか、完全に迷子になりました。悩んだ挙句彫刻科への転科を考えてすいどーばた彫刻科の小川主任に相談することになりました。
そこで小川先生は「1度体験入学という形でいいから彫刻科に来てみて、それから考えてみないか」と快く迎え入れてくれました。それがすいどーばた美術学院彫刻科の門を叩くきっかけでした。

そして、体験入学中の手の塑像課題の時小川主任から、

「彫刻向いてるんじゃない?」

と言われました。正直、先生もただの優しい嘘であり本当はそんなこと思ってないんじゃないのか?などと弄れた考え方をしていました。ですがメンタルをズタボロにされた当時の自分には仮に嘘だったとしても誰かに認めてもらえた感じがして凄く嬉しくて、これを機に色々と深く考え直しました。
転科して現役生の経験が全て無駄になってしまうのではないか…みんなより1年出遅れても戦っていけるのか…親の金を無駄にさせてしまわないか…自分は本当に彫刻が向いてるのか…というか自分はそもそも美大に向いてるのか…はたして将来どうするのか…堅実な選択だったのか…自分は何になりたいのか…今何をすべきなのか…全てが不安でした。
ですが…!と言いたいとこですがこれは無理です。常に悩んで苦しみながら生活していました。僕に限らず多くの人が苦しいかと思います。でも悩みながらも最後まで彫刻科として受験を乗り切れたのは、同じ苦しみを知ってる講師の方々や同じ浪人生や常に自分の味方でいてくれる親などの優しい言葉に励まされたからだと思います。
ぶっちゃけ彫刻科に転科したことが本当に最善策だったかとか誰も知りませんし、美大に入ったから将来がどうとかなってみないと分かりませんし、何かを選ぶなら自分が楽しめるか納得できるかまたは続けられるかを基準に決めていいのかなと今では思います。

〜実技について〜
油画科から彫刻科に転科して正式にどばちょうに所属し、初めてのコンクール。最下位を取りました。採点シールすら貼られてません。絶望しました。
田舎のちっちゃい高校ですこーし塑像を齧った程度の実力ではどばたの彫刻科にはまったく歯が立ちませんでした。
そのコンクールで自信もプライドも悉くへし折られてまったくもって合格する未来が見えませんでした。でも入学した以上ここでやめるわけには出来ず、何より莫大なお金を投資した親に合わせる顔がありません。
そこで何一つやり遂げることができなかった自分に人生で初めてスイッチが入りました。とりあえず実技を伸ばさなきゃ、どこの美大でもいいからとりあえず受からなきゃ、と思いビビりながらも話したことも無い実力者の多浪生に話を聞きに行ってみたり…できる限り表現方法を吸収出来るよう、彫刻科に限らず参作室にある全ての参作を見たり…先生の言ってることが分からなかったら正直に聞きに行ってみたり…その他にも自分が思いつくことはできる限り試してみました。この約1年間の間に自分より明らかに経験値も実力もある周りの生徒を追い越さなくてはいけない事実にまたも絶望して、体調もメンタルも崩しまくりの生活でしたが諦めず頑張りました。少しずつですが実技も成長しました。自分の実技はほとんど見様見真似で得た小手先のテクニックであり決してオリジナルとは言えませんでした。悪く言えばパクりであり良く言えば模倣です。恥ずかしがらずに色んな人に質問しに行くことでかなり有益な情報を得ることは多かった気がします。
沢山の人のアドバイスや知識を鵜呑みにはせず、でも頑固でワガママにはならず常に柔軟に、正しい知識なのかまたは自分のやり方に合っているのかしっかり吟味しました。
他にも実技では常に成長させるようデッサンでも塑像でも1課題でも必ず「この課題で自分の実技を変える」と常に変化を求めていました。もしそれが悪い変化だった場合は先生方が軌道修正してくれます。個人的には、変化を求めない時は今の自分の実力に僅かでも慢心してる時だと思います。今でこそ言えますが常に1位を取るような実技を目指して周囲の仲良くしていた友達も本番では殴り倒してやるくらいの気持ちを隠して接していました。

〜最後に〜
実際転科してわかったことは油画科の木炭デッサンの経験で絵にするのが早いのと、魅せ方にバリエーションがあったこと、トーンの合わせ方など、思ってたより自分の「個性」として強みになったと思います。僕に限らず転科してきた生徒は何かしらの強みがあると思うので変にみんなと違うことを恐れない方がいいかなと個人的には思いました。
あと、初めて小川先生に褒められた手の塑像が二次試験の課題に出たのは運が良かったなぁと思いました。







関楓矢さん
東京・都立総合芸術高等学校 卒
合格大学:東京芸術大学 彫刻科

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「楽しむ」

メリハリが大切だと思います。
気合を入れる、息を抜く。
後者が先行してしまわぬよう、
どばたには合格を掴むために来ていることを忘れず、基礎をおろそかにしない。
自己の表現やこだわりも大切だけど陶酔せず、受験には「評価する人」がいることを常に意識する。
また、たとえ行き詰まった時でも制作中は彫刻を楽しんで、その他の迷いはアトリエに持ち込まない事。これらが私の支えになりました。
彫刻って本当に良いもんだ!!









みなさん体験記ありがとうございました。
これからの受験生の参考になれば幸いです。

2021年10月17日

●2021年全国公開コンクール

「インタビュー企画第40弾」
 2020全国公開実技コンクール特集

                       担当 野畑常義 田中地平 


ーすいどーばた美術学院講師8名の採点総評コメント掲載ー
各講師から、今回の公開コンクールについての総評を書いてもらいました。
それぞれの言葉をしっかりと受け止め、今後の制作の参考にしてもらえればと思います。




文章が送られてきた順に掲載します。


すいどーばた美術学院 彫刻科講師 田中綾子
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みなさん、お疲れさまでした。

描き始める前にどんな狙いを持って取り組みましたか?

自分だったら、円盤投げらしい空間を掴みたいなあと思います。
しかしそのためには、動きを捉えなければいけないし、プロポーションが狂うと別人になってしまう。
ぱちっとした形の強さも大事だし、顔もそっくりにしたい…

今回は、見ていることに偏りがあったり、視野が狭くなって全体がバラバラになってしまっているデッサンが多いなあと感じました。

たくさんの要素が関係していない状態では、円盤投げにはなっていきません。
一つのことだけを気にしていても、円盤投げに近づけることはできません。

様々な要素が絡み合って初めて、その像が画面の中に出来上がっていくのだと思います。
そうやって円盤投げらしさを掴んだ上で、「自分には円盤投げのこういうところがかっこよく見えた」と伝わるデッサンになっていると良いのかなと思います。

すいどーばた美術学院 彫刻科講師 野畑常義
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みなさんお疲れさまでした。

今年、初めてどばた公開コンクールの審査に参加しました。ふだんどばたであまり見かけない個性のデッサンもたくさんあって面白かったです。

あまりいいのが無かったと言う声があるとおもうんですが、自分は少し意見が違って、こっちが本当の現在の実力だと思うんですね。
「受験本番では過去最高のが描けた」みたいなこと言う合格者もたまにいますが、テンション上がってそう思ってるだけで完全に気のせいだろと思っています笑。

なんにせよ、コンクールで大事なのは後ですよね。今回の評価に一喜一憂せず、ここから入試までの過ごし方で結果は大きく動きます。だから、悲しんだりヤケになったり(それらは未来の自分の可能性を信じていない時間です)するんじゃなくて、自分の現在地点を一度受け入れて欲しいと思います。

今は昔よりだいぶ受験者数が減りましたが、石膏デッサンと言う特殊フォーマットのサーキットはむしろ先鋭化しています。もちろん石膏デッサンはすごく勉強になりますし、彫刻科特有の競技性というのかな?コンクールカルチャーはそれはそれで面白いと思います。ただ、石膏以外のもののあまりの描けなさに亜然としたりすることもしばしばです。クロッキーや風景をスケッチしたりすることと、石膏単体というモチーフが繋がってないひとが多いんじゃないかな。

僕が今回の結果を受けてなにか総合的なアドバイスがあるとすれば、クロッキーやって下さい。友人でもモノでも何でも描いたらいいんです。普段の石膏の課題をこなす以外の時間でです。そしたらもっとひと繋がりのモノとして、連動した動きとして、円盤投げも見えてきます。手のクロッキーをたくさんするだけでも、石膏の形がもっと合うように感覚がチューンニングされます。

今日参加した全ての人の健闘を祈っています。

すいどーばた美術学院 臨時講師  谷内めぐみ
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みなさんお疲れ様でした。

6時間という時間をどう使うのか。
観察って言うけれど観察ってなんなのか。
完成ってなんなのか。
今回全体をみて描くことに一生懸命になって画面が暗い印象の実技が多い様に感じました。
モチーフの正確さは勿論大切ですが、描き手自身の視点だったり感動が伝わってくるというのが目に止まる実技には共通してあると思います。
自分で自分を一押し出来る様な自信を持てる部分が一つでもあれば自然と他者の目を引く実技になっていくのではないかと思います。
試験本番までの間自分が表現したいのは何なのか落ち着いて考える時間を大切にして欲しいです。

すいどーばた美術学院 彫刻科講師 小野海
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2014年、僕が一浪の年です。その年の公開コンクールの出題が今回と同じく円盤投げでした。

数日前からかなり意気込んでいて、当日はかなり緊張してましたね。部屋に入って自分の座席に座ると、いわゆる当たり位置で、瞬時に今日描く絵のヴィジョンが見えました。それまでに見たことのある同じ位置の参考作品が無数に脳裏に浮かびあがって、朝の時点で「これはイケるな」と思ってました。そこから6時間、一生懸命絵を仕上げるために描きました。

結果は惨敗でした笑。


話は変わりますが「モチーフとの対話」って講評でたまに出てきますけど、どういう意味でしょうかね?是非今一度考えてみて下さい。

今回のデッサンを描く前と後でみなさんの中に何か1つでも良いです、円盤投げという作品から発見や感動があったでしょうか?振り返ってみてください。6時間も対峙していて1つもないのはヤバイです。
モチーフはただそこにあるだけで、様々な言葉をみなさんに投げ掛けています。大切なことはみなさんがそれを聞き取れる状態にあるかどうかですね。今までに何回描いたことあるとか、どれだけ知ってるとか、そんなことは然程関係ありません。

今日の自分が、今日のモチーフと対話して、今日の1枚を描く。


一浪の公開コンの日の僕は、全然対話できてませんでしたね〜、一人言でした。

そんなわけで、対話が画面から伝わってくる作品はやはり魅力的ですね。
この人は今日1日、円盤投げとよく話しあったたんだな。そういう作品からシールを貼らせてもらいました。


残り5ヶ月と数日、頑張っていきましょう〜!

すいどーばた美術学院 彫刻科講師 柿坪満実子
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皆さんお疲れさまでした。
今回は安心して見れるデッサンが少なく、円盤投げの動きなど、基本的に押さえなければならない要素を最後まで気を付けながら進めた人は少なかったのではと感じました。
冷静に自分のデッサンで円盤投げがどういう状況になっているかということも大切ですが、同時に絵として自分にはどんな景色が見えていたのか、何を表現したいのかという事も空間に在る彫刻には大切な要素だと思います。

実技中に焦りや不安で気持ちが一杯一杯になっていませんでしたか?
何が出題されても、普段と違う環境で緊張している時でもしっかりと自分自身をコントロールしてあげてください。自分を受からせる為に、落とさない為に、出来ることやしなければならない事が其々にある筈です。
現状から目を背ける事なくこの機会にしっかりと見つめ直して、また明日から頑張りましょう。

すいどーばた美術学院 彫刻科講師 阿部光成
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皆さんお疲れさまでした。

今回の課題円盤投げでしたが、残念ながら、これはいいね!と感じる実技は少なかったですね。その原因を考えてみます。まずは彫刻の三大要素ですが、皆さんもちろん知っていますよね。そうです、量、動き、構造です。空間に量を与え動きを付けて構造を成すってことですよね。そこに光が当たり、像に陰影が生まれ、初めて表情が見える。またコントラポストって聞いたことありますよね。彫刻が自然に活き活きとした人間に見える様にするにはどうすればよいか?ギリシャ時代に獲得した彫刻の大切な意識。重心の意識ですよね。

皆さんはコントラポスト力がまだ低いです。彫刻の豊かな表情はどこに生まれるのか?そんな根っこをもう一度考えてみてください。

すいどーばた美術学院 彫刻科主任 小川寛之
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採点を振り返って。

今年は上位の作品から一長一短の絵が多く、格付けしていくのが下位の方まで大変でした。

その多くは、重心の掛け方を見れている人が半分もいなかったこと。
空間の中に人物を立たせる、という感覚を持ちたいですね。

大きいモノを広い視野で把握してこそ彫刻を作っていけると思いますので、今後の皆さんの頑張りに期待したい所です。

頑張ってください。

すいどーばた美術学院 彫刻科講師  足立仁史 
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皆さんお疲れ様でした。

円盤投げは6時間で描くにはなかなか大変なモチーフだったとは思います。
しかしトルソを描くうえで人体構造や動きは避けては通れません。その理解度や再現度が評価を分けるポイントになったと思います。

もちろんデッサンで大切な要素はそれだけでありませんが、彫刻を学ぶ皆さんだからこそ、大切にして欲しいですし、探求する楽しさにして今後に活かしていってもらいたいです。

すいどーばた美術学院 彫刻科講師 アイザック・レオン
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みなさん、公開コンクールお疲れ様でした。
円盤投げには彫刻らしい構造があると言われてますよね。なぜでしょうか?並べられていたデッサンを見ながら一枚一枚違和感を持ちながら考えていました。
描く事で精一杯になり構造の確認、人としてのバランス、円盤らしさへの確認が少なくなっていませんでしたか?高校生と一浪生にはまだ難しいと思わせる事は多いかもしれませんが、円盤投げは彫刻的構成においては基本です。多浪生は惰性的にならぬように、気付いたら描き終わるのが怖いですからね。最後までやり取りしましょう。
デッサンは素直になれば描けると思いますが、モチーフを捉えること、理解する事はまた別の話しです。漫然と表面を見つめても理解には至りません。洞察力が必要です。目の前の彫刻を理解すること、頭の中で動きの仕組みや構造を再構築する行為は制作において必要不可欠です。ですから彫刻という物をもっと理解してください。
多様な見方が大切です。
何となくやらないでください。
いっぱい研究し、彫刻を熱く語れるようになりましょう。
次回に円盤投げを描く時にはもう少し動き合わせられるかな?

すいどーばた美術学院 彫刻科講師 田中地平
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全体を見て感じたのは円盤投げに迫れていたデッサンが少なかったということです。上位でも円盤投げの動きが合っているものはありませんでした。
今回は全体に形を描くことに一生懸命になりすぎて全体のプロポーションや動きの観察が少なかったように思います。まだ形を直すことや形を描くことばかり気にしている人が多かったので、表面を見ることも大事ですが見方を増やしてデッサンの内容を上げていって欲しいです。
ただ今回の結果は緊張する場面で今出せる力の目安が出ただけで結果が出なかった人でもそれほど落ちこむことはありません。これからより頑張っていけばいいだけなので、本番までできるだけのことをしましょう。がんばってください。

2021年03月18日

●2021合格者体験記特集

「インタビュー企画第39弾」
 2021合格者体験記特集


2021年度の合格体験記をまとめました。
それぞれが受験生としてのリアリティーを持っています。
来年、受験する方は是非参考にしてください。
また、今年も保護者の方に<見守り体験記>も書いていただきました。






嶋田一輝くん
茨城・県立取手松陽高等学校 卒
合格大学:
東京芸術大学 彫刻科
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「一歩」

〜自分の彫刻〜
まだ美術高校の学生だった頃、(専攻を決める時)色々な科を体験してみた上で「彫刻」を選びました。理由は至ってシンプルで、「これは好きだ。楽しい」と思えたからです。どんなに実技が出来る人でも東京芸術大学を受験をする際、浪人は覚悟の上で受けてると思います。そして、もし自分のように浪人してしまった時にもう一年頑張れる「好き」や「楽しい」はとても強い力だと浪人をして感じました。
〜環境〜
自分は藝大志望が決まった際、両親に「一浪までは許す」と言われ受験し、結果的に二回連続で一次落ちしてしまいました。唯一受かった私大は金銭的に行かせられないと言われた時の絶望感は今でも覚えています。その時に初めて自分が"一浪まで"という言葉に甘えが出ていたのかも知れないと気付きました。
でも美術は好きだし、美大を諦め切れなかった自分は全力で父親を説得して、「予備校に近い埼玉(一浪までは茨城県から通っていた)からバイトをする条件で一人暮しをさせて下さい」と反対を押しきり懇願しました。
幸いにもどばたの奨学生制度がとても手厚く支援してくれたので、父との交渉が通りました。
最初は「バイトをしながらだと受験に集中できないのではないか」「疲れてしまって実技どころではなくなってしまうのではないか」など不安がありましたがそんなことは無く、逆に新たな環境に置かれて実技を含め毎日が新鮮に感じられました。以前の様にどばたから帰ったら夕飯が置いてあるとか、洗濯物が畳んであるとかは当然無くなってしまいましたが、良くも悪くも「自分を管理していく力」はそういう環境下に置かれる事で自ずと身につける事が出来たと思います。
〜すいどーばたでの生活〜
どばた昼間部での生活を一言で言うと「楽し過ぎる」。実技一色にならないよう球技大会、打ち上げ、研修旅行、山登り、挙げていくとため息が出るくらい一年で楽しいイベントが詰め込まれています。ずっとここに居たいと思ってさえいました。同じ志を持つ友達と過ごすから尚更。ですが今年はコロナ禍でそんなイベントが全潰れしました。最初は残念でしたが、「もうここには実技しか残されてないのか」とふっ切れて、受験というものがより強く感じれたので結果的には良かったのかなと思います。
高2の11月から基礎科に通い始めて二浪した受験生活だったのでもっと長々と語る事は出来ますが、為にならないと思うので体験記はこのくらいにします。
最後に自分を支えてくれた高校の友達、先生、美術の面白さを教えてくれた中学校の美術の先生、自分に受かる理由を与えてくれた基礎科、受験科の講師。両親並びに祖父母に感謝します。長い文章に付き合って頂きありがとうございました。







水上修人くん
東京・明星学園高等学校 卒
合格大学:
東京芸術大学 彫刻科
武蔵野美術大学 彫刻学科
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「サンダルにGがハサまった事もある」

友達がバンクシーかもしれない

父がエヴァに乗れと言うかもしれない

前澤友作に100万円貰えるかもしれない

試験に落ちるかもしれない

一生報われないかもしれない

今死ぬかもしれない

そんな時に、それらを受け入れて自分を信じてみる

信じた自分に裏切られるかもしれない、泣きたいくらいカッコ悪い自分を知るかもしれない。でも自分の理想にウソをつく事は絶対にしない、そしたら昨日の自分より今日の自分をちょっとだけ好きになれると思います。






古賀悠悟くん
東京・私立海城高等学校 現役
合格大学:
東京芸術大学 彫刻科
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「考える」
映画のCGに興味があって、将来はその道に進もうと思っていました。初めは専門学校に通うつもりで藝大を目指すつもりは無かったのですが、高2の秋頃に「道具の使い方を学ぶより、表現の方法を学んだ方が良い」と言われたことをきっかけに、彫刻科を目指そうと決めました。右も左も分からない状態で、一番彫刻科への合格者の多いすいどーばたに入ることにしました。
基礎科に通っていた頃は、とにかく下手でも丁寧に一歩ずつ形にするということを大事にしていました。
基礎科の先生に夜間部を案内してもらったときに「一年後にはこれくらい描けるようになる」と言われても、とても自分がそれを描けるようになるとは思えませんでした。だけど一歩一歩そこに近づいて、最終的には浪人生と戦っていかなきゃいけない、そのためには毎課題少しでも上手くなっていくしかないんだと思っていました。
これからは浪人生のレベルに追いつくということを本格的に意識していこうと思っていた矢先、コロナウイルスの影響で夜間部の授業はリモートで行われることになってしまいました。リモート授業はあまり集中出来なくて、いかに自分が周りから刺激を受けて制作していたのかということを痛感しました。一浪生と現役生は講習会を除けば制作時間に3倍の差があります。集中出来ない一方で常に差が開いてしまうという焦りは大きくなっていきました。
リモート授業が終わり本格的に制作が始まって、差を埋めるためにはがむしゃらにやるだけではだめだと思うようになりました。自分に何が欠けていて何ができるのか、上手い人はどんな考え方をして手を動かしているのか、どばたが無いときでも考え続けていました。
最終的にはデッサンや粘土のやり方、作り方はもちろん、制作に対する態度に関して学ぶことが多かったと思います。自信を持って、かつ謙虚に作品に向き合うという姿勢はこの一年で新たに身についたものです。これがどばたで得た何よりの財産だと思います。
試験当日は、デスケルを持つ手は震えていたけど、普段どおりのものは作れたと思います。二次試験は課題こそ見慣れない形式ではあったものの、求められていることを考えて、その枠の中で最大限良い作品を作るというところは普段と同じだと思って作りました。
学校の友達、どばたの友達、講師の方々、両親、大勢の人に「おめでとう」といわれて、自分がどれだけたくさんの人に支えられてきたのかを改めて実感しました。ありがとうございました。
まだスタートラインに立っただけだと思っています。目標を目指してこれからもがんばります。






秋谷望月くん
東京・都立総合芸術高等学校 卒
合格大学:
東京芸術大学 彫刻科
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「モチーフに感動を。作品に念いを。」

現役時の受験では、自信満々に描いたデッサンがまさかの一次落ち...。 この直後から、強いショックと共に自信と確信に揺らぎが出てしまった。 「うまいデッサンとは何だ?」「そもそもうまければそれでよいのか?」「何を魅せる?」 「どう描く?」「どう創る?」「自分の魅力は何だ?」...負のスパイラルに落ち迷宮の中に棲んでいるかのようだった。 そんな頃、リモートの課題で“鉛筆での素描”に取り組んだ。木炭にはない鉛筆の作り出す線や陰影に魅力を感じ、ただ夢中になって描き進んだ。とにかく夢中だった。そして楽しかった。 結果、その講評で「秋谷は素描を絵として魅せる事が出来るね」と言われ、“魅せる事ができる” という、もしかしての自分の長所をみつけたように感じた。 自分は真面目だ。それは、つまらない人間、普通だと言われているようで嫌悪してきた。 だけど、それを武器にしたらいい。欠点をことごとく潰していく!まずは、講評で指摘された事のある“形の正確性の無さ”を克服する為に、ひたすら“像の構造”“動き”“パーツの位置”等、考えられる“狂い”を無くした。時には鏡を使いデッサンを反転して確認したり、デスケルの線を増やしてみたり...とあらゆる事を試した。真面目に。 自分の欠点を無くした盤石の上で、長所であるはずの“魅せる”を創る為に、モチーフとの向き合い方を考察した。「モチーフを感じたらいい」「その魅力を感じたらいい」「そして何を伝えたいのかを感じたらいい」 あの素描の時の様に夢中になって取り組めば結果がついてくる。そうなると楽しい。そうなるとそれが作品として伝わる事が判った。 受かる為だけに向き合ったらつまらない。魅力が無ければつまらない。そこに自分が反映されているか?を見定めながら、自分に言い聞かせながら取り組んで来た。 最高のライバルたちと、時には仲間として楽しみ、時には嫉妬し、互いを高め合って来たどばたでの一日一日がとても愛おしい。それが自慢だ。最高の環境の中、これもまた最高の講師陣に恵まれた。ここで学んだ事が誇りだし忘れる事は無いだろう。 合格への道はひとりひとり違うと思うけれど、他人に惑わされず、自分らしい合格をつかみ取って欲しい。努力して来た自分を信じてほしい。




<見守り体験記>
秋谷 恵理子さん
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「どばただから」

「画塾は、どばたにしたいんだけど...」 息子から相談されて、トクンっと小さなトキメキがありました。 ー何を隠そう、私もどばたにお世話になった一人だからです。 地方生だったため、講習会に参加するだけではありましたが、昼間部・夜間部共に受講し、慣れない都会でハードながらも充実した時間を得ました。 ーそうか。息子も、私と同じ空間で自分と闘うんだ... 通り過ぎたあの頃を懐かしみつつ、「どばたなら大丈夫」と、根拠の無い確信のようなものを感じたのを覚えています。 ー何故だろう?...どばたで学んだあの頃は、確かに私の人生の中で最も熱量が高くて、多くを吸収していたし、美大時代よりも充実していたとさえ言えるような...後の人生で困難があっても、どばた時代を思い返して、がんばれたんだよなぁ。 そんな事を考えていたら、息子はどばたに任せればいい!例え進路が実現できなかったとしても、人生の宝を得るはずだから!と決めたのでした。 ーなので、苦しさも悩みも喜びも経験済みな母は、息子の話をよく聴いた受験期間だったと思います。“聴く”って、耳と目と心はあるんですけど、“口”は無いんですよね。たまに苦言も言いましたが、彼はよくしゃべりました。母は、ひたすらあたたかいご飯を作り、聴きました。 一浪にはなりましたが、心配はしていませんでした。思った通り、昔から変わらない“どばたイズ ム(?)”を持った講師陣に支えられ、よきライバル達に刺激を受けて、この1年で心が太くなったようです。確かに綺麗事だけではなかったけれど、一浪して得たものは大きかったと思います。 親には出来ない支えをいただきました!どばたでの出会いは一生ものです。母も、あの頃の先生と手紙のやり取りが続いているんですから。凄いでしょ?
そう、どばただから大丈夫なんです。






町田芽生さん
栃木・県立栃木女子高等学校 卒
合格大学:
東京芸術大学 彫刻科
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「浪人生活」
私は自信というものが全くありませんでした。
浪人からどばたに来て、知識も少ないし、コンクールは力が入りすぎて失敗してばかりで入直までB゜を取ったこともありませんでした。

なので、とりあえず試験ではできることを全力でやりきるということを大きな目標にしました。
今の自分は何を感じているのか
今日の実技の反省と改善方法
自分はどうして芸大に行きたいのか
芸大に受かるために今の自分に足りないことは何か
どうすれば足りないことが補えるようになるか
それを毎日たくさん考えました。でも、考えすぎるとだいたい上手くいかないということもわかりました。結果よりも毎日立てた小さな目標が達成できているかを大切にして過ごしました。

試験のときにできることを全力でやりきるという目標は達成できたと思います。
二次試験ではパニックになったりもしたけれど、最後は受験生ではなく「私」として自分の作りたいものを楽しみながら全力で作ることができました。

憧れの芸大に合格できてとても嬉しいです。
たくさんのことを教えてくださった先生方、毎日おいしいお弁当を作って支えてくれた家族、たくさん応援してくれたお友達、そして毎日駅までの長い道のりを頑張って走ってくれた私の愛車、本当に本当にありがとうございました。
これからも頑張ります。






團野安莉奈さん
兵庫・県立明石高等学校 卒
合格大学:
東京芸術大学 彫刻科
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「まぁ知らんけど」

自分が「こういうものが見たいな、この世にあればいいな」と思うものを自分以外の存在との関係も考えながらつくれるようになること。
その為には他者の意見や作品に触れる必要があったし、経験や知識が必要だったし、自分が開かれた状態でいることが必要でした。
外からの情報は得れば得るだけ助けになると思います。それを使いこなす賢さも、大切です。

でも本当に重要な、向き合い、学ぶべき対象は、自然が自分の目の前で繰り広げている光景だと思います。
世界は自然で、自然はあるがまま、ただそういう形で変化しながら存在していて、それを受け取った自分という存在との関係でのみ生まれるものがあるんです。
他人ではなく、私だけが、あなただけが。
みんな別の個人ですから、別の形が生まれます。
私が介入し、表現することで人の中に起こせる共感や心の動きが必ずある。
そんな確信があったから、浪人生活はそれなりに一喜一憂しつつも、根元の所では諦めることなく安心して制作を続けられました。詰めを他人に委ねることは無かった。

基礎は逃さず、でも個人的な感動や性格も忘れずに。反抗や失敗をしていいと思います。自信がないなら恥をかくつもりでやるぐらいでいいんですよ。案外なんて事ないです。

精神論というより、全部ただの二浪を経た私の実感です。
だからまぁ、知らんけど






遠山蘭さん
合格大学:
東京芸術大学 彫刻科
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「伝えたいこと」


わたしは絵を描くこと、粘土遊びをすること、工作をすること、どれも大好きです。これは作品をつくることに直結します。
その延長線上に受験美術もあると思います。


過去の自分、もしくは 正解を求めて悩んでいる人へ

上手くなろうとなんてしなくていい。長く練習すれば誰だって必ず上手くなるから。優等生なんかにならずに、本番までに、熱く熱くたくさん試して、たくさん失敗して学んでください。かっこ悪くていい。取り繕わなくていい。理解されなくたっていいです。プライドなんてへし折って、しくじったらへへって笑ってみてください。死にはしません。

自分が見たもの感じたものを忠実に再現、表現するためにテクニックを使ってください。テクニックだけになってはいけませんし、自分本位になってもいけません。
自分が見たもの感じたものは何一つ間違っていません。問題はそれを伝えるためにいかに配慮するかです。信じてあげてください。
自分が腑に落ちるまで、納得するまで続けてください。絶対に手を抜いてはいけません。

そして、独りだと思わないこと。
周りを解ろうとすると、周りも歩み寄ってくれます。それを突き放したり、諦めてはいけないと思います。周りと繋がっていることはとても大事なことです。
これは決して馴れ合いなんかではありません。大切だと思う人をちゃんと大切にしてください。自分の居場所を自分でつくってください。当たり前だけど結構見落としがちです。私たちは独りで戦っているわけじゃない。

とにかく何事も自分なりの向き合い方があるはずです。それをどれだけ時間がかかってもいいから自分で自分のやり方で粘り強く見つけてください。

まずは自分を理解して自覚することから。
自分は何が好きなのか、何をしている時が居心地がいいのか、何が嫌いなのか、小さなことでもいいから誰にも言えないことでもいいから自信を持って自分の中で言い張ってください。

そういう一つ一つが、毎日の自分をつくっていると思います。そしてそれは自ずと作品に現れます。だから、小手先のテクニックだけではダメだと思うんです。取り繕ってもそういうのってバレます。受験美術での作品って自己紹介だから。


高3から昼間部に来て二浪まで、わたしの受験期間は一筋縄ではいかないことばかりでした。息苦しい毎日でした。だってこんなことをうだうだと考えるタイプだから。煮詰まりすぎて疲れちゃいます。

そんな中で、友達と語ったり出掛けたり、作品を褒めあったりする時間は、とても夢のような幸せな時間でした。たくさんの成長のヒントが散りばめられていました。
わたしは未熟だし、すぐに意地張ったり強がったりしてしまいます。そういうのを見破って、愛情を持ってコミュニケーションを測ってくれる周りの人達に本当に感謝しています。出会えて良かった。

忙しなく時間をかけてあーでもないこーでもないって直向きにぶつかり合って、やっと少しだけ生きやすくなってきました。


合格は通過点です。そこにあまり囚われずに、まずは自分の納得のいくものを責任を持ってつくってください。そうしたら必ず認められます。浪人も大学生も作家も作品をつくることに何の変わりもありません。同じ時を過ごし何かを残そうとしているただそれだけ。そしてこれからも続いていきます。美術はこれからもわたしの救いです。
浪人して本当に良かった。






梅北佳雅くん
埼玉・新座総合技術高等学校 卒
合格大学:
東京芸術大学 彫刻科
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「気付きは大事」
現役の試験前日、センター試験の受験票が無いことに寝る直前に気付きました。心拍数が跳ね上がったまま寝る事になりました。当日、明らかに色がおかしい受験票のコピーを気休めでカバンに突っ込み絶望しながら会場に向かいました。コンビニでコピーした後はちゃんと原本も持ち帰りましょう。何度だって受験票があるか確認しましょう。地獄を見ます。なんとか受けられましたけど。

現役で落ちてしばらく休みの日が続き、春季が始まりました。試験後初のデッサン、何かを掴んだ気がしました。その時は何かを掴めたという事よりも「初心に近い時の制作は視野が広くブレイクスルーが起きやすい」という事に気付けた事が良い学びになったと思います。それまでは作業的で同じ事の繰り返しで制作していたのですが、そんな事をしていても新しい気付きは生まれないと思いました。その後も息抜きと気付きを繰り返しながら試験を迎え、当日も普段のように自分の作品に集中する事が出来たし凄く楽しかったです。

ここまで支えてくれた家族、指導してくれた先生方、本当にありがとうございました。大学生活を一つの通過点としてこれからも頑張っていこうと思います。






大木百さん
東京・私立香蘭女学校高等科 卒
合格大学:
東京芸術大学 彫刻科
武蔵野美術大学 彫刻学科
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「!落ち込んでる暇なんて無い!」

全然うまくいかない日々が続いても、それがたとえ試験前日まで続いたとしても、僅かな可能性を信じて走り抜く勇気を!


周りと比べちゃう人へ

足が速いとか、歌がうまいとか、話がおもしろいとか...そういうたーーくさんの項目の内のひとつだと思います。デッサンが上手いとか形捉えるのが上手、とかも。
人それぞれ力に差があるのは当たり前。
だから諦めろって言っているのではなくて、みんなそれぞれペースがあるんだから焦らず課題を見つけてちゃんと取り組めばいずれそれぞれのタイミングで結果が出ます。
応援してます!!!!!!!!!!!!!!






