2021年10月アーカイブ

2021年全国公開コンクール

「インタビュー企画第40弾」
 2020全国公開実技コンクール特集

                       担当 野畑常義 田中地平 


ーすいどーばた美術学院講師8名の採点総評コメント掲載ー
各講師から、今回の公開コンクールについての総評を書いてもらいました。
それぞれの言葉をしっかりと受け止め、今後の制作の参考にしてもらえればと思います。




文章が送られてきた順に掲載します。


すいどーばた美術学院 彫刻科講師 田中綾子
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みなさん、お疲れさまでした。

描き始める前にどんな狙いを持って取り組みましたか?

自分だったら、円盤投げらしい空間を掴みたいなあと思います。
しかしそのためには、動きを捉えなければいけないし、プロポーションが狂うと別人になってしまう。
ぱちっとした形の強さも大事だし、顔もそっくりにしたい...

今回は、見ていることに偏りがあったり、視野が狭くなって全体がバラバラになってしまっているデッサンが多いなあと感じました。

たくさんの要素が関係していない状態では、円盤投げにはなっていきません。
一つのことだけを気にしていても、円盤投げに近づけることはできません。

様々な要素が絡み合って初めて、その像が画面の中に出来上がっていくのだと思います。
そうやって円盤投げらしさを掴んだ上で、「自分には円盤投げのこういうところがかっこよく見えた」と伝わるデッサンになっていると良いのかなと思います。

すいどーばた美術学院 彫刻科講師 野畑常義
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みなさんお疲れさまでした。

今年、初めてどばた公開コンクールの審査に参加しました。ふだんどばたであまり見かけない個性のデッサンもたくさんあって面白かったです。

あまりいいのが無かったと言う声があるとおもうんですが、自分は少し意見が違って、こっちが本当の現在の実力だと思うんですね。
「受験本番では過去最高のが描けた」みたいなこと言う合格者もたまにいますが、テンション上がってそう思ってるだけで完全に気のせいだろと思っています笑。

なんにせよ、コンクールで大事なのは後ですよね。今回の評価に一喜一憂せず、ここから入試までの過ごし方で結果は大きく動きます。だから、悲しんだりヤケになったり(それらは未来の自分の可能性を信じていない時間です)するんじゃなくて、自分の現在地点を一度受け入れて欲しいと思います。

今は昔よりだいぶ受験者数が減りましたが、石膏デッサンと言う特殊フォーマットのサーキットはむしろ先鋭化しています。もちろん石膏デッサンはすごく勉強になりますし、彫刻科特有の競技性というのかな?コンクールカルチャーはそれはそれで面白いと思います。ただ、石膏以外のもののあまりの描けなさに亜然としたりすることもしばしばです。クロッキーや風景をスケッチしたりすることと、石膏単体というモチーフが繋がってないひとが多いんじゃないかな。

僕が今回の結果を受けてなにか総合的なアドバイスがあるとすれば、クロッキーやって下さい。友人でもモノでも何でも描いたらいいんです。普段の石膏の課題をこなす以外の時間でです。そしたらもっとひと繋がりのモノとして、連動した動きとして、円盤投げも見えてきます。手のクロッキーをたくさんするだけでも、石膏の形がもっと合うように感覚がチューンニングされます。

今日参加した全ての人の健闘を祈っています。

すいどーばた美術学院 臨時講師  谷内めぐみ
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みなさんお疲れ様でした。

6時間という時間をどう使うのか。
観察って言うけれど観察ってなんなのか。
完成ってなんなのか。
今回全体をみて描くことに一生懸命になって画面が暗い印象の実技が多い様に感じました。
モチーフの正確さは勿論大切ですが、描き手自身の視点だったり感動が伝わってくるというのが目に止まる実技には共通してあると思います。
自分で自分を一押し出来る様な自信を持てる部分が一つでもあれば自然と他者の目を引く実技になっていくのではないかと思います。
試験本番までの間自分が表現したいのは何なのか落ち着いて考える時間を大切にして欲しいです。

すいどーばた美術学院 彫刻科講師 小野海
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2014年、僕が一浪の年です。その年の公開コンクールの出題が今回と同じく円盤投げでした。

数日前からかなり意気込んでいて、当日はかなり緊張してましたね。部屋に入って自分の座席に座ると、いわゆる当たり位置で、瞬時に今日描く絵のヴィジョンが見えました。それまでに見たことのある同じ位置の参考作品が無数に脳裏に浮かびあがって、朝の時点で「これはイケるな」と思ってました。そこから6時間、一生懸命絵を仕上げるために描きました。

結果は惨敗でした笑。


話は変わりますが「モチーフとの対話」って講評でたまに出てきますけど、どういう意味でしょうかね?是非今一度考えてみて下さい。

今回のデッサンを描く前と後でみなさんの中に何か1つでも良いです、円盤投げという作品から発見や感動があったでしょうか?振り返ってみてください。6時間も対峙していて1つもないのはヤバイです。
モチーフはただそこにあるだけで、様々な言葉をみなさんに投げ掛けています。大切なことはみなさんがそれを聞き取れる状態にあるかどうかですね。今までに何回描いたことあるとか、どれだけ知ってるとか、そんなことは然程関係ありません。

今日の自分が、今日のモチーフと対話して、今日の1枚を描く。


一浪の公開コンの日の僕は、全然対話できてませんでしたね〜、一人言でした。

そんなわけで、対話が画面から伝わってくる作品はやはり魅力的ですね。
この人は今日1日、円盤投げとよく話しあったたんだな。そういう作品からシールを貼らせてもらいました。


残り5ヶ月と数日、頑張っていきましょう〜!