山口遥加さん
栃木・県立宇都宮女子高等学校 卒
合格大学:
東京芸術大学 彫刻科
東京造形大学 彫刻専攻領域
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「素直になる」

周りの発言や行動に影響されない、流されない。
自分の気持ちは自分でつくる。
自分の行動は自分で選択する。

2浪の初めに決めたことです。
私は毎日こなす課題に対して、受験で出題されるから描く・つくるという意識が抜けませんでした。
だから自分のやりたいことがよくわからなくて、無意識のうちに周りの人の意見に頼っていたんだと思います。
でもあるときから、モチーフをぼーっと見てると、あ、ここ好きかも、こうしてみたら好きになれるかも、と思える小さな発見がありました。
正しくは、小さな発見に気づけるようになったのです。
そういう自分の心に起きる小さな変化を逃さず、耳を傾けてみると、それを表現するにはどうしたらいいのか、自然と道筋が見えてきます。
しかし、それでもやっぱり受験だからやらなきゃいけないこともあって、それらはその道筋の中で現れる、あれ…なんか違うな…という、これもまた小さな発見に気づいて修正する…

わくわくするようなことも、イヤな予感も、自分の心の反応や違和感を大事にして、決して見て見ぬフリをしない。

そうすれば結果は勝手についてきます。いいね!と言ってくれる人が必ず現れます。






城啓純くん
埼玉・県立大宮光陵高等学校 卒
合格大学:
東京芸術大学 彫刻科
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「自分と向き合って」

価値観と考え方は人それぞれなので、個人の感想として参考になれば幸いです。

僕が受験生として過ごした時間の中で学んだ事は、"自分と向き合い、受け入れて理解する"ということです。

僕は現役、一浪の頃それができていませんでした。
上手くいっている時の波、そうでない時の波、周りの意見に流されて、喜んだり、安心したり、不安になったり、過去の成功や失敗を引きずって空回りしたりしました。失敗が続くと自信を無くし、あるはずのポテンシャルも発揮出来ずに意識はモチーフから遠ざかって行きました。完全に自分を見失っていました。

自分をコントロールするためには、自分を受け入れて理解することが大切です。自分を客観的に観れる様になったことで、ポテンシャルを発揮できるようになりました。また、物は考えようで、難しいと思っていたことも案外シンプルに見えてきます。

さらに伝えたいことは、"1人の時間も大切にする"ということです。もちろん仲間と一緒に切磋琢磨する時間もとても大切ですが、1人で過ごす時間も同じくらい大切だと僕は思います。失敗にも成功にも必ず原因があるはずです。それを自分と向き合うことで冷静に分析したり、次の授業のために自分の課題を整理してみたりと、休みの日などわずかでもそういう時間を有意義に過ごせるかどうかで変わってくると思います。

二浪して多くのことを学び成長できました。

最後に今まで応援してくれた方々、成長させてくれた講師の方々、そばで支えてくれた両親に深く感謝します。






梅澤美音さん
東京・都立白鴎高等学校 卒
合格大学:
東京芸術大学 彫刻科
武蔵野美術大学 彫刻学科
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「視点」

合格してなんですが私は実技が下手くそです。夜間部と一浪の過去のコンクールの結果を見てみたら、B゜を取れたのはデッサン7回、何と粘土は0回です。B'かB"しか取っていません。講評に並べるのが恥ずかしい程でした。皆みたいにいい結果をほとんど残せていないのに合格体験記を書いて参考になるか分からないけど、この一年を過ごして伝えたいなと思ったことを書きます。

私達が本番の実技を終えて、試験会場を出た後、部屋に入って、作品を見て、評価をつけて、この人を大学に入れようと選ぶ教授達がいます。
その時に自分がこういう人間だと伝えられる実技を残していくこと、予備校では自分の芯や意図を伝えやすくするための説得力とか言葉の種類を増やすために毎日課題を与えられていること。それを意識することが結構大事なんじゃないかなと思います。

やっぱり上手い下手というのはあります。コンクールでは順位も付けられます。結果次第で喜ぶことも、落ち込んで泣くこともあります。でも予備校で学ぶのは自分のことをより簡潔に伝えるための最低限の基礎力なんじゃないかと思いました。本番で自分がどういう人間でどういうことを気にしていて物をどういう風に見ているか、それを見る側に自然に伝わる作品を残していければ、今までの秀作の数やキャリアはそこまで関係ないのかなと感じました。

少し成長した一年になりました。毎日支えてくれた親、友達、先生達、本当に本当にありがとうございました。








みなさん体験記ありがとうございました。
これからの受験生の参考になれば幸いです。

2020年10月25日

●2020全国公開実技コンクール

「インタビュー企画第39弾」
 2020全国公開実技コンクール特集

                       担当 足立


ーすいどーばた美術学院講師8名の採点総評コメント掲載ー
各講師から、今回の公開コンクールについての総評を書いてもらいました。
それぞれの言葉をしっかりと受け止め、今後の制作の参考にしてもらえればと思います。




文章が送られてきた順に掲載します。


すいどーばた美術学院 彫刻科講師 田中綾子

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みなさん、お疲れ様でした。

普段と違う状況では、肩に力が入った人も多かったのではないでしょうか。
真剣に取り組んでいるからこそ緊張するのだと思いますので、緊張すること自体は仕方のないことです。

しかしそんな中で、押さえるべきポイントはどこか、狙いはどうするか、その為には何をすべきか、今自分のデッサンはどうなっているか、そういった判断を的確にできるかどうかが試験では大切なのかもしれません。

狂いが残っているのに無理にまとめようとしてしまうと、違和感がハッキリとするばかりで、いくら描き込んでもモチーフからは遠ざかってしまいます。
ばっちり合っていて、絵としてもカッコよければそれに越したことはありませんが、上手くいっていない時には適切な仕事を選ぶ力が必要なのだと思います。

まずは自分の緊張とデッサンの違和感に早く気づくこと、そして慌てず対処することを心がければ、きっと良い方向に向かっていけると思います。



すいどーばた美術学院 彫刻科講師 アイザック レオン

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お疲れ様です。


実技には判断力が必要です。
並べられたデッサンは構図からの狂いがほとんどでした。
早い段階でそれに気付けたのに直さなかったのか、そもそも気付かなかったのか、どちらにせよ冷静な判断は感じられませんでした。

とりあえず、今は結果が出る事が全てではありません。失敗からしっかり学んでください。
時間の使い方人それぞれ、有意義に使えるかどうかは皆さん次第です。



すいどーばた美術学院 彫刻科主任 西島雄志

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採点しての感想としては、アトリエの空間や光などの環境を感じ取れている作品が少ないですね。
形が合っているかとか、顔が似ているかとかも大事ですが、作品からその場の「臨場感」が伝わるか?ということが、結構大事な要素ですよね。
1位のデッサンは顔がもうちょっと似て欲しかったですが、空気感や光の質、視点など作者の感じた臨場感が伝わってきました。
他の皆さんもそういうところを大事にして、デッサンを一枚の「絵」として見るようにすると、多分今まで見えなかったことが見えてくると思いますよ。
明日からまた新たな課題を持って「日々是精進」してください。




すいどーばた美術学院 彫刻科講師 田中地平

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ぐるっと一周見てまわって率直に今回はレベルが低いと感じました。
形が合っているものがなかったことや炭が濁ってしまっていて顔が似ていないデッサンが多くあり第一印象が悪かったからです。
本番の試験のことを考えると周りに埋もれないデッサンがいいですが、今回は皆、力みがあり画面内の調子が崩れて遠目の印象が悪くなっていたため同じようなデッサンに見えました。

逆に、遠目の印象を良くすると並べて見たときにも目立つデッサンになると思います。
本番の緊張する場面では当たり前のことを当たり前にこなすことは皆が出来ることでは無いと思います。
客観的な視点があれば正しい判断ができるので大きく狂うこともないです。高い集中力も大事ですが客観性も同じくらい大事です。是非、緊張する場面で自分の力が出せる人になってください。
頑張って下さい。


すいどーばた美術学院 彫刻科講師 秋吉怜

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みなさんお疲れさまでした。

 なかなか一筋縄ではいかない。ぼくの中でジョルジョはそんな印象のあるモチーフです。
だからこそ、最後の最後まで粘ってモチーフに寄り添って欲しかった、、そんなことを採点しながら感じていました。

 この時期に6hはタイトかなと思いますが、狂ったまま描きにいってしまったデッサンが上位から下位までほとんどです。そのため今回の採点では、改めて構図と、それから彫刻科には押さえて欲しい“箱”としての見方・表現ができているかを基準に決めていきました。中盤以降の作品にはその狂いに立ち向かっていこうとしてるものから点をつけていきました。
 魅力的な表現も大切ですが、いま一度初心に帰ってデッサンに向き合えるといいですね。

 出来ることはまだまだあります。やろうと思えば必ず出来ます。まずはそこから始めましょう!


すいどーばた美術学院 彫刻科講師 阿部光成

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皆さんお疲れ様でした。

まず、このコロナ禍のなか、沢山の参加ありがとうございました。積極的な姿勢いいですね!

さて実技ですが、アトリエに入って感じたのは
ザワザワと落ち着きの無いデッサンが多いな?と感じました。
気合の空回りというのでしょうか?

これまでしっかりと準備をしてきたと思いますが
それを活かせる別の準備が足りないのでないでしょうか?
それは実技だけではない物事の考え方や捉え方だと思います。

僕は趣味で山に登りますが、スケジュールを守ることに
頭が一杯になり、せっかくの風景を眺めていなかったなんて
ガッカリすることがあります。。。

皆さんはどうだったでしょうか?
静かに呼吸しながらモチーフや実技を眺める時間がありましたか?

登山も何でもそうですが、苦しい、だから喜びもあります。
達成してくださいね!


すいどーばた美術学院 彫刻科講師 足立仁史

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みなさんお疲れ様でした。

今回は顔が似ていると言えるデッサンが少ないのが気になりました。
なんだかんだ言ってもやっぱり顔の印象はデッサンの評価に大きく影響してきます。
形を合わせよう、描写しようと意識し過ぎるとなかなか上手く行きません、しっかりと観察してジョルジュっぽく描くという事が大切です。
最後までモチーフの特徴やどういう見え方をしているか、シンプルなところに戻って冷静に判断していきましょう。


すいどーばた美術学院 彫刻科講師 小川寛之

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皆さん、お疲れさまでした。

毎年思う所ですが、見応えのする作品をもっと多く見たかったです。

採点の前の見渡した印象は、とにかく黒い絵が多い。
こんなに絵が濁っていると間違いになかなか気付けないだろうと思いました。

皆さん、冷静に振り返えりましょう。

実際この様な景色に見えていたのか?
完成のイメージはしっかり出来ていのたか?
こう描きたかったのか?

この先、表現する立場として魅力的な作品を産み出していかなくてはいけません。
イメージを高いレベルに持っていき、自信のある炭を動かしていきましょう。

あと4カ月、観察力と表現力の両方を磨いてくださいね。

頑張ってください。


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受験生の皆さん、コンクールお疲れさまでした。
以上8名の講師の総評でした。心に留まる言葉があれば、大切にしてください。
残り4ヶ月、しっかり力をつけましょう!


2020年04月20日

●現役芸大合格者に聞く! Part2!!

〜 芦澤 まりや(2020年度 藝大現役合格者)
    × 秋吉 怜(すいどーばた 夜間部講師)〜

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夜間部で1年間勉強し、見事今年 東京藝術大学に現役合格した芦澤まりやさんにインタビューしました!
(新型コロナウイルス感染症 対策のために、ビデオ通話にて行いました)

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秋吉(以下、秋):あらためて、合格おめでとうございます!さっそくですが、まずは芦澤さんが美術・彫刻を志すきっかけとなったことを教えてください。

芦澤(以下、芦):もともとモノを作ることや絵を描くことが好きだったんですが、以前好きな作家のRadyさんの展示を観に行った時に同い年の子がRadyさんとお話してる中で「君は藝大現役合格しそう。」と言われていて、それを聞いて私も美大受験を考え始めました。
まだその時は藝大志望というわけでなくモノを作れる環境に行きたいなと思っていて、高校2年生の春から地元の予備校に通い始めました。初めは油画科に行こうと考えていて、多摩美の受験などを考えていました。
ただ立体物を作りたかったので、そのためにはやはり解剖学の知識や立体を把握する感覚が必要だと思い、それを学べる彫刻にしました。

秋:なるほど。やりたい事が明確にあって、そのために彫刻的な力が必要だったということですね。受験に必要な実技は高校2年生から始めたんですね?

芦:高2の4月から日曜日だけ通っていました。油画だったり平面構成だったり、やりたいことを選択して自由にやるコースで、デッサンや油画を描いていました。そこで、教務長の方に「芦澤は現役で藝大合格行けると思う。」と言われたことがきっかけて藝大に行きたいと思うようになりました。
ただ、その予備校には彫刻のコースがなかったため、東京の予備校に通うことにしました。


 高校2年生の冬に地元の予備校で描いたデッサン
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秋:すいどーばた(以下、どばた)を選んだ理由はありますか?

芦:家から一番近かったというのもあるのですが、決定的だったのはどばたの合格実績でした!毎年ひとりは現役合格者がいたので、どばたの夜間部で一番になれば現役合格できると思いました。

秋:芦澤さんが最初にどばたに来たのは高2の時の冬季講習でしたね。初めてのどばたの印象はどうでしたか?

芦:もともといた地元の予備校が小規模だったので、まず人数の多さにビックリしました!受験間近でうまい浪人生や実力者が多く、そういった中でやるのも初めてでした。すごく刺激を受けたし、レベルの高い環境でやることがとても楽しかったです!


 高校2年生の冬季講習での初塑造
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秋:楽しかったんですね。

芦:はい。自分のレベルがまだまだ低いなとも感じましたが、どばたで1年勉強すれば絶対うまくなる!と思えたし、その1年後がすごく楽しみになって興奮しました!笑

秋:すごい闘志ですねー笑
高3の4月からいよいよどばたの夜間部に通い始めたわけですが、芦澤さんは家・高校からどばたまでかなり遠かったと思うのですが、、?

芦:家からは1時間半。高校からは2時間です。

秋:遠いですねーー!学校と予備校の両立は大変じゃなかったですか?

芦:最初の3か月が体力的にすごく大変でした。。高校の用事で遅刻してしまうこともあり、みんなより実技の時間が短くなってしまうなぁ、という不安もありました。
3か月くらい経ってだいぶその生活にも慣れたし、遅刻もどうしようもないことなので、その分どばたにいる間は集中して、毎回の課題で自分の実力を出し切ることを心掛けていました。

秋:たしかに毎課題すごく真面目に取り組んでいる姿が印象的でした!
この1年間はどのように考えて過ごしていましたか?短期・中期的に定めていた目標などあれば教えてください。

芦:4月は、まわりの夜間部のみんなも自分と同じで始めたての頃だったので、まずはこの中で差をつけて1番になってやる!と思っていました。制作中も自分が1番うまいな〜とか思ってやってました笑。なんか性格悪そう(汗

秋:いやいや笑。受験は周りとの戦いだから、すごく大事なことだと思いますよ!

芦:でも、、1学期末の夜間部のコンクールでデッサンが5位くらいで、、


 夜間部の1学期末コンクールのデッサン
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秋:1番じゃなかったんですね笑

芦:はい笑笑。ただその時はブルータスの顔側の逆光で難しい位置だったので、普段ならもっと描けたなって思って、次だ次だ!ていう感じで切り替えました。
夏季講習は浪人生と一緒に制作するので、せめてこの上手い人たちと同じレベルで戦えるようにならないとと思ってやっていました。

秋:具体的に心掛けていたことは何かありますか?

芦:常にうまい人の近くで制作するようにして、その実技を見て真似して盗んでました。
それで、、夏季講習最後のコンクールでB゜取れたんです!!(※B゜はどばたが独自につけているランクで藝大1次合格を表します)

秋:おぉ〜。しっかり自分の目標を達成したわけですね〜。

芦:2学期始まってからは、もう直ぐに冬季講習でそのあと試験だと思って、気を抜かずにやっていました。彫刻1の授業も2学期から始まったので、その勉強も兼ねて休みの日に展示を観に行ったりしました。
冬季講習や入試直前講習では昼夜合わせて1日9h制作している毎日だったので、とにかく睡眠をとってしっかり休むようにしていました。

秋:休む時は休んで、どばたでは集中して制作するってわけですね。

芦:はい。とにかくどばたでの毎日の制作を大事にしていました。でも休日は家で趣味の絵を描いたりして結構遊んでいました。結構リラックスはしていたのかなと思います。

秋:では、周りと比べて焦ってしまうなんてこともなかったんですか?

芦:そうですね。でも!年明けの芸大模試で1次落ちした時はさすがに焦りました。。
落ちるかなとも少し思ったんですけど、落ちるそぶりをしないみたいな、、

秋:落ちるそぶりをしない、、? それはなぜですか?

芦:そこで今年はダメだ〜とか言葉にすると本当になっちゃうと思ったんです。

秋:言霊ですね。芸大模試で1次落ちしたことで、何かやり方を変えたりはしたんですか?

芦:講師の方がよく言う、1年間の中で上手くいく時期とスランプの繰り返しみたいな浮き沈みが、わたしはないなと思っていて。。毎日、昨日よりもいい実技をしていれば絶対に下手になることはないなと。1年かけて緩やかな坂を上っていくようなイメージなんです。だから、その坂の頂上に藝大合格があって、描いた軌道上にいまの時期の自分がちゃんといるかどうかをいつも考えていました。
それで模試で1次落ちした時は、いま自分が想像している軌道のままだと藝大落ちちゃうんじゃないかって思って「また来年もどばたで自由制作するのかなぁ」とか考えちゃいました笑。
でも入直になり試験が近づいてくることで、合格する軌道がより鮮明に見えてきて、2月の中頃にははっきりと受かるビジョンが見えていました。

秋:すごく面白い考え方と精神論ですね〜!!。
では、受験当日の心境や手応えはどうでしたか?

芦:4日前に西島先生が仰っていた「これから試験本番を含めて残り3枚デッサンを描きます。今日よりも明日、明日よりも明後日、明後日よりも明々後日の試験当日までどんどん伸びていきますからね。」というのを聞いて、さっき言った合格までずっと成長していく自分のビジョンにも合致していて、1次試験では前日に描いたデッサンよりもいいものを描くようにしました。


 受験前日に描いたデッサン
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秋:緊張はしましたか?

芦:もともと緊張しまくるタイプので、前日からガチガチに緊張していました笑。でもそれはどんなものが出題されるのか分からないことに対しての緊張だったので、試験室に入って出題を見た瞬間に、この出題に対して自分がどうすればいいのか分かって、緊張はほぐれました。だから、描いているときは普段のどばたのコンクールと同じような感じでした。

秋:冷静に自分の実技ができたんですね。2次試験はどうでした?

芦:2次試験もどんな出題がされるんだろうと思って緊張していましたが、1次試験と同じで出題を見た時点でどうすればいいのかは分かったので、冷静にやりきりました。

秋:彫刻1は試験終えてどばたに帰ってきた時に自信満々でしたね笑。
普段の授業でも彫刻1は得意そうな感じがしたのですが、、どうですか?

芦:彫刻1は、コンクールで出来上がってみて周りと比べると全然ダメだなぁと感じることがあっても結果は良かったりして、あれ?これがいいの?自分のダメだって思ったものが評価されるんだと思って少しギャップを感じました。

秋:へぇー。そのギャップはどうやって埋めていきましたか?

芦:自分がダメだと思っていても評価されることが多かったので、このままでいけるのかなとは考えていました。それに、ダメだと思うのは完成して周りと比べた時で、作っているときはいつも楽しんでいました。
作っているときに“いたずらごころ”みたいなものを入れることがあるんです。これ見た人はきっとビックリするだろうな〜!ワクワクするだろうな〜!て考えながら、悪だくみをしながらって感じで作るんです。
そうやって、楽しみながら作れているときはコンクールでもいい評価を貰えていたので、試験でもその“いたずらごころ”みたいなものを大事にしました。

秋:“いたずらごころ”か〜。いいですね〜〜。塑造の試験はどうでしたか?

芦:試験で出たアバタをちょうど前々日に作っていたんです。だから、前々日に作ったアバタよりもいいものを作ろうという意識でやりました。それもデッサンでお話しした、“合格への軌道”に乗って、常に1番いいものを作るという意識です。

秋:なるほど。さっき言っていた“合格への軌道”をとにかく大事にしていたんですね!
ちなみに1年通してやった中でターニングポイントとなったようなことはありますか?

芦:基本的に軌道に乗って緩やかに伸びていっていた実感なので、ターニングポイントとはちょっと違うかもしれないんですけど、夏季講習で作った老人首像です。
首像を作るのはもともと好きだったんですけど、細部の作りこみに課題を感じていて。。それで上手い浪人生の隣で作って、描写の仕方なんかを見て真似してみてたらうまくいって、粘土の初Webアップになりました!自分の中で、もともと好きだった首像が得意なものに変わった瞬間でした!


 夏季講習でつくった老人首像
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 こちらは入直でつくった友人像
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秋:逆に1年の中で苦しんだことや辛かったことはありますか?

芦:実技で苦しんだことや辛かったことはあんまりないんです!毎日やっていて、昨日よりもいいものを作っていれば成長し続けられるので、沈むことは全然なかったです。
ただし、その「昨日よりもいいものを作る」ということは強く意識していました。昨日やってしまった失敗を繰り返さないことや、講評で指摘されたことを修正するようにしていました。
それと逆に褒められたことも大事にしていました。講評ノートには必ずダメだったことと褒められたことの両方を書いていました。講評では、自分の狙い通りに上手くいって評価されることと、無意識にやったことが褒められる場合の2つがあったのですが、無意識にできていたことを次は意識してやっていました。すべて自分の狙いとしてやって、それがきちんと評価を得ることが大事だと思っていたんです。

秋:講評を、自分の制作の答え合わせみたいな感じでやっていたんですね。

芦:そうですね。あと苦しんだわけではないんですが、、夜間部には美術科の高校に通っている子もいて、その子たちは自分よりも早い時期からデッサンなんかを始めていたので、そこにどうしても埋められない時間の差はあるなと思っていました。でも、そんなのは言い訳にもならないし関係ないなって考えて、絶対にこの中で1番になってやる!って思っていました。

秋:初めてどばたに来た時の話といい、逆境に置かれると凄く燃えるタイプなんですね!笑

芦:そうかもしれません笑笑。

秋:どばた以外のところでやっていたことは何かありますか?

芦:特に変わったことはしていないですが、、スマホで自分の作品の写真を撮って記録していました。自分の成長を実感するために休日に振り返ったりしていましたね。
あとは通学中に電車の中で解剖学の本なんかも読んでいました。その知識やデッサンで学んだことが、趣味の絵にもつながることもありました!

秋:単に受験勉強で終わらずに、自分のやりたいことにきちんと生かされていたんですね。
ちなみに藝大の試験ではいちおう学科も見られますが、どうでしたか?

芦:学科は、、英語があまり得意ではなくて笑。その分をもともと得意だった国語と、好きだった世界史でカバーするようにしていました。

秋:3教科の合計で考えていたわけですね。
ここまで、いろいろ受験のことを聞いてきましたが。最後に、1年後に藝大を受験するひとに向けて何かアドバイスはありますか?

芦:わたしは現役で合格したので、主に高校生に向けて。。
高校生はとにかく時間がないと思います。何年かやっている浪人生相手に1年後に戦って勝つには、よく言うスランプや不調に陥っている時間もないです。
昨日よりも今日、今日よりも明日という感じで、成長していければいいと思います。今回ダメだったけどまぁいいや、ではなく、その時にできる最大限のことをやることが大事です。
そうすれば、浮き沈みなんて起こることなく、常に伸びていく“合格への軌道”が描けると思います!!

秋:芦澤さん、本当にありがとうございました!!
受験生の皆さん。とても貴重で、ためになるお話が聞けたと思います。1年後の自分の姿をしっかりイメージしていけるといいですね!


芦澤さんの合格体験記はこちら→「ここから、つづく」
合わせて読んでみてください。

2020年03月17日

●2020合格者体験記特集

「インタビュー企画第38弾」
 2020合格者体験記特集


2020年度の合格体験記をまとめました。
それぞれにリアリティーがあります。
参考にしてください。
それぞれの作品とともにご紹介します。
また、今年は数名の保護者の方に<見守り体験記>も書いていただきました。






小野陸くん
兵庫・私立神港学園高等学校 卒
合格大学:
東京芸術大学 彫刻科
東京造形大学 彫刻専攻領域
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「自分になる」

読み飛ばしてくれてかまいません
あなたのことは僕は何にもわからない
あなたのことはあなたしかわからない
理解なんてされなくていいから自分のために自分で決めてください
他人は無責任だから


これが僕の三浪でした。




<見守り体験記>
小野康子さん
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「東京ってとこは…」

兄は2年間、弟は3年間のどばた生活でした。
初めてどばたの門をたたいたのは、兄が17歳の夏でした。
美術界のことを「食っていけない軟弱な世界」とみていた私の目のまえに、
年齢も性別も超えた「志」のかたまりがありました。
講師の人たちは、ちょっと見た目やんちゃで剛腕な男たちと若い女性陣。
今まで、見たこともない光景でした。
美術に身も心も削って、真剣に取り組んでいる人たちがここにいる。
息子たちにとって、なりたい大人がここにいたのです。

地方出身者は、この講師陣に支えられることになります。
実際、弟は高校生のころ、地元の画塾になじめず、苦しんだ経験がありましたから
生活面での乱れや心の状態を気にかけ、言葉かけをしてくださった講師の皆さまには、心より感謝しています。

子どもの様子が知りたいと、日に何度もドバチョウブログを開けるのですが、
探すイニシャルが見つからない日々。
自刻像や友人像を何度も見ているうちに、その人たちと、一方的に勝手に
知り合いになってました。

東京に出したこと?、大正解でしたね。
「親は子の足かせにならない」これ、私の母からの教えです。
二人とも、どんどん遠くへ飛んでいけ!

                        神戸より






飯島羽香さん
東京・都立総合芸術高等学校 卒
合格大学:
東京芸術大学 彫刻科
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「呑まれない」

物事をシンプルに考える。
確実に合格を掴み取る為に自分が何をするべきなのかどこが弱みでどこが強みなのかを考えて、冷静に当たり前の事を当たり前にこなす。
でも自分が感動したこと表現したいと思った事は絶対に逃さない。
日頃から技術面でも精神面でも自分の中に芯を持って決して人と馴れ合わない流されない。       
頑張り方を考える。汗水垂らして頑張るだけが全てじゃない。自分がやるべき事を自分のペースでやる。 
受験は運任せじゃない。しっかりと基礎を固めて自分のベストを尽くせれば結果は後から付いてくる。
最後まで諦めない。最後までどうすれば良いものにできるかを考える。そういう事を一年間続ければ気付かないうちに高い所に行ける筈。結局信じられるのは自分。その自分が折れない為にも自分が好きだと思える実技を重ねる。時には息を抜いて楽しむ心を思い出す。一年後どんな春を迎えるか、全ては自分次第です。






松本康平くん
千葉・県立成東高等学校 卒
合格大学:
東京芸術大学 彫刻科
東京造形大学 彫刻専攻領域
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「頑張ったよね。」

朝5時40分、遅くても6時に家を出る。
毎日2時間もかけて通学。
往復4時間。6日で24時間。それが2年間。

何時間電車に乗ってんだ。もう通学だけで疲れます。遅刻してくるやつ頭おかしいです。
2年も実家から通ってる僕のほうがおかしいかもしれません。 


初めてどばたでつくった彫刻1はまさかの卵。
初めてのB°はまさかの丸パクリ。
もう希望が見えませんでした。
孵化する気配?もちろんありません。

3浪の試験前日、15時間作って初めての塑造本撮影。
まさかの本番では同じモチーフのブルータス模刻。
いける!と思いきや落ちてしまいます。
4浪の初めてのコンクール、ブルータスの模刻で1位。なんでやねん。

バレーボール大会、まさかのMVP。
もはや美術関係ありません。


センター試験も必死こいて4割。
サイコロに運命をまかせます。

年下が多く、僕の扱いはおじいちゃんです。 
あだ名は浪害。
幼馴染と1年ぶりにあった最初の一言、
老けたなお前。
傷つきますよね。

最後に、
4浪もしてるのにそれっぽい実技も残せず、
みんなに見せられたのは遅刻しないことと実技への姿勢くらいでした。申し訳ないです。
むしろ刺激をもらってばかりでした、
ありがとう。
先生にも感謝しきれません。
親には1番感謝しています。
もう2時間もかけて通学しません。
毎日作ってくれる弁当、おいしかったです。

そして、僕!4年間よく耐えた、頑張った!
まぁ、大学入っても年長組だからおじいちゃん扱いは変わらない。






一條月さん
埼玉・県立芸術総合高等学校 卒
合格大学:
東京芸術大学 彫刻科
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「受験美術を楽しむ」

現役で受けた試験は一次落ちで
一浪を許してもらい、春夏、毎日毎日何となく課題をこなしていました。
秋、公開コンの講評の夜、このままだと去年と同じように一次落ちだななんて思って今までのなんとなく課題をこなす自分とは決別して、それからはちゃんと意識を変えて、シャキっと真面目に取り組みました。

デッサンでも粘土でも自分の作品として、責任を持って仕事をするようになりました。
受験生ではなく、芸術家として、表現者として、人を魅せれる実技をする
この意識のおかげで私は変われたんだと思います。

受験美術が楽しくない、苦しいと思う人も沢山いるとおもいます。浪人を楽しく過ごすために、自分が表現者ということを思い出して、自分が好きな絵にするために木炭を変えてみようかな、とか、カッコいい粘土が作れるように粘土付を研究してよう、とか色々やってみるといいかもしれません。
その感性を鍛えるためには参考作品を沢山みることもまた必要なことで、でも、あの人みたいなデッサンが描きたい!とか、こういう粘土付にしよう!とか、そういうのはまたちょっと違くて…
自分の元々持つ感性を大事にしながら成長していくことがやっぱり一番大切だと思います。

私と同じように悩む人は結構多いと思うので、何か参考になれたら嬉しいです。
コツをつかんだ!という感覚が私にはあったので、きっとそういう感覚になったら安定し始めるサインだと思います。
慢心せずに毎日全力でやれば大丈夫です。

一人じゃ何も出来ない私でしたが、家族、講師、友達…色々な人からの支えがあったお陰で、憧れの芸大に一浪で合格することが出来ました。
本当に本当にありがとうございました。




<見守り体験記>
一條一久
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「奇跡の再会」

娘は幼い頃から絵が好きな子でした
中学2年生になる頃には既に本人が希望する学校があり(芸術総合高校)
本人の強い意志が感じられました。

希望の芸術総合高校合格して
本格的に芸術を学び始めると通学時間が長いので大変だと思うのですが弱音も吐かず
頑張る姿には感動しました。

私には芸術の経験も知識も何もないので何か力になれないかと考える事もありました。
そんな時、30年ぶりに中学時代の同窓会がありました。そこで偶然にもイラストレーター兼、美術予備校講師(ドバタ)になっていた親友と再会したのが全てでした。
「これは運命か?」と思ったものでした。
私は早速、娘の相談をすると本当に熱心に色々とご指導頂きました。
そこで予備校の大切さも知ることができました。娘の夢も次のステップに向かう決意ができたようで、次の目標を芸大に定めました。
技術面、精神面のスキルアップをすいどーばた美術学院の指導者のご指導のもと、目標の芸大に無事合格する事が出来ました。多くの人に出会いに支えられ娘は幸せ者です。
次の目標に向け前進する娘をこれからも、ずっと見守りたいと思います。






増田充高くん
東京・都立総合芸術高等学校 卒
合格大学:
東京芸術大学 彫刻科
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「芯」

すいどーばたには高校受験をするため中学生コースから通い始めました。はじめはデッサンという概念を初めて知り、まわりを見てどう描けばいいか整理することでいっぱいでしたがその後なんとか高校に合格することができました。
高校二年生からまたすいどーばたの基礎科に通いはじめ、冬頃に彫刻と出合いました。はじめは高校と予備校共に油画を専攻していましたが、どう自分のマインドを表現して良いかわからず周りを気にしてばかりで打ち込めずにいた僕は他に何か選択肢はないか、と思い当時気になっていた彫刻を体験しました。
その時とても楽しく制作に打ち込めた記憶がいまでも残っています。
受験科に移り、将来の事や進路など本格的に意識しはじめた頃いつしか自分の中で無意識下に“競争することへの重圧感”が生まれプレッシャーを感じ始めました。
プレッシャーはいつしか周りに対しての羞恥心に変わり、自分を発信するためいつも真の抜けた目立つ行為ばかりしていました。
現役生の時は芸大一本で一次落ちという結果になり悔しさよりも恥ずかしさの方が上回っていました。
一浪の時もいつも羞恥心に苛まれていました。
理想のカッコよくてクールな自分を思い描いてそれを演じようとしていたんだと思います。
自分が現役生の頃に見たキラキラ輝いた浪人生の先輩たちをみて。
自分をみつめることを怖れた自分は表面的なことばかり意識していつまでも“芯”を得られずそのまま入試を迎えました。
一次は通過できたものの、“芯”のない僕は二次試験で大きく崩れ落ち不合格となりました。
心棒のない塑像のような状態だったんだと思います。
同期の多くが合格していく中また羞恥心に苛まれましたが、この頃から本当に悔しいと思える感情が湧き出したと思います。
二浪になってからは、受験科の中でもある程度の立ち位置へと変わり、その立場が僕を成長させました。
羞恥心は悔しさに変わり自分の日々のやる気を掻き立てました。
羞恥心、悔しさと毎日向き合いながら“芯とは何かということを考えつづけ、入試本番直前になってようやく“芯”に少しだけ迫れたかもしれません。
その少しの経験が本番1次2次の両試験で僕の糧になりました。
作品というのは自分の分身だと思います。
人間性が強く出るんだと思います。
作品を通して自分を見つめ直すことが受験では大切なのかもしれないと、今になってではありますが強くそう感じています。
ある先生の「アトリエでは悩まず、外でたくさん悩みなさい。本番ギリギリまで考え悩みなさい。」という言葉に本当に救われました。
これから受験を迎えるみなさんも是非悩んでください。悩んだ末に得たものがきっとみなさんの強みに成るんだと信じています。
受験を迎える全ての受験生の合格を心から祈っています。






芦澤まりやさん
埼玉・県立春日部女子高等学校 現役
合格大学:
東京芸術大学 彫刻科
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「ここから、つづく」

私は人より始めるのが圧倒的に遅かった。
 高校は普通科で、美術を目指し近隣の予備校に通い始めたのは高2の始め頃でした。高2の二学期になった頃、木炭に初めて触れました。その頃、その予備校の教務長に「芦澤は現役で藝大合格行けると思う。」と言われたことがきっかけで、藝大を目指すことを決めました。
 立体作品を作りたかったので、彫刻科を目指せる場所へと、高2の冬季講習で初めてどばたに来ました。周りのレベルがすごく高くて、常に磨かれる環境でした。高3の4月からは部活を辞め、夜間部に通いました。高校からどばたまでの距離が遠く、片道2時間を毎日放課後に通いました。その生活に慣れるまで、最初の3ヶ月が一番辛かったです。距離が遠いので、高校の7限や掃除があるだけでもたくさん遅刻して、ただでさえ美術を始めるのが人より遅かったのでそれがとても悔しくて、しかし言い訳にはしたくなかったので、一つ一つの課題で得るものを大切にして取り組みました。絶対に現役で合格したかったので、夜間部では常に1番を目指していました。上手く出来なかった時も、不調だとは認めず、次回に引き摺らないように根性で持ち直すようにしていました。
 実技は楽しくて好きです。毎回の成長を実感できたことや、講師から褒められたことが嬉しくて、作品を作ることはいつも楽しかったです。
 試験当日は、それまで積み重ねてきたものの延長に過ぎないという心構えで挑みました。とはいえ、やはり少し緊張したので、本番中も冷静に冷静にと言い聞かせていました。中でも彫刻1は、いいものが作れたと思います。
 合格発表の日。卒業式を終えたあとの教室で結果を見ました。自分の受験番号があることを確認して本当に安心しました。とても嬉しかったです。
 一年間一緒に実技を磨いて、本番前や試験が終わってからもたくさん応援したり勇気づけてくれた夜間部の友人たち、成長を助けてくれた講師の方々、学費を払ってくれて、毎日支えてくれた両親、とても感謝しています。ありがとうございました。


芦澤さんのインタビューはこちら→「現役芸大合格者に聞く! Part2!!」
合わせて読んでみてください。






中垣百恵さん
栃木・私立作新学院高等学校 卒
合格大学:
東京芸術大学 彫刻科
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「マジカルミステリーツアー」

無茶苦茶になっていたのであんまり覚えてないけど自分の浪人生活を振り返ってみる。

私はとにかくメンタルがダメな人間だ。

現役の冬に地元の先生に貴方に藝大は無理だと言われ、一浪の冬になっても全く結果の出せなかった私に自信などあるはずも無く、人に言われたことが全てになっていた。作品に自分の意思が無くなっていた。

全く実技が楽しくなくなっていた私は美術に向いてないのではないかと本気で悩んでいた。それでも辞める気は全く無い自分に気づき、遅いことはないもう一度始めからやり直そうと決意した。

元々下手くそでプライドもクソも無かったので、なりふり構わず色んなことを色んな人に聞いた。なんでもいいから活路を拓きたかった。

そしてやっと自分の作品は自分がどうにかしないとどうにもならないと気がづいた。言葉を変えると諦めたのかもしれない。しかし、気づいてしまえばすぐに結果が出るようになってきた。

18年間子供だった私は、この1年でやっと1歩踏み出せた気がする。

最後に、めんどくさくて騒がしい私を支えてくれた周囲の人達にとても感謝をしています。1人では絶対にここまで来れませんでした。
本当にありがとうございました。






谷内めぐみさん
群馬・私立新島学園高等学校 卒
合格大学:
東京芸術大学 彫刻科
武蔵野美術大学 彫刻学科
東京造形大学 彫刻専攻領域
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「自分の中にあるもの」

友達と話してて、自分の話を否定されるとすんなり納得するというより、悲しかったり悔しかったりちょっとネガティブになります。
出来れば共感して欲しい。
共感して欲しいから丁寧に言葉を選んだり、決定打となるものを探します。
でも分かって欲しいからと無理矢理論破しても聞いてる側はでも間違って所もあるのでは?と真っ直ぐは受け取ってくれない。
こんなイメージと今までの自分の取り組みを重ねてみました。
共感してもらうためには相手に自分がいいと思ったものが1番よくみえるようにしたい。そのために実技の中にそれに注いだ情熱を残す事と、そこを言い切れるほどの自信を自分の中に持つ事を大事に取り組みました。
相手にみせることは大前提だけど、まずは自分が良いと思えるものを、自分で自信が持てるものを残そうと思っていました。
相手と自分でぐるぐるしながら結局は自分の中にある芯を大切にする。だって共感して欲しい内容は自分から発信しないといけないから。見苦しくならない程度に。
そんな事を受験生生活で学びました。






山田歩くん
東京・都立世田谷総合高等学校 卒
合格大学:
東京芸術大学 彫刻科
武蔵野美術大学 彫刻学科
東京造形大学 彫刻専攻領域
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「気づく」
 自分は流されてここまでやってきました。
ノリとただ楽しいことをして生きてきました。
真剣に取り組んでる人たちを目の前にしていても何も思いませんでした。
自分は何も考えていませんでした。やってれば、このレールに乗っとけば受かると思っていました。
仲良かった友達がどんどん旅立ってやっと焦り始めました。なんで自分だけここにいるのか、なんで落ちてきたのか、自分は何がしたいのか、何者なのか、それを考えただけで何も考えてなかったことに気づくだけでなにかすごいことに気づいたような気がしていました。

「考える」
何も考えてなくてもうまくいく時があるけど、せっかくならなんでうまくいっているのか考えた実感を持った方が次につながると思いました。かといってうまくいったことをなぞるのも良くない、そんな行ったり来たりな曖昧な関係を思考と動作の間を行ったり来たりしていました。ただ行き詰まったら素材に全てを託せばいいんです。素材は嘘をつきません。
ここで大事なのはやはり考えることだと思います。わがままなのは素材だけでいいです。ギャーギャー言ってる素材を飼育してあげるだけでいいです。

 「知る」
 毎課題毎課題失敗してもいいと思います、なんで失敗したのか、なんでこれは成功したのかそれだけを気づいて知って次につなげていけばいいと思います。大失敗してしまった次を大成功を完成なんてさせなくていいです、気づいていればいいです、知って大成功がイメージできてればそれでいいんです。勝手に成功のイメージに近づいていきます。
 何も考えてないで分かってないこと、分かったフリが怖いんです。別に分かってればそれでいいんです、強がりじゃありません、本当に強いです。
自分は意外と弱いってことも分かってください、めちゃくちゃ緊張するってことも分かってください、分かれば強いです。

 常に気づいて考えてみて何か知れれば必ず自分納得のいく実技ができるようになると思います、そして必ず結果がついてきます。






赤尾智さん
東京・私立女子美術大学付属高等学校 卒
合格大学:
東京芸術大学 彫刻科
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「学び」

私はこの二年間の浪人生活の中で、何度も自分の弱さに直面してきました。
上手くいかない日が続くと自分の実技に限界を感じてしまい、自信を無くすこともありました。
だけどそんな時、どんなに苦しくても腐らずになんとかやってこれたのは、彫刻の道を選んだ自分を後悔させたくないという思いがあったからです。
この思いが、二年間、挫けそうになったときの支えとなっていました。
また、実技と向き合うことで出てくる悩みや迷いも、いつか自分の中でプラスに働くときがくると信じて制作し続けました。
自分を強くするには、どんな時でも戦い続けなければいけないと思ったからです。
こうして私は少しづつ弱さを克服していくことができました。

二浪の秋頃になるとだいぶ自分の気持ちをコントロール出来るようになり、常にフラットな心で毎日過ごせました。それが実技にもいい影響を与えていたのだと思います。

どばたで学んだたくさんのことを忘れずに、これからも忍耐強く生きていきます。

そして基礎科 夜間部 昼間部でお世話になった先生方、本当にありがとうごさいました。






相原彩七さん
静岡・県立清水南高等学校 現役
合格大学:
東京芸術大学 彫刻科
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「受験をしてわかったこと」

たくさん挫折をした入直でした。行って挫折することが思い浮かぶから予備校に行きたくないくらいでした。周りは上手くて楽しそうで上手くいかないことばかりの人からしたらコンクールで自分より上の人は悩んでることも伝わってるけどキラキラして見えてました。周りとたくさん自分を比べて疲れてましたし、落ち込みました。だからこそ私は試験日が嬉しくてたまらなかったです。もうこんなつらい思いしなくて済む事が嬉しくて試験本番が楽しみでした。一次は全然予備校で成績が良く無かったので自信はなかったし、まぁ実績で受かる訳ないなと何のプレッシャーも無かったです。もうただ楽しくて自分のことしか考えられない、目に入らない、気にならない、その日の自分のことしか眼中に無い、そんな感じでした。ずっと受かりたい気持ちで前日まで居たけど当日は前日までを振り返って受かんないって確信したからこそのプレッシャーが無い、一切邪念も欲望もないデッサンをしました。ただ見て描くそれだけの時間でした。


予備校に行き始めた時は高校の仲間との差を少しでも作りたかったからだし、むかつく人を負かしたいと思って彫刻をやってた時もあったし、周りと比べて劣って落ち込んで彫刻をやってた時もあって、そんな他人の事を意識し過ぎな制作方法を辞めたからこその結果でしか無いと思いました。周りと比べないでいるだけで気持ちは楽になるし、捨て身になって尽力できるから誰にも左右されない方が良いとわかりました。






谷口笙子さん
京都・市立銅駝美術工芸高等学校 卒
合格大学:
東京芸術大学 彫刻科
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「自信を育てた場所」

私は三浪で合格しました。
京都出身で、浪人から関東に出ました。
二浪から三浪で1度予備校を変えて夏期講習からすいどーばた彫刻に来ました。

合格体験記ということですが、
これを読んで何か引っかかった少数の人の行動するきっかけになる可能性に期待しつつ
当てはまらない人の方が多いだろうけど、
私は前の自分に助言できるとしたら伝えたいことを書いてみます。

あなた自身の感覚を、あなたがたった1人でいる時にあなたが信じられるようになること
それが自信です
それが世界と噛み合うまで、努力でその精度を上げれば、藝大彫刻科には受かります。
自信はあなたそのものだけに依拠してるので、時間は関係ありません。
言いかえれば、
過去のこと、現役とか何浪とか、実績、コンクールの結果とかは、データとして利用する以上の価値は無いのではないかと思います。

私はとにかく自信を育てるのが不得意でした。ずっと自信がなかったです。
特段メンタルが変わらなくてもひたすら上手くなれば受かる人はいます。
つまり最初から自信があるタイプです。
仮に、そういうタイプじゃないと自覚しているなら、受験というシビアで自由な期間に変われたらめっちゃ得だなくらいの気概で少し挑戦してみるとよりいい方向に行けるかもしれません。

彫刻に向いてないとか、自分みたいな人間にはそもそも資格がないように思い込んでいた、すぐ逃げる弱すぎる自分でも、時間を要したけど変わることが出来ました。正直、それが合格以上にとても嬉しかった。
そのためには、さっきと矛盾しているように見えますが、それ以上の価値が無いと言ったデータを得られる環境が必要だったんだと思います。
自分自身の内側の自信の欠片と、外側の世界のデータを擦り合わせて磨いていくことが私の浪人生活そのものだったからです。
そのデータを得る為の場所としては、今の所すいどーばた彫刻科を超えられる所は無いかもしれません。

講師にどんなことを言われてもどんな評価を取ろうとも自分自身が自分のことを1番理解して成長させていってあげてください。 それはあなた一人にしかできない事だからです。
そんなことは最初から知ってる という方には、すみません。私は三浪するまで知らなかった。

自分の感覚を信じられるようになって不断の努力で頑張りましょう。








みなさん体験記ありがとうございました。
これからの受験生の参考になれば幸いです。

2019年10月19日

●2019全国公開実技コンクール特集!

「インタビュー企画第37弾」
 2019全国公開実技コンクール特集

                       担当 小川


ーすいどーばた美術学院講師9名の採点総評コメント掲載ー
各講師から、今回の公開コンクールについての総評を書いてもらいました。
それぞれの言葉をしっかりと受け止め、今後の制作の参考にしてもらえればと思います。




文章が送られてきた順に掲載します。


すいどーばた美術学院 彫刻科講師 田中地平

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みなさん、お疲れ様でした。

自分の描きあげたときの実感と実際の評価はどうだったでしょうか。画面から熱量が伝わってきました。しかし、ヘルメスはただ描けばいいというモチーフではなく、印象を合わせるにはしっかりと観察をして自分の仕事が的確かどうか慎重に判断しながら進めていかなければいけません。ただ6時間の中で焦って完成に向かっているだけでは炭が濁り形も癖っぽくなっていくでしょう。では、6時間の中で画面の中で再構成しながら印象を合わせ、完成させられたデッサンが何枚あったのか、、自分は3枚しか目に付きませんでした。

B°の評価がついたデッサンは例年に比べ少なかったように思います。正直残念でした、B°の中盤からBの数・質は物足りないなと思いました。みなさん、もっと頑張りましょう!!

冬も近づいてきて焦りも出てくるでしょうがいっぱい実技をしましょう。周りの人に比べて劣等感を持っている人もいると思いますが、今ある実力差なんてこれからの頑張り次第でどうとでもなると思います。

人よりも実技をしましょう!放課後や授業前に自分の課題に取り組みましょう!人よりもやらなければ芸大には合格しないです!!とてもシンプルだと思います!!


すいどーばた美術学院 彫刻科講師 秋吉怜

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みなさんお疲れさまでした。
しっかりモチーフと、自分の絵と、格闘しているなと感じました。自己満足の表現ではなく、観たものに謙虚に近づけようとしているデッサンが多く、好感が持てました。

上位のほうは炭も澄んできて見やすいデッサンが並んだのも良かったです。
ただ、もっと完成度の高いものが並んでほしいとも感じました。格闘して終わるのではなく、モチーフや絵をコントロールしきったものが出てくると良かったです。
捉え方や観る姿勢は確かのものがついてきています。あとはそれを表現する力をどこまで高められるかが、大事になってくるでしょう。

下位のものも戦っているのは感じるのですが、単純に見づらい絵が多いと感じました。デッサンは結局は光を使って描くものなので、もっと光と仲良くなれるといいですね。


すいどーばた美術学院 彫刻科主任 西島雄志

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皆さんお疲れさまでした!
ヘルメスは過去に芸大で6回出題されている常連のモチーフです。
動きの方向が複雑ですが、その要素をしっかり理解して捉えると、すごくカッコいいデッサンになります。
今回の皆さんのデッサンを見て感じたことは、まだその要素を捉え切れていない状態で見えたものを即物的に描いているように思います。それ故にズレて欲しくないポイントや表情が大事な要素に乗っからなくて違和感となっています。
デッサンをする前段階として、いかにモチーフを観察するか。その観察とは彫刻の言葉になっているのか。その辺りがこの先デッサンをしていく上で重要となります。

要素が多いと複雑で難しく感じるかもしれませんが、実は逆で、要素が多ければ多いほど、お互いの関係性が多く出来上がるので、捉えやすいのです。
だから、シンプルな要素のモチーフのデッサンの方がむしろシビアさは増してきます。

皆さんは、モチーフから感じ取った感動を分析していますか?
何故、感動したかには必ず理由があります。その部分をしっかり理解出来ると良いでしょう。

残り4か月は、まだまだ長い。
時間をかけて心と身体を一体化させてください。


すいどーばた美術学院 彫刻科講師 小川寛之

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皆さんお疲れ様でした。

これだけ大人数になると、感覚的で魅力的な絵、優等生な絵、荒削りで尖った絵など色々な作品に出会うのですが、今回はちょっと物足りなさを感じます。

各研究所でまずはしっかりバランス感覚、観察眼を鍛えて直してください。
そして、美術ですから最終的には魅力のある絵、または自分の理想とする絵に出来るよう頑張ってください。


すいどーばた美術学院 彫刻科講師 阿部光成

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公開コンクールお疲れ様でした。

まずはアトリエに入った時の第一印象ですが、目に飛び込んで来る実技が少ないと感じましたね。

形の精度、顔面の印象、炭の響き合いなど調和のとれた実技があまり見受けられませんでした。

日々皆さんはアトリエで実技に没頭しているでしょう。ではアトリエの外ではどう過ごしていますか?

本物を見る機会はありますか?
作家の作品を見て下さい。彫刻はもちろん、それ以外もです。

絵画のハッとする色彩や考え抜かれた構図。

日本画の選び抜かれた線の美しさ。

工芸の素材の活かし方と密度の高さ。

骨董なども良いでしょう。

そこには今皆さんに繋がる要素が沢山あります。

外に出向き行動をして下さい。モノを見る目を養い、美意識を骨太にしてください。

そうやってさらに良い実技を目指して下さいね。


すいどーばた美術学院 彫刻科講師 三上晏子
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皆さんお疲れ様でした。
モチーフをどのように見たか、理解したかがデッサンに出ると思います。
自分なりに理解するために、自分なりの動きをすると良いと思います。

今回のコンクールでは、像に迫れているものは少ないと感じました。
冷静に自分が描いているデッサンを見る時間を作ってあげましょう。
そして判断していきましょう。判断力は普段の実技でつける事ができます。

残された時間、意味のある時間を過ごして欲しいなと思います。
健闘を祈ります。


すいどーばた美術学院 彫刻科講師 足立仁史
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皆さんお疲れ様でした。

いつもと違う状況での製作は思い通りにいかないことが多いと思います。緊張しないようにしてもなかなか上手くいきません、緊張している時に自分の長所、短所がどう実技に影響するのか自分自身のことをよく知り、対応していくことが大切ですね。
モチーフを観察、理解し、それを画面上に再現する、やることいたってシンプルです。同じ事の繰り返しに感じることもありますが、新たな発見もあります。粘り強く実技に向き合って行きましょう。


すいどーばた美術学院 彫刻科講師 小野海

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みなさんお疲れ様でした!
いやぁ、aが出ませんでしたね?

実は最近、すいどーばたの普段のコンクールでもデッサンでaは出てません。
みんな頼むよマジで!こっちの準備はできてるよ!


じゃあ何故a以上の評価が付かなかったのか?
僕が思うに、B°ランクどまりのデッサンというのは彫刻科にしか分からない観点で描かれているデッサンです。
彫刻科の講師なら評価するけど、彫刻の勉強をしたことがない人には何が良いのかさっぱり分からない、そういうデッサンはa以上のランクになれません。

大学の彫刻科に行こうとしてるんだからB°で良いじゃないか!と思う人もいるでしょう。
ですが、少し考えてみてください。
みなさんが一生懸命石膏像をデッサンしているのは何のためですか?
上手に石膏像を描くため?受かるため?…合格がゴールではないことは確かですね。


デッサン力は「見る力」です、そして判断力。描くという行為はその次にあります。

僕は今23歳です。デッサンを始めたのは高1なので、デッサン歴は8年くらいですね。
そして、変な言い方になっちゃいますが
人間には目があるので僕も生まれてこの方ずっと目を使ってモノを見ながら生きてきました。つまり見る歴は23年です。だから僕はデッサンを描くときにはここ8年で得た「描く力」ではなく、知らず知らずのうちに23年毎日培ってきた「見る力」でデッサンを描きます。
この「見る力」に関してはみんな自信を持って下さい。だって起きてる間はずっとやってんですから、日々強化されていきます。

余談ですが、むかし彫刻の講師に誉められた自画像を親戚のおっちゃんに見せたら「なんか50代に見えるわ、あんま上手じゃないな」って言われたことがあります。たぶんおっちゃんはデッサンなんかしたことないけど、そん時にハッとしたんです。俺はデッサンを彫刻の専門知識で描いてるかも。
おっちゃんは見る歴60年くらいかな。そりゃ僕が気付けないことに気付けるわけですよね。


みなさんは今回デッサンを描いていた6時間、「描く力」と「見る力」はどんなバランスでしたか?
画面を木炭で塗り潰すことに必死なっていませんでしたか?
しっかり見て判断すればきっともっと良い絵が描けると思います。B°とaにそんな難しい差は無いと思いますよ。

もっともっと熱い作品を期待してます!


すいどーばた美術学院 彫刻科講師 アイザック レオン

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焦ったのか?緊張したのか?

アトリエに入って並べてあるデッサンを目にしたとき、ヘルメスどうこよりも画面から見えてくる皆さんの姿勢が気になりました。構図が明らかに悪かったり、狂いが多いままどんどん描写してしまってたり、画面からは冷静な判断を感じられませんでした。
確かにヘルメスは難しいし、公開コンでは人数が多くて結果を出すことにプレッシャーを感じることがあると思いますが、実力は状況と場を選んではいけません。
焦りを感じたらまずは手を止め、とにかくモチーフを見ましょう。そして、画面とではなくモチーフと向き合いましょう。画面はモチーフの観察から得た情報をメモするところです。メモした情報がちゃんと対象に近づいてるか、一致してるか、確認をいっぱいしてください!

失敗は悪いことだと思いません。むしろチャンスです!実技中の姿勢と判断力を見返してみてください。悩んでる暇はありません、この結果をどう変えていくかは皆さんのメンタルと努力次第です。

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受験生の皆さん、コンクールお疲れさまでした。
以上9名の講師の総評でした。心に留まる言葉があれば、大切にしてください。
残り4ヶ月、しっかり力をつけましょう!

2018年10月28日

●2018全国公開実技コンクール特集!

「インタビュー企画第35弾」
 2018全国公開実技コンクール特集

                       担当 阿部


ーすいどーばた美術学院講師10名の採点総評コメント掲載ー
各講師から、今回の公開コンクールについての総評を書いてもらいました。
それぞれの言葉をしっかりと受け止め、今後の制作の参考にしてもらえればと思います。




文章が送られてきた順に掲載します。


すいどーばた美術学院 彫刻科講師 篠塚未来

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皆さんお疲れ様でした。

いつもより良く描けた人、描けなかった人それぞれいると思います。
あまり良いデッサンが描けなかったとき、苦手な位置だった、光が悪かった、場所が狭かったなど色々な言い訳が出来ます。私が受験生の時も言っていました。でも、それはきっと単なる言い訳で、本番はそれを自分で良い条件に変えなければ行けません。そのためには、どれだけ先入観を捨て素直にその石膏像を観察することが出来るか、それが重要だと思います。そして、それが一番難しいことなのかもしれません。

これから1次試験まで、長いと思うか短いと思うか、それも自分の気持ち次第です。頑張っていきましょう。


すいどーばた美術学院 彫刻科講師 秋吉怜

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みなさん、お疲れさまでした。

今年もたくさんのデッサンが並びましたが、ずっと観ていたい・観ていられるものは1枚もありませんでした。
コンクールですので当然順位が出ますが、上位と下位でそれほど差はないように思います。構図が良くない。動きが出せていない。印象が合っていない。それらが出来ていても、観る人に訴えかけてくるものがない。そういったズレをどれだけ減らせたかが大事なのですが、上位のものでもまだまだダメですね。当たり前のことですので、当たり前にできるようになってください。

とはいえ、試験までまだ4ヶ月あります。落ち込むことは時間のムダですので、反省だけにして、今回の結果を上手く活かしてください!


すいどーばた美術学院 彫刻科講師 小野海

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みなさん、絵を描くこと楽しんでますか?
自分の生み出した画面に感動してますか?


今回の公開コンクール全体の印象としては、もっとブルータスを正しく理解して捉えられてるデッサンが増えて欲しい!です。
この時期に構図なんかミスってたらアカンで!!それから量・動き・構造。
みんな彫刻科なんやから、もっと確認して合わせましょう。

とは言ったものの、僕が思うにそれらは裏付けであって目的ではないと思うんです。
どうすれば人の心に残る絵が描けるのか、どうすれば自分の内側を他人に伝えられるのか。その方が大事な気がします。
今回aランクが出なかったのは、それからやたらBランクが多いのはその辺りが理由なのではないでしょうか。

もっと大きなモノの一部になってください。

研ぎ澄まされた作品には情熱と配慮が必要不可欠です。
僕は石膏デッサン大好きです、今でもデモストしながらデッサン楽しくて仕方ありません。
この僕の目の前に広がる当たり前で些細で美しすぎる出来事を、まだこれに出会えていない人にどんな言葉で伝えてやろうか……ニヤニヤ。こんな感じ。
感動が伝わってこない画面に共感は生まれない、その代わりにめっちゃ粗捜しされます。
みんな彫刻家なんやから、もっと愛で伝えましょ。


すいどーばた美術学院 彫刻科講師 小川寛之

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お疲れ様です。
今回のコンクールの全体の印象は、まだ10月で荒削りながらも自分らしい「絵」というものが多く見れて良かったのですが、大半は描く行為が強い反面、見落としている点も多かったのかなと思います。
私の採点基準は、構図、印象、動き、形態、調子の美しさ、描き込みの魅力、空間意識の7つをポイントとして、それらのバランスを見ながら採点しました。
この時期に確認しておきたい大切なポイントでもあります。
自分自身の「デッサンの基本」をこのコンクールをキッカケに確認してみて下さい。
入試まで時間はまだあるので、焦らずじっくり自己ベストを日々塗り替えるような心持で、そしてまた新たな発見を楽しみながら制作に取り組んで下さい。


すいどーばた美術学院 彫刻科講師 田中地平

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おつかれさまでした。
 
今回自分は採点に参加したわけでは無いのですが採点の様子を見させていただきました。感じたこととしてはぱーっとみてもいいなあと思えるデッサンはあまり無かったので、今回の公開コンは厳しいなあと感じました。

また、黒いデッサンが多かった(消化しきれていない炭が残っている)ので、あまり空間が広がっていくような魅力を持ったデッサンがなかったし、形や構図もまだまだでした。

いい構図でかけていなかったり形が合っていなかったりするのでそういった印象なのは意識をもってやってないかそもそも気づいていないか、だと思うのでいい構図でかくとか形をしっかり合わせるというのはもっと意識もってやってほしいです。
しっかりとした構図でかけば、当然いい見え方になって形も合いやすいし気持ちよくかき進められるので本当にもったいないと思います。構図がダメな人はデッサンの出だしの時間帯の仕事が甘いのかも知れません。

あとは、もっと自然に見えてくるデッサンが出てくると良かったです。自然に見えるデッサンというのは、構図、像の構造、動き、光の方向、グラデーション、顔の印象、空間、形などがいいレベルでかみあっていてどれかに偏っていないものだと思います。
まだ6時間という時間になれておらずどれかが出来ていなかったと思うので、自分がどこが出来ていなかったのかをしっかりと認識してほしいです。
この時期に公開コンクールをやる意味はそこにある気がします。
この時期に完璧なデッサンができる人はそうそういないと思います。この時期に一度試験を模したものをすることで自分はどこが足りていないのか、プレッシャーがかかる場面で普段の力が出せるのかどうか自分で自分を知る場だと思います。
今回よい結果だった人もより高みを目指して欲しいし、結果が振るわなかった人もこの結果を踏まえてどうするかの方が大事だと思うので悔しさをバネにこれからの実技にはげんでください。


すいどーばた美術学院 彫刻科講師 三上妟子

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皆さんお疲れ様でした。

モチーフを理解、把握するためには色々な見方が必要です。
それは、人それぞれ少しづつ違ったりすると思います。自分なりのモチーフとの向き合い方をして下さい。
まだ時間はあります。片っ端から自分にとってプラスになる事をやっていきましょう。


すいどーばた美術学院 彫刻科講師 アイザックレオン

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ぱーと全体を見渡して目に止まったデッサンは2枚程度でした。その2枚もじっくり見て行くと気になってしまうところがどんどん出て来ます。
ブルータスの量、動き、面の構成をしっかりと捉えているデッサンがなかったと思います。
この時期6時間で精度と完成度を上げて行くのはハードだと思いますがもっとモチーフを理解し、要所をしっかり押さえられるよう実力を付けてください。

試験まで時間はたっぷりあります。諦めずに自分の実技と向き合ってください。その瞬間に見えてなくても続ける事で発見できるものは多いです。


すいどーばた美術学院 彫刻科講師 主任 西島雄志

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デッサンを何故するのか?
根本的な問いですが、ちゃんと答えられる人がどのくらいいるだろうか?
試験に出るからという人もいるかもしれない。目の前のものを説明する力が必要だからと考える人もいるかもしれない。構造を理解するためとかもあるかもしれない。

私は彫刻家としてどう思うかというと、「考えるため」だと思う。
彫刻家は文字を使って考えたり計算して考えたりするのではなく、デッサンをして考えるんだと思う。デッサンは彫刻家にとって言葉や文字や数字の代わりであり、全身全霊で感じ取ったことや考えたことを描き留めておく手段なんだと思う。そしてデッサンしては考えて、またデッサンをする。そうして考えを広げたり深めたりする。そうしているうちに同じものを見ていても見えてくるものが変わってくる。そして目と手と思考が結びついていく。
元々は人に見せるためではなく、自分を深めるためだし探求するものだ。
そう考えると出て来たデッサンは良いも悪いもその人そのものということになる。その人の今現在の状態を現しているということ。怖いですよね。デッサンはものすごく雄弁ですから。デッサンは嘘つかないし。

今日の自分の描いたデッサンを見て、自分自身どう思いますか?
何故デッサンしたのですか?
また、この先どんな未来を見たいですか?

私はいつも皆さんのデッサンを通して皆さん自身を見ていますよ。
デッサンって面白ですよね。

あまり総評になってないけど、総評考えてて思ったことなのでこれが総評なのかな。


すいどーばた美術学院 彫刻科講師 阿部光成

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スモールaが出なかったのは残念ですね。それは上位から輪郭も合っているデッサンが少なかったからでしょう。

ブルータスを捉えられきれなかったとも言えます。

今回は一枚の絵になっているどうかで優劣が決まった感じがします。

理想としてはモチーフのブルータスから構造の成り立ちや形の発見をする意識と目でしょう。

しかし慣れ親しんだブルータスゆえ、改めてその彫刻の解釈よりも目の前の物体の再現に頭が働いてしまったように思います。

絵になっているかどうかで優劣が決まったと思ったのはそういう事です。

もちろん絵心は大切です、しかしそれだけではありません。

もう一度素描とは何かを考えてみて下さい。これは受験生に限っての話ではありません。

今回の結果の受け止め方次第で今後が変わると思います。頑張って下さい。


すいどーばた美術学院 彫刻科講師 足立仁史

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みなさんお疲れ様でした。
今回のコンクールは例年よりもデッサンのバリエーションが豊富に出てきた反面、上位の作品でも精度は物足りなく感じました。中盤以降は攻めきれていない中途半端さがあるものが多くなってくるように思います。

普段と違う緊張感の中で自分の出来たこと、出来なかったことを判断すること、多くの作品が並んだ中で自分のデッサンがどう見えるかなど公開コンクールだから感じられることを今後の自身の成長に繋げて下さい。

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受験生の皆さん、コンクールお疲れさまでした。
以上10名の講師の総評でした。心に留まる言葉があれば、大切にしてください。
残り4ヶ月、しっかり力をつけましょう!

2018年03月15日

●2018合格者体験記特集

「インタビュー企画第34弾」
 2018合格者体験記特集


2018年度の合格体験記をまとめました。
それぞれにリアリティーがあります。
参考にしてください。
それぞれの作品とともにご紹介します。






広瀬里美さん
埼玉・県立伊奈学園総合高等学校 卒
合格大学:
東京芸術大学 彫刻科
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「わたしなりに」


現役生の時、わたしは自分を他人と比較ばかりして居ました。あのひとより出来てるとか出来てないとか、速いとか遅いとか。受験って競争だからそういうものなのかと思ってました。誰よりも努力しなければ、誰よりもいいものを作れるようにならなければと思ってました。その年の二次試験の自刻像はわたしは自分のペースというものを完全に見失い、お昼から泣いて、終わっても泣いてどばたに帰りました。それは落ちるから悲しいというのではなく、今までやってきたことを出すことが出来なかったことと「自分の作品」を置いてくることが出来なくて悔しかったのだと思います。


浪人して、わたしは自分がどんな調子の時でもどんな気持ちの時でもB°のものを描けるようにというのを意識して実技をしました。粘土でも形を見る力と作る力が徐々についてきて苦手だと思ってた模刻でもB°を取れるようになってきました。安定した力がついてきたのかと思いました。
そして、素描が今年から彫刻Iというものに変わってどんなものが出るかわからない中様々な課題をやっていく中で、わたしの好きなものや形ってなんだろうと考えるようになりました。作品に答えはありません。それでも秋頃わたしは彫刻Iの失敗を恐れてデッサンや模刻みたいに解答のようなものを求めていました。わたしの恐れというのは不安からくるものでした。不安というのは自分の作ったものがこれで本当に良いのか?という疑心と、制作中周りを見渡して面白い作品や良い作品を見た時に感じる劣等感だったと思います。つまりわたしは、この時は現役生の時から成長していなかったのだと今は思います。


しかし、綺麗なデッサンを描く尊敬する先輩の話を聞く機会があり、魅力とは知らないうちに出ているものだと気付きました。魅力とは個性であり、個性とは人それぞれが持っているもので、それはその人が描いている(作っている)時点でどうしようもなく出てくるものなのだと。


わたしは自分がどれだけその作品に対して真剣に取り組めたか、自分がどれだけ頑張れたか、どれだけ自分の納得するものに近づけたかが大切なのだと実感しながら制作出来るようになったと思います。いつからかわたしは他人と比べるということを辞めていました。一位じゃなくてもいいし、aじゃなくてもいい。自分が「良い」と思えるものができるようにただひたすらに制作する。それだけでした。
試験には、わたしはわたしなりに一生懸命の作品をおいてこよう。周りの環境や他人に惑わされずに、わたしに出来ることをやってこようと思って臨みました。


合格発表の前夜、ベストは尽くしましたが結果が出るまではやはり不安でドキドキしていたのですが、尊敬する先輩方と話していて、わたしはこの現役から浪人生活の中で実技のことだけでなくもっと多くの大切なものを学び、出会うことが出来たのだと心の底から思いました。たとえどんな結果になっても、わたしが幸せ者であることには変わりはないと思いました。


わたしの目標を応援し支えてくれた家族、親身に指導してくれた講師の方々、一緒に努力した仲間たち、遠くにいても励ましてくれた先輩と友人に心から感謝します。
ありがとうございました!






岩井りとさん
埼玉・県立大宮光陵高等学校 卒
合格大学:
東京芸術大学 彫刻科
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「己を信じ抜く」


美術はハッキリとした正解や順位はない、何を信じればいいのかわからない世界だと思います。
自分と他人の価値観も違う、観る人によって評価も変わる。
それが恐怖でもあり、面白いところでもあると感じています。
そんな中で何を信じればいいのか、それは自分の経験だとわたしは思っています。
何を見てきたか、何をやってきたか、何を感じてきたか、自分で培った経験は何かの影響で変わることもない自分だけのもの、自分の力になっているはずです。
「自分なんて」そう思わず自分の力を信じる、自分を信じられるほどの経験を積み、実力をつける。
それが大事だと思います。
でも制作中は別です。疑ったほうがいい。


わたしは浪人した1年間ずっと自分を信じていました。
受験のときも、1年間やり遂げた努力を信じていました。きっとなるようになる、だからどうにでもなれ、そんな気持ちで受けていました。
正直に言うと、わたしはデッサンは上位ではなく、粘土もうしろ寄り、彫刻1はまあなんとなく得意、そんな実力でした。最後の最後で何かが起きたのでしょう。
普段、まわりがどんなにうまかろうが、安定した結果を出していようが、まわりのことを気にしませんでした。口を揃えて「マイペース」と言われても。
自分が前回よりも成長しているか、信じられないミスはしていないか、どんな方法が自分の目と手を合わせるのか、何を気をつければうまくいくのかという自分のことと、人の使う技術や表現や道具など、それを気にして考えて過ごしていました。


何も信じられない時期も、うまくいかずに涙したときも、わけもわからず怒り狂った日もありました。
そんなときも、支えて応援してくれ、時には放っといてくれた先生や家族、友達がいる、本当にいい環境で過ごせています。感謝してもしきれません。
手放しに褒めず、違うところをちゃんと違うと手厳しく、良いところを良いと指導してくれた先生方、つらいときに息抜きに付き合ってくれて、応援し、励ましてくれて、合格を知らせたときも自分のことのように喜んでくれた友人たち、いろいろな行事も普段も楽しく遊び、過酷な日常を共に過ごした友人たち、指導してくれて、応援してくれて、とにかく励ましてくれた方々、そして家族にはここでは語り尽くせないほど、本当に感謝しています。地に頭がめり込むくらい。
たくさんの人に支えてもらっています。ありがとうございます。


ここがゴールではないので、気を緩めずに愉快で厳しいこれからを、強い心で進んでいきたいと思います。
ありがとうございました。






許斐真帆さん
千葉・県立船橋高等学校 卒
合格大学:
東京芸術大学 彫刻科
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「こわくてたまらないひとに」


それにしても長居をした。
彫刻科に棲みついた座敷わらしのようだった。
居心地のいい場所がたくさんあった。
本館入り口正面の椅子、ピロティの床のすごろくみたいなモザイクのはじっこ、
自然光の入る5-3アトリエはめったに使えないけれど大好きだったし
昼どきの講師室も迷惑がられても好きだった。


嫌いだったのはコンクール後の講評待ちの、ヒリヒリする本Bアトリエの空気で、
でもそのヒリヒリする感じも、コンクール以外なら刺激的で好きだった。
受験生はもちろんヒリヒリした毎日を過ごしていたけれど
若者たちだけでなく、そこにいる大人も、彼らなりにヒリヒリする
何かを抱えて、美術という世界に身を置いているのを見ているのが好きだった。


予備校が居心地いいなんて言っているから何度も浪人するんじゃ、と
お説教くらいそう。でもね、、、居心地よい場所だったから
自分がここにいる意味を探し続けられたのだと思っている。
目の前のものを見る目がほしくて、私はどばたにきたのだし、
母が死んで、その死んでいくさまを見て、自分の残りの人生を逆算したら
もうそれくらいしかやるべきことが見つからなかったのだ。


それにしても新しい受験生に、何をいってあげられるだろう?


合格体験記だなんて困ってしまう。トシくっていることはさておいても
要領悪くて忘れっぽく、肝心なとこでヘソ曲がり、という人がもし他にいれば
もがくな、自分を受け入れろ、と言ってあげたい気もする。
もがいて、必死にモチーフを見つめて、客観性のなさに苦しんで、
それでも一生懸命モチーフを見ていると、だんだん輪郭がぼやけて
断片的な白黒のかたまりが目の前に平べったく散らばって、
いわゆるナントカ崩壊みたいな(正式名称不明)脳の状態になって
もうどうやって描くのか全部忘れちゃった、という事態になるのだ。
私はこれを何回繰り返しただろう?