すいどーばた美術学院 彫刻科講師 柿坪満実子
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皆さんお疲れさまでした。
今回は安心して見れるデッサンが少なく、円盤投げの動きなど、基本的に押さえなければならない要素を最後まで気を付けながら進めた人は少なかったのではと感じました。
冷静に自分のデッサンで円盤投げがどういう状況になっているかということも大切ですが、同時に絵として自分にはどんな景色が見えていたのか、何を表現したいのかという事も空間に在る彫刻には大切な要素だと思います。

実技中に焦りや不安で気持ちが一杯一杯になっていませんでしたか?
何が出題されても、普段と違う環境で緊張している時でもしっかりと自分自身をコントロールしてあげてください。自分を受からせる為に、落とさない為に、出来ることやしなければならない事が其々にある筈です。
現状から目を背ける事なくこの機会にしっかりと見つめ直して、また明日から頑張りましょう。

すいどーばた美術学院 彫刻科講師 阿部光成
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皆さんお疲れさまでした。

今回の課題円盤投げでしたが、残念ながら、これはいいね!と感じる実技は少なかったですね。その原因を考えてみます。まずは彫刻の三大要素ですが、皆さんもちろん知っていますよね。そうです、量、動き、構造です。空間に量を与え動きを付けて構造を成すってことですよね。そこに光が当たり、像に陰影が生まれ、初めて表情が見える。またコントラポストって聞いたことありますよね。彫刻が自然に活き活きとした人間に見える様にするにはどうすればよいか?ギリシャ時代に獲得した彫刻の大切な意識。重心の意識ですよね。

皆さんはコントラポスト力がまだ低いです。彫刻の豊かな表情はどこに生まれるのか?そんな根っこをもう一度考えてみてください。

すいどーばた美術学院 彫刻科主任 小川寛之
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採点を振り返って。

今年は上位の作品から一長一短の絵が多く、格付けしていくのが下位の方まで大変でした。

その多くは、重心の掛け方を見れている人が半分もいなかったこと。
空間の中に人物を立たせる、という感覚を持ちたいですね。

大きいモノを広い視野で把握してこそ彫刻を作っていけると思いますので、今後の皆さんの頑張りに期待したい所です。

頑張ってください。

すいどーばた美術学院 彫刻科講師  足立仁史 
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皆さんお疲れ様でした。

円盤投げは6時間で描くにはなかなか大変なモチーフだったとは思います。
しかしトルソを描くうえで人体構造や動きは避けては通れません。その理解度や再現度が評価を分けるポイントになったと思います。

もちろんデッサンで大切な要素はそれだけでありませんが、彫刻を学ぶ皆さんだからこそ、大切にして欲しいですし、探求する楽しさにして今後に活かしていってもらいたいです。

すいどーばた美術学院 彫刻科講師 アイザック・レオン
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みなさん、公開コンクールお疲れ様でした。
円盤投げには彫刻らしい構造があると言われてますよね。なぜでしょうか?並べられていたデッサンを見ながら一枚一枚違和感を持ちながら考えていました。
描く事で精一杯になり構造の確認、人としてのバランス、円盤らしさへの確認が少なくなっていませんでしたか?高校生と一浪生にはまだ難しいと思わせる事は多いかもしれませんが、円盤投げは彫刻的構成においては基本です。多浪生は惰性的にならぬように、気付いたら描き終わるのが怖いですからね。最後までやり取りしましょう。
デッサンは素直になれば描けると思いますが、モチーフを捉えること、理解する事はまた別の話しです。漫然と表面を見つめても理解には至りません。洞察力が必要です。目の前の彫刻を理解すること、頭の中で動きの仕組みや構造を再構築する行為は制作において必要不可欠です。ですから彫刻という物をもっと理解してください。
多様な見方が大切です。
何となくやらないでください。
いっぱい研究し、彫刻を熱く語れるようになりましょう。
次回に円盤投げを描く時にはもう少し動き合わせられるかな?

すいどーばた美術学院 彫刻科講師 田中地平
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全体を見て感じたのは円盤投げに迫れていたデッサンが少なかったということです。上位でも円盤投げの動きが合っているものはありませんでした。
今回は全体に形を描くことに一生懸命になりすぎて全体のプロポーションや動きの観察が少なかったように思います。まだ形を直すことや形を描くことばかり気にしている人が多かったので、表面を見ることも大事ですが見方を増やしてデッサンの内容を上げていって欲しいです。
ただ今回の結果は緊張する場面で今出せる力の目安が出ただけで結果が出なかった人でもそれほど落ちこむことはありません。これからより頑張っていけばいいだけなので、本番までできるだけのことをしましょう。がんばってください。