たかだか絵を描くのに、なぜ怖くて手が震えたりする?と呆れられたりもする。


でも震えるんです。にっちもさっちもいかなくなると。
怖くて木炭持つ手が震えてヨレヨレの線になったり、鉄ベラが持てなくなったり、
わかる人にはわかるはずだがわからない人はわからない。
とりわけ6時間の実技になると、焦りもあるからなおひどい。


これを乗り越えるのは不可能に思えた。
実際、今年も2月に入ると、怖くて間抜け面でアトリエに座る日が続き、
もうそういう自分を受け入れるしかなく、しまいには、
私は石膏描いているのじゃない、階段と壁を描いている、
と言い聞かせるほかなくなった。
ひたすら「階段と壁、階段と壁」と呪文のように繰り返し、見かねた講師に
あのねちょっと動きが、、と小声で指摘されてもまだひたすら
「動く階段と壁、動く階段と壁」と呟きながら円盤を描いたりした。


怖がりで要領悪くても、壁と階段くらいならなんとか描けるものらしく、
結局そうやって入試直前まで石膏を描いた。正直に言えば本番でさえ
最初の1時間は階段と壁を描いていたし、弥勒によく似た階段だなと
思いながら作っていた。
もしも怖くてどうにもならない時は、階段と壁を思い出して、
バカらしくなるまでやってみてほしい。おすすめはしないけれど。
バカみたいなので。




私ほど要領悪く過ごしているわけでもない人がほとんどだろう、だとしたら、
私が伝えてあげられることってなんだろう?
美術は楽しいといったって、結果が出なければ苦しい。本当に苦しい。
これは書けと言われたから書くわけじゃないけれど、私は息苦しくなると、
夏期や冬期に、基礎科の彫刻で講習を取ったりもした。
美術を始めて日の浅い人たちの実技は、本当にのびのびしていてきれいで、
自分の作品がしょぼくてびっくりした。ポケモンのぬいぐるみと幾何形態
の構成、油絵具の匂う基礎科のアトリエの隅っこでのんびり作る日が、
どれほど救いになったことか。油画の1次対策の木炭デッサンに
お邪魔したこともある。あんまりにも自由で楽しくて、ショッキングだった。
ああそう、苦しいときはときどき、美術の原点に帰れるような機会をもつのも
よいかと思う、人によっては。また彫刻を続ける力になります。




でもそれでも、受からない。受かるあてがみつからない。




そういう日々を繰り返した私に、言ってあげられる言葉なんてあるのだろうか。




講師のひとたちからは、ずいぶんいろんな言葉をもらった。
コミュニケーション好きなので。
その点は唯一、私の長所かもしれない。
私には私の、人には人の、それぞれ受かり方がある、と言ってくれた講師が
いたな、とか、最後まで合わせにいけ、という前の日の言葉、そこそこ
描けるしそこそこ作れるんだからもう受かっていい、と言ってくれた人や、
手なんて所詮シルエットの集合体、と言った美人講師、私の実技が
大好きだと言ってくれた講師。
私のこれまで過ごしてきた日々の、いろいろな場面のいろいろな言葉が、
ほぼ同時にあの芸大のアトリエで、私をかわるがわる励まし続けてくれていたので、
怖すぎてテンパっちゃいたが最後の1秒まであきらめずに、モチーフと作品とを
見比べ続けていられたのだった。
私がどばたで過ごした時間は、長かったけれど無駄にはならず、
それらのぜんぶが私を支えてくれた。
これはきっと、だれにとっても同じだろう、決して無駄にはならない、だから
安心して苦しんで、ということくらいかな言ってあげられるとすれば。




とりとめもなく長々と書いてしまった。
文章が長くなるのは高齢者の特徴なので、ここらへんでおしまいにします。
どばたにいる方々とその建物と、あと私の家族と犬に深い感謝をささげます。






菊地寅祐くん
山梨・県立韮崎高等学校 卒
合格大学:
東京芸術大学 彫刻科
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「浪人」


朝は大概七時半に起きる
冷蔵庫にある安い卵と生醤油
七時に炊けていた白米にかける


八時 見もしないテレビを消す
父親から貰った革靴
暇はあっても塗らないミンクオイル
家の鍵はガスコンロの右側
やがて自転車にまたがる


何故か三つも薬局のある駅前
愛想の悪いパン屋を通り過ぎる
ギアは錆びて外れやすい
予備校の電柱に自転車を括り付け
マイバスで烏龍茶、生麦を買う
打刻をして階段を降りる
席取りにサインして仲間と雑談
開始十五分前 用を足す
事務側トイレは使用頻度が高い
木炭紙一枚
レシートは貰わない
縦向きの箱椅子
道具箱は右手 パンは左手に
イーピンにガーゼをかけ
靴紐を縛りモチーフを見上げる。




支えて頂いた沢山の方々に感謝しています。ありがとうございました。






田村領磨さん
東京・女子美術大学付属高等学校 卒
合格大学:
東京芸術大学 彫刻科
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「受験を終えて」


私の受験生生活は助けられてばかりだった。








受験を決めたのは高2の冬で高3から塾に通い始めた
好きな人と同じ大学に行きたくなくて
誰にも劣りたくなくて
何か夢中になれるものが欲しくて
不純な動機で受験を決めたわたしには
頑張り続けるには余りにも弱い理由だった
受験は逃げだった


それでも負けず嫌いなりに懸命に逃げることを頑張っていた
学校に教育実習で来ていた卒業生の方に同じ受験経験者としてアドバイスをもらったり
夏休みは朝から晩まで余計なことを考えないように制作に打ち込んでいた
学校内ではある程度の評価もされていて自信があったわたしは塾でも現役生の中では然程悪い評価ではなく
逃げ続けられていることに満足していた


そんな中
夏も終わり受験本番に差し掛かった頃
わたしは失恋をした
わたしは何から逃げているのかすら分からなくなった
失ってから気づくとはこのことかと理解した
ずっと好きで情で付き合ってくれていたことも分かっていたのにそれでも
それから逃げることで自己満足し
相手をほっといた自分に対しては相応の成り行きだと思った


わたしに自信がなくなって心が弱くなったのはこの頃からだったと思う
制作にも集中できず何かと理由をつけては休みがちになった


高3の冬受験本番になった頃
卒業制作をすると言って何日間も塾も学校も休み怠惰な生活を送っていた
年を越した辺りからは制作も右肩下がりで心ここに在らず
周りには表面的な笑いばかりするようになった
全く集中も出来ずに自分が何を何のために頑張っているのかさえ分からなかった。








そしてそのまま一次試験の日を迎えた


どうしても観たい展示があったわたしは試験終わりに急いで展示会場へと向かった
受験の不安な気持ちを抱えたまま着いた展示室で作家さんに声をかけてもらった瞬間に涙が溢れた
同じどばた出身の藝大生の方で他人のわたしとでさえ優しく受験の苦しみを分かち合ってくれた


その会話の中で
教授はちゃんと受かるべきひとを選んでいるんだよきっと頑張ってやり切ったなら大丈夫!
との言葉をいただいて
その言葉とは裏腹に逃げだけでやってきたわたしは落ちてることを悟った
それと同時にわたしはもう失うものがないこと
逃げる必要もないこと
それでも彫刻が好きなこと
色々なことを悟った


一次発表の日
合格者の中に自分の受験番号はなかった
受かるべきひとになれていなかった私は涙を流すことすらなく浪人することをきめた
どばたにかえると、講師の方々と色々と話をした
一浪の1年間を支えてくれたそんな言葉もたくさん与えてくれた。








そして間も無く浪人生活が始まった
浪人中は
受かるべきひと
になることを何よりも掲げて制作をした
上手くなることよりも受験当日にモチベーションを合わせていけるように毎日を過ごした


失恋をしてから脆くなった心は元に戻ることはなく
急に伏せてしまって休んでしまうことも多かった
それでも頑張って塾に向かうと笑顔で
今日は来たな!
それだけ言って受け入れてくれる講師の方々に
何度も心が救われた


だんだんと感情が制作に影響せずある程度のクオリティを上げられるようになった頃にはすでに厚手の上着がないと肌寒い季節になっていた


新しい年を迎えてセンター試験も終わった頃
周りのみんなは朝から晩まで塾で制作をして熱い熱気に包まれていた
そんな中でわたしはまた受かるべき人とは何だろうかと考えていた
わたしの拙い結論は
いつも通りであることだった


きっと上手くなるには誰よりも制作するべきなのは明確だった
けれどもわたしの中で
受かる=上手い
の式はすでに成り立たなかったので
それまでも制作の時間が終わったら誰よりも早く切り上げていたわたしは
入直の時期になっても夜まで頑張っているみんなを尻目にそそくさと帰宅して夜は制作を忘れて自由な時間を過ごすようにした


趣味の料理も明日に疲れが出るからやらない
ではなく
やりたいと思った時に即座にやることにした
それもあって受験直前も気を張らずにモチベーションを上げていくことができたのだと思う。








そして迎えた一次当日
現役の時は木炭も全て芯ぬきをして
真っ赤なワンピースを着て
いつもとは比べものにならない程の気合を入れて挑んでいた
でもそれではダメだと分かっていたので
いつもの履きなれた靴地味な洋服
箱のままの木炭で挑むことを決めた


部屋の中に見えたモチーフは
現役の時は上手く描くことが出来ずにあまり好きでは無かったヘルメスだった
しかしちょうど
ふと何か惹かれるものがあって今までの中で1番熱くかっこよくヘルメスを描いた日が前日の事だった


部屋に入ってすぐに座席抽選をした
私の好きな光の向き
場所の座席を見つけて絶対にそこを引き当てると意気込み抽選をした
見事にその席を引き当てたわたしは
描き始める前に一次合格を確信した


現役の時とは違う冷静かつ平常心で挑むことが出来た一次試験は狂うこともなく
良い描き出しが出来たのだと思う


そして一次の発表を迎えた
案の定一次通過で
嬉しさとともにここで思い上がってはいけないと心を鎮めることに専念をした
それと同時にわたしは言霊や思い込みはわりとそうなると考えている人間なので
一次通ったら二次も通る
今のわたしは受かるべき人間になれている
そうなんども心の中で繰り返した。








そして翌日すぐに二次試験の彫刻1迎えた
講師の方々が試験内容といつもの授業が類似していると安心してしまいあまりよくないかもしれないねと言っていたそんな中で
試験内容はいつも塾でやっていることに程近く
それはいつも通りを心がけていた私にはとてもありがたい課題であったと思う


お昼休憩の時間にはいつものようにクッキーを焼いて持って行った
監視員をしていた方々からは不思議な目で見られていたかもしれないけれど
私がいつも通りに過ごすためには必要不可欠だったと思う。








人物や構成に比べてきっちりと合わせなくてはならない模刻が来る可能性が高いと予想されていた中で
模刻があまり得意で無い私は塑造の試験を何よりも恐れていた
そんな中で出たのは手と菩薩の構成だった
これは受からせてくれる試験だと確信した
午前中誰よりも早く心棒を作り終え
粘土付けも早々と済まし確実に完成に向けて作って行った


しかし午後になって手の心棒がぐらつくことに気がついた
残り時間は2時間程度で焦り動揺した
けれどこれは受からせてくれる試験であって
ここで手を抜いたり諦めてはいけないと
最善を考えた
やりきれずに落ちることだけは絶対にしたくないと一か八かの勝負に出ることにした
一度作った手を半分ほど壊しシュロ縄できつく結んで固定をし安定させることにきめた
そこからはここで諦めたらいけないと出来る限り作り込みをした


この選択はあっていたと思う
形が甘いところが多くなってしまったけれど
今の自分が出来ることは出し切った


最終合格発表まではずっと心がざわついて
一生分の鼓動を打っているのではないかと思うほどだった


そして迎えた最終合格発表
緊張のあまり家を出るのが遅くなり
大学に着いたころにはすでに開示してから30分あまり経過していてすれ違う人達の少しざわついた空気の中自分の番号が掲示されているのを見つけた


一浪で必ず受かると決めていたわたしは
嬉しさと安堵の感情に包まれ
始めてこの一年色々な方々に支えられながら頑張ってきてよかったと思うことが出来た。








思えば不純な動機で受験を決めたわたしがここまでやってこれたのも
学校の先生からの応援を始め
先輩や尊敬する作家さん
講師の方々
何よりも家族が支えてくれたからこそだなと
改めて感謝することができて
それに対しておめでとうと
皆が皆祝って下さって
恵まれた環境の中でやってこられたことに
何よりの幸せを感じることができた




きっと好きだった人から振られなければ
現役であんなに落ち込むこともなかったとは思うけれど
受験をしようと思わせてくれたわたしの人生に居なくてはならない人だったなと
色々な出会いに今だからこそ素直に感謝できていると思う




合格はまだスタート位置に立てただけで
これからの頑張りが大切だと分かってはいるけれども
スタート位置に立つこともきっと1人では出来なかったと思う
それも色々な方の支えがあったからこそ何とか立つことができた
だからこそわたしは何年もかけて作品を通してこの感謝の気持ちを届けていけたらと思っています。






伊藤珠生さん
東京・都立工芸高等学校 卒
合格大学:
東京芸術大学 彫刻科
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「彫刻が好きだから」


夜間部だった2年前、彫刻を始めて間もない頃、「私は誰よりも頑張ってやる。」そんな風に思っていた。
学校の課題に追われつつも、頑張ることが楽しくて予備校が楽しかった。冬、地方生も増えて、皆んな熱かった。「頑張っているのは私だけじゃない。私より頑張っている人達がたくさんいる。」そんな当たり前の事に、その時気付いた。頑張れなくなった。私は人から頑張っていると思われたかっただけだった。そんな自分に気づいて頑張ることが恥ずかしくなってしまった。
そのまま私は藝大に落ちて、浪人生になった。浪人に少し憧れていた、楽しそうだと思っていた。私はどこまでも甘かった。
浪人すると、実技や人間関係、上手くいかず泣いてばかり。自分の良いと思っていた作品が講師には評価されなかったり、力はあるけど魅力がない、そんな事を言われて自信がなくなった。評価されない作品は嫌いになって、見たくなくて講評の後、すぐに壊した。


「何で彫刻をやっているのだろうか。何で藝大を目指しているのだろう。」


全てが分からなくなった。受け入れられない自分を人に受け入れてもらおうとした。
9月頃、自暴自棄になった。泣きながら制作したり途中で帰ったりしていた。そんな私にある講師が、面談しようと声をかけてくれた。講師は私に、自分を受け入れる事を教えてくれた。迷いも不安も受け入れる事にした。受け入れると、自分が何をしたいのか考えることが出来た。とりあえず、もう後戻りは出来ないのだからと、不安定な気持ちと戦いながら、実技をする事にした。
コンクールで結果が出るようになった。その結果に救われた。きっと、夜間部の頃、頑張っていた自分のおかげだ。
明日の自分のために今日頑張ろうと思った。
粘土もデッサンも上達し安定していった入試直前、私は、彫刻が大好きになっていた。
藝大に行く理由が見つかった。「彫刻が好きだから」行くのだ。
この一年間、たくさんの事があった。辛い事の方が多かったかもしれない。でも私は全力でぶつかれた。だから、後悔する事は何もない。
この先どんな事があっても、私は全力でぶつかっていきたい。泣いたり笑ったり、全力で生きて、全力で彫刻をしていきたいと思う。


これまで支えてくれた講師の方々、予備校で出会い、かけがえのない一年間を共に過ごした仲間達、応援してくれた家族や友達に、心から感謝します。本当にありがとうございました。






高橋晴久くん
千葉・県立松戸高等学校 現役
合格大学:
東京芸術大学 彫刻科
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『楽しかった受験生活』


僕は高2になってから進路を彫刻に決め、それから毎日欠かさずデッサンを描いていました。
制作してないと僕は死んでしまうので朝早く高校へ行き制作し、授業が終わると最終下校時間まで制作し、家に帰っても次の日の制作の事しか考えていませんでした。自由な時間と自由な先生と自由な親と自由な友達。僕が努力できたのはこの自由な環境があってこそだったと思っています。飽きっぽくて移り気な性格だったので、1時間デッサンを描いたら粘土がいじりたくなってきて、それで粘土をいじっていたら今度は陶芸がやりたくなって、それでお皿を作っていたら今度はまたデッサンが気になって気になってしょうがなくなって、結局いろんな教室を転々としてたのを覚えています。


高3になってからドバタの夜間部に入りました。毎日高校が終わるとすぐドバタへ行き、8時半まで制作し、夜遅くに帰宅する。体力的に厳しい毎日でしたが、それでも楽しさは変わらなくて、予備校に行くのが1日の内の一番の楽しみでした。
受験だと思ってデッサンを描いたり粘土を作ったりした事はありませんでした。だからこれだけ楽しめたと思います。実技で泣くこともあったけど受験が怖くて泣いた事はありませんでした。ただデッサンを描くのが楽しかったから妥協せずにやれました。だから上手くいかないと悔しくて泣きたくなってしまう事がありました。遊び心も大事、妥協も必要と言う大人もいますが、子供は遊ぶときほど妥協しないと思います。
試験本番も楽しんで作れました。デッサンも新鮮な環境とピリピリした空気を味わいながら楽しんで描けました。彫刻1は特に楽しんでやれました。彫刻2も苦手な構成粘土だけど、迷いなくやれました。悔いのない作品を作れたので受かった時は本当に嬉しかったです。ここまで来れたのは自分だけの力ではありません。両親や、高校の先生方、ドバタの講師陣が非常に立派な人達だったからです。こんな悪餓鬼でも学費を出してくれた両親、最後まで全力で指導してくれた講師の方々、そして基礎を築いてくれた高校の先生方。本当にありがとうございました。裏で悪いことばっかしたり、友達に心配かけたり、色んな女の人に迷惑掛けたけど反省しています。これからは立派な男になれるように努力します。
あくまでも大学に受かっただけに過ぎないので、浮かれずにこれからも精進していきたいと思います。






関野正祥くん
東京・私立錦城学園高等学校 卒
合格大学:
東京芸術大学 彫刻科


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「楽しまないと!」


自分は勉強が嫌いで本を読むのも嫌いで文章を書くのなんて死んでしまいます。でも物事を考える事はすごく好きで浪人生活の中で考えてた事をいくつかあげて行きます。


僕がここで受験生に向けて関野正祥の浪人生活のどんな事を書こうと他人からしてみればどうでもいい事。合格者から聞くべき事は考え方だと思います。3年間の講評ノートを振り返り好きな自分の考えを紹介します。


「楽しまないと芸術をやっている意味が無い。嫌ならやめるべきだ。芸術は勉強なんかよりはるかに贅沢なものだから。」これは芸術を学ぶひとは絶対に忘れてはいけないことだと思います。


「静かに集中。熱くなってはいけない。座禅をするように実技をすれば全てが研ぎ澄まされ作品は良くなる。そのうち余裕が出来てさらに集中することが出来る。」どんな表現にも集中力は必要で、その力が作品に込められて作品の価値が上がると僕は思います。


「実技は頭を使って自分をコントロールしながら目でやるもの。」目と手を直結させることを前提としてその動作をしているうちに余計なことが、入って来たり、自分の行き着く先が変わったら頭で補正する。


他にもありますがこのくらいにしておきます。でもまあ、なんだかんだ言って自分以外の奴の事を倒す気持ちと気合で大体の事はなんとかなると思います。


青汁のCMみたいに急に宣伝ぽくなっちゃいますが、生徒1人1人の考え方を大切にしてくれるのがドバ彫だと思います。僕は学校も先生も好きじゃないタイプのひねくれ生徒でしたが、どばたはマジで好きです。講師で呼んでくれるのを待っています笑。


最後に学科落ちって言うのは本当にあります。高校生はよく「勉強はしといた方がいいよー」って言われると思いますがマジです。勉強が本業の時に勉強しとくべきです。実技だけうまかったら藝大に入れるなんてそんなに甘くありません。






水巻映くん
埼玉・県立芸術総合高等学校 卒
合格大学:
東京芸術大学 彫刻科
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「上達するために」

 
まず初めに、今まで何も言わず支えてくれた家族。切磋琢磨し合い笑いあった友人。やたらとあごをいじる講師の皆さん。優しく働き者の助手さんたち。今まで応援してくださった皆さんへ。無事、東京芸術大学に合格できました。ありがとうございました。


 さてさて、体験記に移りましょう。僕は実技ではあまり目立つような立ち位置にはいなかったと思いますし、体験記で彫刻論とか精神論とか、そんなかっこいい話は他の人がすでに書いていると思いますから、ちょっと違う話をします。
 デッサンや塑造において大切なのは何でしょう?モチーフへの観察や理解はもちろんです。完成のイメージを持つこともとても大切です。客観性や様々な観点から発想を広げることなど、良い作品を作るためにはこれらのことがとても重要です。ですが、それ以前にもっと大切なことがあります。それはアトリエの環境ですね。環境が悪いといい作品は作れません。
塑造のとき、彫刻科は動き回ります。例えば模刻をしていて、観察する際に死角ができてしまうのは彫刻科にとって致命的です。床に使っていない道具や箱椅子が置きっぱなしになっていることが多くあります。観察したい場所に物があるから観察できない。すごいストレスですね。
使う道具も共同のものが多いです。作るものも場所を取りますね。モチーフも大きいです。少しでも広いほうが伸び伸び制作できます。使ったらすぐに元の所に戻す。とても大切ですね。
とはいってもみんな忙しいです。片づけなきゃと思っても忘れてしまうことが多いです。
制作中は実技に一生懸命な人たちの集まりですから、放置粘土があったり、置きっぱなしの道具があったりするのもわかります。だから授業終わりに気づいた人が片付ける、声をかけて本人に片してもらう。みんなのアトリエですから、みんなでよい環境にしなきゃいけない。当たり前のことです。だから僕は放課後にアトリエの掃除ばっかりしていました。誰のかわからない芯棒を壊したり、粘土を片したり、隅に落ちている縄とか垂木とか拾ったり、頼まれた訳でもなく、褒められたくてやっていた訳でもないです。いい実技がしたいから、ある意味自分のためにやっていました。それに掃除している自分の姿を見て気づいた人は手伝ってくれます。いい人ですね。そういう人が増えれば自然と良い環境になるし、良い作品も増えると思います。
入試が近づいてみんなが自主制作している横で、僕は道具の整理をしたり、片付けしたり、棚作ったりしていたんですが、それが逆に心に余裕を作ってくれて、変に悩んだり自分を追い詰めたりすることなく、落ち着いた心境で本番に臨むことができたと思います。アトリエを使わせてもらったお礼にきれいにする。次使うとき使いやすいようにする。一見関係ないように思えるけど、上達するための近道です。芸大でも自分が制作した範囲はできる限りきれいにしました。
実技以外のところでもしっかりした仕事ができる人が受かるんだと思います。ただうまいから受かるのではないです。僕が言いたいのはそういうことです。
最後に
これからも多くの人が、美術の道を歩むその先駆けとしてすいどーばた美術学院で学んで行くことと思います。2年間でしたがとても成長できた場所でした。その恩返しという訳ではないですが、新しく霧吹きの棚を作りました。「高みを目指してほしい」「上へ上へと上達してほしい」という思いでモチーフを選び作りました。大事に使ってくれると嬉しいです。

2017年03月17日

●2017合格者体験記特集

「インタビュー企画第32弾」
 2017合格者体験記特集

2017年度の合格体験記をまとめました。
それぞれにリアリティーがあります。
参考にしてください。
今年はこの一年で制作したそれぞれの塑造作品とともにご紹介します。






廣崎萌さん
石川・県立鹿西高等学校 卒
合格大学:
東京芸術大学 彫刻科
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『自分を信じる』

一年前、私は誰よりも強くなろうと心に決めました。
その為に私が選んだのはここで学ぶことでした。
正しい選択だったと思います。ここには最高の環境があり、先生がいて、同じ道を志す仲間がいました。

受験は結果が全てかも知れません。でも誰になんと言われようと自分が正しいと思ってつくったものを信じてあげてください。大切にしてあげてください。
道に迷った時は原点に戻ってみてください。一番大切なものが自分のすべきことを教えてくれると思います。

浪人して初めて周りの人の有り難さに気づくことができました。本当にありがとうございました。
まず、第一歩を踏み出すことが出来た今、これからは自分を信じて、強かに生きて行こうと思います。






柿坪満実子さん
東京・私立星美学園高等学校 卒
合格大学:東京芸術大学 彫刻科


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『挑戦し続けること』

4浪で落ちてもう1年頑張ろうと決めた時、彫刻を続けたいと思う自分ともう一度向き合う事から始めました。
なぜこの道を選んだのか、なぜ途中で諦めなかったのか、その答えが私をこの1年間支えてくれました。
どんなに頑張っても報われない時があります。
彫刻をして生きて行く自分のために頑張りたい。
そのためならどんなに辛くても悔しくても私は乗り越えてきました。
できる自分もできない自分も認めてあげる事で前に進むことができました。
今まで沢山実技をしてきて、自分が見ている物を表現できないもどかしさに襲われる度に、私は自分が見ている世界が誰よりも好きでそれを表現できるのは自分しかいないと信じて続けてきました。
浪人を続ける内に自分の限界を決めてしまう時があります。
どんなに実技が上手くなっても新たに始めるとまだやる事は沢山残っていて、見えている事のさらに先が見たいと思う向上心を持ち続ける事が、繰り返しになってしまう日々の実技をより良くしてくれる筈です。

美術といえど受験は戦いです、一緒に受かりたいと思える仲間がいるからこそ全員倒してでも自分を受からせるという強い気持ちを私は最後に持つ事ができました。二次の塑造では諦めずに最後まで自分と向き合っていたと思います。
挑戦する気持ちを応援してくれた友人や支えてくれた家族、講師の方々には本当に感謝しています。






小林さらんさん
新潟・県立新潟高等学校 現役
合格大学:東京芸術大学 彫刻科
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『受験を振り返って』

誰かの参考になるかわかりませんが、私は私の話をしようと思います。


私は自分をなくしたかった。
自我が強すぎたら強引な作品になる、他人の言うことが聞けなくなる、モチーフが見えなくなる。それをずっと恐れていました。
そして正体のわからない「正しいこと」を探していました。例えば数学の解答のような、絶対的な正解。
自分なんてものは、自分の目を曇らせ、正解を見えなくするものだなんてある種信仰のようなものさえあった。

自分を否定するこの信仰は正しく思えました。なぜなら上達するからです。
自分をなくしたいと思ったら必然、周りの人の言うことをよく聞きます。いろんな人の言うことをすべて偏りなく聞こうと思いました。たくさん質問したし、いろんな人の実技を盗み見てもいました。そしたら技術は日に日に伸びました。
もちろん今でも周りの人の言葉ほど重要なことはないと思います。
だけど私の信仰は間違っていました。

先生が試験前日に私にかけてくれた言葉がありました、「自己主張してこい」。
目が覚めたような思いでした。
大学が見たいものは「正解」ではなく受験者本人そのものだと理解しました。そして私が本当に恐れていたのは自己主張したとき、自分が否定されることじゃないか、とも。
試験前日に気づくなんて私は愚かでした、だけど気づけて、本番で自分を出し切ることができて本当によかった。そして発表の日、私を受け入れてもらえたとわかって、本当に本当にうれしかった。

自分を消すことなんて結局できないことです。よしんば消すことができたとして、「正解」があったとして、それのなにがおもしろいんでしょう。正解なんて探す暇があるなら自分を磨く方がよっぽどいいと、今の自分はそう思います。

受験勉強は今思うと短かったような気さえしますが、学んだことは計り知れません。この経験を糧にこれからも精一杯生きて行こうと思います。
もちろん周りの人への感謝を忘れずに。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。






伊東萌さん
東京・都立芸術高等学校 卒
合格大学:東京芸術大学 彫刻科
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『不安を取り払う実力』

前年度、受験に落ちた後はあまりに辛くて先が不安で、胃が痛くて漢方薬を飲んでいた記憶くらいしか無いです。
失意のどん底で進路も決め悩んでいた中、心新たにどばたへ通うように家族が推してくれました。あの時は自信喪失していましたが日々私を見ていてくれた人達が私の実技を強く信じて予備校に行くこと勧めてくれなければ合格どころか受験すらしてなかったかも知れません。

初めてのどばたという環境に身を置き生徒の数と1人1人の意欲に驚きました。
多くの生徒のいる中で、自分の立ち位置を把握して実力があることを確信し、同時に何が足りないか、どうして今まで落ちてしまったかも身に染みて実感出来ました。

日々のコンクールで自信を付けるにつれて、時にどうしようもなく無気力になる自分とも戦いました。それはもし次の試験も駄目だった時に今まで以上に傷付いてしまうのでは…という挫折への恐怖で、きっと実技をしてきた期間が長い人ほど思い当たる感情な気がします。
そのせめぎあいは1月頃ピークを迎え、失敗のビジョンが浮かんで家から出られない日もありました。

平静を装っても講師陣には私の隠していた弱みは気付かれ、ある日「不安を取り払うには、実技しにアトリエに来るしかないよ」と言われ、必死に通いました。

それからの実技中は完成のイメージやモチーフに近づけたくて、ああでもないこうでもないと夢中に制作したら、講評でその奮闘をしただけ評価がつくのが嬉しくて、毎日学校に来るのが楽しかったです。
同じ志を持った人達と自主課題をしたり、時には競ったり、1人で苦手な課題に挑んだりしているうちにマイナス思考になる時間が無くなっていました。

自分にとっての実技の攻め方やプロセスが確立したし大きな発見もあって、
不安を取り払うだけの実力を得てからは試験が終わるまで本当に怒涛の日々でした。


最終発表を見た瞬間は
自分の受験番号があるという
今まで有り得なかった妄想とか幻想みたいだった光景が目の前に広がって、何も言葉が出なくて、近くにいた友達の前で生まれて初めての嬉し泣きをしました。

一緒に浪人したみんなの事思い出して
また藝大受けるなら、この言い表せない幸せを絶対に味わって欲しいなと、切に思います。

最後に
家族、講師の方々、高校時代からの先生、実技を高めあった皆、私の浪人時代に関わった人達への感謝の言葉でこの合格体験記を締め括らせていただきます。

本当に、本当にありがとうございました。






島六新太くん
茨城・県立緑岡高等学校 卒
合格大学:東京芸術大学 彫刻科
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『彫刻を追求すること』

 自分が本当に受験と向き合ったのはコンクールの時の何回かと本番くらいだと思います。受験は抑えるところを抑えればあとは何とかなるのでそれ以外に自分が大切にしていたものを書こうと思います。

 彫刻は無限だと思います。自分が三次元の中に生き、その三次元を追求する。つまりこの世の真相を追求するようなものです。その追求にはもちろん彫刻として教わるものからのアプローチが軸ですが、より深い追求をするためには他のものとの比較が大切になってきます。絵画を知れば立体にしかない魅力が何なのか分かるっていう具合です。それには自分の過去の経験が深く関わって来ますが、それを増やそうという試みも必要だと思います。自分はすいどーばたにいるとき色々な試みをしました。好きな作家のスタイルを真似てみたり道具を変えたりなどそんな所ですが、色々な観点を持つことで本来追求すべきものにより迫れるわけです。そういった意味ですいどーばたは自分の知らない色々な物を教えてくれる良い場所だったと思います。ただ、与えられるものだけではものたりません。与えられたものが本当に正しい事なのか疑う目を持つことも大切だと思います。その目を鍛える行為、それが石膏デッサンだったなーと思います。
自分は石膏デッサンはかなり追求しましたが塑造と素描はまだまだです。塑造と素描は作品としての意味合いが石膏デッサンよりも強いと思うので、今まで作品性というものにそこまでこだわってなかった自分からしたらまだまだ研究不足です。そこは大学に入ってから研究することと思います。
とにかく、無限で奥深い彫刻の魅力を味わおうとする態度。それが大切です。彫刻には万物に通ずる本質があると思います。それを信じてこれからも研究していきたいと思います。






井坂仁美さん
高等学校卒業程度認定
合格大学:
東京芸術大学 彫刻科
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『肯定』

4浪目の春、一次落ちして五浪が決まった私は絶望していたのでした。

元々絵が好きで美術コースのある高校に通い、そこで芸大彫刻出身の講師と出会い、いつの間にか高校から紹介された予備校の基礎科コースに入り順調にこの道へ入っていった私はこの後に待ち構える困難など想像もつかなかったことでしょう。
結局現役で二次落ちし合格することが出来なかった私は半年バイトだけをしてまた半年通い、受験して二次落ちし、またバイトを半年して…という生活を送りました。これは3浪目にどばたへ来てからも繰り返してしまいましたが、当時の私は負のスパイラルに完全に嵌っていたと思います。
週五で働いて通い続けることにも限界を感じた4浪目には入直から通い、実技の感触も悪く無かったのにも関わらず一次落ちし冒頭の話に戻ります。

「諦めなさい、諦めてこういう生き方をする自分を受け入れなさい」

これで最後の受験にしよう、最後だから春から一年しっかりどばたでやろうと決意したとき講師に掛けてもらった言葉です。私はこの言葉がとても腑に落ちました。ああ自分はこういう生き方しかできなくて嫌だったけれども、それでいいんだ。そう思えてから余計な感情や力みが抜けて、出された課題に狙いをもって良い姿勢で取り組むことが出来ました。そして自分の波を常にコントロールするイメージで、最高潮の波が本番にぶつかるよう調整ができたこともそのまま合格に繋がったと思います。
答えを出すまでに相当な時間を費やしてしまいましたが、周囲の皆様に支えてもらってここまで来ることができました。本当にありがとうございました。






後閑悠太郎くん
東京・都立王子総合高等学校 卒
合格大学:東京芸術大学 彫刻科
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『四つん這い』

 様々な思いが錯綜する合格発表は非日常と呼ぶに相応しい異質な空間が広がっています。何度行っても耐えがたい緊張感。奇声や笑い声、すすり泣く様は私の精神を削っていきます。そんな中、掲示板の受験番号が辛うじて識別できるギリギリの距離で私は立ち尽くしていました。へー受かるもんなんだな。それが素直な印象。
 私がこの一年でしてきたことは技術鍛錬より、精神コントロールでした。強靱な精神とは。最強の精神とは。自分の精神を完璧にコントロールしてみせると誓い、9月から遅めな三浪生活が始まったのでありました。
 しかし精神を維持する事は簡単なことではありません。自分だけの問題と言うわけでもないのが現実で、恋人や男女関係、恋愛、特に若いので失恋はかなり精神を削り取ってゆくものです。さて、上手く立ち回っている方々は一体どのような思考回路をしているのでしょうか。精神維持ができている人を私なりに三つのパターンで区分しました。タイプ1…天然/馬鹿で自分が精神的ダメージを受けていることに気付かない。これはわかりやすいですね。そのまま受験を迎えられればラッキーって感じです。タイプ2…自分が精神的ダメージを受けていることに気付いているが、敢えて天然/馬鹿を装い、前に進む。こちらの方は多いのではないでしょうか。辛いことがあっても表に出さず、後ろを見ることなく走り抜ける。かっこいいですね。そしてタイプ3…自分が受けている精神ダメージの全てを受け入れ、咀嚼し、それでも腐ることなく自らを前進させていく。辛そうですね。笑。こういった方々は精神のキャパがかなりのものとなっています。受験や失恋、死との遭遇/向き合い。そこに至るまで辛いストーリーがあったに違いありません。辛い瞬間は人それぞれ、何時訪れるかわかりません。最初の関門はタイプ1の人が自分は鹿ではないと気付いてしまった時だと思います。それを乗り越えるには馬鹿を装うか、受け止めるキャパを育むか。他に手は無いかと思います。精神的に弱い人間が入ることができる程、東京芸大彫刻科は優しいところではありません。
 しかし、精神コントロールさえすれば良いわけでは有りませんね。当然、実力がなければ東京芸大彫刻科に入ることは困難です。では精神コントロールと実技鍛錬はまったく別物なのでしょうか。ここでは精神コントロールとそれが実技に及ぼす影響について考えてみましょう。デッサン、素描、塑造。これらは作者の精神状態の影響を少なからず受けていきます。精神コントロールをする事で各実技に注ぎ込む熱量(精神)をコントロールしていきます。多すぎても少なすぎても作品とはなり得ません。本番で安定した三点を揃えるのは単に普段から全てを全力で取り組むだけではないと私は考えます。できる人はやればいいですが。如何に本番で合格を勝ち取ることができるか。それは実力だけの問題ではないと考えています。課題の本質を見極める判断力、それに限るのではないでしょうか。
 続いてかなり生々しい話になりますがブログアップ/コンクール総合順位に於けるアドバンテージと危険性について述べたいと思います。ブログアップ作品にはこれまで数多くの秀作が掲載されてきました。そこへの掲載を志す事は決して悪いことではありません。むしろモチベーションを高め、次のステップへ進む足がかりになることでしょう。しかしこのシステムで一喜一憂するのはとても危険だと考えています。そして最も気をつけなければならないのは総合順位です。芸大彫刻は彫刻ですので、塑造作品に視点が置かれていると私は考えています。極端な例を挙げますと、デッサン1位B゜素描2位B゜塑造17位Bの三点と、デッサン10位B゜素描15位B塑造1位B゜の三点の二人がいたとすれば、総合順位は前者が上になりますが、実際合格に近いのは後者と考えています。だからといって素描をやらなくていいのではありません。全てできるに越したことはありません。そして後者が安心して良いというわけでもありません。ここで言いたいのは、塑造がダメなら、総合上位だとしても危険だと言うことです。そしてこのようなことをこれからの受験生に向けて語っても良いものか悩むところですが、ブログアップされる作品意外にも、地下で何も言わず力を付けている方々がいると言うことです。(特に多浪)
 私が落ちてきた理由は何なのか。教授/芸大の課題の本質を見極めることが叶わなかったからです。正々堂々闘うことは勇気の要ることです。正統派で攻めると言うことはその分倍率も上がることを指します。実力も問われます。しかしその倍率から逃げずに打ち勝つことが受験なのではないでしょうか?
 本質とは何なのか。教授/芸大は何を求めているのか。私の思う芸大彫刻は厳しさと共に優しさがあると感じています。それは“答え”を明確に設定してくれているところです。恩師は、ある意味芸大彫刻試験はモチーフに救われている、と言いました。救いとは、答えがあると言うことです。その答えが見えたとき、そして様々な葛藤と共にその答えに向かっていった者が、東京芸大彫刻科の合格を手にするのではないでしょうか。






木藤遼太くん
東京・私立立教池袋中学校・高等学校 卒
合格大学:東京芸術大学 彫刻科
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『素晴らしき哉 浪人生』

僕は自分が素晴らしいと感じ、思って造る作品に記憶がありません。

どういう風に造ったか、どういう風に描いたかよくわかりません。

美術を始めた高三の時から今日の今まで未だによくわかりません。

もはや23年間生きてきましたが未だに自分がよくわかりません。

6回の藝大受験、5回の一次落ち。まさかの転科。信じられません。

現役から五浪まで何回やってもコンクールの結果は安定しません。

むしろ安定して出てくる不安定なコンクールの結果。笑えません。

見たまんま造ればいいんだよなんて、そんな上手くいきません。

浪人中にオリンピックを2回も観られたなんて涙が止まりません。

浪人中、一度だけ自分に同情し、あれほど後悔したことはありません。

季節も人も年齢も変わり行きますが、まだ何も失われてはいません。

僕にとってここまで浪人できたのは親のおかげです。
感謝以外ありません。

最後に
大概ちょっとやそっとじゃ人間変わりません。
自分の弱さを認め、自分に同情しないでください。
そして日々の生活をがらりと変え、

気長に空見て季節の風を感じてください。
鼻水しかでません。

ありがとうございました。

2016年03月29日

●2016合格者体験記特集

「インタビュー企画第30弾」
 2016合格者体験記特集

2016年度の合格体験記をまとめました。
それぞれにリアリティーがあります。
参考にしてください。
今年はこの一年で制作したそれぞれの塑造作品とともにご紹介します。






アイザック・レオンくん(2016年 彫刻科)
東京・都立総合芸術高等学校 卒
合格大学:
東京芸術大学 彫刻科
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「 好きだ!!」

一浪のとき二次試験で模刻が出題され落ちました。形の狂いに気づいていたのにも関わらず、直さないでただそのまま作り込んでしまいました。終わってから、あれしてればこれしてればと悔しい思いをしながらももう1年浪人することにしました。 そこで1年前のこの日、国立西洋美術館にあるロダンの考える人を前に 「藝大生になる!彫刻家になる!」と新たに決心しました。
しかし、その熱意が入試に近づくにつれ受かることだけに意識を向けてしまい 自分との戦いではなく、他人との比較や、これがやりたい作りたい!ではなく、これをやらないといけないという惰性が続き、 意識が偏っていきました。そもそもなぜ自分が2浪までしてここにいるのか悩みに押しつぶされていました。そんなときある講師に、「好きなんだろ、普通にやりな、自然に、強引になる必要はないよ」と言われて、なぜ僕がここにいるのか、確かに藝大に合格するためだが、藝大に行きたいのは自分が彫刻をやりたいから、彫刻が好きだからだ!と新ためて気付きました。
試験前になると肩の力が抜けてきて気楽に無理しない日々を過ごし、受かる受からないではなくただ粘土に触れたい、形を作りたい、彫刻を作りたい その気持ちで試験に向かい、本番では受かる実技ではなくその時作りたかった彫刻作品を作ることが出来ました。それが合格に結び付いたのだと思います。

1年ただやりたい事をやればいいとは思いませんが、悩んで手が動かせない日々が続く人は楽しんでほしいです。何かを作るのが好き!と少しでも思っていれば、それは作品制作をする上でもっとも裏切らない気持ちだと思います。
自分は好きだったから体力的に精神的に辛い日でもどばたに行けた。
好きだったからやめられなかった。
好きだからこれからも頑張って行きたい。と思います。
1年間支えてくださった先生方、友人家族本当にありがとうございました!!






山元 佑介(2016年 彫刻科)
東京・私立明星学園高等学校 現役
合格大学:
東京芸術大学 彫刻科
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「6年間」

赤茶色の門をくぐると、父は「俺を2回も落とした大学だ」と私に呟いた。それは小学校を卒業した春休みのこと。父に案内されてやって来た東京藝術大学で聞いた「ゲイダイ」という響きは楽園として私の耳を潤し、中学校入学前に早くも遠くまで伸びる1本の確かな道を見出すこととなったのだ。
中学校入学と同時に都内の大手美術予備校に入学し、高校1・2年生と同じ土俵で鉛筆の削り方から学ぶことになり、中2の時には初めて体験した塑造の楽しさに感動し、専攻を彫刻にすることを決意した。中3になって初めて夏季講習会で浪人生たちと絡み、その熱気に自分の腰が引けていたのを今でも覚えている。
高校生になっても中学生の時と同じ2週間に1作品のペースで木炭デッサンと塑像を繰り返し制作する日々を繰り返しながら、私はゆっくり着実に実技のレベルが上がっていくことを実感していた。
しかし、高2の終わりに突然私は今まで通っていた予備校をやめることにした。5年間、同じ場所で与えられた課題をひたすらに制作することにすっかりと慣れてしまったマンネリ感たっぷりの私の体が、果たして1年後に藝大に通用するのか不安だったからである。そこで目に入ってきたのはすいどーばた美術学院だった。それまで他人事のように眺めていたドバチョウブログも見れば見るほど身近な危機感を感じ、いま通っている予備校にはない魅力を放つ作品が作者の意思と共に伝わってきた。そんな私は考え抜いた末にすいどーばたの彫刻科にて最後の1年を過ごすことにした。
しかし、どばたに入学した時点ですでに私には5年間のキャリアがあったにも関わらず、制作における自分の癖や高飛車な姿勢は合格レベルから限りなくかけ離され、2学期に入るまでは頭部がでかくなる癖が直らなかったり、生炭が残ってギラギラなデッサンを描いたり、粘土をまとめすぎて表情が死んだり、ガーゼに頼ってモサモサのデッサンだって描いたりした。もちろん2学期に入っても公開コンクールでは現役生のライバルだった友人に1位を取られ、自分は惨敗し講師には笑われた。以前通っていた予備校に戻って公開コンクールに参加しても、今まで抑えていた癖が全面的に出てしまい、B’をとって「どばたで何やってたの?」と言われて泣いたりもした。このまま来年も予備校に通う自分が想像できてしまったことにとてつもない恐怖と不安を感じ、いわゆるスランプの時期が12月まで続いた。個性と癖の違いが分からなかったり、モチーフを見ることとは何なのか分からなくなったり、紙と手の構成素描で折り紙の鶴を折ったら講師に怒られたりした。年が明けてからは受験に向けての程よい緊張感によるモチーフに対する熱い視線と自分の実技レベルを冷静に客観視する姿勢を両立させることで、自分の作品の魅力と基本的な抑えどころが噛み合っていくように心掛けた結果、入試直前のコンクールにて浪人生をおさえて上位に入ることが出来たりした。そんなこともあって2月頃には絶対に現役で藝大に合格するぞと感じる気合いと自分の作品が比例していき、今まで恐怖の対象だったグングン伸びていく現役生も恐れない気持ちになれ、むしろ一緒に合格していく仲間なんだと感じられた。おかげで試験当日のジョルジョも真面目で冷静にデッサン出来たし、大石膏室の騎馬像も感動で泣きそうになりながらカッコイイ素描が描けたし、6年間で1度しか作ったことのなかったハトも心臓バクバクながらも丁寧に当たり前のことをおさえて作れた。
結論を言うと、1年前にすいどーばたの彫刻科に来たことは最終的に藝大合格へと繋がり、正解となった。テクニックに頼った受け身な作品を制作するようになっていた私にとって、柔軟な考えを持ったすいどーばたの周りの生徒の作品や、大勢の講師の適度で質の高い指導、大量の参考作品などは、私自身の表現の幅を飛躍的に広げてくれ、大学に入ってから自分1人で考えて行動していくための責任感と機動力を身につけることが出来た。いい意味で1年間という短い間だけお世話になったすいどーばたと、5年間じっくりと長い間お世話になった以前通っていた予備校無くして6年前に見出した道は存在し続けることはなかった。
ひとことで合格と言っても、人それぞれ受験勉強を始めた時期もきっかけも、受験勉強が終わる時期もきっかけも多種多様だと思う。勉強の仕方も合格の仕方も、志望大学へ臨む人の数だけドラマがあっていいと思うし、これから受験勉強が始まる人は、是非自分だけの合格の勝ち取り方を作り出してほしいと思う。






川合 香鈴さん(2016年 彫刻科)
東京・私立専修大学附属高等学校 卒
合格大学:
東京芸術大学 彫刻科
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「向き合う」

周りに甘えて自分を甘やかした1浪、周りを拒絶してストイックに自分を責めた2浪、今考えると、「何やってんだ!」とあの頃の自分に蹴りをいれたくなる。けれど、反面、「よく頑張った!」とチョコを買ってあげたくもなる。3浪目の今年、こんなにも素敵な1年になったのは、間違いなくあの頃の私がいたからだろう。

1浪目の私はとにかく甘かった。周りの人の助け船にふんぞり返って乗った。このまま合格まで導いてもらえると思った。自分と向き合うことなんて、しなかった。

それではダメだと気付いた2浪は、頑固一徹、周りの力なんて借りないと決めた。毎日怖い顔をしていた。他人の言葉に、ほとんど耳を貸さなかった。全部自分でなんとかした、つもりになっていた。
結局、そんなことはなくて、毎日だれかが助けてくれていたけれど。

3浪もしてしまった。でもたかが3浪。1浪目で周りの力を借りることを知り、2浪目で自分と向き合うことを知り、最後に知ったのは他人と向き合うこと。一緒に頑張る仲間、導いてくれる講師、応援してくれる家族。自分と向き合うことが辛くなっても、その時はかわりにだれかが向き合ってくれる。だから自分も、凝り固まらずに他人と向き合おう。ただ、それだけのことだった。技術がどうとか、才能がどうとか、そんなことではない。私に向き合ってくれる沢山の人の中に私自身もいて、だから私もその人たちと向き合う。受験に向かう心が、これでどんなに軽くなったことか。3浪もしてようやく気づけた。間違いなく意味のある3年だった。周りの人たちには長い3年だったと思う。だから、私に向き合ってくれた全ての人に感謝を捧げて、これを、私の合格体験記の「シメ」とさせて頂きます。






小野 海くん(2016年 彫刻科)
兵庫・県立明石高等学校 卒
合格大学:
東京芸術大学 彫刻科
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「受験という美術」

受験はギャンブルではない。本番でしっかりと実力を発揮し合格をつかむ。そのために自分の中にしっかりとしたプロセスを確立する。過程を結果に結び付ける力を。
これが自分の受験でした。
では「実力」とは何でしょうか?自分の120%の実技のことでしょうか。自分はそうは思いません。
大失敗した、あぁもう全然楽しくない、普通になってしまった…って時でもB°を置ける力こそが「実力」だと思います。
これは技術どうのこうのではなく、精神的なことだと思います。

『有為転変を乗り越えよ、不壊不動の境地に至れ。』
これは、毎日毎日色々あるけど、何があってもブレない強い心を持ちましょう。という意味です。
自分は今年、常にこの言葉を握りしめてました。自分が弱いからです。すぐに人に頼ってしまうからです。けっきょく一人です。自分ができることしかできません。こんなの当たり前のことですが、自分を自分だけにするというのは意外と難しいことでした。
天気が、気温が、木炭が、紙が、家族が、講師が、友達が、恋人が…etc.
自分以外に原因を作るのは簡単なことです。しかしそれは自分でコントロールできません。自分の周りで何があろうと、何を言われようと自分以外に期待しない、影響されない精神。コントロールできるのは自分自身だけだという意識が常に必要だと思います。


ここまでに書いたことは、ぼくが2浪して見つけた、ぼくの弱さを克服するために自分に言い聞かせた考えです。
正直、考えすぎだと思います。(笑)
すぐに甘えてしまうので無理して自分を追い込んだりもしました。
ぼくは本来 そんなにストイックな方じゃありません。本音では、楽しいことが一番だ!!っていうタイプです。でもそれこそがもの作りをする上で何より大切なことだと思います。楽しくなけりゃやる意味ありません。
課題である前に美術であること。受験である前に娯楽であることを忘れないでほしいです。
とはいっても 受験ですから独りよがりになってはいけません。 モチーフや見る側に歩み寄ることも必要です。
でもあんまり考え過ぎてもつまらない作品になるし… あぁ矛盾だらけで苦しい、、
自分の世界観と他人の感覚、主観と客観、情熱と冷静、美術と受験、どれも同じことだし両立させるのは本当に大変なことですが、そのバランスを探り当てることこそ自己表現において最も重要で楽しいことではないでしょうか。

受験というのは自分を見つめること、自分を受け入れることだと思います。どんなに見てくれの良い作品が作れたとしても、自分の中の本当の自分と向き合えていなければ合格はできないんだと思います。
いったいなんの順番で合格するのか?きっと上手い人順ではありません。

最後に、今日ここに書いたことは模範解答でも何でもありません。その名の通りぼくのただの体験記です。

自分にしかできないこと、自分にしか作れないものを作ってください。






堀内 万希子さん(2016年 彫刻科)
東京・都立総合芸術高等学校 現役
合格大学:
東京芸術大学 彫刻科
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「自分を見つめて」

はじめに、ここに今から書く体験記はあくまで私が感じたことなので「こういう考え方をしなくちゃいけない」とは思わず、こういう考え方もあるんだな、ぐらいの気持ちで読んで下さい。

受験と戦っていく上でぶつかる壁は沢山ありますが、それぞれの壁には共通点があり、
それは「周りに呑まれないこと」です。

高校3年、どばたに通いはじめた当初私は「彫刻科だからこんなデッサンを描かないといけない、こんな粘土付けをしなきゃいけない」という 染まらなければ という思いにかられ、自分の作品に自信が持てずにいました。
しかし時間が経つにつれて気がついたことは、
良いとされているものを描ける、造れるようになることが重要なのではなく、
自分が持っている周りにない良さを引き出し、誰もが納得するレベルまで磨いていくことが重要なのだということでした。

私の「良さ」は高校1、2年生のときに没頭していた個人の作品制作にありました。
コンセプトを考えることや空間を取り入れることに重点を置いた制作、一つ一つの作品に意図をこめて制作することが受験でも活かされ、今回の結果に繋がっていったのかなと思います。

皆さんもゆっくりとした冷静な気持ちになって自身の作品や、今までに体験したことを見つめ直してみて下さい。
きっと他の人にはない、自分だけの良さがあるはずです。 
今見つけられなくても、それは受験当日に発見できたりするものです。
途中で間違っても構いません、3歩進んで2歩下がる。最後には5歩ぐらい進めます。
焦らず、落ち着いた心で修練を重ねていって下さい!






轟木 麻左臣くん(2016年 彫刻科)
東京・都立福生高等学校 卒
合格大学:
東京芸術大学 彫刻科
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「人は人、自分は自分」

周りが羨ましかった
私にないものを持っていた
それがほしくて真似ばかりしていたが
それはあくまでも真似事であって自分のものではなかった

ある時気づかされたのは
自分にしか感じれない作れないものがあるんだということ
自分が持っているものを
腰を据えて地道に磨いていくしかないんだということでした

過程は人それぞれだと思います
私は時間がかかってしまいましたが
早足で通りすぎていたら知らなかったであろう様々な事を学べたと思っています

こんな私を見放さず助言をしてくださった講師の方々、友人達、家族。
成長させてくれた皆さんに
ただただ感謝です

これからも地道に一歩づつ進んでいこうと思います

本当にありがとうございました






山崎 千里くん(2016年 彫刻科)
静岡・県立沼津西高等学校 現役
合格大学:
東京芸術大学 彫刻科
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「自分にあった目標を」

高校生の皆さん大きな夢、目標持っていますか?
僕はもっていました!
芸大への進学はそのための通過点として考えていました。でも漠然と大きな目標をだけを持っていても自分のしなければならない事を見失ってしまうことがあるかもしれません。そこで僕はまずは芸大合格という近い目標を立てそれに向かいまっしぐらに美術に打ち込みました。そしてその中でさらに小さな、前のものよりいいものを描く、造るという目標も立てました。
前の自分に絶対に負けたくない、前の方がよかったと言われたくないという思いがよりいっそうその目標を意識させました。そのおかげか自分でも一枚一枚描くごとに一つ一つ造るごとに自分の実力が上がっている事を実感出来ました。
結局塑造に関しては芸大に受かることは出来ましたが、まだまだの状態です。
ですが芸大に受かったところで終わりではなく、次はまた新たな目標ができ最終的には初めに持った大きな夢、目標を実現出来るようこれからも鍛錬していきます。
皆さんも大きな目標、小さな目標を使い分け無理なく自分モチベーションを保ち美術に打ち込んで下さい。






木村 知史くん(2016年 彫刻科)
京都・市立銅駝美術工芸高等学校 卒
合格大学:
東京芸術大学 彫刻科
東京造形大学 彫刻専攻領域
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「すべてを味方に」

知っている人や知っていない人もいるかもしれませんが、彫刻科では粘土で作品を造る時、芯棒というものをつくります。
この時しっかりしておかないと重さで像が倒れたり落っこちたりしてしまいます。
僕はある日芯棒の芯を”心”という字で書いて人から「芯と書かないの?」と言われました。どちらもほぼ同じ意味なのですが、僕は心の方が気に入って使っていました。なぜだろうと考えると作品を造ることと自分の心に大きなつながりを感じたからだと思います。
人の心も彫刻と同じで”心棒”がしっかりしていないと大変だということです。
僕はその心の問題で一浪の時に大きく悩み、そのまま二浪をむかえました。
技術だったりおさえるべきポイント、人から見てどう思われるか、そんなことばかり考えながら制作していました。
ですが結局は見抜かれてしまいます。
自分のやりたいこと、主張、そして心がぐらついていたのです。
視点が無い、強さが無い、それは目に見えない形で自分の作品に反映されていました。
ではいったい何がそうさせているのだろうと考える、、、
そもそもなぜ東京芸大に受かりたいのか
自分の彫刻を見る態度はどうだろう
彫刻がなぜ好きなのか
どこで彫刻を知ったのか
自分はどこで生まれどこで育ち今に至るのか
そういう生い立ちみたいなものまで視野を広げて感じてみる。
そしてそこから生まれるネガティブやポジティブな感情、、、
肝心なのはそこから自分が何をくみ取って強い心(芯)をつくりあげるか、
それは人ひとりによって違います。
でもそれを考え始めたら最後、制作に対しての劣等感や不安、ネガティブな考えは吹き飛んでいました。
自分の過去に対する感情は簡単に変えられるものでは無い、それならいっそすべて自分の味方にしてしまえばいいと思ったのです。
そう思えたのは先生や仲間が集まる空間としてのすいどーばたがあったおかげです。純粋にやりたいことを探求できる時間、外に出て作品を鑑賞する時間、たわいも無い話をする時間、悔しい時間、感動する時間そういった時間たちがこの学校には流れている、そしてそこで磨かれた感覚は自分は大切にしなければならないと思っています。
改めてすいどーばたにありがとう!
そして地方からもし来るか来ないか迷っている人は、ぜひ見に来てください。
きっと発見があると思いますよ!






葛城 龍哉くん(2016年 彫刻科)
埼玉・私立浦和実業学園高等学校 卒
合格大学:
東京芸術大学 彫刻科
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「道のり」


自分は小さい頃にものを作るのが好きな子供でアーティストになるという漠然とした夢をもっていました。
小学校のときは特に絵画が好きで、父親にダリの画集を買ってもらったのを覚えています。
しかし、中学校に入ると美術の授業は週に1時限となり、美術に触れる機会は減ってしまいました。(このときの夢は宇宙飛行士でした。)
自分は美術系の高校に入ろうと考えていたのですが担任や親は普通の高校に行けと言い、自分は普通の高校に行きました。ですが、そこには美術の授業はありませんでした。
自分は理系の道に進み普通に勉強して普通の理系の大学に入り普通の企業に就職するつもりでいました。
しかし、大学の試験中にこのままこの大学に入って4年間過ごしてそこそこの企業で働くことを本当に自分が望んでいるのかと疑問に思い本当に自分が小さいときからやりたい事が美術であったことを思い出し数学の答案を白紙で出しました。

ここから自分の「どばた」での浪人が始まりました。

親は自分のことを理解してくれて浪人することを許してくれました。本当に感謝しています。

どばたにとりあえず体験入学に行きました。
自分はそこそこ絵を描くことに自信を持っていましたが、どばたの体験入学で衝撃を受けました。ブルータスの首像を鉛筆でデッサンしました。何時間で描いたかは覚えてないのですが最後に講評があり体験で来ていた人のデッサンが並べられたときに自分より上手な人がたくさんいてこれまで感じたことのないほどに劣等感を物凄く感じました。
どばたの帰り道に自分はあんなやつらに勝てるわけないと思いました。
その後右も左もわからない世界だったのでどばたの基礎科から入ることにしました。木炭で描くということにカルチャーショックを受けました。基礎科に入って1ヶ月もせずに自分はすぐに受験のために昼間部に行きました。

昼間部の人たちは体験入学で見た人たちや基礎科の人たちを遥かに上回る実力でもう少し基礎科で基礎を身につけるべきだったなと後悔した反面かなり刺激になりました。
0の状態からスタートした浪人生活の中で日が経つにつれてデッサンも粘土も経験を積めば変わっていくことを知り、同年代の人たちと実技で張り合えるようになることが最初のどばたでの自分の目標でした。
デッサンや粘土はうまくいかなくてもいままで疎遠だった美術の世界に触れていることが自分はとても楽しく嬉しく思いました。
始めたばかりのときは自分の日々の成長が手に取るように実感できて本当に楽しかったです。
入試直前にはそこそこ力がついてきたのですが最初の受験は失敗しました。一次落ちでした。
当たり前の結果だったのでショックは感じませんでしたが個人的には1年だけ勉強して入れたらかっけーなとか思ってました。

そして、二浪が始まります。

春季講習、円盤投げのトルソーを模刻したのですがもはや模刻になっておらず春季講習の中盤からもう苦痛でした。
しかし、大きなものを作ったおかげで粘土のみせかたが変わりました。いままで小さな凹凸ばかり気にしていて全体性を欠いていたのを解決させてくれました。失敗したとはいえ春季講習で大きなものをやっといてよかったなと思います。
春季講習が終わり普通に昼間部が始まると二浪としてのプライドみたいなものを感じました。同年代の人たちはみんな上手でいつも尊敬していました。
そんな同年代の人たちや先輩たち、後輩たちと仲良くなりいろんな人の実技をみてたくさん刺激を受けられたので本当にすいどーばたでよかったと思いました。
二浪の模擬試験でデッサンがあまりうまくいかずぎりぎりの一次突破でしたが粘土で高く評価してもらい結果は学科落ちでしたが3位でした。とても嬉しかったです。今まで以上に努力が実ったのを実感しました。
そのときに模試の結果を見に来ていた基礎科の時の講師の方に学科落ちを爆笑されたのですが一次受かれば受かるってことじゃんと言われかなり励みになりました。
それ以降はなんの根拠もなく一次突破したら自分は合格すると信じてやっていました。
二浪の入試直前の時は一浪のときよりも緊張してデッサンコンクールでクソみたいな結果を連発しました。

そして受験が始まったのですが、二浪の受験はいろいろと事故がたくさんありました。
まずはじめに受験票がなかなか届かず受験票を再発行して送ってもらいました。
つぎに、一次試験の3日前でした。朝から気持ち悪かったのですがコンクールの素描がある日で3時間だけなら耐えられると思ったので電車で池袋に向かいました。電車ですでに胃がむかむかしていて吐けば良くなりそうな気がして池袋に着いてすぐコンビニのトイレで吐き少し楽になりました。どばたについて素描の課題が出て自分の指定された席につくと尋常ではない頭痛がし、鉛筆を持つ手が動きませんでした。これは描けないと思い中断し、家に帰り、病院に行き、ウイルス性胃腸炎と診断され、38度の熱を出し、嘔吐+下痢の猛攻を受けました。
結局、2日後熱も下がりほぼ良くなったのでおぼつかない足取りでふらふらしながらどばたに向かい試験前最後のデッサンを描きました。
そして試験当日、再発行の受験票を握りしめ一次試験に臨みました。
デッサンは大分序盤で紙の目が潰れてしまい焦っていました。
そんな時にふと三浪することが頭をよぎりました。またセンター試験を受けなければならない。ふざけるな!と思い必死になって描きました。
結果、可もなく不可もなくというようなレベルのものを置いてきてしまい帰り際は本当に死んだ魚のような目をしていたと思います。

一次の発表が自分の中ではほぼすべてだったので発表があるまで本当に緊張が続きました。

発表当日は会場で自分の番号をみつけて本当に安堵しました。と同時に本当に喜びました。

もう後は肩の力を抜いて二次試験に挑むだけだ

そう思ってました。
いざ2次試験が始まるとほぼ伝説のように言われていた大石膏室での素描で緊張と興奮で手が震えました。
3時間本当に楽しかったです。こんな経験二度とないと思うので本当にいい経験ができました。デッサンであまりいいものを描けなかった分素描と粘土で巻き返さないとと思ったのですが素描もあまり満足のいくものは描けませんでした。
粘土は模刻だったらある程度は出来たので模刻が出ることを願っていたのですが
、鳩でした。
ナマモノがあまり得意ではなかったので泣きそうでした。
しかし、講師の方が何が出てもガッツポーズしろと言っていたのを思い出したので、とりあえずガッツポーズしておきました。
自分は鳩は軽く足回りの空間が重要な鳥だと思っていたのでまず小割りを縦に4等分して建てた芯棒をつくりました。
モチーフの鳩は痩せていてとてもカッコよかったのですがあまり鳩らしくないと自分は感じました。
昼休みに昼飯を忘れていたことに気づいたのですが胃腸炎の影響かあまりお腹が空いてませんでした。しかし、何か食べないとだめだと思い友達にサンドウィッチを分けてもらいました。
午後、アトリエに入るとモチーフの鳩が太っていました。自分の中では衝撃的なことでした。鳩はこんなスピードで太るのかと。
ですが、午後の鳩のほうが鳩らしいと思ったのでプランチェンジしました。
大幅なプランチェンジのせいで鳩の全体像がおかしくなり結局残りの30分くらいに安定し始めました。
最後まで粘土を動かしていた記憶があります。

最終合格発表の日
1人で音楽を聴きながら電車に揺られて上野に到着。
正直ダメだと思っていたので変な気持ちで会場に向かいました。
上野公園を歩いていると合格の袋を持った人、何も持たずに泣いている人。日曜日で人が多かったのですが受験生たちは一目でわかりました。今まで味わったことのない緊張感を感じました。会場に着くまで吐き気がすごかったです。
会場についてから自分の番号があり信じられずに七度見くらいしました。
イヤホンを外すときに手が震えていました。嬉しいと同時に複雑な気持ちになりました。一緒に頑張ってきた仲間全員が入れる訳ではないという現実を見ました。
書類を貰いに中央棟にこそこそ向かっていたら講師に見つかり飛びつかれました。嬉しくて嬉しくて言葉にできませんでした。
これまで応援してくれた家族とすいどーばたに本当に感謝しています。

ここまでが自分の合格までの道のりです。

長くなりましたが
何を言いたいかと言うと
夢のために努力すれば夢に限りなく近づくことが出来るということです。

何ごとも諦めずにやれば必ず人は上達する。

自分は2年間すいどーばたで過ごしてそう思いました。
あと、
実技をする上で自分が大事にしていたことは
「見えたものを見えた様に表現する」ということでした。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

2015年04月22日

●歴代現役生の芸大合格体験記

「インタビュー企画第26弾」
 歴代の現役合格者体験記特集

2007年度からこのdobachou.netを始めましたが、当時の合格体験記まで遡りそこから今年までの中で現役で東京芸大に合格した人たちの体験記をピックアップしました。

基礎科から始めた人や、通信教育の人、短期間で合格した人など、それぞれの過ごし方や考え方がありますね。
現役生、高校1.2年生、是非読んでみてください。






2007年
大石雪野(2007年彫刻科)
神奈川・県立神奈川総合高等学校 現役
合格大学:
東京芸術大学 美術学部 彫刻科
東京造形大学 造形学部美術学科 彫刻専攻
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『前進』


  私がすいどーばたで過ごした2年間の中で、最も意義があったのは、自分を高めるための行動を惜しまなかったことだと思っています。
 彫刻が強いのは「どばた」と聞いて、矢も盾もたまらず以前通っていた予備校をやめ、すいどーばたの門を叩いたのは、高校2年の春でした。私はまだ受験生ではありませんでしたが、できるだけ早く、多くの経験を積みたいと思い、その頃から夜間部に通わせていただきました。それからはただひたすらに彫刻と向き合う毎日でした。自分の課題をひとつひとつ駆逐していき、着実に上手くなっていく手応えを感じられ、とても楽しい日々を過ごしましたが、その一方で、自分の作品がだんだんと技術に凝り固まり、色褪せていっているという事実に苦しまされることになりました。そんな中助けられたのが、友人や教師の存在です。彼らに、時には力を抜き、素直に感動することの大切さを教えられ、最後には克服することができました。「どばた」で得た人とのつながりは、何にも代え難い宝になったと思います。
 私は常に危機感を抱えていました。いくら実力をつけても、満足できたことは1度もありませんでした。自分はもっと成長できる、と信じる事が、私を支える力となりました。これからも自分の可能性を信じ、生涯邁進し続けたいと思っています。






2008年
北田匠(2008年彫刻科)通信教育生
岩手・県立不来方高等学校 現役
合格大学:
東京芸術大学 美術学部 彫刻科
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『冷静と情熱の間を』


「冷静と情熱の間」入直の間、その言葉ばかりとなえていた気がする。地方ということもあって2年の始めから通信と講習会を受講してきた。3年の冬季頃には安定した実力もついてきて自信もあったが、センターを終えて入直にくると周囲がかわっていた。浪人生は今まで見たことのない馬力できてるし、現役もノーマークの奴らがやたらと上手くなっていて急に焦った。がんがん伸びる周囲の中で、安定はしていても伸び悩む自分。いつその伸びが自分に訪れるのか不安だった。目も利くようになってこのまま入ってもいいのだろうかと迷っていたとき、自分が逃げていることに気付いた。そんなことを言ったって仕方ない。今ここで受からなきゃ後悔する。勉強は一生していくもので、今を生き抜くことが大切なんだって気付いた。それから本当の受験が始まった。自分のために描こう、作ろうと思った。誰かに勝つためでもなく、誰かを喜ばすためでもなく、自分が納得するために。そうするうちに、色んなものが見えて、何もかも楽しくて、誰よりも自由に駆け回りたくなった。作品を作る上で大切なこと、それがこの言葉「冷静と情熱の間」だった。冷静にならなきゃ見えるものも見えないし、本当に伝えたいことも伝えられなくなる。かといって冷静になり過ぎてもつまらないものになってしまう。情熱的にただうちこめば良い訳でもない。その2つのバランスが絶妙に調和した時初めて、本当に自分の伝えたかった言葉が相手に伝わってくれる。よく感じ、よく観察し、思ったことを丁寧に、大胆な方法で伝える。そう出来るようやってきました。
 受験は人が決めること、そこで悩むより、貪欲に学びにいく方が実は重要だったり。
 芸大合格は自分にとってのスタート地点。どばたの存在が自分に有意義な時間を与えてくれた気がします。世界一の彫刻家になれるよう頑張ります。






2009年
相澤亮(2009年彫刻科)
埼玉・県立大宮高等学校 現役
合格大学:
東京芸術大学 美術学部 彫刻科
多摩美術大学 彫刻学科


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『悩んでる暇があったら手を動かせ!』


 僕がどばたでの生活を通して常に意識していたことは、自分を慰めないということです。夏季講習会を終えたとき、僕はそれまで自分が思っていたよりも、自分の実力はかなり低いというキツい現実を受け止めなくてはいけませんでした。このままだと、浪人してから「そう言えばあの頃は現役合格なんて夢見てたなぁ」なんて思い出すことになりかねない。かなりガックリきて落ち込みながらも、ここで自分を慰めたらだめだと思いました。ここで安心したって何の解決にもならないし、むしろ問題から目を背けることになる。実力が低いという問題が見えて落ち込んでるんだったらやるしかないじゃん!実技の悩みは手を動かして解決するしかないんだ!と半ばやけくそな気持ちになって2学期を頑張りました。やけくそになって頑張る熱い気持ちと自分を突き放して見る冷たい気持ち。この2つの気持ちをバランス良くコントロールすることが大事。ただ冷たすぎてもつまらないし、ただ熱すぎてもいいものはできない。2学期を頑張るうちにそういうことにも気がつきました。
 実力を上げなくてはいけないという問題の他に「波」をなんとかしなくてはいけないという問題がありました。僕は気分屋なところがあり、いい時と悪い時の差が激しかったのです。いくら実力をつけたところで本番で実力を出せなければ何の意味もなくなってしまう。そう思ってかなり焦っていたんですが、ここでも自分を慰めないということが解決の鍵だったと思います。上手くいった日には上手くいったところは素直に喜びつつも過度に調子に乗らないように気を付け、上手くいかなかった日には、上手くいかなかった原因を分析してみることで感情的に落ち込まないようにしてできるだけ毎日落ち着いて生活するように心掛けました。
 結局、どばたでの生活は自分を知ろうという模索の連続だったと思います。自分の能力を最大限引き出すには自分という人間を客観的に把握していないとできないはずです。僕はどばたでそういうことに気付いて少しは大人になれたかなと思います。






2010年
村田 勇気さん(2010年彫刻科)
富山・県立高岡高等学校 現役
合格大学:
東京芸術大学 美術学部 彫刻科
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『限られた時間の中で』


私のスタートはかなり遅く、実技に本腰を入れるようになったのは高校3年生の秋。塑造に取り組み始めたのもこの時期からでした。
 それまでは普通の進学校に通いラグビー部に所属し活動する傍ら、空いた時間にデッサンを重ねていたのですが、力試しに当校の公開コンクールに出てみたところ、当然の如く揮わぬ成績に終わり、大変悔しい思いをしました。それを契機として本格的に志望先へと焦点を当て始め、当校の冬季及び入試直前講座を受講するに至りました。
 受験までのごく短い時間と、圧倒的な経験不足という致命的とも言えるハンデの中、いかに他の受講生たちと比肩し得るレベルまで自分の実力を高めていくか。それが私にとっての最重要課題だったのですが、その際に実践したのが以下の4点でした。1.1日あたりの実技の絶対量を増やす。2.講師陣の指導を徹底的に実践する。3.周りの生徒のテクニックを接収する。4.参考作品を徹底して分析する。
 一見すると当たり前かつ簡単すぎる内容なのですが、、これらが絶大な効果を発揮するに充分な要素がすいどーばたには凝集されているのです。1〜4におけるそれぞれの具体例を挙げるならば、以下の通りになります。1.早朝も夜間もアトリエを使用できる。2.優秀な講師陣が熱心に指導して下さり、力をつける上での具体的なアプローチを提示して下さる。3.全国から実力者が集っている。4.膨大な資料がジャンル別に整理されている。
 このように優れた環境に囲まれていたおかげで、2ヶ月弱という短い時間の中でど素人からそこそこのレベルにまで力をつけることができました。
 こんな環境を利用しない手はありません。あなたも今スグすいどーばたへGO!!






2011年
榎田 進之介 さん(2011年 彫刻科)
東京・広尾学園高等学校 現役
合格大学:
東京芸術大学 美術学部 彫刻科
多摩美術大学 彫刻学科
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『出会い』


 ボクの体験記は芸大の1次合格発表の日からはじまります。その日ほど芸大に合格したいと思った日はないし、今まで芸大を目指してきたくせに、その日ほど芸大の厳しさを知った日はないからです。1次発表の当日、ボクは少しドキドキはしていたもののわりと楽な気持ちでその日を向かえていました。芸大の勝負は2次、1次は突破して当たり前と思っていたからです。甘く考えていたわけではありません。すいどーばた美術学院に通い、参考作品もたくさん見て、これが芸大に受かるデッサンなんだと理解してたつもりでした。その上で、1次試験前のすいどーばたのデッサンは現役、浪人ともにいままで見たことのないような素晴らしいものが並び、あまりの迫力にボクは本気でこれはほとんど全員1次合格しても全然おかしくない、自分も絶対その中にいなくてはと思いました。
 あっという間に1次が終わり発表の日、予備校の仲間たち数人と発表を見に行きました。その中で1次合格はボクだけでした。えっなぜ?みんなあんなに頑張ってたのに、すごい上手いのに、仲間たちは自分のくやしい気持ちをおさえボクに頑張れと言ってくれました。芸大の厳しさが改めてボクに重くのしかかります。みんな粘土もとても上手いのに、当然2次試験で競いあうことになると思っていたし、誰が芸大に入ってもおかしくないと思っていたのに、こんなにも厳しいなんて、ずうずうしかったかもしれませんが、みんなのくやしい思いの分もボクが合格してはらすしかないと本気で思いました。
 2次試験当日、手が出たらあの人、首像はあの人、構成はあの人、と仲間を一人一人思い浮かべます。予備校の先生、高校の先生、学校のみんな、家族を思い浮かべます。そうして挑んだ2次試験は今までとはくらべものにならない作品をボクに残さしてくれました。この結果に導いてくれたすべての出会いに深く感謝します。ありがとうございました。






2013年
室井 颯輝くん(2013年 彫刻科)通信教育生
香川・県立高松工芸高等学校 現役
合格大学:
東京芸術大学 美術学部 彫刻科
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(入直のコンクールで浪人生を押さえ2位に食い込んだデッサン。上手いというより素直なデッサンですね!)




『見ること』


 私は、高校2年の夏季講習会で初めてすいどーばたに行きました。それまで地元の高校でしか作品を作っていなかった私にとってすいどーばたの空気はとても新鮮に感じられたことを覚えています。そしてその中で私は、自分には明らかに力が足りないことに気がつきました。その後、高校に通いながら通信教育を受け、講習会の度にすいどーばたに通い、できる限りの努力をしました。コンクールの結果もある程度ついてきたこともあり、実力はかなり付いてきたと思っていました。
 しかし、冬季講習の中頃、私はかつて無いほどの不調に陥りました。
デッサンが納得いかないまま時間が過ぎ、途中で終わる。そんなことを何度も繰り返しました。原因はおおよそ分かっていました。テクニックに頼りすぎたデッサンに限界がきて、崩壊していたのです。ある先生に、「今お前のデッサンが途中で終わるのは自分でどこか引っかかってる部分があるからだ。そこで自分の手を頼るんじゃなく、目でしっかりモチーフを見て描いて欲しい。途中で終わるのはお前の目が正しい証拠だ。」と言われ、この時から意味も分からず「モチーフを見る」ということを常に課題にして作品を作りました。
初めは上手く行かず、見るってなんだ?としか思いませんでした。
しかし、少しずつモチーフを見ることができるようになってきて自分の作品がよくなっていきました。自分が納得できる「作品」を作りたい。そんなことも考えながら作品を作っていると、気づいたら、今私が作品を作る上で一番大切にしたいと思う、「モチーフを見てその感動を写し込む」ということが出来るようになっていました。
しかし、1人じゃ絶対にここまで来ることは出来ませんでした。こんなに素晴らしい事を気づかせてくれたのはやはり、今までに出会ってきた先生であり、ライバルであり、支えてくれた人々です。感謝してもしきれません。本当にありがとうございました!







2014年
笹野井 もも さん(2014年 彫刻科)通信教育生
静岡・県立清水南高等学校 現役
合格大学:
東京芸術大学 美術学部 彫刻科
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『今できることを』


私は地方の美術科のある高校に通う高校生でした。高校の先生に勧められて高校2年の夏から、何度かすいどーばたの講習会に行くようになりました。
そして高校3年の秋からは高校に通いながらすいどーばたの通信教育を受け始めました。朝早く高校に行って誰もいないアトリエでこそこそデッサンを描きました。
私は高校とすいどーばたでは指導内容や雰囲気が大きく異なるように感じていました。
自分の作品に対して多様な意見が聞ける良さと、何を吸収し次の制作に活かすべきか自分で選択しなければならない難しさがあり、2つの場所で彫刻を学ぶ上で考え悩むことがたくさんありました。
しかし入試でどんな結果が出ようと後悔や言い訳をしたくないし、良い作品を制作するために出来ることはなんでもやりたいと思って通信教育をつづけました。
入直に入ってからは、すいどーばたで一日中制作する毎日で、
通信教育では添削してもらう機会の少ない塑造が著しく良くなっていくのを感じました。
しかしこれまでがんばってきたデッサンはなかなか伸びず、
結局入直最後のコンクールまで、納得するものが描けませんでした。
先生に「自分に不足しているものに気をとられ過ぎている」と言われ、
自分がビビっていることに気づきました。
先のことはなるようにしかならないし、
いま出来ることをやるしかないじゃないかと
開き直ったら、とても気が楽になりました。
そして一次試験の3日前になって、
ようやく自分がいいなと思うデッサンが描けるようになりました。
これからも自分が納得できる作品を、
楽しみながらつくっていきたいです。
これまで私に様々な影響をくださったすべての方に感謝します。






2015年
中村 那由多さん(2015年 彫刻科)
東京・都立荻窪高等学校 現役
合格大学:
東京芸術大学 美術学部 彫刻科
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『合格体験記』


・受験前
 私のどばた体験は中学2年の夏季講習が最初です。高2からは油画科(基礎)に在籍していました。小学4年で油絵を習い始めて以来、ずっと油画指向。彫刻とはまったく縁がなく、紙粘土すらろくに扱ったことがなかったのです。それが、高2の春季講習で彫刻基礎を体験し、高3を彫刻科夜間部生としてスタートしました。転科して1年で合格するまでは、様々なエピソードがあったのです。
 それをすべて書くとキリがないので、受験直前からの出来事を実況風に綴ることにします。
 冬季と入試直前講座では、昼間部・夜間部・ときどき残業(自主クロッキー部)をこなしていたのですが、私にとって一番難しかったのは「彫刻的な」デッサンを描くことでした。そして、ついに3月に突入。
 夜間部で、石膏デッサンをしていた時のことです。ある先生が突然、
「キミ、背景付けなよ」
「……(えっ、いやいや、このデッサンあと2時間しかないんですが。それに一次まであと3日なのに今さら描き方を変えろと!?)」
「付けなよ」
「………………」
 と、言うわけで、石膏像に背景を付けるという油画時代の描き方に戻してみました。が、やはり(彫刻では背景を付けたら受からないのでは)と不安でした。
 でもそんな時、また別の先生が、「描き方なんて考えなくて良い。感じたままに描くんだ」と教えてくれました。おかげでその翌日、つまり一次試験の前日には、スッキリした気持ちで、私本来の描き方が出来た気がします。

・受験中
 私はトルソーが苦手で、一次試験の前日の夜、「神様、円盤とアムールだけは出さないでください」とお祈りしました。しかし、一次の課題はまさかのアムール。あんなに祈ったのに! すでに描く前から涙目になっていた私ですが、どばたの先輩に「ま、難しいほうに考えるな」と励まされ、どうにか冷静に画面に向かうことが出来ました。
 幸運なことに、試験場の重厚な空気感は私を落ち着かせてくれました。この空間を感じながら背景を付け、最後まであきらめずに描こう! と思った矢先。消しゴムペンの調節をしていたら、壊れちゃったのです。……正直、あきらめかけました。しかしその時。近くにいたどばたの仲間が、余分に持っていた消しゴムペンを1本貸してくれたのです。
 これで落ちたらカッコ悪すぎる! と描きまくり、一次を突破することが出来たのでした。助けてくれた仲間たちには足を向けて寝られません。
 二次試験の素描課題は、与えられた素材で立体をつくり、描くというものでした。私は気合いを入れて立体をつくり、それを遠くから眺めて(うーんカッコいい)と悦に入りました。その時点で30分経過していることに気づき、あわてて描き始めるというボケをやらかしましたが、一次に比べると落ち着いて作業出来たように思います。
 その夜、急な喉の痛みと発熱で救急病院に駆け込み、迷惑がられたのが唯一のトラブルと言えるでしょう。
 そして翌日、いよいよ、二次の塑造です。課題はアムール。(またお前か! 出たがりか! もしかして、私が出るなと言ったから怒ってるのか!?)と、軽くツッコみたくなりましたが、一次の時と違って、この出題を楽しんで受け入れることが出来ました。一次の時に励ましてくれた先輩に、謎のテンションで話しかけてしまったほどです。
「先輩、アムールですよ!」
「……う、うん、そやな」
と、微妙に引かれましたが、そのくらい落ち着いていたのです。
作業中は、彫刻的な仕事がどうこうよりも、アムールの美しさや、佇まいの上品さを、拙いなりに表現することしか考えませんでした。このときの私は、「感じたままに描く」という先生のアドバイスを、無意識に実行していたのかも知れません。

・発表
 そして発表日。13日の金曜日、うららかな上野公園内を通って、母と一緒に(どうせないんだろうな)と重い足取りで会場に向かいました。門を入り、掲示板に目を凝らすと、……あった。いやまさか、いやいやいや、と受験票を確認すると、やっぱりある。それでも信じられず門まで戻って、守衛所の係の人に訊ねました。
「番号あったらどうしたらいいんですかっ?」
「中央棟に行って手続きをしてくださいね」
と、落ち着いて道案内をしていただき、中央棟へ猛ダッシュ。書類を渡してくれるお姉さんに、
「本当に私の番号ありますか?」
「ありますよ、大丈夫ですよ(ニッコリ)」
と、ここでもまた慣れた対応をしていただき、桜色の袋を受け取って呆然とどばたに向かい、先生がたに背中をバンバンされ、ひとまず激動の受験生活が終わったのです。

・あとがき
 ダラダラと書いてきましたが、受験、楽しかったです。二次試験の昼休みに木彫室の木屑だらけの床に直に座ってお弁当を食べたのも、なんだか遠足気分でした。でも、そう思えるのも、私の受験生活を支えてくれた人たちがいたからです。
デッサンに背景を付ける楽しさを(半ば強引に)思い出させてくれた夜間の先生。
私の不安を取り除いてくれた先生。
指導してくれたすべての人たち。
励ましてくれた仲間、助けてくれた仲間、夜間部の後で一緒にクロッキーをした皆。

 受験日の朝立ち寄ったカフェで気持ちをほぐしてくれたスタッフさん、沿道でカイロを配りながら「頑張ってください」と声をかけてくれた業者さんたち、そして、発表日に一緒に猛ダッシュしてくれた母に、心よりの感謝を捧げます。

2010年12月07日

●『受験生へ!応援インタビュー』

 「インタビュー企画第15弾」
〜 受験生へ!応援インタビュー 〜


今年も残りわずか、受験生の皆さんは日々デッサンや、塑像の向上に励んでいる事と思います。ですが受験が近づくこの時期、やはりナイーブになってしまい技術的なこと意外に、メンタルが実技の内容に大きく影響してしまいます。「努力は怠ってないけどやっぱり不安だよー」なんて感じている人もいるのでは?そこで、今回のインタビューは今年合格した東京芸大一年生4人に、昨年のこの時期からを思い出してもらいながら、5つの質問に答えてもらいました。きっと不安を解消できる話が聞けると思います。ぜひ参考にしてみて下さい。


東京芸大一年生 山田亜紀 西沢紅伽 浅井拓馬 宮内素 (順不同)

インタビュアー 氷室、阿部 (以下→ 氷、阿)

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(氷)まずは4人の紹介を兼ね最初の質問をしたいと思います。

「振り返ってみて自分を自己分析するとどんなタイプの受験生でしたか?」

まず始めに、山田さんお願いします。

山田 亜紀 3浪 長野県出身(以下→ 山)

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(山)えーわたしはー地道にコツコツ系でメンタル面での浮き沈みはもろ実技に直結型でした(笑)深く考えすぎて自分で問題点を更に大きくして深みにはまる事が多かったですね。

(阿)そうだよね。脅かしじゃないけど余り深く考えちゃうと三浪とかしちゃうよね。ハマルっていうのかな?僕も三浪したけどわかるなあ・・・(しみじみ)
では、紅伽さんお願いします。

西沢 紅伽 1浪 山梨県出身(以下→ 西)

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(西)私は真面目なタイプになるのかな。良く言えば真面目というか、悪く言えば融通がきかない。決められたことをやらないと(休んだりすると)罪悪感が生まれるんです。マイペースに授業に向かうというより、決められた時間に従って動いてました。

(氷)私も近かったかも。決められた事をこなしている方が安心できるというかね。休めないタイプだったな。
浅井くんはどおだった?

浅井 拓馬 1浪 茨城県出身(以下→ 浅)

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(浅)そこそこに真面目でそこそこに適当な(笑)、楽観的でもあるけど気にしやすい所もあるみたいな、そんな若干気分屋みたいな人間なので、受験生としてはどうですかね・・・ダメな奴にならないよう、努力して頑張ってるヤツになろうとしてたヤツ・・みたいなかんじかなあ(笑)

(阿)時には無理しているのかな?って感じるくらい自分を追い込んで頑張っていたよね。
それに対して、宮内はどうだった?

宮内 素 1浪 埼玉県出身(以下→ 宮)

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(宮)かなりマイペースだったと思います。やる気があるときとそうでもないときの差が激しかったです。「頑張るけど無理はしない」が座右の銘でした(笑)

(氷)結構、肝の据わったマイペース型だったんだね!






(阿)それでは次の質問ですが、この時期に限らなくてもよいのですが

「当時取り組んでいた課題とそれに対して具体的なトレーニング法など、通常のカリキュラム以外で何かありましたか?」

山田さんお願いします。

(山)二浪の時は画集や参作見たり夜間残って講評で言われた実技の改善点を直してみて、良くなったと自分で実感して分かろうとしてました。中々上手くいきませんでしたけど(笑)三浪になったら自分が良く出来るかなと思った実技だけ残ってやってました。

(阿)それまでに色々やってきたから最後の年ってシンプルになるよね。
それに対して一年で決めた浅井くんはどう?

(浅)自分の問題点を考えながらこうかなー?こうかなー?と、自分なりには毎回色々試したりしていたつもりです。漠然としてると「思ってるのに表現できねーなー!」と、イライラしてしまい自分にも他人にも何一つ良いことがないので、「今回は粘土をこう動かしてみよう」とか「流れで見てみよう」とか、事前に何かしら目標設定はしてやるよう心がけてはいました(性格柄ガッツリ決めてかかるってわけではないんですが)。あとは、夜はなるだけ残っていました。半ば筋トレ的に自分にムチ打ちながらやっていれば、それが生きる時もあると思います。

ー少なくとも予定もないのに帰っちゃうヤツなんかに比べればー

(阿)いいねー熱いねーストイックだねー

(氷)同じ1浪の宮内くんは、浅井くんと良きライバル関係だったと思うんだけど、どうだった?

(宮)自分の場合はとにかく手を動かして経験不足を補わねばと思っていたので、夜は基本的に毎日残って講評で言われたことをやってみたり、たまに全身像デッサンや友人像などテンションの上がることをしてました。

(阿)宮内の※生ものモチーフでの実技、自画像とか印象的だったなあ。

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宮内くんの自画像

そういえば紅伽さんはいつもバイトをしていたよねえ?

(西)そうなんです。わたしは大抵バイトがあったので授業外に時間をとることがなかなか難しくて。同じ歳の浅井くんや宮内くんはいつも遅くまで残って勉強していたから焦りましたね。それにやはり彼らの実技はコンクールなどでも評価されていたので・・・だから授業内で最大限集中できるようにしていましたね。

でも直前の時期はもう人と比べるのはやめて、自分の時間をいかに濃く使えるのか、と割り切って実技に向かってました。あと、実技のテクニックをたくさん盗むために、上手な人の隣でデッサンや塑造をしてました。特に模刻なんかは上手い人と一緒だと、自分も自然に身体を沢山動かせたし、ペースがつかみやすかったですね。

(氷)自分と周りを良く観察しながら冷静に判断していたんだねー。やっぱり、より時間の使い方にはシビアになるよね。






(氷)次の質問に移りたいと思います。みなさんそれぞれ

「キッカケになった実技や出来事」

があると思うんですけど、山田さん何かありましたか?お願いします。

(山)うーん、沢山ありましたね!(笑)描写の意味をやっと理解した時に描いたラオコーンとかフォーン、円盤も然りですが、やっぱり氷室先生に教えてもらった粘土での必殺小割り法は私にとって衝撃的でした!それまで塑像で作れなかった表現がやっと作れた事で多くの悩みが芋づる式に解決されたのが印象的でしたね。

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山田さんの自刻像

(氷)必殺小割り法(笑) 本当に小さなきっかけで、ぐんぐん変わるんだあ!って私も感動したもん。考えている事が手に伝わってできる様になると感動的だよね。浅井くんもそんな出来事ある?

(浅)コレと言っては無いです。(キッパリ!)
ただ、ひとつひとつ自分の試してきたものが徐々に実を結んでくるとモチーフから見えなかったものが見えてくる、そういった喜びみたいなものは入直で如実に感じました。
そういう意味で言うと入直最後のコンクールで描いた奴隷は印象的な一枚で、「あっ? 奴隷ってこうなってんのか」「あっ? スゲーなミケランジェロ」みたいな感覚を素直に感じられたのは良かったと思います。
勿論完璧なものが描けたということではなく、そのデッサンも課題はたくさんあったし、表現できなかった。でも、「漠然と描けないで苦しい」のと「像の到達できない完成度に感動しながら負ける」のでは、感覚の次元が違うところにあると思います。

受験生のみんなも、攻めて苦しいのならそれを受け止めて「今は我慢」することだと思います。逆に、恥ずかしいものを描くのが嫌で無難な表現に逃げているようならば、それは何枚、いくつ数をこなしても意味のないことだと思います。

あと出来事で言えばとにかく色々見ることに尽きると思います。展示でも映画でも音楽でも本でも、そういったものも自分の確たる骨子になってくれると思います。

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浅井くんの奴隷デッサン

(阿)あの奴隷覚えているよ!それに夏に描いた馬頭単体も印象深かったな。こうしたい!ああしたい!の欲求って「あぁ見えているのにー描けないよー」そんなフラストレーションが元になっているよね。
紅伽さんのモチベーションって?

(西)私は誉められると伸びるタイプなので(笑)
ブルータス模刻コンクールで、初めて上位に入った時は「多浪の人とも同等に勝負できるんだ!」っていう自信ができて、模刻が楽しくなりました。それからは、上手い人の真似ではなくて、上手い人たちよりも、もっともっと見てやろう!っていう対抗心ができて、実技も変わりましたね。

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紅伽さんのブルータス模刻

(氷)質の良い対抗心が原動力になってたんだね。宮内くんもモチベーションを大事にしていた様に感じたけど、どうだった?

(宮)わりとどばた以外の場所で、新しい発見やわからなかったことに気づくことが多かったです。満員電車の中だったり、作家さんたちのお話を聞いてるときだったり、大学の試験本番中だったり。いつ何が起こるのか分からないものです。

(氷)なるほど。アンテナ張ってたんだねー。






(阿)次の質問ですが

「コンクールの成績が振るわなかった時など、落ち込んだ時どうやって自分を奮い立たせたの?」
 
紅伽さんはどう?大きな声では聞けないけど公開コンクールではどちらかっていうと3ケタに近い順位だったよね?(”汗”)

(西)あ〜っ、あの時ですね。ちょうど公開コンクールでの自分のタイミングは、実技が噛み合わない悔しさや、順位に対する焦りはありました。それもあって公開コンクールの結果に対して、あーやっぱりなって、まだまだだなーと真摯に受け止められる部分もありました。それまではキャリアのある浪人生に負けるのはしょうがないって、言い訳をしてました。だけど、戦わなきゃいけない!!って。それからは無いものねだりをやめて、自信が持てる部分だけを伸ばして、ネガティブにならない様自分のモチベーションをあげましたね。それからは、実技に向かうのが楽しくなりました。

 あと私はすっごく恋愛体質で(笑) 当時大好きな人がいたんですけど、オフの時はその人のことばっかり考えて実技から現実逃避しました。でも授業の時は頭を実技に!恋のおかげでオンとオフの切り替えが上手くいったのかなあ。 たぶん恋してなかったら、頭が実技だけになって、つぶれちゃってたと思います。

(氷)知らなかった!そんな切り替え方法もあるんだねー。
浅井君は、成績が良かったイメージがあるけど、プレッシャーを感じたり、成績が振るわなかった時はどうしてたの?

(浅)自分は高校の恩師から「君みたいなタイプは※Bマル以下はとっちゃダメ」と言われていたので(天才肌でも個性派でもない、フツーの実技をする人間なので)、Bマル行かなかったときはマズイと落ち込んだりしましたが、でもそんな落ち込みも焦りもしたところで時間の無駄なので、「次!次!」となるだけ早く忘れるようにしてました。コンクールは成績がわかりやすく出るだけの話ですし、ナーバスになりすぎるなら「じゃあお前いつもの授業はどうなんだ?」といったところだと思います。

(阿)前向きって大切だよね!宮内はどうだった?

(宮)落ちこんでいるときはとことん落ちこんでました(笑)その方が早く立ち直れる思ってたんで。どうしても元気が出ないときはどばたを休んでどっかに出かけたり、やりたいことをしてました。

(氷)時には自分なりの息抜きも大事だね。山田さんはどうだった?

(山)その日の問題はその日の内に解消させようと思い、先生方にアドバイスしてもらってました、特にそのままでも良い所は自分の中では注意して聞いていました。自分だけで考えると全部ダメだったと思い込んでお先真っ暗になりやすかったので、次の実技への希望の光りを残すためにも(笑)

(阿)今日の自分は明日の自分のためだね。






(氷、阿)最後に一言「受験生に応援のメッセージ」をお願いします。

(山)今の時期は焦りや不安、悩みがあると思いますが、まずは自分の興味のあるモチーフに向かい、捉え方が見えてくれば入直から1課題に充てる実技の時間が短くなってきても強いと思います。今はまだ、ハッキリしてなくても入直になれば自ずから出てくると思うので、焦らずに自分と対話してみて下さい。応援しています!!

(西)なんとなくの時間を減らして、濃い毎日を過ごせば、実技はめきめきと輝いていくと思います。どばたには、熱い先生と、良いライバルがたくさんいます。たくさんのモノを観て、聴いて、感じて。たくさんのヒトと話して、恋をして、泣いて、笑って。試験という限られた1日に、等身大の自分をぶつけられるように毎日を充実させて下さい!

(宮)やりたいことをやりたいようにできる奴は強いと思います。具体的じゃなくても良いから、自分なりのイメージをもって頑張ってください。あと風邪には気をつけましょう。

(浅)美大受験は自分の表現さえしっかり出来れば受かる、ある意味ではとても幸せな世界だと思います。大学へ行けばそれ以上のものを求められるし、自分も多くを求めないといけなくなります。「予備校時代の話」なんて、ずっとしてるわけにもいきません。だから、自分の表現から逃げないことが大事だと思います。人マネはしたところで所詮は人マネ、いつか絶対に苦しくなります。嫌でも自分の表現を受け入れて、それを基盤に様々な視点から強化していく。そうすればいつか、多面的に魅力あるものになると思います。
とかく僕らの世代は虚無感漂う世代ですから、それに流されないようお互い燃えていきましょう!!






(氷、阿)最後にみなさんしっかりと締めてくれました。本当にありがとうございました。4人の話を聞いていると、受験を通して様々なことを感じ、悩み、考え、自分と戦っていたのだなぁと感じました。受験生の皆さん参考になったでしょうか?夢を実現するためもう少しがんばっていきましょう。


※生ものモチーフ‥‥石膏像や模刻のような無機質なモチーフに対して、自画像、モデル、動物など有機的なモチーフ。

※Bマル(ビーマル)‥‥東京芸大一次通過レベルの評価用語、他にはa(スモールエー)やB'(ビーダッシュ)など実技の評価に対して7個の用語が使われます。

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インタビュー後の打ち上げにて。
その他の大学生活やバイトなどについてのインタビューは、また春に掲載を予定しています。お楽しみに!

2010年11月06日

●2010全国公開実技コンクール特集

「インタビュー企画第14弾」
 2010全国公開実技コンクール特集

                       担当 西嶋
すいどーばた美術学院と湘南美術学院が合同で公開実技コンクールを始めてから
早くも今年で7回目となります。
受験生からみると合同コンクールが当たり前のように思うかもしれませんが、
実際は両校のスタッフが彫刻や受験に対して広い視野をもっていないと実現しないことなのです。
そのあたりのことは以前のインタビュー記事 対談! すいどーばた主任 中瀬康志×湘南美術学院主任 佐藤武夫を読んでみてください。
すいどーばたは今年、中瀬康志の金沢美術工芸大学の教授に就任により、主任が西嶋雄志に交代しましたが、インタビューで話されていた意志は引き継いでいます。
インタビューで掲げられているように、今後もさらに、受験生にとってプラスになることを実践し発展させていきたいと考えています。

交代したばかりで大きなことは出来ませんが、今回は新たにこのような企画をしてみました。
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ーすいどーばた・湘南全10名の講師の採点総評コメント掲載ー

公開コンクールの講評は時間に限りがあり、残念ながら総評を全10名の講師に
お話ししていただくことができません。
個性的な講師が多く、それぞれの視点や意見には幅があり、全部ご紹介できたらと感じておりました。

そこで、今回は「採点直後!新鮮で率直なコメント」を各講師にお願いしました。
採点同様、相談無しの本音コメントです。採点が終わった直後にすぐ書いてくれた人、帰りの電車の中で思い出しながら書いてくれた人、翌朝までじっくり考えて書いてくれた人、それぞれです。
今回はその辺も踏まえ、コメントを送ってくれた順番に掲載したいと思います。
受験生にとって有益なこと間違いなし。
こころして読んでください。






最初に送ってくれたのが、すいどーばた美術学院彫刻科 氷室幸子さんです。
(13日 20:56送信)
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緊張の中色々な気持ちと戦った人、お疲れ様でした!!全体的には、普段やれてる力が出せたのか?!と言う印象が大きかったです。
ーブルータスー
肩を捉え動きに伴う、関係性を見る。そこから首の出方を見る。彫刻を勉強するたる者!ここを感じずに、何を描く!!もっと、大事な部分で競って欲しかったです! が、トップのデッサンから良い点と悪い点が明確に一枚の結果に出ているので、これからの課題として、確実にクリアして行って欲しいです。まだまだ、ここからが勝負!!同時に、メンタルも鍛えろー!!






続いて、湘南美術学院彫刻科 主任 佐藤武夫のコメントです。
(13日 21:37送信)
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魅力あるデッサンには決定的な狂いが、正確なデッサンには物足りなさがありました。
他者に何かを伝える為のデッサン力をもっと付けてください。最近、美しいものを観てますか?






続いて、湘南美術学院彫刻科 西澤利高のコメント。
(13日 22:02送信)
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今年は高校生が多かったみたいですが蓋を開けてみると例年並の内容でした。最初の印象としては全体に炭ぽい感じがして、なんだか重いというかすっきりみえなかったのが気になります。そのなかで僕は、比較的正確さと厚みがり画面余白の抜けが良いデッサンに加点しました。それと下位の方では、画面からポジティブエナジーを感じさせられるデッサンに注目しました。経験を積むまでは仕上がりを気にしないでどんどん修正をするべきです。当然真っ白い紙に真っ黒い木炭で挑んでいくワケですから画面がモコモコ炭ぽくなりますよ。ただしあるレベルまできたら描くモノだけに固執しないで、画面のなかの余白と仲良くすることをお勧めします。






続いて、湘南美術学院彫刻科 東儀悟史のコメント。
(14日 00:33送信)
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全体の傾向として描き急いでいる印象を受けました。もう少しシンプルに、軸、正中線、左右のバランス、構図、など基本的な事に時間を割きましょう。 確認の作業を増やし、表面ではなく石膏像がもってる動きや量感がダイレクトに伝わってくるデッサンを目指しましょう






続いて、湘南美術学院彫刻科 斉藤寛之のコメント。
(14日 00:55送信)
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率直な感想としては合格レベルの層にもっと厚みが欲しいところです。ブルータス像はコスチュームを追いかけながら体格や姿勢を表現しなくてはいけません。裸像と違って表に見えてこない部分に意識を持ってくることが重要になってくるのですが、観察と感覚を上手く噛み合わせて仕上げているのが少ないようにみえます。
そして、中間層やそれ以下の作品のほとんどが闇雲に表面描写に走って立体が崩れている状態に問題を感じます。
一見箱状に見えない物をいかに箱に置き換えて立体表現していく事にミソがあり、
ここから構図なりプロポーションを気にする方向に繋げていきたいものです。
これは一筋縄ではいかない感覚的な所ですが立体を作っていく上では切っても切り離せない基本要素なので経験を積み重ねながら切磋琢磨していって欲しいです。






続いて、すいどーばた美術学院彫刻科 竹花哲のコメント。
(14日 02:03送信)
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公開コンクールに参加した皆様、お疲れ様でした。みんな頑張りましたね。
今回の公開コンクールの全体の印象は、まだ11月なので荒削りな感じもありましたが、それは良い意味で、元気良く積極的な印象が感じられ良かったと思います。
採点の評価で優秀なaも出ましたね。
私の採点基準は、構図、印象、動き、形態、調子の美しさ、描き込みの魅力、空間意識
の7つを重要なポイントとして、それらのバランスを見ながら採点しました。
この時期に確認しておきたい大切な(基本)ポイントです。
自分自身の「デッサンの基本」を公開コンクールをキッカケに確認してみて下さい。
入試まで時間はまだあるので、焦らずじっくり、描写の自己ベストを、日々、塗り替えるような気持ち(自然体で前向きに)そして新たな発見を楽しみながら、取り組んでみて下さい。
見る人が感動できるような、リアリティーある(合格できる)デッサンになるよう、期待しサポートしていきます。
冬季講習会も参加できる学生は、気軽に声をかけてください。






続いて、すいどーばた美術学院彫刻科 主任 西嶋雄志のコメント。
(14日 06:32送信)
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11月という時期を考えると6時間という制作時間としては、良く描いていると思います。ですが、描き上げるのがやっとで、全体に構造の弱いデッサンが並んだなぁという印象です。 石膏胸像デッサンは、首回りの空間の捉え方が大事になります。ブルータスの場合は、首を強く曲げ、胸を張り出し、それらのバランスを両肩でとっています。特に左肩と頭部の関係はシビアで、力の流れや動きの要になっています。 そういった観点で皆さんのデッサンをみると、ほとんどが何となく即物的に現象を追いかけているように感じます。数枚、体をガッチリととらえているものがありましたが、残念ながら頭部の印象が悪く評価出来ませんでした。 皆さんへのメセージとしては、彫刻科のデッサンなので、石膏像を彫刻として捉えましょう。ミケランジェロの気持ちになってもう一度、ブルータスを観察してください。 これから受験までの4ヶ月弱をどのように過ごすかが大事です。今回自分の力が出せた人、出し切れなかった人、その結果も含めてこれが今の実力として受け止め、自分自身の課題をあらたに設定し、前向きに取り組んでください。






続いて、すいどーばた美術学院彫刻科 吉田朗のコメント。
(14日 07:41送信)
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少し厳しい意見になってしまうが、今回の全国公開コンクールでは彫刻的ポイントを押さえつつ、描き上がっているデッサンは無かったと思う。 絵として仕上げにいくことのみを最優先にしている作品が、結果として多く上位に残ってしまったように感じた。 絵づらの面白さや顔面の印象は大切な要素だが、ブルータスの持つ力強い量感やねじれを捉え、彫刻を志すものだからこそ反応し得る形態を探すことは、デッサン、素描、塑造のつながりを考えると非常に重要だと思う。 今回、上位の入ったデッサンには残念ながら塑造力を感じるものは少なく、今後の勉強を考えたとき、先細りや行き詰まり感を感じてしまう。 上位に入った皆さんも、自分のデッサンを人体として見て、どのような動きがあるか、どんな組み立てになっているか確認すると、簡単にいくつかの問題点を見つけられると思う。 コンクールの上位デッサンをイメージするのではなく、一段もしくはさらにもう一段高いレベルをイメージしながら、残りの日々を送ってもらいたい。 厳しいことばかりになってしまったが、今回は例年になく新鮮な視点のデッサンや、様々な描画材の扱い方をするデッサンが上位にも多く見ることができた。表現の幅に広がりを感じられ、バリエーションのある作品群を全国公開コンクールという場で見ることができたのは、非常に良かった点だと思う。






続いて、すいどーばた美術学院彫刻科 阿部光成のコメント。
(14日 08:37送信)
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僕の採点のポイントはまずバランスですね。そこが怪しいのはどんなに内容が良くても高い点数は付けられませんでした。また下位の方にいい仕事しているデッサンが何枚かあったのですが、顔の印象が悪くどうしても点数を入れられないのもありました。些細なミスが大きな順位の差になっていると思います。6時間の短い時間で仕事の優先順位を間違わないようにしたいですね。


以上、10名のコメントでした。
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皆さんが感じたことと共通するコメントはありましたか?
または、全然違ったコメントはありましたか?
そうやって自分の中に価値基準を構築していくことはデッサンを描くことと同じくらい大切なことです。

入試まで各々力をつけてください。

2010年06月01日

●2009合格者体験記特集

「インタビュー企画第13弾」
 2009合格者体験記特集

2008年度に続き2009年度の合格体験記をまとめました。
wabや入学案内に載っていますが、こちらにご紹介しようと思います。
それぞれにリアリティーがあります。
参考にしてください。






「浪人して気付いたこと」
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白井翔平(兵庫県立明石高等学校 1浪)
東京芸術大学彫刻科 合格
金沢美術工芸大学彫刻科 合格
多摩美術大学彫刻学科 合格
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 まず僕が思ったのは、今年浪人してとても良かったということです。今年1年勉強して、1年前の僕は本当に何も分かっていなかったということに気がつきました。現役のときに先生から、1次は通ると言われていたので、それを信じて全力でやりきりました。その結果1次落ち…。落ちたことは残念だったのですが、それよりもなぜだめだったのか分からなかったのがショックでした。今のままでは全然だめなんだということを強く感じました。
 それから自分の実力を上げるために毎日頑張りました。毎回の講評でいろんなことを言われました。弱いとか、構造的に…とか、動きを…だとか。彫刻のことを沢山考えて自分にないものを沢山吸収しよう、弱点を克服しようと努力してきました。しかし、やはりそう簡単にはいきませんでした。やってもやっても納得いくものはできず、上達しているどころか逆にどんどん悪化してさえいるような感覚に陥りました。まるで出口のない深く暗いジャングルの中をさまよっているような気持ちでした。ストレスはたまり、自信はどんどんなくなっていき、しまいには完全に落ち込んで、どうしようもなくなり、目の前が真っ暗になりました。そのとき、命綱になったのが友達の存在でした。友達と話し合ったり、励まされたり、一緒に遊んだりしているうちに、煮詰まっていた僕の心は次第に晴れ、やる気と平常心が戻ってきました。友達と一緒にすごすことは僕にとってとてもいいリフレッシュになりました。そして僕はもう1度ゼロからスタートしようと思いました。すると徐々に調子を上げていき、それに伴い自信もついてきました。いつのまにか、できなかったこともできるようになっていたので、苦しい時期は無駄ではなかったように思います。やはり気持ちが萎えている時はいいものができないもので、それでまたストレスがたまるという悪循環になるので、それを1回断つ為に気分転換するということは大事なことなんだなと思いました。
 それともう1つ大事なことに気付けました。それはとても当たり前のことですが、良く観察するということです。これは本当に死ぬまで重要なことだと思います。同時にとても楽しいことです。その対象がどのように存在しているのか、それを自分なりに解釈し、表現する。何気なく読んでいた美術の教科書にそのようなことが書いてありました。そう言えば、先生方が毎回言っていることでした。本当に気付けてよかったです。
 最後になりましたが、成長する場を与えてくれたすいどーばた様、先生方、両親、友達に感謝します。ありがとうございました。






「悩んでる暇があったら手を動かせ!」

相澤亮(埼玉県立大宮高等学校 現役)
東京芸術大学彫刻科 合格
多摩美術大学彫刻学科 合格
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 僕がどばたでの生活を通して常に意識していたことは、自分を慰めないということです。夏季講習会を終えたとき、僕はそれまで自分が思っていたよりも、自分の実力はかなり低いというキツい現実を受け止めなくてはいけませんでした。このままだと、浪人してから「そう言えばあの頃は現役合格なんて夢見てたなぁ」なんて思い出すことになりかねない。かなりガックリきて落ち込みながらも、ここで自分を慰めたらだめだと思いました。ここで安心したって何の解決にもならないし、むしろ問題から目を背けることになる。実力が低いという問題が見えて落ち込んでるんだったらやるしかないじゃん!実技の悩みは手を動かして解決するしかないんだ!と半ばやけくそな気持ちになって2学期を頑張りました。やけくそになって頑張る熱い気持ちと自分を突き放して見る冷たい気持ち。この2つの気持ちをバランス良くコントロールすることが大事。ただ冷たすぎてもつまらないし、ただ熱すぎてもいいものはできない。2学期を頑張るうちにそういうことにも気がつきました。
 実力を上げなくてはいけないという問題の他に「波」をなんとかしなくてはいけないという問題がありました。僕は気分屋なところがあり、いい時と悪い時の差が激しかったのです。いくら実力をつけたところで本番で実力を出せなければ何の意味もなくなってしまう。そう思ってかなり焦っていたんですが、ここでも自分を慰めないということが解決の鍵だったと思います。上手くいった日には上手くいったところは素直に喜びつつも過度に調子に乗らないように気を付け、上手くいかなかった日には、上手くいかなかった原因を分析してみることで感情的に落ち込まないようにしてできるだけ毎日落ち着いて生活するように心掛けました。
 結局、どばたでの生活は自分を知ろうという模索の連続だったと思います。自分の能力を最大限引き出すには自分という人間を客観的に把握していないとできないはずです。僕はどばたでそういうことに気付いて少しは大人になれたかなと思います。






「自分と受験の距離」
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工藤湖太郎(東京都立青山高等学校 2浪)
東京芸術大学 彫刻科 合格
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当たり前といえば当たり前ですが、僕は受験というものが好きじゃありませんでした。受験に限らず、優劣や勝ち敗け、競争といった誰かと比べてしか自分の成果や評価が認められないものについて考えると、無性にやるせない気持になりました。こと受験はどれだけ努力し成長しても、そんなこと知るかとばかりに僕を煽り、焦らせ、不安にし、プレッシャーとしてのしかかってきました。1浪時代、僕はそんな現実から逃げるように屋上に登って人と距離を置き続け、受験のマイナス要素を自分の心に根付かせまいと徒労を重ねた末、一次試験で落ちました。マイナスを拒絶し過ぎたせいか、落ちてもショックすら受けませんでした。傷つくことがなければ、得ることもない。内向的かつ不毛な葛藤の中、「お前はもっと伸びると思ったんだけどな・・・」と言った先生の一言がいつまでも心に残っていました。一次試験の結果発表から新学期までの約1ヶ月間、僕は全く受験から離れて過ごしました。毎日のように遊び、映画をみて、行きたかったいろんな展示会にも行き、様々な作品から感銘を受けました。そして新学期が始まり改めて受験に向き合ってみると、それは今までとは全く違った見え方をしていました。自分と受験との間に適切な距離のようなものができていて、受験が与える焦燥、不安、プレッシャーというものが以前よりもスケールダウンして感じられました。1浪目を振り返ってみて、それまでの自分が不器用にも受験とゼロ距離で接していたことにも気づきました。友達とする日々の他愛無い会話が活力剤となって、多少の不安やプレッシャーには耐えられるようになりました。同時に現実逃避もほとんどしなくなりました。受験生最後の1年間は悩むこともあったけれど、それも含めて発見と前進の連続でした。どばたとそこで出会った人たちにはいろんなことを学び、今は感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございました。

2010年05月25日

●2008合格者体験記特集

「インタビュー企画第12弾」
 2008合格者体験記特集

2008年度芸大に合格した学生の体験記がwabや入学案内に載っていますが、
こちらにまとめてみようと思います。
それぞれにリアリティーがあります。
参考にしてください。




・セント・ジョセフ
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佐藤真莉子(1浪・大妻中野高校)
武蔵野美術大学 彫刻科/東京芸術大学 彫刻科 合格
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4月、1浪することが決まった私は、こうなったらどばたの星になってやる!と誓った。
 しかし現実はそう甘いものではなく、実際に始まったのは悩める日々だった。見ている様で見えていない形、描いたはずの絵がいつの間にか消えていく摩訶不思議現象、頑張って描いたのに強引といわれる絵。謎が謎をよび、不安が不安をよび、いつの間にかデッサンに対する姿勢が変わっていってしまった。好きなことが次第に苦手になり嫌になっていった。自分が今までどうやってデッサンをしていたか分からなくなり絵を描く方法論にたよった。当然コンクールの結果もついてこなかった。
 デッサンが描けない自分に残されたものはもう塑造しかないと思った。塑造だけは誰よりも上手くなろうと決意した。塑造は大好きだった。粘土に触るだけで身も心も癒された。しかしデッサンと塑造の溝は深まるばかりで塑造が好きになればなるほどデッサンへの苦手意識は強くなった。
 そんな中むかえた本番。奇跡だと思った。試験のデッサンのモチーフは、今まで私がどんなに辛い時期でも必ず描けてきた1番好きな石膏像だった。自分の席を前にして、1年間私が苦しんできたのはこの1枚を仕上げる為だったんだと分かった。偶然と言われたらそれまでだけど、私には本当にはっきりとそう感じた。試験中にも関わらず泣きそうになった。
 1年間、満足できた絵はこれっぽっちもない。でも、良い絵を描くためにしてきた様々な努力は絶対に嘘をつかないのだと分かった。それが分かっただけでも私にとっての1年の成果はあったのだと思う。
 最後に、私が猛烈にしんどくてもどばたに通ってこられたのは友人や先生のいるどばたが大好きだったからです。長い間お世話になりました。本当にありがとうございました!




・私の本気≠本気の私
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増渕剛志(多浪・小山高校)
東京芸術大学 彫刻科 合格
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「本気でやってるの?」
この言葉で私の自信は見事に打ち砕かれた。すいどーばたに入学して三年。塑造だけは絶対の自信があったが、よりによってそれを否定されるとは夢にも思わなかった。芸大に二度目の烙印を押された去年の春、変化を求めて受験とは関係のないところで生きる作家に作品を見てもらった。受験生だろうがプロだろうが関係ない、お前の作品はすべてにおいて中途半端だと言われた。ショックだった。プロとしての作家の厳しさをまざまざと見せつけられた。今思えば確かにその作品は基本を抑えただけのものに過ぎなかった。いつの間にか時間がないことを言い訳にし、これくらいでいいやという気持ちが体中に染み込んでいた。所詮自分の塑造は受験レベルなのだということを自覚し、大学に入ってからの仕事を、作家としての自分を意識することにより、日々の実技に対するモチベーションを高めていった。「本当にこれで良いのか。」「お前の見ている世界はこんなものか。」自問自答を繰り返し、少しでも実技に対する甘い考えを消し去るように自分を突き放し客観性の充実に努めていった。
そして最後の一ヶ月。高まる緊張と不安の中で守りに入ろうとする自分を奮い立たせるように覚悟を決めた。「行くしかない。」攻めの描きだし、攻めの確認,攻めの描写。思いっきり描いて思いっきり直す。手が自然と動くうちに描くのが怖くなくなった。昨日よりも今日、今日よりも明日、明日よりも明後日、自分の限界を超えていくという前向きな気持ちが実技を後押ししてくれたように思う。引っ込み思案だった私をいつの間にか受験が変えてくれた。この受験を通して最後まであきらめず前に進んでいく大切さを学んだような気がする。まだまだ自分に対する甘さは拭いきれず未熟ではあるけれど、そんな自分にこれからも厳しくいつまでも問い続けていきたい「本気でやっているのか。」と。




・彫刻科の皆様へ
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岡島飛鳥(1浪・芝浦工業大学柏高校)
東京芸術大学 彫刻科/東京造形大学 美術学部彫刻専攻 合格
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この1年で見つけたことといったら、彫刻の量や動き、力、などもそうなんだけれども、1番大きなものは「人」であったと思うんです。朝どばたに来て、いつでも誰かが笑っていて、どうでもいいようなことなんかを話して、制作中は皆、性格悪そうに見えるし、真剣に話してみれば皆本当に熱くて。そんな人の中、1年間過ごしてきました。本当に幸せでした。全員が同じモチーフに向かって、色々な制約のある中で制作をすることは、異様なことであるのかもしれません。けれど、だからこそ気付くことができた「人」と「自分」もあったんじゃないかなんて思いもしています。入直のコンクールで全員の作品がひと部屋に並べられた時、どれもみんな違っていて、面白くて、いいなって素直に思いました。なんだかその頃には自分のことを認められるようになっていました。このたくさんの中のひとつであれて良かったと思ったんです。
 これが僕の1年間の全てです。この1年が自分の分厚い皮膚になってしまうような気がしています。本当にありがとう。またね。




・冷静と情熱の間を
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北田匠(現役・岩手県立不来方高等学校)
東京芸術大学 彫刻科 合格
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「冷静と情熱の間」入直の間、その言葉ばかりとなえていた気がする。地方ということもあって2年の始めから通信と講習会を受講してきた。3年の冬季頃には安定した実力もついてきて自信もあったが、センターを終えて入直にくると周囲がかわっていた。浪人生は今まで見たことのない馬力できてるし、現役もノーマークの奴らがやたらと上手くなっていて急に焦った。がんがん伸びる周囲の中で、安定はしていても伸び悩む自分。いつその伸びが自分に訪れるのか不安だった。目も利くようになってこのまま入ってもいいのだろうかと迷っていたとき、自分が逃げていることに気付いた。そんなことを言ったって仕方ない。今ここで受からなきゃ後悔する。勉強は一生していくもので、今を生き抜くことが大切なんだって気付いた。それから本当の受験が始まった。自分のために描こう、作ろうと思った。誰かに勝つためでもなく、誰かを喜ばすためでもなく、自分が納得するために。そうするうちに、色んなものが見えて、何もかも楽しくて、誰よりも自由に駆け回りたくなった。作品を作る上で大切なこと、それがこの言葉「冷静と情熱の間」だった。冷静にならなきゃ見えるものも見えないし、本当に伝えたいことも伝えられなくなる。かといって冷静になり過ぎてもつまらないものになってしまう。情熱的にただうちこめば良い訳でもない。その2つのバランスが絶妙に調和した時初めて、本当に自分の伝えたかった言葉が相手に伝わってくれる。よく感じ、よく観察し、思ったことを丁寧に、大胆な方法で伝える。そう出来るようやってきました。
 受験は人が決めること、そこで悩むより、貪欲に学びにいく方が実は重要だったり。
 芸大合格は自分にとってのスタート地点。どばたの存在が自分に有意義な時間を与えてくれた気がします。世界一の彫刻家になれるよう頑張ります。

2009年06月23日

●インタビュー/社会人受験生に聞く

「インタビュー企画第8弾」
佐藤えりか(東京芸術大学彫刻科1年) × 中瀬康志(彫刻科主任)
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中瀬:
今日は社会人を長く経験しながら一念発起し美大受験を志し、見事、今年度、東京芸術大学に合格しました佐藤えりかさんに来てもらいました。美大受験までの経緯から大学での様子など様々な角度からインタビューを試みたいと思いますので、佐藤さん、どうぞ宜しく!
佐藤:
こちらこそ宜しくお願いします。
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■ 自己紹介 ■受験までのプロセス
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中瀬:
*さて、ここ数年、一般大学を卒業した人、あるいは社会人を経験した人などが美術の世界に関心を持ち予備校へと来る人が増えて来ています。彫刻の専門学校が無いというのもその理由のひとつではあると思うのですが、すいどーばたでは長年、こうした学生を受け入れる土壌が私がここで学んだ時期から実はあって、多くの優秀な学生が巣立って行った実績があるんですね。実際今でも10代から70代までの幅広い学生が学んでいるわけです。その中でも佐藤さんはかなり「異色」な感じは私はするのですが、自己紹介も兼ねてどういうきっかけで美大受験を思い立ったか、とりわけ彫刻へと向かったのはどんな経緯だったのか教えて頂けますか?
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佐藤:
そうですね…自分としては思い立ったというよりも、社会人になってからずっと美術を再開する機会を待っていたという感じでしょうか。

仕事や金銭面での見通しがついたのが28の時。色々調べて結局私の経歴と環境では予備校からやらなくちゃいけないっていう事が分かったのが2年前、中瀬さんに相談させてもらった頃で30になってました。

それまで10年間グラフィックデザインの仕事をしていて、仕事は仕事で充実してたんですけど、どこか自分に嘘をつかないといけない部分もあって、素の自分に戻りたいっていう気持ちがありました。
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方法としては、仕事の合間にカルチャースクールやワークショップなどに通ったりはしていたのですが、やはり限られた環境では自分の思うようにイメージを完成させるのは難しくて…。それで大学や大学院の線で考えつつ、個人の作家に雑用係として置いてもらう事なども考えつつ、海外留学も考えつつ…という感じでした。

立体アートがアカデミックな場では「彫刻」という言葉で包括されるらしいという事や、大学に彫刻科の聴講制度がない事や仕事をしながら通える彫刻の専門学校がない事も、この間に知りました。とにかく予備校に通うまでは彫刻に関する情報がなかなか集まらず、悶々としていましたね。(笑)

過去に遡って動機を考えると・・・、小さい頃から絵を描いたりモノを作るのが好きでずっと美大(彫刻かグラフィック)への進学を考えていました。色々あって高校2年のはじめに「将来美術をやるために今、美術をあきらめよう」と一旦保留して大学は文学部に進んだんです。いってみればその時の思いが今回の受験まで繋がったのかもしれません。

彫刻科を選んだ事については、自分がかつて進もうと思ったジャンルだったということもありますが、それよりも大人になってから好きになったアーティストたちが彫刻科出身だったり、ピンとくる立体物に出会う機会が増えたり、彫刻がすごく色々な形態に広がっているジャンルだということを知って、改めて興味を持ったという感じです。(※1)

感覚的なところでは、自分が10年間仕事をしてきたグラフィックの世界では受け止めきれない感覚をファイン・アートとして引っ張り出したいという欲求もかなり強くありました。

経歴としては皆無の状態で、前職も平面でしたので、確かに普通に彫刻をやられている方から見たら「異色」かもしれませんね。
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※1)彫刻をやる気にさせてくれた作家

笠原恵美子
http://editionworks.jp/EW%20STATE-2/contents/artist/kasahara.prfl.html

レイチェル・ホワイトリード
http://www.tate.org.uk/servlet/ViewWork?cgroupid=999999961&workid=70993&searchid=9513

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■受験期間のエピソード
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中瀬:
こうして話しを聞いていても矢張り、かなり異色ですね。(笑)
普通の多浪の学生が石膏デッサンや模刻などの徹底したアカデミズムの「筋トレ」的な方法からぼちぼち世界を広げていくのに対して、佐藤さんはもっと広いフィールドから彫刻の世界や自分の進むべき道を探していたようですね。
そうした事を考えると、どうでしょう、受験勉強そのものへの気持ちの整理や葛藤などもあったのではと想像するのですが、いかがでしょうか?
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佐藤:
そうですね、確かにそういう意味での葛藤はかなりあったと思います。

美術を保留してからの12年間というのは、言ってみればアカデミズムに染まらないぞという自分の覚悟でもあった訳ですから、それに矛盾する所へ行こうとしている。元々、学校や集団生活が苦手でしたし、大学も一度出たわけですから、出来ればこの年で改めて受験・進学というのは避けたかったというのが本音でした。ただ、彫刻に肝心な「現場」というのがアカデミズムの砦の中にあるような気がしてならない…なかなか自分の知りたい情報というのが掴めないというジレンマが、結果的にそういう葛藤を上回ったという感じでした。

他には実際問題として、日本の美大は国立が1校しかなくて私立の学費はその3〜4倍もかかる上、入学するには予備校へ数年通わなければいけない・・・といった実情がありましたね。上手く行ったとしても5〜6年の学校生活と学費が付いて回るという・・・。
美大への編入も無理、大学院も無理、学部入学で行くしかない、つまり予備校から、とわかった時はさすがに「・・・」でしたね。(笑)

予備校へ通い始めてからは、大勢の価値観というのが何か似通った所に集まって行くのが気持ち悪かったり、藝大合格という目標にどうしても気持ちが向いていかなかったり・・・。
そういう自分の中にある根深い反発との葛藤もありましたね。
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■日本の美大受験への感想
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中瀬:
佐藤さんの予備校での学習の様子を振り返ってみると、全体としては独立独歩といいますか、学ぶところは学ぶ、削ぐところは削ぐ、といったとても合理的な手法のように感じましたね。非常に知的、克つ計画的というか。
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佐藤:
いや、知的であったかどうかは・・・。(笑)
キャパが狭いというか・・・、きちんと自分が納得しないまま小手先ばかりを真似ていると本当に詰まらなくなってしまうので、次のステップが見えるまでのモチベーションを維持するための逃避だったんだと思います。(笑)
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中瀬:
基本的に社会人や大学出の人は、意を決した覚悟がありながらも美術的な感性や訓練、知識に関しても初心者という人が多く、その意味では現役生以上の訓練と感覚の揺さぶりが必要なケースが多いのですが、そうした面でも佐藤さんはかなり以前から美術に関する興味と、仕事としてのデザインワークで鍛えた感性や経験があったということですね。
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佐藤:
そうですね、そういう興味というか目線は常にあったと思います。
美術という線引きではなくても、全く異分野の本であったり映画であったり音楽であったり・・・とういう所でピンと来る受け皿は割と昔からしっかりありましたね。
デザインをやっていたという点では、「決める」とか「見せる」ということに対する神経は育ちますが、やはり人のための創作ですから、相手の気持ちを読むとか市場を読むとか、そういうリーディング的な感覚になるんですよ。だから、逆に自分が見えなくなってくる部分もあったりして・・・。

この受験期間で自分と向き合った事で、ようやく自分の感性の根っこみたいなものを確認したという感じです。
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中瀬:
一方で話しの中に出てきましたが、大学選択や受験制度、学費といった誰もが直面する問題とも当然向き合って来た訳ですね。
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佐藤:
そうですね、私の場合貯蓄がそこまであったわけではなかったので、都内の仕事場兼自宅を引き払って実家へ戻り受験生活に入りました。実家から通える国立に入れたとはいえ、入学金、学費、道具代、積み立て等々の支払いを終えた現在の経済状況は最悪です。笑
しばらくは、仕事と学校の2足の草鞋です。
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中瀬:
「実家」という「強み」はあるということですね。実際、家賃までもとなると大変ですよね・・。大学の選択に関しても、その中身を吟味していくと難しいところはありますね。国立大学をいわば補完するように公立大学がありますが、京都を除けばその殆どが東京芸大出身の指導布陣で独自性といった指導とはなりにくいと同時に、定員も5〜10と僅かで、そして地元学生の枠もありますから選択肢は少ないかもしれませんね。国籍を超えた教授陣、州制度による独自の美術大学作り、自由な編入制度といったドイツなどを例にとっても均質な大学制度であることは確かですね・・。
それと、学費。この不景気もさる事ながら私立美大との比較でも学部は勿論、大学院までを視野に入れると700万以上の差との試算もありますから、特に社会人の方は家族からの援助を全面的に受ける、という状況の人は稀ですから大変ではありますね。

こうした事も含めてどうでしょう、これからの社会人の方に何かアドバイスをしていただけたらと思うのですが?
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佐藤:
そうですね…。日本の大学というのは、特別はっきりとした目的がない人でも競争心に煽られて受験しているという事が少なからずあると思います。入ってから「自分探し」するのもいいとは思うんですが、それなら海外でも旅することをオススメします。
中瀬:
それは私も同感ですね。(笑)
佐藤:
社会人が学部へ入学するというのは日本ではまだ当たり前とは言えない状況で、色々と面倒はあります。
今まで築いてきた環境を捨てなければいけないかもしれないし、知らず知らずのうちに周りにも迷惑をかけてしまいます。
それでも、やりたいことがあるなら、やるべきですよね。

お金と覚悟、そして周りの人への感謝の気持ちがあれば大丈夫。
あとは体に気をつけて頑張ってください。

予備校は、毎年生徒の様子を見てフレキシブルにカリキュラムを組んでくれています。
生徒の自主性も重んじてくれますし、講師の方々も実は只者ではなかったりするので、面白いと思いますよ。
大学受験ということでなくても、自分を鍛えに行くのもありだと思います。
あとは、これは学校へ入る入らないとは関係なく、自分の作品が何かあるならBOOKを持ち歩くことをオススメします。
先輩やその道の人に見てもらって意見を聞けますし、相談にも乗ってもらいやすいはずです。
中瀬:
佐藤さんのbook、是非、私も見たいですね!
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■入学して思うこと
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中瀬:
さて、こうした難関を乗り越えて見事芸大合格を果した佐藤さんですが、現在の大学生活はいかがですか?思い描いていた大学のイメージもあったでしょうし、また今までとは全く違う生活のリズムということもあるでしょうし、そのあたりを少し話して頂けますか?
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佐藤:
そうですね、取手は一年生が多いということもあって雰囲気は多少幼稚かな…。(笑)
環境的には緑に囲まれて施設も整っているので気に入っています。でも一年生は何かと制作に集中出来な いですね。 行事が多いですし、規定の課題をこなす時間も思ったより長いです。進むペースはゆったりなんですけどね…。 人数が少ないせいか、何事も足並みを揃えて行きましょうという感じで少し息苦しいところはあります…。(笑)
やっぱり学部だとこんなもんかという感じですね。
とは言ってもまだこれまら勉強したい事も沢山ありますし、先生や助手さんの話が聴けるのは楽 しいですよ。
年齢についてはたまに驚かれるくらいで意外と平気(?)なんですが、体力的な部分ではやはり年齢を痛感させられてます…。
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中瀬:
取手キャンパスができて共通工房等フレキシブルさはあるようですが、ちょっと遠いですよね・・。ただ、制作スペースが増えたと思えば選択肢は広がったとも言えますかね。予備校でのそれ行けどんどん!!みたいな日替わりメニューからすると、大学のペースはローカル電車並みにスローですから、規定課題をこなすのは全く大変では無かった記憶が僕にはありますね。一方で今は土日休みで夏、冬、春の長期休暇、1年の半分近くが休みと言えなくはないわけで、かなりいろんな事ができますよね。僕はラグビーやったり演劇や舞踏にのめり込んだりしてましたね。大学の寮 に住んでましたから長期の休みや日曜日も制作はできていましたし、やっぱり大学はいいな〜!って今でも思いますよ。今の学生はこれだけの休みをどうしてるんですかね・・・.
 そう、それと入学した当初は先輩や助手さんがひどくみんな大人に見えましたから、佐藤さんからすれば僕もかなり幼稚に見えた部類の学生かもしれませんね(笑)。ただ、どうでしょう、芸大の面白いところは実はこの年齢差、経験の違いでもあると思うんですね。年齢も学年も超えて対等に付き合える、そんな不思議さというか。
 
 息苦しいというのも佐藤さんらしい感想ですね(笑)。学年制での指導であるとか技術習得が先行するという、いわば彫刻科の伝統的(?)な指導方法も定着していますから、手法として「全体で足並みを揃えて」というのは確かにあるかもしれませんね。できるだけ合理的にと。佐藤さんは今までの仕事もそうですが、自分自身でしっかり組み立てて生きてきてますから、余計にそう感じるのは当然でしょうね。逆に佐藤さんがそうしたことを感じているということは、個であることの認識をしっかり持っているということですから、このくらいはいとも軽く超えていけそうですね。
 体力のことですが、必要な体力は自分の体質や作品に合わせて付いてきますから心配いらないと思いますよ。不安なら少し筋トレとか?(笑)
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佐藤:
はい、ぎっくり腰が出ない程度にがんばります。(笑)
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■今のアート(彫刻)に関して 
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中瀬:
さて、大学での「彫刻を学ぶ」ことが始まったわけですが、様々な素材へのチャレンジもさらに増えて来るでしょうし、普通の学生であればしない質問なのですが、今の彫刻、あるいは美術に関して「思う」ところはありますか?いろいろな展覧会も見てきているでしょうし、情報も普通に多く持っているようにも思いますから。そのあたりを少し。
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佐藤:
そうですね、といっても国内、特に関東で気になったものしか観てませんから、あくまで個人的な感想でしかありませんが・・・。

ジャネット・カーディフの以前の作品が今エルメスと森美術館にきてますが、よかったですね。
40台のスピーカーを使ったインスタレーションと映像作品で、どちらも珍しい手法ではないですが、女性特有の気配というか意志のようなものが歩き出している面白い作品でした。スピーカーの方は音の彫刻でしたよ。

ここ1-2年のエキシビジョンで上げるとしたら、横浜のZAIMで若手アーティストたちがやったECHOという企画展、群馬青年ビエンナーレ、ターナー賞の回顧展あたりでしょうか。

ECHO展は、美術館やギャラリーの企画展ではない若手アーティスト発信のエキシビジョンで、クオリティも安定していてボリューム感もあって、最近の時代にしてはめずらしく成功していた作家展だったと思います。
群馬ビエンナーレは初めて行ったのですが、油画、映像、立体といずれも男性の作品で、トボけてるんだけど得体の知れない恐さを持っていてとても良かった。
ターナー賞は、ちょっとタイムラグを感じるラインナップではありましたけど、ホワイトリードとマーティン・クリードのアーティスト・トークが面白かったんですよね。ホワイトリードは、やはり受賞の前後のバッシングでかなり精神的ダメージを負っていたようで、そこから立ち直って今粛々と制作を続ける姿勢には胸を掴まれるものがありました。マーティン・クリードは、当時制作中のビデオを見せてくれて、女の子が真っ白いスタジオの中でただひらすらモドしてるっていう映像だったんですけど、説明が完全に天然というかコメディアンで、そういう解説も含めて作品になっちゃってる。すごく頭いいんですよ。

あとは、日本の東と西、国内と海外という所でまだ壁があるなぁと感じます。
関西でやるものは関西でのみ、関東でやるものは関東のみ、という事が多いというか普通ですよね。
もっと国内でも東西の交流とかインフラが繋がれば良いなぁと思います。
海外と日本という所では、輸入の方にまだタイムラグがあるというか。日本のギャラリストが海外のアートフェアに乗り込むようなことは増えたのかもしれないですが、海外作家の最新の作品が日本にも巡回してくれたら嬉しいですね。
最近はYouTubeやpodcastのおかげで少し観れるものもありますけどね。

彫刻という所では・・・、うーん。彫刻っていう言葉って、多メディアな展示の場ではすごく狭いところを指してますよね。
例えば、、「彫刻」と「立体」と「インスタレーション」は別物扱いで、その中の彫刻作品というのは、彫ってるかどうかとか、人体・動物を作ってるかどうかとか・・・どうしてもそういう限定のされ方に見えてしまう。彫刻的な要素を持っている作品でも彫刻として展示されないのは、正しいけれどちょっと残念なような・・・。

卒制展はなぜか同じ手法ものが多い気がしますね。
今の藝大だと木彫で人体で着彩で、みたいな・・・。
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中瀬:
こうして聞いていると佐藤さんが初めてすいどーばたに来た時の事を思い出しますね。
もともとは大学院受験の相談だったし、内容からしても「先端芸術系かな〜」と感じてましたから、そんなアドバイスもした記憶があります。これだけの思考や情報、価値観を持ってる学部の1年生となると先生も大変ですね(笑)。とりわけ日本の美大は思考や論理を語ることが少ないし、特に社会性となるとかなり希薄どころか避ける傾向さえありますからね。彫刻とか美術そのもに対してもグローバルな視点から何か論議することも殆どありませんよね。私の時代もそうでしたが、そうした現状に気付いて、いわばアカデミズムに対抗する形で有志数人で自主ゼミなんか開いてディスカッションしたり、実験的プロジェクトや展覧会を独自に企画したりなんかしてましたね。今はそういう人は「先端芸術へ」となるわけで、住みわけができていますから大手を振って「ひとかたまり」になりやすいかもしれませんね。おのずと、卒展の作品も「ひとかたまり」と。

佐藤さんが感じる海外の作家にしても、言ってみれば社会性や歴史、文化、宗教といったその作家をとりまく様々な背景がある論理的構築をもって表出される。そうした広がりと体験的思考の中から多様な表現が生まれるんだと思うんですね。そう考えれば大学は単に職業訓練校的であってはならないとは思いますね。

それから今は佐藤さんを含めて彫刻受験生の半数以上が女性になりましたね。今年の芸大合格者も半数が女性。凄いですよね!
これも時代の変化ですね。いまや男はアマゾネス集団に征服された?!(笑)。それは冗談としてもこれからは女性の作家の時代でしょうかね。文化や社会的な性別であるジェンダーの問題への関心も以前はかなりありましたから、彫刻の中の女性という意味でも今後の活動や表現に興味が湧きますね。
いずれにしても、話しの内容がかなり広がってしまいましたから、美術の構造的問題なども含め、このあたりは「第2弾」を設けて是非また話しましょう。

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■将来は?
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中瀬:
これも入学したばかりの学生に聞くような質問ではないのですが、将来のイメージとかありますか?
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佐藤:
アートをやって行きたいです。
当面は、自分の頭の中のアイディアを100%で出力できるようにすることですね・・・。
あとは良くも悪くも感覚的にズレてることが多いのでそこは益々掘り下げて行ってみようかと・・・。
大学生になったことですし。笑
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中瀬:
そうですか(笑)。もちろん私達は評論家でもありませんから、作品を創ること、そしてその実現力、リアリゼーションが問われることになりますね。佐藤さんがズレているというのはどのあたりかは分りませんが、非常に物事を良く知っているし、分析力もあることは確かですね。ひょっとしたら、この歳の差でズレもなく話しができることがいみじくも「ズレている」ということなのかもしれないし?(爆笑)それは冗談ですが、今日は長い時間本当にありがとう。まだまだ入学したばかり。佐藤さんにとっては若干、丁稚奉公?(ハハハ)のような、そして肉体的訓練のような大学生活がこれから何年も続きます。慌てず、キレず、諦めずに大学生活を楽しんで下さいね。また落ち着いた頃に第二弾を深く、濃く語りましょう!!こちらも期待しています!

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佐藤:
ありがとうございます、がんばります。
こちらこそ、中瀬さんをはじめ先生方には本当にお世話になりました。
また遊びに来ます。
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★インタビュー後記★
*次々と溢れ出る言葉と情報にも驚かされましたが、「実は性格は子供っぽいんですよー」との言葉がとても印象的でした。さてさて、今後、どんな表現、作品が生まれてくるのでしょうか。社会人学生の代表格として是非是非すばらしい作家になることを大いに期待しています。
佐藤さん本当にありがとうございました!
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2008年02月04日

●2007合格者体験記特集

「インタビュー企画第5弾」
 2007合格者体験記特集


昨年度芸大に合格した学生の体験記がwabや入学案内に載っていますが、
こちらにまとめてみようと思います。
それぞれにリアリティーがあります。
参考にしてください。

●ターニング・ポイント
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川島大幸(2浪/静岡・私立浜松日体高等学校)
東京芸術大学美術学部彫刻科、金沢美術工芸大学美術工芸学部美術科彫刻専攻、東京造形大学造形学部美術学科彫刻専攻、東北芸術工科大学芸術学部美術科彫刻 合格
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 受験を振り返ってみると、自分と対話をすることができる良い機会だったと思う。それが顕著だったのは、2浪目の時だ。
 現役の時は、できることを精一杯やった。1浪の時は、何でも吸収してやるという気持ちで基本を大切に過ごした。そして、2浪の時が僕にとっての「ターニング・ポイント」だった。物事を客観的に見ることができる様になり、先生に言われることも理解できる様になったと思う。先生達の雰囲気もそうだったが、自分の中でも実技を変えないといけないと考える様になった。去年の先輩達を見ていても攻めの気持ちを持っていたなと思った。自分は今何をするべきかを考える様になり、実行に移すことができたと思う。2浪の最後の1週間前まで、今までやってきたことをまとめることができなかったが、最後はまとめることができて良かった。色々なバリエーションのある先生や友達がいたから自分を見直すことができたと思う。
 2浪目で心に残っている言葉がある。「本番は、僕は今までこれだけのことをやってきたんだぞ、というのを絵にしてくれれば良い。」と、「受験は博打じゃない。頑張って続けてやって実力がつけば受かる。」である。2浪目で悩みが多くなったが、この2つの言葉が支えになっていた。
 お互いを高められる友達、バリエーション豊かな先生や教務の人達のお陰で楽しく充実した予備校生活を送ることができた。


●98+365×2+346の感謝
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市川めぐみ(3浪/滋賀・県立東大津高等学校)
東京芸術大学美術学部彫刻科、多摩美術大学美術学部彫刻学科、武蔵野美術大学造形学部彫刻学科 合格
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 高3の夏、地元を離れる事に対する両親の反対を、高校の美術教師にも手を貸していただき賛成へと漕ぎつけた。そうまでして、「どばた」に行きたい理由があった。日本で一番規模の大きい美術系予備校だからだ。生徒の人数も多けりゃ講師方の人数も多く、受けられる指導のバリエーションもある。というのは、人生初の受験失敗の後に気付いた事だが・・・・・・
 私は2浪まで、芸大1筋でやってきた。高3、1浪、2浪と、3度1次通過していた。後もう1歩のところで手が届かない。私に何が足りないのか。その根源は何処にあるのか。3浪の春、狼狽する日々が始まり、20年そこらしか生きていないのに、「泥水を啜る」とはこういう事かと感じる事もあった。そうなるともう、どれだけ真剣に立ち向かっても、力づくでなんとかしようとしても、思う様にモノを創造できない。感じた事と裏腹に手だけが動き表現にならない。12月一杯まで、そんな調子でジッタんバッタんともがいていた。
 心の糸が修復不可能に切れてしまう直前で、いつも私はその細く弱い糸を、繋ぎ止めていたその行為は、とてもじゃないが私1人でできたものではない。自信も自尊心もとっくに失っていたし、当然何を信じれば良いか、その答えを周りの全てに頼る他なかった。坂道を転がる小石になった私を海へ落ちてしまわない様に、どれだけ加速しても受け止めて丘へ投げ飛ばしてくれる先生方がそこには居たし、フレッシュな眼差しでひたむきに闘う現役生や1浪生、私よりも大人な精神を持つ2浪生も居て、自分を奮起させてくれる強烈な刺激を与えてくれた。
 最後の芸大試験前日、一生忘れないであろう言葉を私は耳にした。「自分の持っている感覚を全部出して来い。」私はやっと答えを見付けた。何度も何度もへし折られていた自信を、試験当日形にする事ができたのだ。
 ここまでやり切れたのは、周りの全てのお陰だ。何かが1つでも欠けていたら、今の私は存在しない。


●努力と根性
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謝花翔陽(1浪/埼玉・私立城西大学付属川越高等学校)
東京芸術大学美術学部彫刻科 合格
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 1年前、浪人が決まった時、僕は覚悟をしました。この1年は「どばた」に死のうと。
 成功に必要なものは努力と根性の2つだけであると僕は信じています。だから僕は1年間無遅刻無欠席、ほぼ全ての早朝アトリエと夜間の居残り制作を行いました。
 自分よりも経験や才能のある人がいる。彼らと対等に渡り合うために不器用な僕に残された手段は、人一倍、人十倍の努力をすることでした。どんなに辛くても諦めず、根性でついて行くしかなかったのです。
 いくらやっても上手くいかず、周りから置いて行かれる時もありました。なんでこんなにやっているのにうまくいかないのかと悩んで卑屈になった事もありました。そしてその努力の結果は、受験で確実に現れたのです。
 毎日休まず「どばた」に行き、アトリエのドアは静かに閉め、毎日掃除をする。当たり前の事ですが、そうする事で精神が鍛えられ技術が伴いました。
 小さな積み重ねが大きな流れを作る。今時流行らないスポ根モノのようですが、勝てば官軍!
 最後に、僕を導いて下さった先生方、共に切磋琢磨した仲間達に感謝したい。ありがとうございました。


●大切な事
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中里勇太(2浪/群馬・県立西邑楽高等学校)
東京芸術大学美術学部彫刻科、多摩美術大学美術学部彫刻学科、東京造形大学造形学部美術学科彫刻専攻 合格
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 私が実技をする時に大切だと感じていた事は、彫刻的知識はもちろんですが、「対話」する事です。この対話を、自分自身の作品や、対象物に対して行えた時に、最大限の結果を得る事ができると思っていたからです。
 しかし私は、ここぞという時につい力んでしまって、対話をする事を忘れ「結果を出さなければ、完成させなければ」という気持ちだけが先行して失敗してしまった事が何度もあり、その度に対話をする事の重要性を感じていました。
 そういう経験を生かし、リラックスして自分自身と対話し、自己表現を見付けだす事や、対象物と対話しその物の特徴を引き出す事、そしてそれが冷静にできた時には自然と結果がついてくると信じていました。普段から実技をする時には対話する事を意識できていた事や芸大試験本番でも、対話する事を怠る事なく臨めた事が、合格できた最大の理由だと思っています。そして、東京芸術大学合格という、1つの目標を達成した今、また新たなスタートラインにたった気持ちで、努力していこうと思っています。もちろんこの学校で教えてもらった、彫刻的な意識や、対話をするという事を忘れる事なく、自分の作品作りの中に生かしていこうと思っています。
 最後に、2年以上もの長い間、熱心に指導して下さった先生方、本当にありがとうございました。

●前進
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大石雪野(現役/神奈川・県立神奈川総合高等学校)
東京芸術大学美術学部彫刻科、東京造形大学造形学部美術学科彫刻専攻 合格
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 私がすいどーばたで過ごした2年間の中で、最も意義があったのは、自分を高めるための行動を惜しまなかったことだと思っています。
 彫刻が強いのは「どばた」と聞いて、矢も盾もたまらず以前通っていた予備校をやめ、すいどーばたの門を叩いたのは、高校2年の春でした。私はまだ受験生ではありませんでしたが、できるだけ早く、多くの経験を積みたいと思い、その頃から夜間部に通わせていただきました。それからはただひたすらに彫刻と向き合う毎日でした。自分の課題をひとつひとつ駆逐していき、着実に上手くなっていく手応えを感じられ、とても楽しい日々を過ごしましたが、その一方で、自分の作品がだんだんと技術に凝り固まり、色褪せていっているという事実に苦しまされることになりました。そんな中助けられたのが、友人や教師の存在です。彼らに、時には力を抜き、素直に感動することの大切さを教えられ、最後には克服することができました。「どばた」で得た人とのつながりは、何にも代え難い宝になったと思います。
 私は常に危機感を抱えていました。いくら実力をつけても、満足できたことは1度もありませんでした。自分はもっと成長できる、と信じる事が、私を支える力となりました。これからも自分の可能性を信じ、生涯邁進し続けたいと思っています。

2007年10月31日

●対談! すいどーばた主任 中瀬康志×湘南美術学院主任 佐藤武夫

対談! すいどーばた主任 中瀬康志×湘南美術学院主任 佐藤武夫

「インタビュー企画第4弾」
すいどーばた美術学院彫刻科主任 中瀬康志
              ×
           湘南美術学院彫刻科主任 佐藤武夫による対談
                       インタビューアー 西嶋
インタビュー企画第4弾は、現在の彫刻科受験における二大勢力であるすいどーばた美術学院と湘南美術学院の主任同士による対談形式で行いたいと思います。
昨年度はすいどーばたが芸大12名、湘南が芸大7名ということで、芸大の定員の多くをこの二つの予備校で占めている状況です。(講習会生含む)
そんな二大勢力が、二年ほど前から合同で全国公開実技コンクールを開催するようになりました。

お二人にはその経緯と実際的な影響、将来的な展望についてお聞きしていきたいと思います。

今回はすいどーばたと湘南の両方で講師経験を持つ西嶋がインタビューアーを務めます。

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右から中瀬、佐藤、西嶋

※ 参考 昨年度の東京芸大彫刻科受験者数は279名でした。
 その内一次試験の合格者は70名。その内訳はどばたが27名、湘南が13名で、その他が30名でした。
  昨年度公開コンクールの参加者数は169名でした。 その内訳どばたが71名、湘南が31名で、その他が67名でした。その他の内訳は、お茶美、立美、新美、代ゼミ、東京河合、名古屋河合、高崎、千葉美、取手アトリエなど全国の美術予備校の学生のほか、美術高校の生徒、美術大学(再受験者)などから参加してくれました。遠くは四国や岩手の高校生の参加もありました。


西嶋:
本日はよろしくお願いします。
さて、まず始めにお伺いしたいのは、全国公開実技コンクールを合同で開催することになった経緯をおききしたいのですが、如何でしょうか?


中瀬:
合同コンクールは私から湘南に提案させて頂きました。予備校界では言ってみればタブーの方法ですから、まずはこちらの情報を全て公開することで信頼関係を築くということから始めました。最初に湘南に行った時は緊張感がありましたよ(笑)。普通では考えにくいことをやろうとしていた訳ですから、大きな視点にたった考え方をどうにかして理解して頂くという想いで伺いました。
 経緯としては、彫刻を目指す学生数の減少をデメリットに考えず、今だからできることがある、つまりチャンスと捉えたわけです。一つには、予備校を単純に受験競争という現場として考えず、もうひとつ広く、美術、教育の理想像をお互いに考えていく現場としてとらえることはできないかということ、二つ目は、やはり学生の立場に立って考えると、より自由な交流の中で鍛えられる方が、受験生としての競争意識も含め学生のレベルアップにも繋がるのではという考えです。つまり、学生にとって多くのメリットがあるというのが一番ですね。


佐藤:
そうですね。今の話には湘南の講師も同じ考えを持っています。
合同コンクールを始める前は、湘南では彫刻科のみが独自に公開コンクールを開催していましたが、日程がどばたと重ならないように気にしたり、外部生が来てくれるように依頼したりと大変だったんですよ。それが3年前に中瀬さんの提案から西澤君が単身どばたに乗り込んで公開コンクールに参加し、中瀬さんが湘南に来てくれたのが始まりでしたね。「さぁ、来年から合同でやるか!」というときには、実は講師間でもバトルがあったんですよ。「どばたに勝つ!というプライドを捨てるのか!」的な(笑)

西嶋:
では、実際合同公開コンクールを初めてから、どんな影響がありましたか?

佐藤:
まず、学生の立場からすると、合同で行う以前では、どばたと湘南の両方の公開コンクールに参加していたので、11月は休む暇も無く、大変だったのが一本化されて充実したことが良かったです。また、この交流をきっかけに、講習会にどばたの優秀な学生が来てくれたりして内部生にとって、すごくいい影響になっています。「あぁ、湘南ってどばたに比べるとゆるいなぁ」とか「もっとストイックにやらないとダメだぜ!」というような感情を持ち、そしてどばたに行きたがる・・・・。あれ?いい影響でしたっけ?そうですね、自分を見つめ直すことは重要ですし、そういった異なった文化にあこがれを持つ事も大切です。多感な年代の学生には情報は遮断せずオープンにした上で、これからどうすべきか、何を目指していくのかを考えることが本当の目的かもしれません。
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中瀬:
そうですね、空気が通った感じはしますね。それよりも「きっかけ」としての合同コンクールをさらにどう「展開」していくかのほうに視点はすでに動いているんですね。当初から合同コンクールそのものが目的ではなく、そこから始められる様々な可能性への興味でしたから。例えば講習会や普段の授業の中でのコンクールなどでの交換留学的なやり方とか。一人一人の交換でも年間を通じてコミュニケーションすることで、さらに学生のモチベーション、いい意味での緊張感も生まれるのではと思いますから。ただ、こうした交流が単純に大きな組織として個々の特色を欠いていくことは避けなければとは思います。その意味でも僕は以前から湘南に関しては純血種というか土着的というか(笑)、そんな体質を感じてましたから、今後の交流に対してはかなり期待しているんですね。
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西嶋:
現在の受験の状況ですが、受験者数の減少に伴い、倍率が低下して来ています。
そのあたりの影響をどうお考えでしょうか?

佐藤:
まず私大の倍率低下ですね。これによって多くの大学が自己推薦入試の導入をはじめました。
地方生や、やる気のある学生の受け皿を大きくという意図は理解できますが、
努力せずに簡単に大学生になれてしまうとしたら、その後、将来のことを考えても不安です。一般入試であっても充分受かり易くなっているので同じ事が言えると思います。

中瀬:
そうですね、学生数の減少に関しては大学にとっても死活問題ですから、どの大学も基本的には受験者数の確保の為に必死に取り組まざるをえない状況ではありますね。
この問題も二つの見方ができるのではないでしょうか。一つは「経営面での合理性」、そして二つ目は各大学の教育としての「理念と方向性」ですね。
ですから大学もどれだけ簡単な、あるいは自由な受験かをアピールすると同時に、大学の設備も含めその特色をアピールするという両方を求められているわけですから、試験内容にその整合性がある、というのがやはり学生には分かりやすいですね。その意味ではどの大学も非常に苦労しているのではないでしょうか。単純に人集め的な手法がいいということにはなりませんね。

佐藤:
来年は、多摩美、武蔵美、造形大など、入試内容に変化がありますが、果たして合格する学生の質が上がるのか不安ですよ。武蔵美に対しては今までの入試に疑問を持っていたので、塑造を加えるという事も含め期待しているのですが。

中瀬:
現状、予備校に通う学生のターゲットはやはり東京芸大合格になるわけですね。以前は私立美大の合格さえ大変でしたが、すいどーばたで言えば一年勉強して私立美大に合格できない、というのはまずあり得ないわけですから、当然目指すのは学費のことも含めて東京芸大志向にならざるをえない。ですから、武蔵美の場合、東京芸大の試験内容とはまるでかぶらない試験内容、そして学科レベルの高さという特色から、プラス塑造試験を加えるというのは、自分達の特色を損なわずに広く学生を集めるという解釈で言えば、受験生にとっても今まで以上の選択肢にはなるのではないでしょうか。
 こうした変化からも大学はどういった学生がほしいのか?どういう教育をしていくのか?ということが試験に反映され、意思表示されることが大事な要素だと思いますね。
「うちの大学は入りやすいですよ〜」だけでは美術を志す人(特にすいどーばたの学生では)の資質には合わないようにも感じますね・・・・。塑造の芯棒も作れない、デッサンもしたことのない学生にどう対応していくのか心配にもなりますね・・・
ただ、私としては、いわゆるポートフォリオによる試験が、よりその学生の質を見極めるものとして採用されるのであれば、この試験制度も良い方向に向くのではと思います。


佐藤:
湘南では、学生に各大学の受験者数、合格者数、実技レベルなどの、今の受験の状況を包み隠さず伝えています。
その上で、自分がどのように志望校を選択していけばいいのかを考えるようにうながします。今は以前に比べて、しっかり実力をつければ芸大に受かる時代になってきましたから、簡単にあきらめずに本気で狙って欲しいと思っています。

中瀬:
受験倍率の低下ということは、単純に浪人する学生もかなり減ってきているわけですね。つまりそこそこの力で私立美大には合格するわけですから、受験生として力のある学生が少なくなって来てますね。トップレベルは昔も今も変わらず力があるのですが、その数が減っている。だからあきらめずにやれば以前より確実に芸大に合格できる時代にはなりましたね。昔の2浪3浪は当たり前とか、僕らの時代の5浪〜10浪なんていうのはまずあり得ない時代になりましたね。粘った者勝ち!みたいなそんな感じがします(笑)

佐藤:
そうなんですよ。実際ここ数年は湘南でも力をつけた学生が一次試験を通過するようになりました。受験生が500人以上いたときには、ちょっとしたミスで落とされてしまっていたからなぁ。だからガッツがあって実力をつければ、以前より芸大は遠い存在ではなくなった。でも中瀬さんの言うようにトップレベルは下がっていないと僕も思います。
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西嶋:
そうですね。がんばる学生には良い時代になりましたね。
さて、予備校のあり方が今後変わってくることが予想されます。
そのあたりについて何かお考えがありましたら聞かせてください。

佐藤:
放っておけば、彫刻をやろうという人数はどんどん減っていくだろうと思います。学校でも美術の授業時間は少なくなっていますし、何となく絵が好きだからという学生はいても「彫刻やるぞ!」といきなり門をたたく学生などまずいないのが現状です。そこで予備校のあり方として、入試課題のみを指導するだけでなく、OBや作家などとの交流をどんどん増やし「いい出会いを造る場」にしなければいけないと思います。
実際学生に聞くと「彫刻作品に感動した」という人もいますが、「あの人みたいになりたい!」とか「この人に誘われた」なんていう動機も多いからです。しかし、どんな気持ちで始めてもそこには奥深い楽しみが待っているので後悔はしないと思うのです。またそうなるように常に努力する責任があるのではないですかね。

西嶋:
では、大学と予備校の関係について考えたいのですが、その間にある垣根のようなものを取っ払って、彫刻界をよくしていくことはできませんかね?
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中瀬:
全ての学生が予備校を通過していくわけではないし、全国には数多くの優秀な美術系高校が存在しますから、とりわけ予備校だけが大学と対峙するわけではありませんね。普通に考えても予備校は多様なニーズの一つに過ぎないとは考えます。それでも、現実には東京芸大の合格者の殆どが私達予備校で学んだ学生なわけですから、私達の教育現場の重要性は決して低くはありません。初心者の学生の基礎訓練の場、そして多くの人間関係の中で培われる社会性や美術全般に対する知識や教養も、予備校で培われていくことを多くの大学の指導者は知っているわけですから、その意味での壁というものはあまり無いのではと考えています。
 逆にそれぞれの大学が個別化され相互交流が無いことを考えると、予備校こそそうした垣根を越えた存在であるという考え方もできるわけです。予備校で学んだ学生も様々な大学に散っていきますから、なおさらその意味は大きいですね。

佐藤:
大学と予備校の関係ということでは、大学側は入って来た学生を0からスタートで見るのではなく予備校がどのように学生を育てているのかを、もう少し知ってほしいところがありますね。まぁ、そういいながら、芸大の教授陣にお会いすると、どうも僕なんかはペコペコしてしまうのですが(笑)。逆に中瀬さんが言うように、予備校関係の垣根を越えていくという意味では、いろいろな予備校に湘南のOBも関わっていますから、少しずつでも可能にしていけそうです。

西嶋:
結構突っ込んだ話になってきましたが、ここで少し公開コンクールに話題を戻します。受験生にとっては、採点の基準が気になる点ではないかと思うのですが、これまで2回やった合同コンクールの採点の中で、お互いの採点基準の違いについて具体的に傾向など、お気づきの点がありましたらお話しください。

中瀬:
採点については各先生の個性が反映されて、バリエーションがあったと思います。しかしトップにくるものは好みの部分ではなく、やはり優等生的なバランスのとれたものになりますね。まぁ、よほど自由なテーマが設定されていない限り予備校を問わず、そのあたりは変わらないような気がしますね。
これまで見て来た湘南のデッサンのイメージは、割と素朴で力強いという感じがしましたね。形の正確さに対して徹底して訓練し、それを洗練させて行く感じでしょうか。それと生命感なども重要な要素として大切にされているようにも見えますので、全体的にすいどーばたのものより「逞しさ」とか「息吹」みたいなものを強く感じますね。でもここ最近は情緒的なデッサンも多く見受けらるようになってきたようにも思いますから、何かそれなりの変化や推移というものもあるのでしょうね?

   <湘南のデッサン>
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佐藤:
まず採点基準に関しては、中瀬さんと同感です。上位にくる作品は好き嫌い関係なく、バランスの取れたものに点が集まりますが、次に選ぶものとして観念的な癖が見えると嫌う傾向がありますね。
すいどーばたのデッサンは、オーソドックスな力強さがあると思います。形態の強さや触覚的な描写が特徴と言えるのかな。湘南が情緒的ですか?それは多分、海の近くに住んでいる学生が多いからかもしれません。(笑)

中瀬:
なんと言うか、ある種の純粋さとか初々しさがありますね。やはり海の影響でしたか(笑)

   <すいどーばたのデッサン>
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西嶋:
中瀬さんから見てすいどーばたを分析するとどうですか?

中瀬:
個人としては優等生的でないもの、自分の我をガンガン出していくようなものを求めたいのですが、どうしても多浪生の減少や初心者の増大で基礎訓練に力を注ぎ込まざるをえない状況が現実にありますね。そして確実な合格レベルというのも予備校の使命ではありますから、優等生的な作品がトップグループを形成していることは確かですね。
ただ、私としては基礎力をつけるためにオーソドックスなカリキュラムは当然ながら、もっとカリキュラムを幅広く振って行きたいと思っているんです。
そんな中でも強烈に個性が出ているような作品がたまに出てきます。受験に関係なく、良い作品は学生の同意を得て個人的にコレクションさせてもらっています。昔からやっているのですが、本当に宝物です(笑)。
今はこういった作品がでてくるのは突然変異的な感じですが、本当は授業の中で普通に出てくるようなカリキュラムを組みたいですね。
ここに若干ジレンマもありますね。

佐藤:
受験は不条理の固まりですからね。でも文句ばかり言っても仕方がない。湘南ではよく講師間で課題などの話をしますが、最近では1人の講師が「これをやると絶対学生にとっていいぜ!」となれば、まずやってみようと反映しています。気が付けばしばらく石膏デッサンを描いてない!というときがあったりしますが、必ず為になると確信しています。

西嶋:
採点基準に話を戻しますが、やはりオーソドックスなものに票が集まるんですよね。

中瀬:
そうですね。「オーソドックス」というよりも「正確さ」といった方がいいかもしれませんね。課題が「石膏デッサン」ということもありますから、そこに求められることは矢張り奇抜さよりも正確さや徹底した観察力、そうした事がバックボーンとなった安定感ということになるでしょうね。

佐藤:
不器用でも形を合わせて自然に見えることが大切です。

西嶋:
その辺りは、すいどーばたも湘南も大きなズレはないようですね。

中瀬:
この公開コンクールの面白いところは、採点結果が見られるところですね。
各先生が「持ち点制」で、相談することなく採点し、その結果をシールで貼っていきます。だからどの先生が誰にどんな点を入れているのかがわかるんですね。当然トップクラスには、大きくブレることなく平均的に良い点が入るのですが、下位になるにつれ、それぞれの先生の価値基準の違いも見えてくる。そうした違いの中に逆に面白さが隠れているんですね。コンクールの講評会ではこうしたことも話し合われますから、おおいに参考になるのではないでしょうか。
佐藤:
なりますね。全てにおいてオープンなことが学生にとって信憑性も高いと感じますし、次につながる明快なビジョンを持てるのではないでしょうか。

西嶋:
今後の公開コンクールの展望について何かありましたら、お聞かせください。

中瀬:
基本コンセプトは、やはりどうしたらもっと美術界が面白くなるか、そして彫刻を志す学生にとっての予備校に何ができるか、ということなんですね。そうしたことを考えると必然的に壁を取り払って行くという考えに行き着く訳です。
これを手がかりに、希望としては、さらに予備校間の交流を目指して行きたいと考えていますし、様々な大学の先生に集まって頂いての彫刻の魅力や可能性について大いに語って頂けるような「彫刻サミット」的なものを企画できたらと思いますね。
予備校だけでなく大学も交えて、それぞれのいろいろな問題をまずはテーブルの上に上げたい。そうして出た問題を共有した上で、それぞれが彫刻にとって何ができるのか?を考えていく場にできたら理想ですね。
 考えてもみて下さい、彫刻を志す若き学生がここには150人以上も集結するんですよ。これは本当に大きなパワーであり、そうした学生に対して単純に一般的な競争原理だけで時間が過ぎて行くよりも、何か積極的に働きかけて行くことの方がアクティブで元気になりますよね。

佐藤:
同感です。アクティブで元気になる。そうじゃないとね。
中瀬さんには感謝しています。夢を現実にしていく実行力、パワーがすごい。
今回も芸大の教授を講演会にお呼びしたり、今まででは考えられないことですよ。
今後の展望としては、規模の維持です。
大学の志願者は減っていてもこのコンクールは減らない。そういうものにしていきたいです。その為にも受講する学生にとって、何が必要なのかを考えながら取り組んでいきたいです。受験に必要だから公開コンクールに来る。でも帰る時には何か大きなものを得られるイベントにしていきたいですね。
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西嶋:
話は尽きないのですが・・・。続きは11月の10日11日のすいどーばた美術学院・湘南美術学院合同公開実技コンクールの当日にしましょう。
今年は講演会になんと東京芸術大学彫刻科の教授 「彫刻家 深井隆氏」をお迎えしております。かなりの充実したイベントになると思います。どんな展開になるのか楽しみですね。今日はお忙しい中ありがとうございました。

↓画像をクリックすると拡大します。
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<公開コンクール案内ページへ>

〜おまけ〜
公開コンクール裏話1
ちょうど20年前の公開コンクールで、講師の西嶋(当時18歳)が1位を取りました!(自慢です)
湘南美術学院(当時は金沢アトリエという名称でした)の学生だった西嶋は、広い世界で腕試しをしようと思い参加しました。すいどーばたのアトリエは現在の建物ではなく木造の天井の高いきれいな自然光の入るアトリエで、そのあまりにきれいな光に映し出された円盤投げの存在感は今でも思い出せます。 実はそのとき隣の席でデッサンをしていたのが、どばた講師の立花さん(当時20歳)だったんです。特に何か話したわけでもなかったのですが、お互いにお互いのことをよく覚えていましたね。ちなみにこのときに湘南講師の東儀さん(当時20歳)はB''だったそうです(笑)
その年に立花さんは芸大に合格したのですが、あいにく西嶋と東儀さんはもう一年勉強することになり、次の年の合格となったのです。

   <88年トップをとった西嶋デッサン>
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   (aで1位でした)

公開コンクール裏話2
ずいぶん前になりますが公開コンクールの1位を湘南がとり続けていた時期がありました。たしか4年か5年連続だったと記憶しています。
実はその中の一人が、現在湘南の講師をしている斉藤くん(当時一浪)なんです。割とおとなしめのデッサンですが、カチッとしていてムダな仕事のないしっかりしたデッサンでしたね。マルスの印象をしっかりと表現していました。
結果的に三浪してしまいましたが、造形、多摩、武蔵、芸大の全てを合格した優れた学生でした。

   <91年トップをとったU君のデッサン>
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   (公開コンクールのデッサンではありません)


   <92年トップをとった湘南講師斉藤くんのデッサン>
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   (公開コンクールのデッサンではありません)


   <94年トップをとったSくんのデッサン>
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   (A'で1位でした)


   <96年トップをとったIさんのデッサン>
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   (aで1位でした)

公開コンクール裏話3
このインタビューコーナーで紹介した人たちも公開コンクールで活躍しています。ロンドンに旅立った藤原くんも1位、今年合格した市川さんも1位、現役合格した大石さんは高校2年の時に、3年生を押さえ高校生トップを獲得。


   <05年トップをとった市川さんのデッサン>
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   (aで1位でした)


   <05年高校生トップをとった大石さんのデッサン>
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   (公開コンクールのデッサンではありません)


皆さんも記憶に残る一枚になるようにがんばってください!

2007年06月14日

●2007年芸大合格者に聞く!

「インタビュー企画第2弾」

2007年芸大合格者に聞く!
                  インタビューアー 西嶋
今年すいどーばたは12名の芸大合格者を輩出しました。
すいどーばたの彫刻科は昼間部2クラス夜間部1クラスで構成されているのですが、今年は各クラスの実力者がしっかりと合格しました。

今回はその各クラスのリーダー的存在だった三名に受験や予備校生活を振り返っていただいて、大切にしていたことや意識的に取り組んでいたことなどを伺っていきたいと思います。さらには芸大通っている現在のこともお聞きしたいと思います。
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まずは各自の紹介をしたいと思います。

昼間部・顔酢クラス出身:中里勇太くん
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二浪したものの圧倒的な描写力で他の追随を許さず、常にクラスを引っ張る存在でした。受験前は修行僧のごとくモチーフと対話していました。
合格大学:東京芸術大学、多摩美術大学、東京造形大学

昼間部・峰クラス出身:市川めぐみさん
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現役から三浪までずっと芸大一次試験を通過してきたが、四度目の正直で二次試験突破。その鍛えられた精神と肉体?!どばたの顔でした。
合格大学:東京芸術大学、多摩美術大学、武蔵野美術大学

そして夜間部出身:大石雪野さん
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これまで教えてきた学生の中でここまで上手い現役生を見たことがありません。入試前の最後のコンクールも昼間部生を押さえトップ。造形大も特待生合格。本格的実力を持つスーパー現役生。
合格大学:東京芸術大学、東京造形大学(特待生合格)


西嶋:
本日はよろしくお願いします。

まずは合格おめでとうございます。入学して三ヶ月が過ぎ大学にも慣れてきた頃と思います。そしてだいぶ客観的に受験期のことを振り返ることができる時期になったのではないかと思います。

そこでまず各自にお伺いします。

喜怒哀楽が凝縮された受験生活。それぞれにとってすいどーばたは成長の場になったのではないかと思いますが、その中で自分が芸大に合格できた一番のきっかけや原動力は何だったのでしょうか?

まずは中里くんどうですか?

中里:
自分自身に負けたくないっていうか、ココでやめたらぜったい後悔するとか、
意地みたいなものだと思います。あとは、金も無かったし、彫刻を続けていくために、国立大学に入りたいっていうのもありました。

西嶋:
なるほど。意地ですか。では市川さんはどうでしょう。

市川:
三度目の正直、二度あることは三度ある いずれのジンクスも私には当てはまらなかったので、全ての責任は自分自身にある。ただそれだけでした。しかし、そのような意思をもたせてくれたきっかけは、三浪が決まった春一発目の面接です。面接用に使われていたアトリエのドアを開けると、かつて三浪を経験された先生方がずらりといらっしゃって、励ましの言葉を頂きました。中でも色濃く記憶に残っている、「孤独って、楽しいぞー。」、「深刻になる必要はない、真剣に考えるだけでいいんだ。」これですね。

西嶋:
大石さんは如何ですか?

大石:
月並みですが、やはり、自分をよく分析できた、ということでしょうか。常に自分の問題点や、その改善の仕方を意識していたことが、芸大合格につながった要素だと思います。けれど、それは教師や友人に指摘してもらって初めて気付けたことも多いですし、彼らのおかげだと思っています。先生、ありがとうございます。(笑)
現役生は、経験が少ない分、ただ闇雲に頑張ってしまって、空回りすることも珍しくないのではないでしょうか。
私の場合は、人から頂いたアドバイスが幸いして、本番までの過程をきちんとシュミレーションすることができ、経験の少なさをカバーすることができました。そのことが、大きな力となりましたね。

西嶋:
なるほど・・・。三者三様、それぞれ強い思い入れがあったのですね。
なんか現役の大石さんが一番冷静な感じなのが面白いですね。(笑)
入直では大石さんと中里くんは同じクラスとなりましたが、
お互いに意識したりしていたのですか?

大石:
それほど意識はしていなかったかも・・・?すごく上手い!とは思っていましたし、粘土などはやはり、見ていてものすごく勉強になって、同じ教室で作ってきたことで力になった部分は多かったですが、私のライバルはあくまで現役生…といった意識でした。
当時は。現役生の魅力にどうしたら立ち向かえるか!と。なんででしょうね(笑)

西嶋:
意識しないまでも参考にしていたということですね。
意識は現役生ですか・・。そうですね。あなたのデッサンは現役生らしくなかったですもんね。(笑)
中里くんはどう?

中里:
俺も特に意識するようなことは無かったですよ。誰かを相手にするとか、ある特定の人を意識して、その人を負かそうとか、そういうことじゃなくて、自分自身と向き合って、もっと上手くなるにはどうしたらいいかとか、そういうことを常に考えるようにしていました。

西嶋:
中里くんも意識してなかったんですね。
確かに、思い起こせばいつも自分と立ち向かっていましたね。
受験って相手は他人じゃなくて自分自身なんですよね。

その辺りは市川さんも何か考えがあるんじゃない?

市川:
来ましたね〜(笑)ついにつっこみが。 
私という人間は、実にもろく、周りからの期待やプレッシャーに弱いんですよね、口と手と足はよくでるけど。ははは(笑)。
そういった精神の軟弱さを覆い隠すように、周りを無下にしてみたり、自分を必要以上に大きく見せようとしたり。自分の力を、信じてあげられなかったんでしょうね。上手くなろうって時に、けっこうな頻度で他者の存在が大きく目に映ってました。でも結局、他者を超えられたとしても、敵はまだ居て。それは天狗になった自分です。そして、鼻頭を折られてうつぶいた、他者に依存した自分なんです。何かを求めれば求める程、敵というのは己で創った土俵に存在して、それをぶち壊した時にやっと己に一瞬勝てたような気がして、また新たな土俵が生まれる。まあ、そんなとこです。すいません。

西嶋:
まさに自分との戦いでしたね。
三浪してしまいましたが、自己と向き合うべきときはいつかは来るので
良い経験でしたね。大学生活や今後の活動にも生きてくると思いますよ。

では次の質問です。これまで合格してきた人は大抵自分独自のプロセスをつくりあげていると思うのですが、皆さんは如何ですか?自分を支えた何かがありましたら教えてください。

今度は大石さんからどうですか?

大石:
私の場合は、常に不安を抱えていたので・・・。性格的なものだと思いますが。
ですから、自分の中に、自分を支える何かがあったのか、と考えると、ものすごく難しいです。
逆に、自分を支える何か、をなんとか本番までに見つけるために、奮闘していた記憶があります。
自分の身には過ぎた評価を頂いていましたので、(すごく有り難いことではありますが)絶対に落ちてはいけないと思っていましたので、その不安につき動かされる様にがむしゃらにやってきた感じです。
けど、そう考えると、その「不安」こそが、わたしを支えていた力だったのかもしれませんね。
おかげで、本当に最後の最後、一次試験の前日には、これでいける!と思えるものを得ることができ、自信を持って本番にのぞむことができたと思います。

西嶋:
「不安」ですか。ちょっと守りに入っている時期もありましたね。
しかし最後に自信を持てたのが良い結果につながった最大の要因でしょうね。
では市川さんは?

市川:
それはもう、自身を取り巻く全てです。
野犬みたいな私を根気強く指導して下さった先生方、本当にありがとうございました。
並びに、時を共にした同士達。今でもかけがえのない存在です。嘘じゃないよ。
そして、根っから明るい家族の存在です。何回落ちても、背中を押してくれました。ほんとは浪人させたくなかったろうに。

西嶋:
はははっ(笑)、確かにちょっと怖かったよ。正直受かってくれてホッとしています。(笑)
良い仲間がたくさんいましたね。それが一番の宝物になっていくでしょう。

中里くんどうですか?

中里:
そうですね〜、俺は、どちらかというと肉体派っていうか、頭脳派ではないんで(笑)、粘土やデッサンを、短時間で、より密度の高いものにするための体力作りや、自分自身にプレッシャーを与えて(例えば、コンクールで確実に一位を取る!とか)ソレに打ち勝てる精神力をつけられたことが、本番に、「自分にできることをやるだけだ!」と思えて、ある程度の自信を持って、芸大試験に臨めたことだと思いますよ☆

西嶋:
そうですね。実際、考えているだけではダメなんですよね。それを行動に移す精神力と体力ってすごく大事ですよね。
黙々と制作に取り組む姿は、紹介文にも書きましたが、ほんとに修行僧のようでした。

では、今度は芸大に合格した後のことを伺っていきたいと思います。
芸大に通ってみて感じる予備校と大学の時間の流れの違いや、予備校と大学の先生との距離、仲間との過ごし方など受験時代とはだいぶ変化があると思いますが、その辺りをお話し頂けますか?

中里:
予備校に比べたら、自由な時間が増えたような気がする。そのぶん、自分でやらなきゃいけないことがたくさん増えたと思う。本読んだりとか、作品作ったり。
今は、まだ始まったばかりだから、何とも言えないけれど、ぼ〜とすごしていたら、本当にあっという間に、四年間が過ぎてしまう気がする。だから、自由になった時間を、いかに有効に使えるかが今の課題だと思う。

西嶋:
その通り。四年間はあっという間です。時間が有り余っているかに感じる大学生活ですが、結構休みが多いんですよね。その休みを利用して積極的に海外旅行など行くといいと思いますよ。
他の二人はどうですか?

大石:
そうですね、自分個人で美術をやっていくという意識は、受験時代よりも強くなってきました。
受験生の頃の友人は、いくらお互いを蹴落としていかなければならないライバル関係とはいっても、やはり、同じ目標を持って闘っている仲間、といった意識が強かったですから。必然、助け合える、本当にいい友人を得ることができました。
しかし、大学生ともなると、私も含め、皆それぞれの別の目的意識を持った人たちばかりなので、個人主義的になるのは自然なことですよね。教授との距離も、予備校時代よりは離れて感じますが、それはまだ、ご教授いただいて日が浅いからかも知りません。
ちょっとさみしい気もしますが、このぐらいが丁度気持のいい距離だと思っています。これからは、個人で考えていく時間が大切だと考えていますから。

市川:
ま、そうですね、大石の言う通り。特にいう事はないのですが、なんにせよ彫刻を一生やろうと思ったら一人の力じゃどうにもならないので、今まで出会った人、これから出会う人、彫刻関係のみならず大切にしていきたいですよね。ま、自分の環境作りってとこですかね。

大石:
いいこと言いますね!本当にそう思います。

市川:
あらそう、てれるわね。うふふ。
ま、後は、日々精進です。

西嶋:
はいはい。(笑)
でもその通りですね。
人との関わりは重要だと思います。
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では最後に受験生に向けてメッセージがありましたらお願いします。

中里:
マッチョと、根性と・・・センター試験だー!!!

市川:
どんだけ、頑張ってやってもうまくいかない時って、誰しもやってきます。それはスランプなんて高いレベルの話じゃなくて、次の成長段階への準備なんだと思います。何か新しいモノが必要な時期なのだと。
苦しみなんて、人間は生まれながらに持ち合わせていると私は考えています。だから、命が尽きるまでまだ先はあるんだし、辛いことがあっても、こんなのあたり前だと思ったほうがいいです。
一生懸命になると、自分だけの世界に入り込んで、どうしても視野が狭くなってしまうので、そんな時はふっと肩の力を抜いて、目を閉じて深呼吸。そして周りをぐるっと見渡してみてください。そうすれば、おのずと自分の欠落した意識の欠片を感じることができるはずです。 自分の正確な位置を確認することは、受験においても、作家になるに至っても、とても重要な事だと思うからです。
予備校という場所は、頑張ろうと思えばいくらでも頑張れる場所でもあり、怠けようと思えばいくらでも怠ける事のできる場所です。とにかく自分に厳しく、シビアに受かる事を考えてください。秋になると、中だるみが起こります。その時、仲間内で慣れ合う人もでてくると思います。その宜しくない空気に巻き込まれるのではなく、互いに注意し合うことが大切だと思います。例えば、休憩中でも、誰かが制作していれば、それはもう立派なアトリエの空間ですよね。誰がおしゃべりで邪魔できますか?そんな時は遠慮せず注意しましょう。優しくビシッと。たとえ1年であったとしても、場を共有しているわけですからね。
長くなりましたが、最後に。多くのことを教えて下さる先生方や、切磋琢磨できる仲間、そしてすべてを沈黙で語るモチーフ、周囲のすべてに救いがあると思います。周りに常に感謝し、お互い日々を充実させましょう。体調管理だけはぬかりなく。来年待ってます。

大石:
私は現役生に向けての言葉しか言えませんが。
きっと現役生の方は、私に言われるまでもなく、がむしゃらに、楽しみながら頑張っているのだと思います。
それは本当に、現役生の強みですから、是非自覚して、大切にしていただきたいと思います。
けれど、そのことが一番難しい。上手くなってくると、どうしても、迷いがでてくるようになります。そんなときは、思いっきり、悩めばいいじゃなぁい…。
ただ、皆それぞれ、必ず一つはいいものを持っていますから、それを大切にしていってほしいです。
自分では気付きにくいことですが、もし気づくことができれば、本当に大きな支えとなること思います。
肩の力を抜いて、適当に奮闘してください。


西嶋:
さすがに厳しい受験を乗り切った強者達ですね。受験生にとって刺激になってくれればと思います。
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本日は、貴重な時間を惜しむことなくご協力頂き感謝致します。
これからの皆さんのご活躍を期待しております。
ありがとうございました。

次回もお楽しみに!

2007年05月07日

● すいどーばた美術学院彫刻科主任 中瀬康志に聞く

 「インタビュー企画第1弾」
 すいどーばた美術学院彫刻科主任 中瀬康志に聞く
                  インタビューアー 西嶋

インタビュー企画の初回は、彫刻科の主任という立場から中瀬さんがどのように受験やすいどーばたを見ているのかを伺っていこうと思います。

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西嶋:
こんにちは。第一回目のインタビューと言うことで、まずこのホームページを
立ち上げた理由からお伺いしたいと思います。

中瀬:
いちばん大きな理由は、彫刻を学ぼうとするたくさんの人達に、受験に関しては勿論ですが、彫刻に関しての様々なことが伝えられたらいいな、と言う思いからでしたね。
 基本的に予備校は競争社会ですから、ともすれば閉鎖的になりがちなんですね。それでは彫刻を学ぶ事自体の楽しさとか広がりさえも伝わらないのでは、という危惧感はずっとありましたから。

西嶋:
「すいどーばた彫刻科」は中瀬さんから見てどのような所だと思っていますか?例えば特徴であるとか。
 
中瀬:
そうですね・・・。やはり「すいどーばた」はその伝統、言ってみれば予備校界のパイオニアとしての存在ということが一番ではないでしょうか。
 御承知のように今現在の美大での指導的な立場にいらっしゃる方々、そして美術界で活躍されている多くの作家がすいどーばたの彫刻科の出身です。
そうしたことからも、いわゆる大学とは別の意味での、過激な程熱中した青春時代の思い出は勿論のこと、その後の様々な交流の礎となっている事も多いのではないでしょうか。
 勿論、苦渋に満ちた苦い経験という代名詞になっている人もいるでしょうが(笑)
今現在でもそうですが、すいどーばたの夏季講習会ともなると、「彫刻の甲子園」なんて私は言ってますが、本当に全国の個性的な美術系高校を中心に優秀な高校生がたくさん集まって来るんですね。そうした学生達が若いうちから実技面での切磋琢磨は勿論、それぞれの人間としての交流を深めている。そういう場に立ち会っていると「日本はいけるぞ!!,」なんて頼もしく思いますよ。

西嶋:
すいどーばた彫刻科の指導の特徴とか、中瀬さん自身が指導上で大事にされていることはどんなことですか?

中瀬:
受験結果からも解るように、すいどーばたは東京芸大を中心に私立美大の受験結果も他の予備校を圧倒しています。優秀な学生が数多く集まる、ということもあるのですが、非常に個性的なスタッフが指導面でがっちりサポートしているというのが最も基本的な理由でしょう。
ただ、予備校という場所は受験という大学が求める基準や価値観に到達するための徹底した基礎訓練が主体ですから、ともすれば基礎訓練そのものに対しての意識がマンネリに陥ったり観念的になったり、あるいは狭い価値観に捕われたりと、いってみれば個性や自由といった美術そのものの特徴とは異なる「もろ刃の剣」のようなところがあるんですね。そのために私がまず新学期にメッセージとして学生に投げかけることは大きく二つです。
 一つは、「自治的な集団であれ」ということです。まずは、学校ですから、おのずと集団での学習であったり、それなりの規則もあります。そして、カリキュラムという統一された課題があるわけです。これは当然、合理的に学習していくためのシステムですから避けられません。ですから一方でどうしても必要なのは「自らが考え、自らが行動する」といった「主体性」でしょう。そうした主体性を持った「集団」であって欲しいということです。例えば掃除や片付けさえも自主的な運営、管理で行われることが望ましいし、学校に対する要望も自主的な意見として大切にします。そうした意識から自分の学習の組み立てや意欲を盛り上げていく。そうしたお互いが馴れ合いにならず、アクティブでエネルギッシュな空間になっていくことが一番大切だと思っています。
 二つ目は、「現実にしっかり対応しよう」ということです。
受験は1年という短期間が勝負です。理想だけでもうまくいきません。美術そのものの知識を身につけることや受験に関わる情報をしっかり把握し対応することが成功の秘けつです。最近は殆どいなくなりましたが、学生の中には受験そのものへの不信から離れていこうとする学生もなかにはいるのですが、受験そのものはどんなに矛盾があるにせよ「現実にある」という認識が必要でしょう。私自身も現在の日本の美術の受験制度がいいとは全く思いませんが、これは「現実」にあることなんですね。それをしっかり認識して「立ち向かう」という積極的な気持ちが必要だと思ってます。

西嶋:
今後、このホームページも含めどんな展開を考えていますか?

中瀬:
 現在はどの予備校も学生数が減少しています。そうした中で受験生そのもののメリットを考えると、予備校の保守的な競争ではなく、情報を開示提供していくこととか、学生がもっと自由に交流ができる場所として予備校を変化、成立させていくというのが私の希望です。3年前から始めた湘南美術学院との合同コンクール、そして美大教授(作家)による講演会、そして今回開講する公開講座などもその一環です。
 できれば「彫刻サミット」的なものも開催できたらという思いが何年もあります。いつか実現できたら面白いですね。現状、国公立大学の不自由さがネックですが、彫刻自体の受験者数が減少している中、彫刻の面白さや自由さ、そしてその広がりなど、彫刻が自己表現の優れた表現媒体である事も含め、もっと多様な形で社会へ、次世代へメッセージを投げかけていくことが必要だと思いますね。
 予備校というのはその意味では逆に非常にフレキシブルな立場にあるのではと僕自身は勝手に思っているんですね。そうしたネットワークを構築していく上でも今回の彫刻科独自のホームページは有効だと思ってます。
 一方で大学も自分達の大学を受験、合格した学生だけを相手にした思考や、自分達だけの学生をあらかじめ確保してしまうという美術そのものの自由さとは無縁の制度も変化させていかなければならない、そんな時代になっているのではないでしょうか。

西嶋:
ご協力ありがとうございました。